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物語る亀

ネタバレありの物語批評

題「夜は短し恋せよ男」(コメディ作品)

お題「風、ドーナツ、メタボ」 「お前が……キューピット?」 私がそう尋ねると、目の前で正座をしているメタボ体型の小さなおっさんは「ヘィ」と昭和の爆笑王のように頭に手を当てて小さく下げた。 ことの始まりを説明しよう。 まず、いつも通りの時間に朝に…

新年の挨拶に代えまして、小説にて書き初めとさせていただきます。

あけましておめでとうございます。 新年1発目の記事は何にしようかと考えましたが、ここは私の新作小説で書き初めとさせてください。 構想10分、執筆20分の、何もないお話です。 普段人の作品に色々とケチをつけていますが、そんな人間が筆をとると、この程…

通勤途中に小説を〜短編小説『海と夕日』

もうすこしで夏も終わろうとしている。 台風が過ぎ去ったばかりの海はこの時期にしては珍しく人もまばらで、地元の人間である僕にとってはありがたいことだった。うるさくないし、道路も混まないし、何よりもゆっくり海を眺めることができる。叔父さんがやっ…

第23回短編小説の集い参加作品 題『カマキリ嬢』

ノベラックス様主催の『短編小説の集い』に初めて参加させていただきます。 短編小説は何度か書いてきていますが、今回は『虫』がテーマということで『カマキリ嬢』というタイトルで書かせていただきました。 なんというか……文章力どうのこうのという作品に…

通勤途中に小説を〜短編小説 『怪物たちのいるところ』

太陽がジリジリと肌を焼くように鋭く差し込む。コンクリートがその熱を反射し、頭まで覆ったパーカーの中にまで入り込むようだ。この暑さでも薄手とはいえ、長袖のパーカーを羽織った大男は、しかしその見た目と裏腹にその顔に一切の汗をかいていなかった。 …

通勤途中に小説を〜短編小説 餃子〜

今回は久々に自作小説を書いて更新しますが、1000文字に満たない非常に短いショートショートとなっています。 書いたのはおそらく2012年前後なので、今とは書き方も違いますが、たまにはこの短さもいいものかな? もしかしたら、ブログ向きの分量だというこ…

通勤途中に小説を〜短編小説 『自衛隊』〜

ジエータイ その日は、突き刺ささるような日差しがグラウンド全体に降り注いでいた。今年は記録的な猛暑が続いています、と例年と同じことをテレビでは連日伝えている。その中でも若者達は外に出て、汗と土とゲロにまみれた青春を謳歌しているのだから大した…

通勤途中に小説を〜短編小説 『築地物語』〜

夜勤明けのいつも以上に重くなった体を揺すり、その体以上に重い瞼を擦りながら、地下鉄から一歩踏み出してホームへと降り立つと、独特の生臭い匂いが鼻孔をくすぐる。漁場だったら潮の香りと共にそれは運ばれて来るのだろうが、海に近い筈にも関わらず全く…

通勤途中に小説を〜短編小説『同じクラスのあの娘』〜

今週のお題「犬派? 猫派?」 虹色に輝く柔らかな光が白を基調とした部屋と寝ぼけ眼に差し込んできてまぶたの奥の瞳が灼けるように痛みを訴えてくるから、少しだけベットの上をゴロリと身を動かしてシーツの海を泳ぎ回り、なんとか暗闇を探そうと身をよじっ…

自作小説一覧と作者解説

このぺージでは自作の小説を一つにまとめて、私が軽く解説をしています。 作品数は今後も続々と増えて行く……はず。

通勤途中に小説を〜短編小説 『見えないもの』

今週のお題「卒業」 三月に入ると一時期に比べて、寒さもだいぶ和らいできた。つい一月前は雨が降るたびに『雪が』と騒いでいた天気予報も、今は花粉と桜の開花予想に話題が集中している。 終業式も終わり、職員室とは別に用意された準備室に戻ると老齢の教…

通勤途中に小説を〜短編小説 『あい傘』

雨が降ってきた。 ちょっと見栄を張って入ったルノアールは、大きな商店の立ち並ぶアーケード通りの二階にあって、大きな窓に面した席から下を覗くと、雨粒を避けようと走る人の姿があった。心なしか、小降りにもかかわらず雨の中で濡れ鼠になることを厭わず…

通勤途中に小説を〜短編小説 桜花〜

西高東低の冬の寒気も少しずつ去っていき、少し前まで身を切らんばかりに冷えた風が、ほのかに暖かくなってきた。今年は暖冬だったから冬の間も暖かい日が何日も続いたが、それでも春の匂いの訪れはようやく、といったところだろうか。 このくらいの気温にな…

通勤途中に小説を〜エンジェルキッス〜

お題 初夏 女 下駄 雲ひとつ無い青空にぽっかりと存在を強く主張する太陽が周囲を焼きつける。まだまだ日差しは弱いというが、暑さは日に日に増していき、すでに長袖はタンスの奥にしまわれて久しい。 アパートを出ると熱気が俺を襲う。一歩足を踏み出すだけ…

通勤途中に小説を〜短編小説 『星』

気がつくと周囲は夕闇に閉ざされて、ほんの少し先さえも、光のしっぽすら見えない中、俺は草むらに横になっていた。別に遭難したとかいう大事な話ではなく、町外れの森の中を、真っ昼間から陽の光を木々で避けながら、ずっと草を敷き布団にしていたのだ。 大…

通勤途中に小説を〜短編小説 『幽霊』

線香の灰や枯れた花が一掃され、ぺんぺん草一つ生えないまでにキレイに片つけられたのは少し前のことなのに、今では夏に供えられた花がそのままに風に身を揺らしている。枯れススキは風情があるが、枯れ仏花は恐怖心を煽るだけだ。それだけに墓場には相応し…

通勤途中に小説を〜短編小説 『ナミダダケ』

「ワライダケって知ってるかい? そうそう、食べると笑いが止まらないっていうあれさ。とは言ってもさ、本当に笑ってるわけじゃあ、ないんよ。神経毒でさ、顔面が麻痺して引きつっている様子が笑っているように見えるってだけなんだがね。最近はやりの笑素と…

短編小説 化石

高校の体育教師がいっていた言葉を思い出す。 その独身の女性教師は保健の授業中に、笑顔を浮かべていった。 「誰だって骨になれば同じだよ」 容姿や体格を論じる無意味さを語りたかったのだろうが、その教師が体育教師らしく体格がよかった上に短髪の天然パ…