物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『異端者の家』ネタバレ感想&考察!宗教と現代社会を融合し語るカオス!

 

それでは、今回は『異端者の家』について語っていきましょう!

 

かなり濃い解説記事になります!

 

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カエルくん(以下カエル)

今作の宗教的な側面から、さまざまな考察や解説をしている記事になります!

 

非常に面白く知的好奇心が刺激される作品だったね

 

それでは、早速ですが記事のスタートです!

 

 

 

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Xの短評

 

 

 

Xに投稿した感想

#異端者の家 

宗教の歴史や文化的影響にとても興味があるボクにとって知的好奇心が刺激される大変面白い作品でした

 

なんならホラー・ゴア表現はいらないかも

ボクはずっと彼の話を聞いていたかったし、彼と論議してみたかったですね‼️ 

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宗教というとさまざまな意見や忌避する見方があるかもしれませんが、文明の持つ善悪や倫理を決める文化の根本としてとても重要な概念について、その根底から問いかけていく本作

 

ユダヤ・キリスト・イスラム・モルモンといった各宗教の考えを問いながら選択をせまっていき、宗教の持つ本質へと迫っていく姿にゾクゾクとしましたし、同時に宗教や他宗教に対する”怖い”という思いに対する本質……つまり不知を問いただす姿がとても面白かったです

 

序盤が120点だっただけに、もっと遠くに、もっととんでもないところに展開して欲しかったという思いもありましたが、非常にわかりやすく物語を紡ぎながらも現代的な作品に仕上がっているとも感じましたね。

 

 

 

 

 

 

 

感想

 

まずはネタバレなしの感想からスタート!

 

非常に知的好奇心が刺激される、面白い作品だったね!

 

カエル「今作は宗教を扱ったA24のホラーということで、ちょっと身構えたところもあったけれど、うちみたいな宗教と文化の関連性に興味があると、とても面白い作品だったね!」

 

主「中には”話がよくわからない”という人もいるかもしれないけれど、自分はこの論争をずっと観ていたいという気持ちもあったくらいだね。

 むしろ前半は120点をあげたいくらい、非常に面白いものだったので、オチにはちょっと肩透かしを食らったくらい……それくらいハードルをめちゃくちゃ上がったほど、前半の問答を楽しんだよね。

 今回はかなり長い記事なのでここから、ネタバレありで語っていくので感想はそこそこになるけれど、よくわからなかった人にもこの記事を読めば何が良かったのか、わかってもらえるのではないかな?」

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

今作が語る5つの見え方

 

5つの概要

 

まずは今作が語りかけるテーマについて、5つに分解して紹介していくんだね

 

その5つが以下のようになっています

 

  • 善悪の定義・社会環境の変化
  • 新しい宗教の誕生
  • キリストの復活・苦難を望む救世主
  • 異質な存在に対する恐怖
  • 女性の力を描く

 

では、1つずつ語っていきましょう!

 

 

 

善悪の定義・社会環境の変化〜一夫多妻制議論から〜

 

宗教は善悪を決める物差しのようなもの

 

まずは冒頭の一夫多妻制の議論にから、善悪の定義について考えていくということだけれど

 

前提として、宗教というのは善悪・倫理の規範となるものであり、文化の根底にあるものなんだ

 

カエル「善悪、つまりやっていい事と悪いことも宗教を元に倫理観が育まれて、法律や個々人の倫理観も決まっていく、ということだね」

 

主「例えば“モーセの十戒”があるけれど、これは殺人・盗み・不倫など多くのことを禁じている。今思えば当たり前のようだけれど、法律もなく国の力も現在より弱かった時代に、このような善悪の概念を多くの人に浸透させるには、宗教……つまり文化の力が大事だった。

 いい面では『寄付やボランティアの推奨』がある。つまり余力のある人は困っている人を救いなさい、などの善行もまた、宗教があるから広まり根付いていくものなんだ。

 宗教は"良く生きる"ための、良いの内容を定める指針なんだね」

 

一夫多妻制が必要とされた時代

 

宗教がもたらした善悪の価値観っていうのが、結構あるんだね

 

その中で作中で語られているのが一夫多妻制についてだ

 

カエル「う〜ん……一夫多妻制と聞いて、良いものだという感情を抱く人は現代日本にはほとんどいないと思うけれど……元々キリスト教も一夫一妻制にしなさいといっているわけだしさ。

 やっぱり、女性蔑視で差別的な制度だしさ、イスラム教などの宗教がもたらした間違った価値観なんじゃないの?」

 

主「シスターたちもそのような価値観だね。

 だけれど、当時の……それこそ数百年、数千年前の社会では一夫多妻制は合理的で福祉的な制度でもある。キリスト教でも実際には一夫多妻があったという現実はある。

 重要なのは当時は女性が自活ができなかった。それは経済的に仕事がないとか、あるいは文化的なものもあるけれどね。

 そのような女性を困窮から救う制度……それが一夫多妻制だ」

 

一夫多妻が女性を救う制度というのは、なんか炎上しそう……

 

あくまでの古い時代の話だよ

 

主「当時の女性は自活することができなかったため、困窮してしまう。だからお金や権力、土地などを抱える男性に庇護してもらうことで、困窮から救うというのが目的だ。

 男性側は性欲の発露と思われがちだが……それもないとは言わないが、同時に子供はたくさん欲しい。古い時代は今よりもはるかに乳幼児の死亡率が高い。今では万が一ということだけれど、子供が亡くなるというのは、普通のことだったんだよ」

 

日本でも”7つ過ぎるまでは神の子”みたいな言葉があるもんね

 

それだと、やはり多妻にして多くの子を産んでもらうことが男性・家としても大事になる

 

主「その意味では男女の利害と、家の都合が一致しながらも、社会全体で見ても困窮する人々を救うというシステムとして一夫多妻制が優れていた。

 あるいは世界中で妻が亡くなったらその姉妹を娶るという習慣があったけれど、これも家全体で考えたら……命が軽いから、妻の代わりの姉妹を夫に与えることで夫との縁を取り持つんだ。

 まあ“個人”という考えが薄い……あっても亡くなる可能性が高い時代の、家や社会を守るための施策だね」

 

現代の価値観へのアップデート

 

でもさ、その価値観は現代ではアップデートされているわけじゃない?

 

そうだね、女性の社会進出が果たされたからね

 

産業革命が起こり、生産が効率化され、経済活動や人々の生活する文化は一変した。その結果、女性たちにも経済的な収入が拡大し、権利も付与されて、文化的にも女性の社会進出が果たされると、一夫多妻制が慣習としても否定されるようになる。

 

主「モルモン教も最初は一夫多妻を聖典のモルモン書に記載したけれど、連邦政府によって否定されて書き換えられた歴史がある。

 そして世界各地で一夫一妻制が導入され、それが当たり前の世の中になったわけだ」

 

 

じゃあ、一夫多妻制は否定されました、で終わりじゃないの?

 

ここでリード氏が述べているのは社会環境の変化で聖典の内容を変更してもいいのか?ということだ

 

え? ダメなの?

 

ここは保守派なども含めていろいろな宗派の考え方によるけれど……宗教が現代の科学の考え方が浸透していないものだからこそ、広まった概念であるということは、納得する人が多いだろう。

 

主「では、神はいないという……現代では未だ証明されていない神や仏の存在を現代の価値観で更新することも可能になってしまうのではないか? という、信仰の根本に対する疑問をリード氏は投げかけているんだ

 

 

 

新しい宗教の誕生

 

なぜ『スターウォーズ教』を笑えるのか?

 

じゃあさ、あのスターウォーズの話ってなんなの?

 

新しい宗教の誕生の話だよね

 

カエル「新しい宗教の話というと……?

 確か歴史的にユダヤ教から始まり、キリスト教、イスラム教、モルモン教のように一神教は派生していくわけだよね?

 それがスターウォーズになんの関係があるの?」

 

「『スターウォーズ EP1』は明確にキリスト教の影響下にあり、それをコピーすることで……派生することで生まれた物語だからだ。

 さすがにこれはネタバレではないと思うけれど……アナキン・スカイウォーカーは処女懐胎から生まれたということであり、まさに奇跡の子であり、救世主だ。のちにダークサイドに堕ちてからライトサイドに戻ったという奇跡を起こした存在は、そのままキリストになぞられている」

 

 

 

 

それはわかるんだけれど、なぜそれがここで重要になるの?

 

ということはさ、一神教の系譜の中にスターウォーズが入る可能性だって、0ではないんだよ

 

え? でもフィクションのエンタメでしょ?

 

それじゃ、モルモン書はなぜ信じられるの?

 

主「モルモン書は古代アメリカの記録を記したとされ、イエスキリストは復活後にアメリカ大陸に現れるなどの記述を事実として、信仰している。だけれど、それを示すような考古学などの根拠は乏しいと言わざるを得ない。

 神の存在について疑いを持つ立場からすれば、モルモン書もスターウォーズも、キリスト教を下地とし、架空の歴史を表しているという意味では同じなんだ。だからこそスターウォーズ教が出てきてもおかしくないし、ジャージャー・ビンクスが聖人となる可能性だってあるわけだ。

 つまり、”信仰”の本質とは何か? という問いを含んだ場面であるわけだね」

 

 

 

中盤の描写について

 

多くの宗教的描写を下敷きにしている作品

 

ここからは扉を選んだ後の話に行きます

 

ここから先は、宗教的なモチーフが多く出ているんだ

 

えっと……そのモチーフは?

 

1つ目は、リード氏がシスターの腕の傷に手を入れて、金属片を取り出すシーンだ。

 

主「あそこは宗教的にとても意義がある描写だ。

 つまり……カウバッジョの『聖トマスの懐疑(不信)』のシーンなんだよ

 

wall26 - Caravaggio 作「聖トマス神の不信」 - フレーム入りキャンバスプリント ウォールアート 有名な絵画 複製 - 40.64cmx61.04cm ブラック

 

 

これはキリスト教をモチーフとした名画だね

 

カエル「聖トマスは復活したイエス・キリストを疑い、そのお腹のあたりの傷に指を入れて確かめたといわれており、この絵はそのシーンを描いています。

 これにより、聖トマスは『疑い深いトマス』として、聖書や信仰を疑った用心深い人物として知られています」

 

つまり、信仰を問う場面なんだよね。

 

主「だからあのシーンは単なるグロテスクなだけではなくて、リード氏が聖トマスとなることで、その信仰心を試している場面でもある。
実はこの映画そのものが、キリスト教の絵画やモチーフの上に成り立っているんだ

 

自転車の鍵

 

ふむふむ……それ以外はどのような場面?

 

自転車の鍵……つまり”天国の鍵”だよね

 

カエル「天国の鍵とは、イエス・キリストが聖ペトロに対して与えた鍵のことを指し、天国へ他人が踏み入れることができるようになるアイテムとのことです」

ja.wikipedia.org

 

 

つまり、この鍵があるから、天国へと足を踏み入れることができる

 

主「だけれど作品では地下の鍵となっている……この鍵が活躍する前に、天国が上、地獄が下という図絵があったでしょ?

 そしてカメラは逆さまになる……つまり天国と地獄が入れ替わるので、リード氏が指し示す天国は、地下にある。そしてその天国への道を開けるための鍵が必要なんだ。

 このように、キリスト教のモチーフを多く活かして、中盤の物語は展開されていくわけだ」

 

キリストの復活を信仰するか?

 

そうなると……あの2人のシスターが追い詰められた状況って一体なんなの?

 

キリストの復活を信仰するか否か、だよ

 

カエル「え、でもさ。あの2人のシスターが論理的に入れ替えトリックについて“奇術だ”と喝破したじゃない」

 

主「そう、そうなんだよ。

 つまり救世主による生き返りを否定したんだよね。人は生き返ることなどない、そんな奇跡は存在しないと、敬虔なシスターたちが、常識に基づいて発言している。

 もちろん、それはイエス・キリストではないから常人には不可能という見方だってできる。でも……その可能性を、彼女たちは自分たちの手で否定してしまった。

 つまり、自分たちの信仰の根本であるはずの、イエス・キリストの奇蹟を……疑ってしまったんだよ」

 

救世主の存在は?

 

そうなるとさ、あの救世主とされた女性たちの自傷行為は、どう説明するの?

 

多くの宗教であのような行為は、実は散見されるんだよ

 

カエル「でもさ、多くの宗教で自傷行為などは禁止されているよね?」

 

主「だけれど、宗教者はとても過酷な環境に自分を置くことで、身を修練するということがどこの宗教でもあるよね?

 実はそれはとても大事なことで……実は自分も実体験があるんだけれど“肉体的にとても疲れる、追い込まれる”ということが神秘体験で最も重要なんだ。

 結局、奇蹟とはトリップ状態にみる幻や高揚感なのだろうけれど……肉体を限界まで追い詰めることで、精神的にも追い詰めることで、奇蹟を認識させる。だから多くの宗教での聖地は過酷な山の中などの、肉体的に疲労を伴う場所にあるのではないだろうか」

 

あの極限状態こそが、神を見るために重要な試練だと……

 

日本の仏教とかだと、滝行とかと似たようなものかもね

 

主「それでも自ら死ぬ者などいないと、いう人もいるかもしれないが……それもどうなんだろうね。

 例えば、仏教において即身成仏という考えがある。生きたまま少しずつヒ素をのみ、体の微生物を殺菌しつつ、ミイラになっていくことだ。とてもありがたい姿として信仰しているけれど、これも1つの自死ということもできる。

 また、空海のように高野山に籠り、1000年以上過ぎた人もいる。空海は今でも生きているとされているけれど……常識的にはすでに肉体は死に絶えている。これも1つの自死と言える。

 つまり信仰とは、その肉体や魂を捧げることを1つの崇高としていることから、自らの命を投げ出すことを厭わない行為も含まれるんだ

 

 

 

現代的なテーマ① 異質なものへの恐怖

 

リード氏のチャーミングさ

 

そして、今作が示したテーマについて語っていきましょう!

 

2つの現代的なテーマと、1つの宗教的なテーマが込められているんだよね

 

まずは現代的なテーマということで、異質な存在への恐怖ということだけれど……

 

単純にさ、リード氏が怖いって思っているでしょ?

 

カエル「そりゃ、あんなことをしたらね……」

 

主「でも、自分は前半は”コメディ”として見ていたんだよね。自分はさ、リード氏とずっと話をしてみたいんだよね」

 

……リード氏と話を?

 

自分にとっては、今までの話を含めて、実はリード氏の概念というのは結構理解しやすいんだよ。

 だからあの人の論考にとても興味があるし、大好き。  もっと意見を聞いてみたい。 > だからこそ……前半のシスターとのすれ違いコメディであって欲しくて、後半のあきらかに恐怖を感じさせるホラー要素は、自分には必要なかったんだよ。

 そして……コメディとホラーは、本質的には同じである」

 

ホラーとコメディの本質的な共通点

 

ホラーとコメディって全く逆なんじゃないの?

 

いや、その内実は全く同じなんだよ

 

カエル「同じというのは?」

 

主「つまり、どちらも観客を含めた他者の常識から外れたことをすることで巻き起こす感情なんだ。

 よく笑いは”緊張と緩和”と言われるけれど、それはホラーも同じだ。本来ならばこういう返しをするはず、という理性や常識的な見方があり、それに反するような行動をされるから、人間は反応として笑いや恐怖感が出る。

 だから本作は前半はすれ違いコメディとしても見事で、自分にとっては宗教観や世代が違うからすれ違ってしまうという、シュールなお笑いだったんだよ。

 だから面白かった」

 

異質なものに対する恐怖

 

それが、このテーマにつながる、と

 

よくわからないものって怖いんだよ

 

主「かなり社会的なことを話すけれど……例えばクルド問題とかもそうでさ、自分たちが抱いている常識が通用しない相手は怖いんだよ。言葉が通じない、常識が通じない、考え方が異なる……そういう文化の近い、宗教観の違いも含めて。

 もっと大きく言えば、キリスト教徒にしてみればイスラム教徒は怖く感じるかもしれない。モルモン教だって、キリスト教本流のカトリック・プロテスタントにしたら、異質な存在だろ。

そういった異質な存在に対する恐怖心……それを今作は表している」

 

そういえば、冒頭でも2人はモルモン教徒として熱心だけれど、町では浮いているというような話もあったよね

 

リード氏ほどではないにしろ、シスターたちも異質な存在として認識されているんだ

 

主「だから異質な存在に対する排他的な視点を、この映画はホラーとして描いている。

 後半の描写はかなり恐ろしいし、恐怖を抱くのも当然だ。ただ、自分からすると……もちろん安全圏からフィクションとして眺めているというのもあるけれど、リード氏の言動は非常にわかりやすいし、理解もするし、一部納得もする。かなり論争をしてみたい相手だし、面白いとすら思う。

 シスターやこの作品をホラーとして捉える人と、自分の差というのは……宗教に対する興味関心でしかないのかもしれない。

 それは他宗教に関しても同じで……宗教が違うというのは、文化・慣習が違うということ。だからお互いを知ることが大事なんだ

 

 

 

現代的なテーマ② 女性の活躍を描いた作品

 

今作が描き出した女性と宗教

 

これはわかるかなぁ……男性によって抑圧される女性像を描いた、ということでしょ?

 

それだけじゃないんだよね

 

まず1点、確かにあることとしては男性の悪しき父性によって抑圧される女性を救う、というテーマは間違いなくあるよね

 

それはあくまでも表向きのテーマだと感じている。本当の目的は宗教観の更新……つまり女性のキリスト化にあるのではないだろうか

 

……女性のキリスト化?

 

つまり、救世主であり軌跡は女性の身にも起こるんだよ

 

カエル「救世主というと、もーざやキリストなどの名前を挙げていた冒頭の部分を連想するけれど……」

 

主「基本的にキリスト教の救世主は男性が多いんだよね。

 もちろん聖母マリアなどもいるけれど、それらはキリストを産んだ母ということで、救世主そのものではない。自分が知る限り、聖人で女性はいても、救世主で女性はいないんじゃないかな?
 つまり、女性は救世主になれない……その信仰の1つの側面をぶち壊した。
 ネタバレ防止にごまかしながら書くけれど、終盤のあの描写というのは、まさに奇蹟だ。

 その奇蹟は、イエス・キリストではなく、女性の身に巻き起こった。つまり、宗教観の更新を達成し、真の奇蹟によって無神論者、あるいは異端者をやっつけるという話にもなっている

 

ラストシーンが示す意味

 

そうなると、ラストシーンは?

 

あれはすごく象徴的な意味があるんだよね

 

カエル「確か、うちではアニメ映画の『映画 聲の形』でも解説したけれど、キリスト教の世界では蝶は”魂の象徴”とされているんだよね

 

主「ということは、あのシーンで蝶がやってくるというのは、魂がシスターの元へとやってくるという意味であり、奇蹟の後のことを連想させることになる。
 あそこはキリスト教徒にとって、とても重要な……新たな信仰と奇蹟を見せつけるシーンなんだ

 

本作が示した宗教観の更新

 

となると、本作はモルモン教徒の中から新たな女性の救世主が誕生した、という見方もできるわけなんだ……

 

ただし、それを信じるか信じないかは、あなた次第ってね

 

カエル「そんな都市伝説みたいな……」

 

主「ここまでの話をずっと聞いてきて、宗教に対するさまざまな思いがあった。  そして最後には明らかな奇蹟があって、それを信じるのか、信じないのかという視点もあるだろう。
 中にはキリスト教徒だから、救世主の登場を認めないという人もいる。
 逆にキリスト教徒だからこそ、女性の救世主の登場を喜ぶ人もいる。
 無神論者だからこそ、死んだ者が生き返るわけがないと認めない人がいる。
 その曖昧な宗教の認識を含めて”あなたは何を信じますか?”という信仰を、問いかける映画なんだ」