今回は『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の感想記事になります!
公開から3ヶ月以上過ぎての感想記事となるの
カエルくん(以下カエル)
2023年の語り損ねたアニメ映画についても色々語っていきたいね
亀じい(以下亀)
これだけのヒット作、語らないわけには行かないからの
カエル「リクエストもあったので、改めて語っていきましょうか。
実は半分ほど書いてはいたんだけれど、そこで止まっていた記事なんだよね」
亀「そういう記事が2023年ではたくさんあっての……少しずつ発表していけたらいいの。
それでは、感想記事のスタートじゃ」
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chatGPTによるこの記事のまとめ
- 『鬼太郎誕生ゲゲゲの謎』は大胆なゴア表現と風刺に満ちた作品。キャラクターの色気が女性ファンに支持される一方で、作品の強度やメッセージ性も高いと評価される。
- 昭和の名画の雰囲気を醸し出し、特に小道具の扱いが印象的。タバコや鼻緒などがキャラクターの心情を象徴し、社会的なステータスや後ろ暗い世界への足掛かりとして巧みに描かれる
- 社会的なテーマを持ちながらも、高齢な権力者たちが残り続ける現状や都会と地方、高齢者と若者の対立など、さまざまな社会的問題に対して批評的な視点を示しています。
感想
それでは、Xの短評からスタートです!
#鬼太郎誕生ゲゲゲの謎
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2023年11月19日
この時代にここまで攻めた鬼太郎が登場するとは!
PG12の限界に挑む圧倒的なゴア表現と様々な意味で欲深い人間の恐ろしさを徹底的に描き抜いた作品になっていました
まさに現代にも続く日本の世相を斬って風刺にも満ちており子どもが鑑賞していいのか迷うほど尖った傑作! pic.twitter.com/gEVOixttaD
本作が描いたことに関してはボク個人としては色々と言いたいこともあるのですが、むしろそれだけ言えるくらい世相性や風刺が効いた作品になっており社会論にも耐えうる作品に仕上がっているのでとても嬉しいですね
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2023年11月19日
これだけの気骨がある作品は実写アニメ西洋東洋問わず珍しい気もしています
これは高評価もうなづける出来じゃったの
カエル「鑑賞したのはかなり前で話題になり始めたくらいの頃だったけれど、これは流行するのがわかるよね。
やっぱり、鬼太郎って子ども向け……特に小学生あたり向けの印象もある中で、ここまでゴリゴリに大人に向けられた作品が出てくるとは思わなかったよ!」
亀「ここまで流行するとはわからなかったの。
今作からは上手さを感じたものの、キャラクターの魅力というのは、特別なものを感じなかった……いや、これは語弊があるの。
もっと直接言ってしまえば、今は女性ファンを中心に盛り上がっておるが、キャラクターの色気を感じるような作品だとは気が付かなかった。ある種BL的な見方になるのかもしれんが、そういう流行り方をするのは、わしとしては少し意外じゃったが……この辺りは精進しなければならないポイントじゃな」
メッセージ性と演出の素晴らしさ
キャラクターの魅力を多く聞くけれど、女性を中心にある種の萌えというか、魅力を感じる作品とは受け止めていないんだ
単純に映像表現と、込められたメッセージ性が素晴らしいと感じたの
カエル「キャラクタームービーとしてではなくて、映像表現や演出、メッセージ性の素晴らしさを伝える記事にしていきたいね」
亀「日本には色々な映画が当然あるが、その中でも政治や社会を投影した映画もたくさんある。しかし、それらの作品が社会や政治を語る強度を持っているかというと……わしとしては、そこまでその強度がある作品は多くないと考えている」
カエル「強度を持った作品が少ないという言葉の意味を噛み砕くと……一方的な意見になりがち、ってところなのかな?」
亀「どうしても思想性が強くなってしまう一方で、その反対側から見たときにボロボロの主張になってしまうこともあるからの。
うちは……特に主の奴は、悪役や作品の主張と真逆からメッセージ性を解読しようとするたちがある。
例えば、いい例が思い浮かばないが『Aの立場から見たら正しいが、Bの立場から見たら間違い』ということがあるじゃろう。
しかし映画などはAの立場からしか語らないことも多く、B側や悪役の立場から見ると、全く違う景色が見えてくるし、反論したくなる」
それだけ聞くとただの天邪鬼なんじゃ……
そういう視点も大事ではあるが、程度にはよるかの
亀「しかし、今作はそのような視点で見ても揺るがない強さがあると、わしは感じた。
だからこそ、嫌味のような意見はしてしまうじゃろうが……それを言っても全く評価が変わらないであろう作品強度であり、嬉々として語れる稀有な作品じゃ。
まとめると、完成度が非常に高いと言ってもいいじゃろうな。
そしてそのメッセージ性が、抑圧された環境になりやすい女性に共感されやすかったというのも、ヒットの要因として見ることも可能じゃろう」
以下ネタバレあり
映像演出の素晴らしさ
昭和の名画を連想させる絵作り
では、ここからはネタバレありで映像演出の素晴らしさについても語っていきましょう
この映画を見ている最中、既視感が多くあった
カエル「声優インタビューでも、以下のような発言があるね」
関:今回は、昭和30年代の白黒日本映画のテイストでやりたいと言われました。僕は当時の白黒映画での役者さんの喋りって、みんな早口という印象があって。
木内:僕もオーディションのときに、「白黒映画のような雰囲気を出したいので、ちょっと早口でハキハキ喋って欲しい」というディレクションがありました。
インタビュー元
https://www.crank-in.net/interview/136432/2
この”昭和的な雰囲気”というのが、とてもよく現れていたの
カエル「観ている最中でも『昭和の名画のようだ!』と思うシーンが多くあったね。
うちとしては……そうだなぁ、黒澤明が好きだから『天国と地獄』とか? 結構テーマ的にも近いところがあるのかなぁ…ヒロポンの扱い方とか。
そういう時代の雰囲気をとてもよく感じる作品だったよね」
亀「先にあげた『天国と地獄』は都会の話であるが、こちらは田舎の話であるものの、その雰囲気がとてもよく出ていたと思う。
特にスタートから間もないが、このシーンでは背景美術も含めて痺れるような思いがあったの」
構図から背景から、そして影の付け方なども含めて完璧といえるかもしれん
カエル「うちはどうしても男同士の…という目線では観られなかったから、特に沙代との関係性を中心に見たこともあって、ここが印象に残るのかもね」
亀「この辺りのシーンはとても重要なことが多いので、このまま連続して語るとしよう」
水木の罪〜外界を知らせるということ〜
この辺りの一連のシーンで興味深いのは、こちらになります
この一連のシーンだけで、2人の関係性とドラマが完結している
カエル「ここはスタートから15分くらいのところかな?
水木と沙代が初めて出会うシーンで鼻緒が取れたのを直してあげる場面だよね」
亀「ここは鼻緒が取れた沙代を描くことで『1人では歩くことができない=村から出ることができない』ということを示している。
そこにそこから来た人間、水木が鼻緒を直してあげることによって『外の世界を知り、歩けるように促してしまう』ということを示している。
この2つの描写があることによって、結果的に『囚われのお姫様であって沙代に外の世界に行けるかもしれない、という希望を示してしまう』ということを描いているわけじゃな」
囚われの世界からの脱出という希望…
それは、救いでもありつつ、悲しい希望かもしれん
亀「もしかしたら……ずっとかごの中にいて、外の世界を知らない方が幸せだったかもしれん。過酷な環境であるが、それ以外に世界はない、と思えるからの。
しかし外の世界を知ってしまった。
龍賀家以外の世界を知り、そしてそれを助けてくれるかもしれない男性……もっとわかりやすく言えば、初恋の相手を見つけてしまった。
それは希望でもあり、同時に本当の絶望の始まりだったかもしれんな」
あの龍賀家の3姉妹も、明らかにあの状況の被害者だよね
性格が歪むのは当然という環境じゃからの
カエル「あの場では社長で長女の婿である克典以外は村の人間で、その克典は村のことを全く知らない部外者というのも強調されていたよね」
亀「間違いなく手籠にされているのじゃろうが、長女はその長女というプライドだけで自身の境遇を正当化し、次女は逃げ出しても……おそらく色々あったじゃろうが連れ戻され、三女は未来に自分の息子が継ぐことだけ希望を見出している。
そういった環境の外に出ることができるかもしれない、というのは……酷なものかもしれんな」
小道具の扱いの上手さ
さらに触れておきたいのは、小道具の扱いの上手さです!
特にタバコ・鼻緒の扱いじゃな
カエル「鼻緒は先にも説明したけれど、タバコ、あるいは葉巻はこの作品でも象徴的なアイテムだよね」
亀「時代性もあるが、どこでもかしこもタバコをプカプカとふかしている。そのこと自体は、当時の時代性もあって非難するつもりはないが、それを演出としてうまく入れている。
この場合のタバコは大人の象徴であり、同時に……”大人の事情”などにように、ある種の後ろ暗いものの象徴にもなっている」
最初の方にある列車内でタバコを吸う大人たちと、咳き込む子どもの対比が印象的だよね
この辺りも含めて示唆するものが多いの
亀「特に水木が克典に葉巻を勧められるシーンでは、それがさらに進化している。つまり葉巻というのは社会的な成功のステータスであるのと同時に、より汚い大人の世界へと足を踏み入れる象徴ということになる。
そして終盤の黒幕はキセルを吸っていたと記憶しているが、それはさらに汚い世界……旧来の価値観の世界への誘いとも言える。
このように小道具を使うことによってキャラクターの心情を表現し、可視化するという動きが、とても上手いように感じられるの」
社会性の考察
高齢な権力者たちが残り続けている
ここからは本音の……というか、全部本音なんだけれど、もっと突っ込んだ話をしていきましょう
ここからは自分が語るけれど……この映画が語ることって、とても共感力が高いんじゃないかな
カエル「一部では応援上映の際に敵役である時貞に関して、とても酷い言葉を投げかけていて、いくら応援上映だからってあまりにも酷いのでは? という意見もあったね」
主「自分としては……ここからは少し政治的な話もしちゃうけれど、まあそういう作品だからご愛嬌ってことで。
この映画が語ることって、成田悠輔が語っていた『老人の集団切腹』に近いと思うんだよ。この言葉がとても強いから批判されているけれど、高齢者が社会的に高い位置にいて、それが日本をダメにしているという思想は、今では……むしろ今だからこそ根強いのかもしれない」
あの発言に関しては色々な意見があるだろうけれど、この映画もマイルドに同じことを言っていると
切腹という言葉が印象強くなるけれど、高齢者がいつまでも権力にしがみついていることに反発して、社会的に引退を促している言葉だからね
カエル「主語が高齢者というとても広い意味で使われているけれど『高齢な権力者の社会的な引退』と限定すれば、賛同する人はかなり増えるだろうね」
主「今の社会を見ていると思うところは当然ある。
与党の重鎮が集った際に、お爺ちゃんしかいない構図で一種のグロテスクさを感じるし、野党の呂律も回らないような頭の硬い高齢者議員を見ていて、昔はともかく、この人に政権奪取はできないだろうとも感じる。
今は権威しかない、実態のない爺さんも山ほどいて、いつまでも権力にしがみついているから、若者に出番が来ない」
厳しい意見のようだけれど、このように思う若い人は山ほどいるよね
どこの業界も古いやり方に固執しているという指摘は多い
主「芸能界だってそうでさ、ビック3(たけし、タモリ、さんま)がトップにいる光景をもう30年は見続けている気がする。大御所を小馬鹿にするように出てきたダウンタウンも、あれだけ大物になって典型的な老害ムーブをかまして大問題になっている。
さらに芸能界の経営陣で言えば、もう黒い話しか聞かないような状況で……もちろん、実際のところはわからないにしろ、何十年もこの支配構造は続いているわけだ」
世代交代すら起こらない
色々な考え方があるでしょうが、そういった、何もかも変わらないことに対して憤りを覚えている人は多いのでしょうね
しかも、イノベーションどころか、世代交代すら起こらないじゃない
カエル「新しい発想なんて、この構図で出てくるわけがないと」
主「それを理解できる権力者がいないからね。
野球で例えたら……イチローや松井秀喜がいまだに現役、いや、王貞治が現役でTOPでもてはやされているような状況と言えるかもしれない。
スポーツだったら絶対に老化するから、どうしても引退するけれど、政治や経済、芸能の世界では肉体的な衰えが数字に現れるものではないからいつまでも現役でいれてしまう。その結果、未来の大谷翔平のような存在が潰されていく……まあ、大谷の二刀流を批判していた自分がいうことじゃないんだけれどさ。
結局、肉体的な衰えがくるスポーツか、もしくは高齢の権力者がいないITとかYouTubeなどの新しい世界でしか、若い人は活躍できない状況になってしまった。
自分がいつもいう『経営にワクワクしない』のも同じで……映画会社をはじめとしたエンタメ企業も、同じことを繰り返して膠着している印象だ」
都会と地方、高齢者と若者の対立
数字で出てこないと、高齢権力者の考え方も否定できないし、それで成功してきた人なわけだしね
同時に、過ごしてきた環境によっては、その異常性が理解できなんだよ
カエル「この映画では都会からやってきた水木の視点だから、この村の異常性に気がつけるけれど、村の中にいるとそれも気がつけないと……」
主「だから沙代の履き物を直してあげる描写ってとても重要なわけ。
あなたには選択肢があるということを気がつかせてあげているから。
だけれど、都会の視点から見ると地方の村社会の異常性に気がつけれど、そこにずっといる人には気がつかない。
むしろ、そこに縛られる。
亀じいが話した通り、あの3姉妹だってそうでしょう」
……その環境下にいたら、人生に絶望するのも当然だよね
結局は、人は住んでいる環境の世界しか知りようがないわけだ
カエル「日本にいたらアメリカの価値観は情報でしかわからないし、さらに言えば例えばチリの地方都市の感覚とか、分かりようがないものね」
主「最近はSNSなどで対立を煽るな、と言われているけれど……そもそもSNSなどで語れている価値観は若い人、あるいは都会の人の価値観がメインになりやすい。地方の高齢者はSNSをあまりやらないだろうからね。
そうなると都会の価値観が主流になりがちだけれど、同時に地方の価値観というのも変わらずに存在している。
そして都会の価値観は地方の事情や価値観を反映することができない。
今作の場合、若者と高齢者もそうだし……男性と女性ももしかしたらそうだろう」
旧来だったら、同じ環境で完結するから都会と地方の対立は目立たなかった
主「だけれどSNSは違う。
住んでいる場所やその人の属性など、何一つ考慮せずに1つにまとめられてしまい、その価値観の違いを顕在化させる。
良くも、悪くもね。
本来はSNSは外国との価値観の差も露わにするが、日本語という言語的な障壁があるために、より日本人だけの集団となってしまうことで、その壁が顕在化するのかもしれない」
東映アニメーションの近年の作品履歴と今作のメッセージ
これだけ直接的に政治や社会を語れるアニメ作品も珍しいよね
それだけの強度を持った作品ということだからね
カエル「色々と政治的なテーマがある作品は、他にもあるけれど……」
主「先にも語ったように、その中のいくつかは強度があるけれど、でも強度を持たない作品もたくさんあるんだよ
その古い価値観をこの作品は反映していると
少なくとも1960年代の昭和にしたのは、現実の政治と少し距離を置いて観れるから1つの勝利の要因だよね
主「はっきりいって、この映画の語るメッセージを『東映アニメーションがそれをいうの?』とは思うんだよ。
だって、東映アニメーションが何を新しいものを作っているの?
『ドラゴンボール』をやって今回はゲゲゲでしょ、近年大ヒットしたのも『スラムダンク』だし『プリキュア』も『ONE PIECE』『セーラームーン』『デジモンアドベンチャー』も何十年前からのコンテンツだ? って感じだし、しかも『聖闘士星矢』をハリウッドで実写化してコケているって、もう過去作にしがみつきすぎだよね。
時貞ほどではないにしろ、やっていることは程度の違いがあるとはいえ似たような部分はあるんじゃないの?」
一応『おしり探偵』とか『ワールドトリガー』とかも制作しているけれど…
明らかに力の入れ方が違うと思うんだよね
カエル「いつもは『既存のIPの活かし方が大事』とかいっているのに……あと東映アニメーションのCG制作技術は、今や日本でもトップクラスなのは間違いないから、新しいものが作れていないという指摘は当たらないんじゃないかなぁ」
主「だから嫌味だよ、これは。
でも、それだけの嫌味が言える作品なんだよ。
こんな嫌味を言っても作品強度はびくともしない、むしろ批判されるのはこっちだろう。そういう強度を持った作品だからこそ、こちらも楽しいし、面白い。
本当にこの映画を見終わった後……自分の中の時貞的ないやらしいところが、この映画が出てきて喜んでいるのがはっきりとわかったくらい、面白い作品だったね」
投げ銭も受け付けています