物語る亀

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物語愛好者の雑文

<4話まで>『響け!ユーフォニアム3』各話感想

 

この記事はXに投稿した井中カエルの『響け!ユーフォニアム3』感想まとめ記事になります

 

響け!ユーフォニアム3 Blu-ray1巻(特典なし) [Blu-ray]

 

 

 

 

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作品紹介・あらすじ

スタッフ紹介  

原作: 武田綾乃(宝島社文庫『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章』)
監督: 石原立也
副監督: 小川太一
シリーズ構成: 花田十輝
キャラクターデザイン: 池田晶子、池田和美
総作画監督: 池田和美
楽器設定: 髙橋博行
楽器作画監督: 太田 稔
美術監督: 篠原睦雄
3D美術: 鵜ノ口穣二
色彩設計: 竹田明代
撮影監督: 髙尾一也
3D監督: 冨板紀宏
音響監督: 鶴岡陽太
音楽: 松田彬人
音楽制作: ランティス、ハートカンパニー
音楽協力: 洗足学園音楽大学
演奏協力: プログレッシブ!ウインド・オーケストラ
吹奏楽監修: 大和田雅洋
アニメーション制作: 京都アニメーション
製作: 『響け!』製作委員会2024

声優・キャスト

  • 黄前久美子- 黒沢ともよ

  • 加藤葉月- 朝井彩加

  • 川島緑輝- 豊田萌絵

  • 高坂麗奈 - 安済知佳

  • 黒江真由- 戸松 遥

  • 塚本秀一- 石谷春貴

  • 釜屋つばめ- 大橋彩香

  • 久石 奏- 雨宮 天

  • 鈴木美玲- 七瀬彩夏

  • 鈴木さつき- 久野美咲

  • 月永 求- 土屋神葉

  • 剣崎梨々花- 杉浦しおり

  • 釜屋すずめ- 夏川椎菜

  • 上石弥生- 松田彩音

  • 針谷佳穂- 寺澤百花

  • 義井沙里- 陶山恵実里

  • 滝昇- 櫻井孝宏

↓公式サイトはこちらから↓

anime-eupho.com

 


www.youtube.com

 

 

 

 

 

 

1話感想

 

 

1話を鑑賞しました

完璧な横綱相撲で圧倒的な出来栄え、期待値が高いためハードルが高いのにも関わらず、予想以上の作品を仕上げてきているのが恐ろしいほどの名作の香りしかしない1話でしたね

ボクはここ最近、VR機器でTVアニメを観ることも多いのですがTVアニメは元々大画面で観ることを想定されていないため画面のいくつかに綻びというか、細かな点が気になる事がありますが、今作に関しては1秒もそういった点がなく全てにおいて完璧と言えるのではないでしょうか

 

突飛なことをしていないのに引き込まれる、まさに完璧・王道・横綱相撲を見せつけられました それでいて完璧すぎるということもなく、今後の展開を予感させる伸び代すら感じさせる、あまりにも素晴らしい手放しで称賛したいですね

 

今作のテーマは”継承と成長”でしょうか 松本先生のセリフである「自分が何者か、そして何者でありたいのか、きちんと考えてほしい」が明確なテーマだと感じています

 

それは同時に京アニというスタジオがどこを目指し、そして各クリエイターがどうありたいのか、という話にもリンクしてくるのではないでしょうか

また映像面では被写界深度を調整しての実在感を高める映像なども目立ち、その結果として”キャラクター”ではなくて”その場に生きる人物”という感覚を抱かせることにも成功していますね

 

また顔を見せない演出などは作品によっては口パクを減らすという効率化の意味合いがありますが、ユーフォの場合は明確に演出になっているのも素晴らしいポイント

なぜ顔を見せないのか、なぜ体のパーツなのか、という部分で想像させることによって、より感情を動きで表現しています

 

あとは黒沢ともよの演技が、より実在感を高めているのもポイントで、他のキャストも本当に芸達者になったなぁ…と感じます

 

1期から連なるここまで作り上げてきたメインスタッフからの継承、そしてこれからの京アニと現在の集大成を見せるという気概すら感じる成長、その2つの目線が交差しながらも、ここから入門する新規視聴者にも伝わるような1話作り

 

もう完璧すぎますね

 

まだ1度しか観ていないけれど、語りたいポイントが尽きないほどの収穫と発見が多い1話でした

 

 

 

 

 

今作のユーフォのテーマを一言で表すならば”継承と成長”なのでしょうが、それを最も体現しているのが葉月なのではないでしょうか

 

上 1期の葉月

 

下 3期の葉月

比較するとデザインそのものの大きな変化はないですが輪郭が3期(3年生)葉月は若干面長になり、等身が伸びた印象です

 

その結果として表情に精悍さが増して、より大人っぽく見えているのでしょう

 

比較しても気が付きにくいくらいの微妙な違いではありますが1年生の時から明らかに成長しているのがデザインからでも伝わってくる印象です

 

葉月は初心者からの入部なのでより成長がわかりやすいということもあり、変化が1番大きいのかもしれません

池田晶子のキャラクターデザインを原型として池田和美キャラクターデザインへの継承がここでも伺えます

 

 

 

 

 

 

 

1話に関しては冒頭からエンジン全開で久美子が制服を着て学校へ向かうシーンから始まりますが、1期1話の際は新しい制服に身を包んで、新しい生活の予感を感じさせていました

画像
一方で3期1話ではスカートを軽く手で直す程度であくびをしながらリビングへ向かうという、2年間で変化した日常を示している さりげなく1期1話に言及しながら、久美子の変化を描き出すと同時に、キャラクターのかわいらしさをアピールする見事なスタートですね

 

 

 

前3年生たちの引退の時の回想シーンもレンズのピントズレを出すことによって、過ぎ去った日々ということもアピール シリーズ演出の山田尚子の特徴としてあったレンズを効果的に使った演出も踏襲

これも1期1話では桜の下にいる久美子が写真に撮られているようで印象に残る演出でしたが、今回でも過去の思い出を振り返るように描かれており進化していることも忘れていません

 

 

 

 

カメラの揺らし方を大きくすることで久美子の視線を表現し、そこにキャラクターではなく人物の実存感を上げる
 
単なる廊下のなんてことないシーンに見せてレンズをぼやかせることで視聴者が久美子たちの学校の様子を覗いているような感覚にさせる もちろん作画の部分、キャラクターを含めた演技も可愛らしさと癖が感じられる出来で完璧、映像がとてもリッチ
細やかな部分が行き届いていて本当の意味で映画クオリティでこのまま劇場上映しても何も問題ないレベル
 
いや、あまりにも凄すぎない?
 

 

 

 

 

 

 

山田演出の代名詞とも言える足をピックアップした演出、そして麗奈の顔を見せないことで本心がわからない(嫉妬している?)分、想像させる演出

 

ここら辺は水道の蛇口だけで感動させるので、やっぱりクオリティが異常といえるくらい高いですよね…

 

 

1話の後半は音に注目してほしいですね

 

「恋」の楽曲から始まり、その後は環境音を中心とすることで実存感を増す 1年生紹介の時はコミカルに音楽を流し、そこからまた環境音

 

そして久美子の演説中に静かにBGMを流すことで緊張感がここでピークを迎える、という音を使った視聴者のコントロールが冴え渡っています

 

いや、なんだこのTVアニメ…… 映画でもなかなかこのレベルにはならんぞ…

 

 

 

 

2話感想

 

 

 

さすがにこのクオリティで原画が5人ということはないと思うのでおそらくノンクレジットの新人・若手が参加していると感じますし、それならば映像のテイストの変化にも納得するかな

 

ただそれでもこのクオリティの高さ(特にBパートが圧巻)はさすがの京アニといったところでしょうか

 

この2話の上手さは感情が爆発していないのに漂う不穏な雰囲気の作り方ですよね

Aパートの 久美子と会談で話すTVアニメでは長回しに該当しそうなカット

黒江の表情

さらにアップ

 

と、これだけで不穏な雰囲気を生み出しているのが驚異的でもありますね……

そして奏面接のバチバチ感もすごい…

顔を見せないで足だけのカットで本心を見せない、というのを絵で表現するのも大変ですが、声で表現するのも大変なので音響や演技指導の方面でもレベルが高い…

 

 

 

 

 

 

あと好きなのは演技や細かいポイントが凝っている部分に着目しますね

 

葉月が素足で裾上げしているファッションなども、新人指導に気合が入っているのが伝わってきます

細かい演技が本当に素晴らしいですね
 
黒江のあだ名の話をしているときの顎に手を当てる仕草や、髪のかき上げ、そして滝先生のお願いポーズなど、何気ない仕草の演技が素晴らしいですね
 
こういった動作1つでキャラクターの解像度が跳ね上がる印象です
 

 

 

 

 

 

電車の中のシーンは特に素晴らしいですね

 

モブである女子高生の動き1つも必見です

ここは吹部幹部としての悩みを抱える3人と、気楽に楽しく青春を過ごす可能性があったという対比関係なのでしょうか

 

その後は麗奈と塚本の対比です

2人も久美子のことをよく知っているのですがその印象が違うのですれ違いが起きている、ということでしょうか

ここは男女の違いも若干はあるのかな?

Aパートはここで終了ですが緊張感が持続しながら全体のお話の種を蒔く見事なパートだったと感じます

 

 

 

さて、体育館へと舞台を移しますがここもバチバチですねぇ

 

「月永先輩かわいい」という発言に対してバレーボールのアタックが決まるところで緊張を与えながら「求って呼んで」という少し外すことで爆発させることなく緊張を少し緩和させていますね

2話は緊張と緩和のコントラストが激しいのですが、葉月が挟まることで緊張が急激に緩和されていきます。葉月がいなかったら緊張が限界に達するかも… ここで明るさに視聴者が救われると同時に葉月の部内での立ち位置もわかる描写ですね

しかしこの後もユーフォニアムの3人娘のバチバチがスタート… ここの描写は映像を含めて何1つとして不穏な様子はないのにバチバチの関係を感じさせるのが上手いですね

 

『お客さんはその人が初心者かどうかなんて分かりません。初心者だからという甘えは捨てて下さい。出場する以上全員で北宇治らしい最高の演奏にしましょう』

 

麗奈のこの発言がこの2話のキーかな、と感じます

 

ボクの持論ですが京アニ作品からは暗にアニメ制作について語っていると感じるシーンが多いですが、この2話はここですね

麗奈の発言はお客さん(視聴者)に対して経験年数や腕は関係ない、というアニメ制作の心得みたいなことを説いているような印象すらあります

画像
 

 

 

 

 

 

ボクは原作を読んでいないのでこの先がどうなるかはわかりませんがここまでをみるに1期との対比になっていると感じました

 

その1つがすずめちゃんで、ここはおそらく吉川優子が中瀬古佳織を推した時を連想させるように作っていると感じましたが、どうでしょうか?

 

あの時は久美子は1年で3年生を困らせる立場でしたが、逆の立場になった時にどのように対応するのか、迫られていると感じます

その後の久美子ベンチのシーンは全てが圧巻ですね

 

このシーンのために2話はあったと感じさせられます ここで重要な会話はやはりここでしょう

 

『雨夜の月か。物語性が強くて表現力が求められる』 『蜻蛉奇譚は技術力が求められるし一年の詩はその両方。どちらが欠けても貧相なものになる…』

 

ここは『響け!ユーフォニアム』という作品の方向性の話にもかけてきているのかな、と感じました

そして最後のこのセリフ

 

『率直に言います。北宇治の演奏はうまい』

『だけどうまいだけでは全国金はとれません。なぜなら上を目指す学校はどこもうまいからです』

『北宇治は一番を目指しましょう!』

『今の自分で満足するんじゃなくて更に上を行く未来の自分を追いかけましょう』

『全国金とりにいきます』

ここはもう、アニが京アニというスタジオをどう認識しているのか、ということですよね

北宇治という単語を京アニと言い換えれば、そのまま意気込みとして成立すると感じます

アニメにおける全国金賞が何か、というのは色々な議論があるとあると思いますが、それを取りに行くというのは、少し前の言葉ならば覇権ということでしょうか

 

この2話の絵コンテ・演出は石原監督が自ら手掛けています

 

TVシリーズの場合、1話を監督が絵コンテ・演出を手掛けることが多いですが、ユーフォは1話が小川太一副監督、2話が石原監督が手掛けています

 

ここにどのような意味を見出すか、ということですが、ボクはこの2話を石原監督が手がけ、麗奈の発言をはじめとして色々と示唆するようなセリフが多かったことの意味を考えてしまいますね

 

そう考えると「3人で選んだ」というセリフにも、色々な意味が出てくるのではないでしょうか

 

以上で2話の感想終了です

 

 

3話感想

 

 

 

 

ユーフォ3の3話観ました
XのTLで色々な方の感想を観ていましたが、確かにこれは組織論含めて色々と語りたくなる話だ😅

 

 

とりあえず感想としては…組織論の難しさを描いています

特に久美子たちは1年生の頃から色々な先輩の関係性に関与してきたから、その分指導する立ち位置になったらお返しとばかりに問題が降りかかる立場になるという

アンサンブルコンテストの時も思いましたが、個人的には麗奈は能力を伸ばすコーチとしては優秀でも人を導く指導者としては厳しすぎるので人を選ぶだろうな、という印象なのでそのまんま何も変わらないんだって感じでした

 

ただここで麗奈の厳しさを埋めるべきなのは部長の久美子ではなくて同じ副部長の塚本だと思うんですよね
塚本、そこら辺のバランス感覚がありそうだけれどどうなんでしょうか?

あとは新入部員・未経験者の悩みに寄り添ってくれそうなのは葉月だと思うので、むしろここは久美子よりも葉月が活躍しても良かったのでは、と物語ではなく組織論として感じてしまいました
(ボクは組織論からみて葉月の存在はかなり重要だと高評価しています)

 

 

話がずれ気味ですけれど、リアルな組織の関係性を考えるくらいにリアルな作劇だったということですね

 

 

 

 

 

作画の良さに関しては言うことなし、特に冒頭の髪のかき上げる動作も含めて見惚れるほどに美しい光景でした


映像的には明度を調節した画面のメリハリがとても印象に残りましたね
画面全体を暗くすることで暗雲が漂っていることを視聴者に意識させることに成功

 

 

その後に説得をするシーンで明るさをあげて久美子の話を受けた義井沙里の視点の感情が伝わりやすくなるように夕陽が差し込むように光を調整する
ユーフォでも過去作でもみた光景ですが、非常に効果的ですね

 

 

最後に夕暮れの中で画面を落ち着かせて3話として物語を締めるというコントラストがとても美しかったです


次回はいよいよサンフェスということで、おそらく前半の山場となるでしょう
ここまで紡ぎ上げたドラマと演出がどのように描かれるのか楽しみです

 

 

 

4話感想

 

配信されたユーフォ3期の4話を観ました
いやー……TVアニメって難しいなぁって改めて感じましたね


過去のポスト及びブログを読んでいただければわかると思いますが、ボクはユーフォ3期の1話を「完璧すぎるほどに完璧」と称した結果、勝手に過大な期待を抱いていました

 

そして3話、及び4話のAパートは一般的には超クオリティなんですが、ただそれでも高まりすぎたハードルを考えると演技などの映像面があんまり面白くないなぁ…と若干首を傾げる部分もありました

 

その辺りはTVアニメという長丁場を乗り越える上で、必要な省略なので当然ですし、Bパートは特に後半がハイパーウルトラ超クオリティできたので「うわ!」となったので問題ないのですが、ただ完璧すぎる1話を作るとそこに視聴者が引っ張られるというのはあるのかなぁ

 

 

 

 

 

今回のユーフォ3期4話で構成の面白さを感じたのは「サンフェスはあくまでも通過点にすぎない」を徹底したことですよね

 

 

全話までであれだけ大きく扱いながら、立華高校を出すことでライバル登場回としながらも、演奏シーンは簡素に済ます
ここが本当に見せ場なのであれば4話Bパートのラストに持ってくると思いますが、そうはしなかったというのがミソなのでしょう

 

ボクはこの後に語ることを理由に、サンフェス描写はなくて全く問題ないと感じています

それではこの4話の本当の主題は何かといえば、当然ながら求くん関連
そしてそれはボクの解釈では『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』ということですね


愛する者を失った後に人はどのようにあるべきなのか
どのような選択をして生きていくべきなのか
心配してくれる周囲の人にどのように振る舞えばいいのか
それを問いかけるような話となっています

 

4話というのは1クール3幕構成で作った場合の山場であり、ここで1つのテーマ語りが終わるということです

そしてここでサンフェスではなく、あえてコントラバス二重奏の特殊EDで終えたというのも象徴的であり、最も作り手のメッセージ性が感じられる部分ではないでしょうか

 

 

 

 

結局のところ、ボクは京アニ作品は京アニという文脈でしか語れないです
そしておそらくですが、そう受け取られることに対して自覚的であるのでは? と感じます
そうでないと、ここまで1本筋の通った物語は作れない

ユーフォ3期はここまでをみるに、京アニの好きなところと嫌いなところが見事に混在している、まさに集大成としか言いようのない作品に仕上がっていますね

 

 

 

あとはこの4話を観ていて気になったのは、滝先生が完全にミスしているところですね
ドラマを生み出すための流れなのはわかっていますけれど、生徒の個人情報を部長とはいえ生徒に教えるのはダメでしょう


なんだか3話のことも考えると、滝先生もあんまり組織論としては機能しているように見えなくて、そのせいで久美子部長の負担がのしかかってきているように感じてしまいます…

そういうドラマなのはわかっていますけれどね💦

 

 

ユーフォ4話についていえばサンフェス関連で疑念の声が一部で出るのは当然だと思っていて、例えば「初めてあすか先輩を超えた人を見た気がした」ってセリフで説明して一瞬しか麗奈を映さないというのも、それを映像で表現できていないとボクは感じました

 

ただ4話は完全にサンフェスを通過地点とすることで詳細に描かずに、求関連を描くことを選択したと解釈しているので納得しますが、3話も含めたここまでの物語の決算としてサンフェスを期待した人が肩透かしを喰らったと感じるのは、そりゃそうだって思いますね