今回はロトスコープについて語ろう! の回です
一回、この手法についてどのように思うのか、現時点の思いを残しておこうということじゃな

カエルくん(以下カエル)
「『ひゃくえむ。』『我々は宇宙人』など、注目されるアニメーション映画を語るときに必ず必要になる部分だね」
亀爺(以下亀)
「毎回、同じ手法の話をしてもしょうがないからの」
今回、ロトスコープを語る上で想定している作品は以下の6作品です
- 『花とアリス殺人事件』
- TVアニメ版の『惡の華』
- 『音楽』
- 『化け猫あんずちゃん』
- 『ひゃくえむ。』
- 『我々は宇宙人』
ひと口にロトスコープといっても、さまざまな使い方があるので近年のアニメーション映画で用いられている使い方について、考えていくぞ
カエル「では、記事のスタートです!」
ChatGPTによるこの記事のまとめ
○ロトスコープのリアルな動きと、アニメーターが設計する「アニメとして気持ちいい動き」は、必ずしも一致しない。
○「アニメっぽい実写」と「実写っぽいアニメ」の違いから、実写とアニメーションの曖昧な境界を考える。
○手法の優劣を決めるよりも、下敷きとなる演者/モデルの動きと撮り方に注目したい。ロトスコープならではの表現を生かす鍵は、動きへのこだわりにある。
ロトスコープとは?
実写撮影の後に絵を描く、昔からある手法
まずはロトスコープってなんぞや? という話から始めていきましょうか
生まれた時間の星を見て運勢や性格などを当てる占いじゃ
カエル「……それはホロスコープ!
と冗談で言っているけれど、たまにマジで間違えるから書き手としては注意しないといけないんだよね……」
亀「まあ、一言で語るならばタイトルにある通りじゃな。
実写を参考資料として観察することと、その映像を直接下敷きにして描くことには違いがある。ロトスコープは、撮影した実写映像を下敷きにしながら、人物の動きなどを一コマずつ描いていく手法じゃな。もちろん、これも手描きアニメーションの作り方の一つじゃ」
↓参考動画は以下↓
実写撮影を一度挟む、というのが特徴なんだね
最近、日本でもアニメ映画を中心に注目されているが、実はかなり昔からある手法じゃ
カエル「それこそ参考動画にも『白雪姫』が出ているけれど、その時代から使われていたんだね」
ロトスコープのメリット・デメリット
メリット
ロトスコープのメリットはどんなところなの?
簡単にいえば「現実にいる人間や風景と同じような動きを描くことができる」ということじゃな
カエル「そりゃ、一度実写を挟んで下敷きにしているから、アニメにした時にその動きがそのまんまアニメの絵になるわけだもんね」
亀「かなり極端に言ってしまえば、今の……特に日本アニメで、実写を直接下敷きにせずに人間の動きをリアルに描くというのは難しい。
よく『アニメーターは歩く、走るが出来て一人前』という言葉があるが、むしろ派手なアクションよりも地味な日常的な動作の方が難しかったりする」
普段見慣れている動きだからこそ、わずかな違和感にも気がついてしまうんだよね
しかも、動きがゆっくりになったり日常的なために、激しく動かして誤魔化すことができないわけじゃな
カエル「それがロトスコープだったら、比較的簡単にできる、と」
亀「まあ、そんなに簡単ではないが……あくまでも実写を直接下敷きにせず、1から動きを設計するよりは、下書きがある分やりやすい、というくらいの言い方にしておくとするかの」
デメリットについて
なんだ、じゃあ全部ロトスコープにすればいいじゃん!
……それが「日本のアニメらしさ」を残すならば、そうもいかないんじゃよ
カエル「え? なんで?
だって難しいリアルな作画が、1から動きを設計する場合と比べると、まだ描きやすいんでしょ?
じゃあ、この手法をもっと使うべきじゃないの?」
亀「ここが難しいところでの。
さっき「昔からある手法」とは語ったが、しかし同時に「あらゆるアニメの動きを置き換える手法にはならなかった」わけじゃな。
その理由の一つは……ワシの考えでは、簡単にいえば「アニメっぽくない」と感じられるところにあるんじゃよ」
ロトスコープはアニメっぽくなくなる
アニメっぽくない?
邪道のように扱われたわけじゃな
カエル「えっと……それをわかりやすく解説してくれない?」
亀「アニメの動きというのは基本的に、目で観察して紙(デジタル)に写す、という手法で手掛けておる。
その際に……専門的な話になるが、日本では作画枚数を抑えるリミテッドアニメーションの表現が発展してきた。ここで、映像を1秒24コマで映すことと、1秒間に24枚の異なる絵を描くことは別じゃ。同じ絵を何コマか続けて映すこともできるんじゃな」
この辺りは難しい話なので、まずは「映すコマ数と、描く絵の枚数は違う」と覚えてください
毎コマ違う絵を描けば、その分の労力がかかる。そこで同じ絵を続けて使ったり、一部だけを動かしたりする工夫が、日本のアニメでも定着していったわけじゃな
カエル「つまり1秒間に24枚も描くのは大変だから、同じ絵を2コマずつ映せば12枚、3コマずつなら8枚で動かせる。これが2コマ打ち、3コマ打ちってことだね」
亀「その通り。ただし、実際には場面に応じて打ち方を使い分けるし、フルアニメーションも必ず毎秒24枚を描くという意味ではない。なんなら、2コマ打ち、3コマ打ちも数枚の絵を何度も使うことで歩いていたり、食べているように見せることができるわけじゃ。
それらは最初は作画枚数削減のはずじゃったが、日本で長年作られているうちに『なんか2コマ・3コマの方がカッコ良くね?』となっていくわけじゃな。
先の考え方からいけば『実写っぽいのが良い=毎コマ違う絵で滑らかに動けば良い』になるかと思いきや、そうではない。
実はうまいアニメーターが描くと3コマ打ちの方がカッコよく見えたりするわけじゃな」
つまり実写そのまま=アニメとしてカッコいい! ではないよってことなんだ
アニメを快楽性のある動きにしているのは、アニメーター一人ひとりが現実を観察して、頭の中でアニメの動きに落として、さらに手を動かして表現しているからなんじゃな
ここまでの整理
- ロトスコープは、実写映像を下敷きにして動きを描く手法。人間の細かな動きを取り込める。
- 1秒24コマの映像でも、24枚の異なる絵を描くとは限らない。2コマ打ちなら毎秒12枚、3コマ打ちなら毎秒8枚が基本となる。
- リアルさや絵の枚数だけでは、動きの魅力は決まらない。この記事で問うのは、実写の動きを再現することと、アニメとしての快感を作ることの違い。
ロトスコープはアニメか? 実写か?
実写とアニメの境界線の曖昧さ
それはさ、主がよく『ロトスコープはアニメじゃなくて、実写の手法だよ‼️』と言っていることと繋がるの?
ここがとても難しく、そしてめんどくさいところなのじゃな
カエル「でもさ、ロトスコープで作られたアニメって、一般的には『アニメ作品』として扱われているよね?
それを『実写だ!』というのは、かなり無理があると思うんだけれどなぁ……」
亀「では、以下の動画を見てほしい」
これは日本でも100億円超えの大ヒットを記録した、実写版『美女と野獣』のメイキング映像だね
さて、今作は実写とアニメ、どちらに分類される?
カエル「え?
そりゃ、実写版って触れ込みだし、実写でしょ?」
亀「なぜじゃ?
確かにエマ・ワトソンは疑いようがない実写の人物じゃが、この野獣は明らかに全身タイツを着た役者の演技を参考にしている、モーションキャプチャーじゃ。
実在の役者の演技を別の姿のキャラクターに置き換えるという点では、ロトスコープにも通じるものがある。実写映像をなぞって描くロトスコープと、動きをデータとして取り込むモーションキャプチャーでは、制作の工程は異なるがの」
さらに、同じディズニーでこの映画をご存じじゃろうか?
これは2019年の「実写版」『ライオン・キング』だね
カエル「すごくリアルな映像で、とても驚いた記憶があるよ」
亀「では、なぜこれが”実写”なのじゃ?
動物の演技をモーションキャプチャーで取り込んだわけではなく、CGアニメーションで動かしておるわけじゃな。それは実写に見えるというだけであり、手法はアニメーションなのではないか?」
う〜ん……それを言われると難しいなぁ
押井守監督の『すべての映画はアニメになる』という言葉ともつながる問題だと、ワシは理解している
亀「つまり、実写とアニメーションの境界線はさらに曖昧になる。
『アバター』のような、CGを大量に使った映画を果たして実写映画と呼べるのか? という問題はどうしても付きまとうわけじゃな。
このように、実写とアニメの境界というのは明確なようで、実は曖昧なところに来ておる」
「アニメっぽい実写」と「実写っぽいアニメ」の違い
でもさ、主なんかは『リアルな作画のアニメ』が好きだよね? それこそ京アニの『リズと青い鳥』とか、あるいは『人狼』とか
「アニメっぽい実写」と「実写っぽいアニメ」は、全く異なるということじゃな
カエル「うわ、なんか言葉遊びみたいになってきた!」
亀「ここは難しいが……京アニなどに代表される「リアルなアニメ」というのは、あくまでもアニメの快感原則に沿った作画表現を志向しているわけじゃな。
例えば『リズと青い鳥』では歩く作画から楽器の演奏シーン、髪の毛の1本に至るまで計算されておる。
この時に何を動かし、何を動かさないかを決めることがアニメーターによる演技、ということがあるの」
『現実の場所にキャラクターを存在させようという実存感』とでも言おうかの

『現実の場所にキャラクターを存在させようという実存感』の例
ロトスコープは「アニメっぽい実写」
そうなると、ロトスコープはその逆だと?
そもそもとして、作画に対する思想が異なるからの
亀「主もワシも『なぜロトスコープは邪道とされてきたのか?』を考えていたことがあったが、最初に挙げた作品群を見てなんとなくわかった。
それは”実写であって、アニメではない”の一言に尽きる、というのが主の考え方なわけじゃな。ここでいう”実写は”作品の分類というより、動きの成り立ちや快感についての話じゃ」
カエル「本来、役者であるキャラクターにどのような演技をさせるのか、というのはアニメーターの経験と観察によって培われる技術だけれど、ロトスコープはそうではない、ということなのかな?」
亀「主が引っかかっているのは、そこじゃな。ただし、ロトスコープにも動きの取捨選択や描き直しはあるため、アニメーターが演技を作らない、ということではない。
元々2コマや3コマを前提に設計した表現と、実写をトレースした表現では、そもそもの動きが異なるのは当然じゃ。
そしてその”動きの気持ち良さ”が、全く異なる。
主はアニメが好きだからこそ、実写をそのままトレースしたように見えるロトスコープが面白くないし、それを『実写だ!』といって毛嫌いしているわけじゃな」
ロトスコープの存在価値
両者は全く異なる表現手法
主の考え方はわかったけれど、亀爺はどう考えているの?
個人の好みはあれど、どちらも存在していいと思っておるぞ
カエル「あら、さすがに老成した大人の答えだね」
亀「主の言いたいこともわからんでもないがの、特に最初に提示した作品たちは……TVアニメの『惡の華』は別としても実写を主に愛する人たちにも刺さっておるように、ワシには見えるんじゃな。
つまり、それこそが”アニメっぽい実写”(ロトスコープ)と”実写っぽいアニメ”の違いであるわけじゃな。
普段はアニメを観ない人が『この動きは実写のようで素晴らしい!』と感嘆の声をあげるのはいいことじゃし、普段アニメを見る人が『この動きはアニメではない!』と非難するのもわかる。
全てのアニメがどちらかに偏るならば困るが、さまざまな作り方がある中で、今の年間1本くらいのペースならば、むしろ全編ロトスコープの映画があるのは良いことだと思うしの」
重要なのは「実写撮影時の演者/モデルと撮り方」
ただし、ロトスコープを見る時に……本来もっとも注目しなければいけないのは「実写撮影時の演者/モデル」じゃ
カエル「実写撮影時の演者/モデル?
つまり、下書きになった方の役者ってこと?」
亀「そうじゃ。
ロトスコープの表現は下敷きとなる実写映像が重要となる。ということは、アニメーターが1から動きを設計する場合と比較して、実写撮影時の演者/モデルの動きがかなり重要になってくる。
だからこそ、下書きされる側の……つまり実写撮影時の演者/モデルへの演技指導や、その身体技術・演技力が、大きな鍵を握る。
そして、ワシはまだまだこの面で甘いところがある、と睨んでおる」
少し補足が必要じゃが参考になるのが、この動画じゃな
野村萬斎が演じたことでも話題になった『シン・ゴジラ』のゴジラだね
亀「これはロトスコープそのものの例ではないが、人間の演技がキャラクターの動きの土台になるという意味で参考になる。
このゴジラの存在感は野村萬斎が重量感のある演技をして、それをゴジラに反映していることが話題となった。
つまり下地になる野村萬斎の動きが必要だったわけじゃな。
『ロトスコープは顔や体型を描き変えられるから誰でもいい』ではない。
むしろその逆で、元の顔や体型がそのまま出ない場合でも、その動きや演技が重要になる。
ワシに言わせてもらえば、もっともっと演技・映像・演出面では改善の余地があるのでは? と思う部分もあるかの」
余談…AIが作る動きとVTuberの動き
最後に余談になるけれど動きの話をしてきたので、ちょうどいいからこの話もしておこうか
『すべての映画はアニメになる』という話につながる例として、AIが作成した動画をあげよう
カエル「以下の動画は大人気の漫画『ハンターハンター』をファンがAIを用いて『実写化したらこうなるのでは?』とアップした非公式の映像です。
説明がややこしいんだけれど……『ハンターハンターが実写化したら十二支んの女性キャラクターがアイドル化して、演じるメンバーがダンス練習をしている風景のメイキング』風の動画になっています」
この動きを「気持ちいい」と思うか、「気持ち悪い」と思うかの違いじゃな
カエル「ダンスは揃っているのがカッコイイとされているけれど、ここまでくると揃いすぎていて、逆にAI感が出てくるってことだよね?」
亀「そうじゃな。
ここまでくるともはや実写とアニメの区別をつける必要があるのか? とまでなるが……それはそれとして、ここで大事なのは”動きの重要性”じゃ。少なくともワシには、この動きの揃い方がAIっぽく感じられるのじゃ。
次にVTuber側の動画を見てみよう」
結構VTuberのお約束を限界ギリギリまで攻めることで有名なあおぎり高校の動画だね
重要なのは『誰が誰を演じているか、詳しい人はすぐにわかる』ということじゃな
カエル「確かに初めて見る人は何が何だかわからないと思うけれど……でも、見慣れていると動きの癖とかが出ていてすぐにわかるもんなんだね……」
亀「むしろ身体的な特徴が同一化されている分、動きの癖がはっきりとわかるわけじゃな。
ワシがロトスコープについて語っているのも、これと同じじゃ。
有名な役者を使えとか、一流の撮影監督を用意しろというわけではない。
そうではなく、きちんと演技プランを組み、動きの1つ1つにもこだわり抜いた映像を作り、そこからロトスコープを作りなさい、ということじゃ。
その意味では……『ひゃくえむ。』の競技シーンは、実際の競技者を撮影しており、ロトスコープだからできる映像に仕上がっており素晴らしかったの」
最後に
なるほどねぇ……ロトスコープが実写かアニメか、というのは難しい問題なんだね
まあ、一部の者以外にはどうでもいい話題かもしれんがの
カエル「でもさ、さっきのAIの映像も見ると、もう実写とアニメという境界線がほとんどなくなっているよね」
亀「その意味では、『アニメと実写』をはっきりと二分することに、もはや意味がない時代に入っているとも言えるのかもしれんの。
厳密な数値ではなく感覚の話じゃが、ワシとしては『この作品はアニメが20%、実写が80%』のように、割合で考えてもいいと思っておる。もちろん、これは制作工程の比率を数えているのではなく、完成した映像からワシが受け取る感覚の比率じゃ。
ただ、今日の話で本当に大事なのは、実写かアニメかを分類することではない。ロトスコープでは、実写撮影の時点からすでにアニメーションの演出が始まっていると考えることじゃ。
誰の身体を使い、どんな演技プランを組み、どう撮り、その動きをアニメーターがどう取捨選択して絵にするのか。完成した絵だけでなく、その下にある身体・演技・カメラまで見る。そこまで含めて考えることで、ロトスコープならではの表現が見えてくるんじゃないかの」
以上、ロトスコープについて考えようの記事でした!
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