カエルくん(以下カエル)
「毎年恒例のお正月アニメ映画、妖怪ウォッチについて語っていきます!
ちなみに2017年の新作アニメ映画としては、この作品が最後になるようです」
亀爺(以下亀)
「あと残っておるのは特別上映の『龍の歯医者』とリバイバル上映の『カードキャプターさくら』ぐらいじゃの。
いやいや、ここ最近にわかにさくらが盛り上がってきておるが、このブームはなんじゃろうな? 本当に今は2017年なのか疑いたくなるの」
カエル「それこそ封神演義の再アニメ化や、コードギアス、エウレカセブンの映画などのちょっと懐かしい作品が目白押しだからねぇ。
ちなみに2017年最初のアニメ映画は『中二病でも恋がしたい』になっており、当然観に行きますので、感想を書きます。あ、あと来年以降もこのブログは運営しますよ。一応、念のためね」
亀「しかし、今年はこれ以外にファミリー向けというか、子供も楽しめるアニメ映画がないのは気になるところじゃな。
昨年は『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』であったり、作品自体は残念なことになってしまったが『ポッピンQ』もあったんじゃがな」
カエル「意外と穴場かもしれないし、来年以降アニメ映画が入り込む余地もあると思うので、ぜひ多くの映画関係者さんは注目してみてください。
というか、来年って確かスターウォーズが6月でしょう? それこそお正月映画ががら空きになるのかなぁ?」
亀「さて、来年の公開スケジュールはまだわからんからの。
では、感想記事を始めるとするかの」
作品紹介・あらすじ
レベルファイブの手掛ける子供に人気のタイトルである『妖怪ウォッチ』シリーズの劇場版第4弾作品。
ゲームクリエイターであり『イナズマイレブン』のゲーム、テレビアニメも手掛ける日野晃博が 製作総指揮、脚本を担当する。監督は過去3作も担当したウシロシンジがそのまま起用されている。なお、脚本の日野、監督のウシロともに単独で担当するのはシリーズ初となる。
またおなじみのキャストも今回は一新し、主役の天野ナツメには女優、歌手と幅広く活躍する上白石萌音、その相手役には千葉雄大が起用されている。
おなじみのキャラクター、ジバニャンも小桜エツコから黒田崇矢に変更するなど、挑戦する姿勢がうかがえる1作となっている。
かつて、妖怪ウォッチという腕輪を持つ少年が存在したが、少年は大人に成長し、妖怪ウォッチの存在は忘れ去られてしまい、この世から姿を消した。ケータの時代から30年後、彗星が迫り来るというニュースが飛び込んできて、街の人々が怪物に変化してしまう事態が発生してする。
原因は妖怪ウイルス『鬼まろ』が人の悪意に感染して、暴走状態を引き起こしているようだった。
この事態に巻き込まれた天野ナツメは妖怪ウォッチを手に、立ち向かうことを決意する……
「映画 妖怪ウォッチ シャドウサイド 鬼王の復活」シャドウサイド予告
1 感想
カエル「では、ここでTwitterの感想からスタートです」
妖怪ウォッチ鑑賞
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2017年12月16日
うーむ……惜しいなぁ
妖怪ウォッチよりも昨年のモンストに近いかなぁ
どちらもレベル5だから当然か?
すっごくいい題材を活かしきれず、最後はいい子ちゃんに終わった印象
あと全体的に早すぎる
あの鬼太郎パートは後から決まったんだろうなぁ
※モンストとレベル5は関係ありませんでした。訂正します。
亀「まあ……やりすぎたの」
カエル「いい題材ではあったし、挑戦は色々出来たのに、色々と大人の事情が伺えるような作品になっちゃったのがなぁ。
全体的に展開が早すぎたよねぇ」
亀「今作で宣伝にも多く使われておる『鬼太郎パート』であるが、そこだけ明らかに話から浮いておる。そしてそれまで全体的にかなり駆け足で、起承転結で語れば承のパートが圧倒的に薄いと言わざるをえない。
これはおそらく、全体の構成を後からいじったからであろうな」
カエル「まあ、ぶっちゃけさ。妖怪ウォッチ自体の人気もちょっと陰りが見えてきたようにも思うんだよね……一時期は第二のポケモンになるかもしれないくらいの勢いだったけれど……
もちろん、ゲームやおもちゃが主体のアニメの中では大成功の部類だし、たまごっち、デジモンだってポケモンに負けないくらいの勢いがあったのに、それも無くなってしまって……でもそれはおもちゃの宿命というか、ポケモンがすごいってだけで、ただの盛者必衰であるということだけだと思うけれど……」
亀「その中で大革命をしようとしたようにも見えるし、そのためにケータを排して新キャラに女の子を持ってきたのもわかる。
しかし……残念ながら、その出来自体はケチをつけざるを得ないものじゃな」
新規一転した面々だが……ちょっと失敗?
あの作品の二の舞に?
カエル「最初に名前を挙げたけれど、この作品って昨年でいうと妖怪ウォッチよりもモンストとか、ポッピンQの要素が強い印象もあるかなぁ」
映画『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ(モンスト)』感想
亀「モンストとは同じおもちゃやゲームをモチーフにした作品ということで似てしまうこともあるじゃろうがの」
カエル「なんていうか……モンストの設定に妖怪ウォッチのキャラクターを足して、そしてポッピンQのある要素を少し足しました……という2016年の12月のアニメ映画の総決算らしい作品になっていて」
亀「ふむ……まあ、あまりネタバレはしないが、ポッピン Qという作品は残念ながら一般評価も低く、興行もあまり優れないところがあった。今ではネタのように扱われているところもあるが……まあ、愛すべきダメ映画じゃったな。
そして今作もその要素があって……つまり、あのラストじゃの。
今作はエンドロール後も決して立ち上がってはいけないタイプの作品じゃが、わしはかなり目を丸くしてしまった」
カエル「あれってどういうことなんだろうね?
かなり挑戦してきたのはわかるんだけれど……」
亀「まあ、暴走じゃな。
今作は多くの面で挑戦的であったり、あるいは意義を感じることが多い。例えば『妖怪ウォッチがない世界』というのは、この手の玩具では必ず起こるであろうおもちゃからの卒業とその子供へと受け継がれている遊び方、という要素を受け取ることもできる。
また鬼によって大人が暴走するのはシャドウサイド……つまり人間の2面性を描いているとも言える。
ある種のスターウォーズじゃな。
しかし、全体的にごちゃごちゃしてしまっているのと、走りがちな物語のせいでうまい物語の帰結が一切見られなかったの」
本作でも話題になった鬼太郎たちだが……これ、後から決まったんだろうなぁ
(C)LEVEL-5/映画「妖怪ウォッチ」プロジェクト 2017
(C)水木プロ・東映アニメーション
登場人物の変更によって……
カエル「今作はおなじみのキャラクターの多くがいなくなって、登場人物が変更になっているんだよね。これってかなりの大博打だけれど……」
亀「まず、今回声優を務めた上白石萌音と千葉雄大の演技云々以前の問題で、妖怪ウォッチなのにジバニャンもケータもいないというのは、かなり評価が難しくなる。
例えばポケモンでサトシとピカチュウがいない、ということは考えられないじゃろう。いつかは主人公やパートナー交代もあるかもしれんがの」
カエル「今回はそれがスベった印象もあるかなぁ……」
亀「特にシリーズ物のアニメ作品の場合、声優陣の変更だけで一大ニュースになる。ドラえもん、ルパン三世はキャラクターを変えずに声優だけ変更したが、それが賛否を巻き起こしたことも記憶に新しい。
これがプリキュアのようにうまくいって、毎年キャラクターを変更するというパターンもあるが……わしが思うに、子供向けおもちゃアニメのほとんどがキャラクターを変更して数年後には終了しているのではないかの?」
カエル「遊戯王とかの成功例はあるけれど、多分少数派なのかなぁ。その路線でいきたいのもわかるけれど、でもケータ役の戸松遙をはじめとしてキャストも全然若いし……というか20代でむしろこれからだし、ここまでのテコ入れが必要だったのか? という気分も……」
亀「子供たちがどう判断するかということもあるが、今のところレビュー評価などを見る限りでは、そこまで成功したとは思えないの。
この先どのようにするのか……これは難題が生まれてしまったと言わざるをえないの」
以下ネタバレあり
2 脚本の粗
カエル「では、ここからはネタバレありで語りますが……
まず、スタートからして明らかに『君の名は。』を相当意識していたよね」
亀「というよりも新海誠じゃの。
本作のスタートのトウマの様子などは明らかに『秒速5センチメートル』のようであった。そして彗星が落ちてきておるし、神白石萌音を起用していたりと、明らかに意識しているのは間違いない」
カエル「そう考えるとテレビ版の妖怪ウォッチで君の名は。のパロディを最近やったことが話題になっていたけれど、この映画版と合わせたんだろうね。あそこまであからさまではなかったけれど……」
亀「しかし、スタートからアニメとはいえ若干突っ込みたいところは多かったがの。
例えば新キャラクターであるナツメの説明のために子供を助けに行くのはいいが、川に飛び込む時に制服のまま飛び込むじゃろう? それはさすがにいかがなものか……重すぎて、逆に溺れるだけじゃろう」
カエル「ま、まあ、そこで全部脱ぐっていうのもね?
そのあとの子猫を助けたりとか、彼女の誰かを助けたいという思いが伝わってくるから、そこはそれでよかったんじゃない?」
亀「そこからトウマが闇堕ちしていくのは別にいいんじゃが、アキノリとおばばの存在が若干邪魔に思ってしまった部分もある。
いや、必要なんじゃよ。
この物語で失われた妖怪ウォッチということを考えると、確かに重要なんじゃがな……
結局賑やかしになってしまった。そして1番重要なのが、キャラクターの動かし方が下手くそなところじゃな」
エンマも登場するが……やはりごちゃごちゃしただけのようにも思う
(C)LEVEL-5/映画「妖怪ウォッチ」プロジェクト 2017
キャラクターの動かし方に難あり
カエル「キャラクターの動かし方?」
亀「本作では4つの物語からスタートする。
これはもちろん天野ナツメの物語、アキノリとおばばの物語、そしてトウマの物語、エンマたちの物語の4つである。
この動かし方がもっとスッキリすれば、かなり見やすくなったのに、結局序盤から主人公であるはずのナツメがあまり活躍せず、出番も少ない。
もちろん、最初に出てくるのはトウマとナツメじゃから、この2人が非常に重要であることは明白なのじゃが、そこにアキノリやエンマたちの物語を挿入するせいで、重要な主役である2人の影が薄くなってしまう」
カエル「でもさ、確かにこの4つの物語って全部必要なんだよねぇ。
主人公であるナツメは当然として、説明役のアキノリ、シャドウサイドのトウマ、そして妖怪側としてのエンマ……」
亀「もしかしたら、1番いらなかったのがナツメかもしれんの。
今作は約90分、EDを除けば1時間半を切るじゃろう。その限られた時間の中で4つの物語はさすがに多いし、しかもどれもぼやけてしまっておる。
はっきり言おう。根本的にこの作品は失敗しておる」
カエル「う〜ん……どうしようもない悪い映画ではないけれど……」
玩具の販促もあるから大変だよねぇ
冷静に考えると……
カエル「で、冷静になって考えてみると……ナツメって必要だったのかな?」
亀「う〜む……結局活躍したのはトウマばかりで、ナツメは単なるトウマに対するヒロインのポジションにいただけじゃからの。それからエンマたちも戦ってくれはするけれど、あの剣を持ってきた段階で作中での役目は終えておる。
政権交代のゴタゴタ劇も必要だったのかどうか……」
カエル「そして鬼太郎パートの必要のなさだよねぇ。
確かに役にはたったけれど、でもそれって鬼太郎である必要性はないし……」
亀「強いて言うならば『妖怪界の世代交代』を印象つけたかったということかもしれんの。
近年の鬼太郎の声というと、やはり高山みなみが担当しておった。しかし、今回はわざわざ初代の野沢雅子を起用しておる。
そして特徴的なのがねずみ男のキャスティングで、初代が亡くなられた大塚周夫だったが、今作では息子の大塚明夫が担当している。
つまり、この細かいキャスティングにおいても『世代交代』であったり、初代を意識しているということは明白じゃな。ケータとの交代も含めて、世代交代をテーマにしておるのじゃろうが……」
カエル「わざわざ声優陣を変える必要はないもんね……」
亀「もちろん、親世代へのアピールや宣伝のためということもあるかもしれんが、それにしても初代は古すぎる。もしかしたら、もっと古く祖父母世代へのアピールなのかもしれんが……まあ『大人の事情』の1つじゃろうな。
そう考えると本作は多くの大人の事情が伺える。
わしはそこまで詳しくないが、次のゲームなり、作品はこのシャドウサイドが主体になっているのではないか?」
カエル「どちらにしろ、そのおもちゃ会社(ゲームメーカー)の販促の都合などもあって、このような形になっているってことだね」
亀「それが作品自体に悪影響を及ぼしているように見えるがの。
まあ、つまらん作品ではないが……かなりボロボロな作品とも言える」
最後に
カエル「日野晃博って別に脚本は素人ってわけではないんだけれどね。
レベルファイブのゲームで、日野さんが深く関わった『ダーククロニクル』というゲームがあるけれど、この作品にハマって長いことプレイしていたこともあるだけに、今の状況にちょっと驚きがあるというか……」
亀「いつの間にかアニメも制作しておったからの。イナズマイレブンといい、このドル箱コンテンツを生み出したのは凄いことじゃが……あの当時はこうなるとは夢にも思わなかったわい」
カエル「子供向け玩具販促アニメ映画の難しさを思い知ったかな。やりたいことがやりたいようにできるって、中々ありえないもんね」
亀「メーカーやスポンサーの事情も考慮しないといけないからの。
その中でどのような結果を残すのか? というのが試されるが……色々とはちゃめちゃなことをやってきた妖怪ウォッチだけに、もっと期待してはいたんじゃがな」
カエル「来年、あればいいけれど……どうなるんだろうね」
亀「あのラストをしてしまったからの……
本当にポッピンQの二の舞にしかならんし、あれをやってしまうとここまでの物語がなんだったんだ? ということになりかねんから、悪手じゃと思うんじゃがな。何か意図があるのかもしれんが……」