物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『二ノ国』ネタバレ感想&評価 これだけの大作なのにスタッフ不足だったんだろうなぁ…と大人の事情が伺えてしまう

 

今回は夏の新作アニメ映画の中でも、大作としてはラストを飾る『ニノ国』の感想です!

 

 

 

 

これもかなりドキドキな作品じゃな

 

 

カエルくん(以下カエル)

「ちなみに……ぶっちゃけた話をしてしまうと、見る前から不安要素はたっぷりな作品でもあります」

 

亀爺(以下亀)

「予告編から不安になってしまったからの。観ないぶんには具体的には言えんが……なんというか『ゲド戦記』などのジブリ作品の中でも低評価の作品のような予感がした」

 

 

カエル「この辺りも記事で詳しく語るけれど、ジブリを意識しているのは間違いないもんね。 

 でもあれが可能だったのは固定給で正社員対応でスタッフを雇用できていたからであって、形だけ真似ようとしても、かなり難しい部分があるような……」

亀「観てからでないとなんとも言えんがの。

 ちなみに、今回も原作ゲームは何も知らん、ただのアニメ映画好きとしての感想記事になるので、悪しからず。

 というわけで……記事のスタートと行くかの」

 

 

 

 

映画「二ノ国」 公式アートブック

 

作品紹介・あらすじ

 

 『妖怪ウォッチ』などを生み出してきたレベルファイブのRPGである『二ノ国』を原案として映画化した作品。今作はゲームで描かれた世界の数百年後をイメージしており、完全オリジナルストーリーとなっている。

 レベルファイブの日野晃博が製作総指揮・原案・脚本を務める他、スタジオジブリで活躍し『ちいさな英雄ーカニとタマゴと透明人間ー』の中の短編『サムライエッグ』の監督も務めた百瀬義行が監督を務めるなど、ゲーム版と同じ布陣に。

 声を当てるのは山崎賢人、新田真剣佑、永野芽郁の人気若手俳優の他、伊武雅人、ムロツヨシなどの俳優陣、宮野真守、坂本真綾、梶裕貴、津田健次郎、山寺宏一などの実力派声優が脇を固める。

 

 

 足に障害をもつ車椅子の少年のユウと親友のハル、幼馴染の少女のコトナはいつも通り仲良く過ごしていた。しかしそんなある日、コトナは謎の存在に命を狙われてしまい、ユウが助けに向かうものの何もできずにいた。ハルを抱きかかえるコトナを見て勘違いをしてしまったハルはコトナを抱えて助けを呼ぼうと道路に飛び出してしまう。それを助けようとしたハルであったが、2人に命の危機が訪れたその時、不思議な世界への扉が開く……

 


映画『二ノ国』本予告【HD】2019年8月23日(金)公開

 

 

 

 

 

感想

 

では、Twitterの短評からスタートです!

 

 

予想よりは良かったかの

 

カエル「実は公開前の段階から不穏な噂は流れていて……試写会では酷評の嵐、さらに作画スタッフが全く足りてなくて手が足りてないとか、そういう危機的な状況にあるとは言われていました。

 まあ『天気の子』もその噂が流れていたけれど、公開されてみたら中々の出来だったし、うちでは今でも大絶賛している『打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか』も試写会では大酷評だったので、観ないと何とも言えないとは思っていたけれど……その覚悟の上で鑑賞した、というのも大きいのかもね」

亀「今、ネット上では”叩いても作品リスト”の中に入っており罵詈雑言が飛び交っておるが、わしはそこまでは思わなかったの」

 

カエル「あれ、でも短評では割と酷評気味のような……」

亀「酷評は酷評じゃが”普通の駄作”のレベルを超えるものではないと思う。もっと悪い、唖然とする作品はいくらでもあるし……それこそこのブログで書いた記事の中には、もっと辛辣なものもあるじゃろう。

 色々と問題も多いし、全てにおいて点数が低く、作画、演出、音楽、演技、その他が大体40点ばかりで、トータルでは40点の完成度ではあるかもしれん。でもそれはあくまでも40点という点数なので……まるで0点、それ以下のように語ることは、わしはしないかの

 

カエル「ちなみに短評でも語っている脚本の粗については……」

亀「脚本だけは0点に近いの!

 完成させたから10点くらいはオマケであげるか、というレベルかの」

カエル「……うん、やっぱり酷評なんだね」

 

二ノ国 白き聖灰の女王 REMASTERED - PS4

 

本作の大きな問題たち

 

そもそもの問題として

 

今作の大きな問題点ってどこにあると思う?

 

やはり……日野晃博に全責任があると言えるじゃろうな

 

カエル「レベルファイブの社長でもある日野晃博が今回、製作総指揮、原案、脚本を担当しており、今作にの中心的な役割を発揮しています。

 ちなみに……毀誉褒貶の多い人でもありますが、ゲームクリエイターとしては名作や話題作を多く発売しており、また個人的にも『ダーククロニクル』にどハマりした関係上、悪い印象は少ない方でもあります」

 

ダーククロニクル

 

亀「わしも何度も語っておるが、日野晃博が脚本を務めた『劇場版妖怪ウォッチシリーズ』には、初期こそ面白い試みがあったものの、近年は迷走が目立ち苦言が多くなっておる。まあ、ゲームやアニメを全く触れていない者が観に行くのがおかしいのかもしれんし、その批判は甘んじて受け入れるが……やはりシナリオに問題がある、という意見はは多く散見されるの

 

カエル「というか……良い悪い以前に、全く理解できなかったんだよねぇ。

 中学生とかで作った小説の設定を聞かされているような気分で、どんな展開になろうが全く興味もなく『あぁ、そうなるんだぁ……』としか思わなかったというか」

亀「これは『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』でも語ったが、ゲーム原作の難しさが出てしまった形かもしれん。様々な設定を盛り込みつつ、ゲームユーザーに届きやすいように力を入れておったが……それが空回ってしまった印象じゃの。

 

 

ドラゴンクエスト ユア・ストーリー 映画ノベライズ (ダッシュエックス文庫)

blog.monogatarukame.net

  

 ゲーム原作の成功例としては『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』などもあるにはあるが、こちらもyoutubeで配信されたアニメのエピソード0じゃから、他とはちょっと違うかもしれん。それだけゲーム原作をアニメ映画で成功させようとなると、下準備などが必要となるわけじゃろうな」

 

モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ

 

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全体の構成からしてミスをした?

 

今作がここまで悪くなってしまった原因ってどこにあると思う?

 

そもそも、全体の構成からして大きなミスをしているんじゃないかの

 

カエル「全体の構成ってことは、製作総指揮や脚本の問題ってこと?

亀「もちろん百瀬監督に全くの非がないとは言わんよ。しかし、そのもっと前提の部分からして今作は難易度が高くなっている印象を抱いた。

 というのは……今作はかなり作画カロリーの高いシーンが多い。戦闘も多人数対多人数もあり、ダンスのシーンなども入っておる。

 これを作るには多くの時間と予算、何よりもスタッフを大量にかき集めなければいけない。

 しかし、それができなかった……これが最大の失敗じゃろうな

 

カエル「今作では作画監督が総作画監督などを含めて20人以上ということだけれど、明らかに多すぎるよね……でもこれだけ揃えないとできない作品でもあったということも言えるわけで……」

亀「さらに絵コンテも10人くらいと分業制とはいえ、流石に多すぎる。アニメの元となる設計図の絵コンテが10人ともなると、相当緻密な練り合わせをしなければ物語自体が破滅してしまうじゃろう。

 おそらく……これはあくまでも想像じゃが、それぞれの絵コンテを担当した人も全体の大まかなシナリオはあるものの、どのような作品になるか細かい部分は見えてなかったのではないじゃろうか?

 だからシーンごとに応じてバラバラで全く繋がりがないように感じられてしまっておる」

 

カエル「まとめるとこういうことだね」

 

 

  • 作画関係の番頭である作画監督が多すぎて統制が取れない
  • 絵コンテ人数も多すぎて統一感がなくなってしまう
  • そもそも大元の物語が人手や予算などを必要とするのにがスタッフを確保できていない

    ↓

 結果的に修正も困難なほど時間・スタッフが足らず、追い詰める結果に

 

亀「あくまでもわしの憶測ではあるが……近年レベルの高いアニメ作品が多くあるが、それは京アニやユーフォーテーブルのように自社で社員を雇用し念密な打ち合わせをしておるか、あるいはスタッフをかき集められているからにすぎない。

 今作のような場合、それを期待するのは難しかったのかもしれん。

 そこも含めて脚本家は計算したり、あるいは監督やプロデューサーと打ち合わせの上で修正するものだと思うが……製作総指揮兼脚本家では、誰も文句を言えなかったのかもしれんな」

 

 

 

 

 

”スタジオジブリ”という呪いに翻弄され続ける人々

 

うちでは”ジブリという呪い”と称して、ジブリを過大に持ち上げようとする風潮に対して苦言を呈しています

 

もう、ジブリを追いかけるのはやめたほうがいいと思うときは多いの

 

カエル「もちろん日本、さらに世界に与えた影響も含めて宮崎駿、高畑勲、その他スタッフやキャストの功績は甚大なものがあるとわかっています。

 だけれど、それはもう時代が違う話で……トキワ荘や手塚治虫がいかに偉大であろうとも、今でもそれをそのままコピーするかのように追いかけようというのは違うんじゃないの? というような意味合いだと思ってください」

 

亀「スタジオポノックのような『なつぞら』で描かれている東映動画の流れを組む、ジブリ的なスタンスを模索することを否定はしない。むしろわしはポノックに関しては『メアリと魔女の花』以降では正しくジブリの影響を受けつつも、自分たちの道を模索する作品に見えて応援したいくらいでもある。

 しかし……最近では下火になったものの周囲の『ポスト宮崎駿論争』然り、その幻影を追い求めるのはやめたほうがいい

 

カエル「一応、ジブリの影響が強い中でも『若おかみは小学生』なども生まれているけれどね。それに二ノ国のゲーム自体、スタジオジブリや百瀬監督が深く関わっているから、むしろここを変えたら非難殺到するぐらいだけれど……」

亀「しかし、その”ジブリらしさ”を追い求めすぎた感もある。

 先にも語ったようにジブリは宮崎駿の圧倒的な興行収入によって成立する、特殊な正社員雇用のアニメ会社であった。あのクオリティに匹敵するのは容易なことではない。

 今作は日常的な芝居にまで全力を注ごうとしたようにも見受けられてしまい、その結果さらに圧迫したように思える。

『かぐや姫の物語』などは作品は素晴らしいが、映画興行としてはなかなか問題が多く……それだけ長期間優秀なスタッフを拘束できなければできない作品であった。

 今作もそれだけ時間も予算もスタッフも気にせずに作ることができたら話は変わったじゃろうが、それができなければ妥協をしなければならず、そして妥協ができなかった結果がこの作品ではないかの」

 

 

二ノ国II レヴァナントキングダム - PS4

 

キャストについて

 

今作の声のキャストについてはどうだったの?

 

全員ダメと言いたくなるの

 

カエル「え? 芸能人声優だけではなくて、本職声優さんも?」

亀「おそらく別撮りだと思うが、ダメなアニメ映画に共通することではあるが相変わらずバランスが取れてないんじゃな。

 しかも上記のような事情だとすると……それは他の作品でも言えることではあるが、キャラクターがどういう人物なのかつかむこともできなかったんじゃないかの?

 ベテラン声優の演技もわしは不満があった。というのは……なんというかの、いつものお約束の型をそのまま披露しているだけのように見えたから、かもしれん

 

カエル「これだけの豪華声優陣でもダメなんて……」

亀「うちは毎年アニメ映画も含めた主演/助演賞を発表しておるが、そこに入るような演技はキャラクターをしっかりと掴んだ上で、さらに魅力的なものが多い。それいうと本作は誰一人として印象に残らなかった、というのが本音かの」

 

 

 

 

それでも本作が嫌いになれない理由

 

でもさ、それだけ全体を通してボロボロ、と言いながらも嫌いとかまでは行かない理由ってなんなの?

 

志の高さと一部シーンが気に入ったからかもしれん

 

カエル「確かに全体としてはボロボロで、作画、音楽、声優の演技もビックネームのわりには違和感が大きかったということもあるけれど、それでも好きなシーンはあったんだ」

亀「これはどれほどゲームの設定を踏襲しておるのかわからないが、獣人のキャラクターデザインは良かったの。

 むしろ、本作の主要キャラクターにもっと獣人を増やして、主人公、ライバル、ヒロインの誰か1人を獣人としても良かったのではないか? と思うほどじゃ。

 特に酒場のシーンが良かった

 

カエル「酒場のシーンではケモナー大歓喜のセクシーなダンスシーンもあったね」

亀「全体を通して文句を言いたくなる気持ちもよくわかるが、全てが全てダメだった訳ではない。

 また、これだけボロボロではありながらも志は高いシーンもあり、海辺でのダンスシーンなどはうまく行けばとても美しい印象に残るシーンになったじゃろう。

 多くの点で配慮などが欠けていると言われておるが……惜しい作品だとは思うの」

 

 

 

 

まとめ

 

では、この記事のまとめです

 

  • 多くの点で問題が残る作品になってしまった感も……
  • スタッフの確保などが難しかったんだろうな、と思わせる作品に
  • ジブリの面影を追いすぎている?
  • ただし全てに追いて悪い訳ではない!

 

まあ、この次がどうなるか期待したいところではあるかの

 

 

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