今回はテレビアニメ『ホリミヤ』の感想記事になります!
最終話まで見た、完走した感想記事、ということじゃな
カエルくん(以下カエル)
「……うわ、なんか寒い親父ギャグがきた」
亀爺(以下亀)
「昔はわしも堀京介のような大人であったのだが、懐かしいの。まるでモテモテ時代を見ておるようじゃった」
カエル「はい、馬鹿話を膨らませないで、さっさと感想記事をスタートさせます!」
感想
それでは、Twitterでの感想からスタートです!
#ホリミヤ
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2021年4月3日
びっくりするくらい良かったなぁ…作画ばかりが注目されがちだけれど、演出と音楽の工夫によって青春群像劇感がさらに増しており好きなタイプの作品に
最終話の全員の卒業に対する心情を描きながらも、宮村の過去にきちんとケリをつけたのもの高評価
今期ではTOP3に入るくらい楽しみました pic.twitter.com/qkJtfDuASq
演出アニメとして、なかなか見どころが多かったのではないかの
カエル「今作は監督が石浜真史ということで鑑賞していましたが……石浜はOPやEDでは特に職人芸が光る作品を多く発表しています。
例えば『BLEACH』ではシドの乱舞のメロディに載せた、キャラクターが見えない一般人視点のバトル描写をオシャレに描いたり、あるいは監督も務めた『新世界より』の第1エンディングなどは、特に優れた作品となっていました」
亀「今作もその傾向はとても感じたの。
制作会社はCloverWorksじゃが、2021年冬期では『ワンダーエッグ・プライオリティ』の方が作画そのものには、力が入っているように感じられた。
アニメの映像レベルだけで言えば、確かに止め絵や省略なども多いという指摘もあるじゃろう。
しかし……演出そのものがとてもしっかりしておる。
その結果、物語をとても面白く観ることができたの」
原作も少し読んでみたけれど、結構大胆にアレンジしているよね
この作品のアニメ化は少し難しい部分もあるからの
カエル「原作はWEBコミックということもあって、お話そのものにまとまりがあんまりないんだよね。確かに宮村と堀の恋愛関係がメインといえばそうなんだけれど……結構話がとっ散らかっている印象もあって。
全体を見て制作するタイプではなく、WEBで1話ごと特徴的な話を重ねていった結果だと思うけれど。
だけれど、このテレビアニメ版は青春群像劇としてまとめられていて、その再編集もものすごく上手く感じたんだよねぇ」
亀「比較的早くの段階で宮村と堀がくっついたが、その後は石川、吉川、仙石、綾咲などのサブキャラクターの恋愛劇を描くことで、物語を作り上げておる。
そして最終回では卒業を描くことで、その全ての物語に一定のケリをつけた。
石浜作品らしいキラキラとした映像演出がより青春感を増しており、同時に宮村の過去との決別というテーマをきっちりと描き切ることに成功した。
それこそ、石浜が絵コンテ、演出を担当した1話と13話を見れば、この作品をなぜそこまで絶賛するのか、わかっていただけると思うがの」
石浜演出の魅力について
それでは、石浜演出の魅力について素人解説を行っていきましょう
なんといってもセンスの良さが光るの
カエル「うちはアニメのOP、EDは一種の短編アニメとして楽しんでいて、そういった記事もリアルサウンドの方で書いています」
今回取り上げたいのは『べるぜバブ』のED3じゃな。当時はこのEDを見るために朝7時から始まるアニメを眠い目を擦りながら見ていたものじゃ
カエル「懐かしいねぇ。キャラクターデザインも大きく崩しているんだよね。
動画枚数そのものはそんなに多くなくて、作画で動かすのではなくて演出で魅せる、止めていても見入ってしまう映像を作り出したEDだよね」
今作でも、その要素はてんこ盛りなわけじゃな
亀「例えばわかりやすいように石浜監督が絵コンテ・演出を務めた最終13話を見てみよう」
あー、確かになんか似ている気がする
亀「近年、実写の青春映画でも過剰なまでに光が取り入れられた作品が多くなっておるが、それの是非はともかくとして、作品としてはより青春のキラキラした感覚が得られやすくなっておる。
その光を上手く使ったのが、石浜演出じゃな。
例えば1話においても2人が窓際で話すシーンでも似たような演出がされており、印象に残っておる。また石川に堀が告白されるシーンでは、カメラのピントをずらす、カメラを動かすことによって堀の動揺を表現している。
これらは作画というよりも、演出力の成せる技だとわしは考えるかの」
それから、その色使いなどが特徴的でしたね
この辺りは漫画・アニメ作品ならではの良さがあるの
亀「この作品は2007年くらいに連載が開始されているので、その時代の学生像が導入されておる。今となっては少し古臭いような感じもあるものの、かえってそれを演出に組み込んできておる。
全員が色とりどりのカーディガンなどを着込み、そして髪色も多種多様。このカラフルな感じが、学生時代を明るく染め直してくれているわけじゃな」
カエル「宮村も最初は黒一辺倒で重い印象だったけれど、髪を切って”黒”というカラフルの中の色になった印象だね。
PVやメインビジュアルもそうだけれど、カラフルであるということは、」
亀「こういった色彩表現などが今作の特徴と言えるかの。
漫画・アニメ的表現でありながらも、そのキラキラとした感覚を追求した。特にこの13話は石浜演出が特に際立った回として、強く印象に残る回になっておるな」
印象に残った話数
それ以外の話だと、どこが印象に残ったの?
個人的には7話、10話などが見ていてハッとするような表現が多かったかの
カエル「まず、7話はなんといっても物議を醸し出したこのシーンだね」
ここはハッとするほど美しかった
カエル「夕方の闇を紫というか、ピンクというか、そんな感じの色に近づけていくことで2人がくっつくというのが、 ハッとするほど美しかったね。
この2人がどこまでいったのか? というのが軽く話題になっていたけれど、そんなことはどうでもいいと思うくらい、息を呑んだかなぁ」
亀「宮村にとっての堀が、はたまたその逆がどれほどまでに近しい存在だったのか。
そして救いになっていたのかが、はっきりとわかった。
この手の青春恋愛作品で”美しい”とか、あるいは”ハッとする”というのは、とても大事な表現じゃ。子供じゃない、だけれど大人でもない……その境目をこのような形で曖昧に表現しながらも、細かな機微を伝える……それがとても良かったの」
もう1つが10話ですが、特にこのシーンをあげましょう
それぞれの恋愛を、淡く表現しておるの
カエル「これってホリミヤの特徴でもあると思うんだけれど、くっつく恋愛も、くっつくない恋愛も、それぞれに寄り添っているんだよね。
群像劇だからこそというか……宮村を中心とした人間関係の変化だけでなく、それぞれのキャラクターの変化にしっかりと向き合っているというか」
亀「このシーンでいえば、少し水彩画のような印象も受ける。例えば上のシーンでは手前にいる吉川の塗りをしっかりとすることで、それ以外の世界が少し淡い、別世界のように感じさせているわけじゃな。
下のシーンでは白の背景がしっかりと効いておる。2人だけの世界……という言い方は少し違うかもしれんが、桜の辛い心情を表現しておる。
そして吉川、桜、石川の微妙な三角関係も、それぞれの思いに向き合いながらもしっかりと描き抜いた、名回というにふさわしい作品じゃろう」
ホリミヤが描いた日常的表現
ホリミヤってさ、学校行事がほとんど描かれなかったアニメでもあるんだよねぇ
原作でも扱っておるが、そこを省くことで見えてくるものもあるのかもしれん
カエル「これって最近指摘されてそうだよなぁって思うんだけれど、制作会社のCloverWorksって、もしかしたら今最も京都アニメーションのフォロワーとして、その表現を模倣しようとしている会社だとも思うんだよね。
例えばうちでも大絶賛した『冴えない彼女の育てかた fine』とかは、日常表現や動作、演出を盛り上げることで、恋愛を表現した作品だったじゃない?」
カエル「それから、オリジナル作品である『ワンダーエッグ プライオリティ』なんかは、コアアニメーターの小林恵祐らしい、女の子の動作やエロティシズムを感じさせる日常表現が多く見受けられたよね」
亀「この辺りは難しい部分になるが、一言に”リアリティ”といっても、色々なリアルの形があると思う。
例えば……高畑勲が目指したリアルと、あるいは『人狼』などが成し遂げたリアル、さらには今敏が目指したリアルというのもある。それらは、細かく見れば味わいが違うものだとわしは考えておる。
一方では京アニが成し遂げたのは……そうじゃな、アニメ的なリアル、というと言葉が乱暴じゃが……”萌えアニメ的なリアル”とでも名付けようかの」
萌えアニメ的なリアル?
萌え系ヒロインの魅力を内包したアニメ的快楽があるリアル、のことじゃな
亀「山田尚子作品が顕著であるが、『リズと青い鳥』などがその極北になるのかもしれん。
作画面では『ワンダーエッグ プライオリティ』はそこを目指しており、そこから先のリアルを模索するために実写の脚本家である野島伸司を呼んだのだと思っておる。
では、ホリミヤに話を戻すと、それを作画的に表現するのではなく、演出的に目指したというのが、わしの感想かの」
カエル「萌えアニメ的なリアルを演出的に目指した……?」
亀「先ほどから語るように、本作の作画面では特別飛び抜けているわけではない。もちろん、低いとは思わないが……それこそ、冬アニメでも作画で話題となって作品は他にもたくさんあるわけじゃな。
今作はそういった緻密さ、作画枚数で勝負したわけではない。
演出力で勝負した、という印象じゃ。
で、それは先ほど述べたような演出を多く駆使することによって、”アニメ・漫画であることの強み”を発揮しつつ、それを日常的表現として活用していったわけじゃな」
カエル「京アニ的、という意味では最終話の楽曲もちょっと牛尾憲輔ぽさもあったのかなぁ」
亀「それはあくまでも結果論であり、京アニに傾倒しているわしだからこその思いかもしれんが……しかし、本作が描き抜いた日常表現、そして高校生の恋愛のリアルというのは、決して外れたものではない。
その意味においても、今後高く評価されるべき作品なのかもしれんな」
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