一時期話題になったよね
この映画で、初めて『のんのんびより』に触れるいうのは、それなりにレアかもしれんの
カエルくん(以下カエル)
「……日常系で女の子がたくさん出てくる、ということくらいしかわからないんだよね」
亀爺(以下亀)
「ネットで話題になっておった『にゃんぱす〜』がなんなのかすら知らんからの」
カエル「最近さ、テレビアニメも時間がないのもあって観ていなくて、どんどん時流に遅れていくなぁ。
なのに人気作は映画が公開して、気になるからシリーズ初見で観に行っての繰り返しになるというね……」
亀「今作などは特にファン向けの要素が多いのは目に見えておるからの。
さて、ではどれだけ意味不明なものになるかはわからんが、感想を書いていくとするかの」
2018年8月25日ロードショー「劇場版 のんのんびより ばけーしょん」PV第1弾
感想
では、いつものようにTwitterの短評からです!
#のんのんびより
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年8月26日
原作、アニメ未見
これは傑作といっていいんじゃないかな?
日常の中の非日常である旅行を通して描かれる楽しい日々と、ほんの少し匂わせる日常の終焉は吉田玲子脚本だと映画けいおん!を連想
終盤のシーンも美しく魅了し、キャラクターも可愛らしい
ファン向けだけどいい作品です pic.twitter.com/vNm5hORuNg
というわけで、かなり褒めておるの
カエル「何がすごいってさ、先にも挙げたように『のんのんびより』シリーズを完全初見の意見なんだよ!
それなのに面白さが伝わってしまう……これってとんでもないことじゃない!?」
亀「しかも本作はエピソード0などではない。
さらに言えば、劇的な物語などな〜んにもない、いかにも日常系の中でちょっとだけ非日常な日々を描いておるが、劇的なことは何も起きない物語じゃな」
カエル「それがとてつもなく面白いんです!
わずか71分と映画というよりもOVA、DVDのおまけに付いてきそうな、普通の3話分くらいでしかないのに、他の映画とくらべても満足度が全く変わりません!」
亀「まあ、わしらはTOHOの1ヶ月フリーパスが発行されたので、物見遊山気分でおったが、これは十分に満足できる作品じゃ」
今作の難しさ
カエル「でもさ、のんのんびよりの映画版を作るのって、結構難しいと思うんだよね」
亀「以下の点において本作は他の映画とは違う難しさがある」
- 原作、テレビシリーズの延長線上の物語
- 劇的な展開を起こせない
- キャラクター数の多さ
亀「まず、本作は原作やテレビアニメシリーズの世界観を壊してはいけない。衝撃の過去であったり、あるいは今後の影響を与える大きな出来事を描くことは難しい。
これはどのテレビシリーズからは派生したアニメ映画では当然のことであるが、あくまでも劇場版は全体におけるサブエピソードであることが望ましい」
カエル「のんのんで言ったら、誰かが転校することか、卒業するなどは描けないということだね」
亀「次に2は1と同じようなことであるが、本作は日常系である。
日常とは何も起こらないから日常であって、劇的なことは起こらない。
つまり、サイドストーリーだからと言って何でもかんでもできる、というわけでもなく、その日常系の雰囲気を尊重しなければいけない」
カエル「極端な話をいえば、映画オリジナルキャラクターを出して死んでしまう展開などは、原作の雰囲気を壊すからできない、ということだね」
亀「そして3じゃが、これは原作やテレビアニメから入った人であれば全く問題ないと思われるかもしれんが、本作は71分に収めるには登場人物は約10人ほどとかなり多い。
その中で誰をしっかりと描き、誰を省くのか、その取捨選択を迫られるわけじゃな」
初見の違和感
これは本作の売りなんだけれど、キャラクターの年齢などがわかりづらかったかな
誰が大人組で、誰が子供組、誰と誰が兄弟なのか、という問題じゃな
カエル「もちろん、これは原作やアニメを見慣れていればわかるものだろうけれど、初見ではやっぱりきつくて……
もちろん、れんげが最年少というのはキャラデザなどからわかるけれど、あとはちょっと難しいかも……」
亀「かず姉と駄菓子屋は大人組、というのはわかるが、それ以外は中学生と高校生もごったとなっており、それがわかりづらさを助長させてしまった。まあ、ファン向けだから問題ないといえばそうかもしれんがの。
残念ながら、全てのキャラクターの個性が全て発揮されたとは言い難い。
名前と顔を一致させるほど深く描くことは、流石にこの時間では不可能であったの」
カエル「でも、これがじゃあ悪い部分なんですか? と聞かれると、必ずしもそうじゃないかな? と思う部分もあって……」
亀「例えばお兄ちゃん(卓)は普段は存在感がなく、でも必要な時だけ登場して、必要ないときはいなくなる、というキャラクターじゃな。
とてつもなく都合がいいが、これはこの手の女の子ばかりの日常系アニメではよくあることじゃ。他にもあまり役に立たない保護者、活発な友人など、ある種お決まりのキャラクター像をうまく動かして映画を構築している。
だからこそ、初見でもある程度アニメに見慣れておれば、すんなりとこの話も理解できるかの」
映像化する意義
ちょっと過激なことを言うけれど、最近のこの手の作品って、作画がテレビシリーズと変わらないこともあるよね
正直、映画館でお金を取るレベルとは思えない作品も、中にはある
カエル「もちろん、本作はそうじゃないけれど……作画も劇場に全く追いついてなくて、儲かるから劇場公開したのかな? と思う作品もたくさんあるんだよ……」
亀「アニメ映画の粗製乱造の弊害といっては過激すぎるか?
時々本作のような当たりにも出会えるが、こんなものかな、と思う作品も多いの」
カエル「でものんのんびよりは、作画面も結構いいよね。
もちろん作品自体が日常系ということもあって、ド派手な演出で盛り上げるということはあまりないし、場合によっては動きを制限しているかな? と思う描写もあるにはあるけれど……
まず、何と言っても美しい背景描写が本当に素晴らしい!」
亀「沖縄の海であったり、八重垣の自然がとてもよく描かれておる。彼女たちが旅行でワクワクする様が、その背景の美しさからも伝わってくるような作品じゃったの。
そして何よりも、本作の終盤で描かれる大きな感銘を受けるシーンでは、とても美しい映像が流れており、この絵を見に行くだけでも劇場に行った甲斐があった、と思うほどのものじゃ。
カエル「もちろん、キャラクターの一挙手一投足や、会話の掛け合いのテンポも良くて、ドラマ性の薄い日常系と考えても、しっかりと面白いしね」
亀「この辺りは『のんのんびより』の他にも『田中くんはいつも気だるげ』などの日常系コメディアニメの監督を務めてきた川面監督の手腕が発揮されておるのではないかの?」
本作が描いた日常と非日常
本作を高く評価する理由は、もちろんここです!
日常系における重要なものが、きちんと描かれておったの
カエル「この映画をシリーズ初見で見に行った理由の一つが脚本家が吉田玲子ということもあって……今、もっとも腕のあるアニメ脚本家の一人という評価なので、そちらを期待していきました」
亀「本作は吉田玲子脚本の他作品と比べると『映画 けいおん!』に似ていると感じたの。
もちろん、けいおんは日常系アニメの絶頂期を生み出すほどの大ヒットを記録した、言わずと知れた時代を代表する作品である。そして、その劇場版である『映画 けいおん!』では日常と非日常、そしてその終焉を描いた、というのがこのブログでの評価じゃな」
カエル「それは本作でも同じで、劇場版で描かれるのは『日常の中の非日常=旅行』なんだよね」
亀「その非日常を描いたことにより、同時に本作は日常の終焉をも予感させる作品となっておる。
もちろん、楽しい日々ばかりの旅行はいつか終わる。
帰るからこそ旅であり、非日常なわけじゃな。
本作はその非日常を描くことにより、ただの日常系アニメ映画にはならなかった」
カエル「……えっと、どういうこと?」
亀「本作は基本は『行って帰る物語』なわけじゃな。その行って帰る中で、夏海がある感情に囚われた瞬間に、彼女の元に成長の兆しが訪れる。わしが見た限りでは、れんげはあまりに幼すぎるのと、幼い割には早熟で聡明なためにあまり成長する余地がない。
だからこそ、最も成長する余地を残していそうな……まあ、子供っぽいというか、未完成な夏海を成長させており、そこで物語のカタルシスを生ませる。
しかも、帰って来れば元どおりということで、原作やテレビアニメにも影響は少ない」
カエル「それと、夏休みが終わってしまう寂しさもよく出ていたのよね……夏の終わりに上映開始は、ちょっとずるいな、なんて思ったりして……」
亀「旅の終わりの寂しさと、夏の終わりの寂しさを合わせることにより、大人の観客には子供の頃の郷愁を感じさせるようにできておる。
やはり、日常系作品のアニメ映画化と考えた場合、いい落とし所でもあるし、この効果がてき面であり、よく考えられていると感心した作品じゃな。
単なる人気アニメのOVAを劇場上映するのとは違う、日常の終焉の予感と、過ぎ去った時間への郷愁という、大きな意図と意義に溢れた作品じゃったの」
まとめ
ではこの記事のまとめです!
- ファン向けながらも初見でもわかりやすい作品!
- 作画面なども劇場にふさわしいシーンも!
- 夏の終わりと過去への郷愁を描いた作品!
これは思わぬ掘り出し物じゃった
カエル「ファン以外はなかなか見に行こうとは思いづらい作品だけれど、ある程度アニメに見慣れた人であれば、多くの観客に指示される作品じゃないかな?」
亀「あとはこの時間の短さもいいの。和紙などは次の映画までの空き時間が1時間半くらいあるときに、フラっと入れて力を抜いて見られる本作のような映画はとても重宝する」
カエル「まあ、映画館で映画をはしごする人ばかりじゃないけれど……ちょっとした空き時間に鑑賞するにもオススメの作品です!」