カエルくん(以下カエル)
「モンストの劇場版が公開されたね」
ブログ主(以下主)
「最近、この手のスマホアプリのアニメ化が活発だよなぁ」
カエル「主はモンストやったことあるの?」
主「いや、全然? もちろん知っているし、周りにやっている人はいるけれど、やったことないね」
カエル「……ちなみに主がやっているスマホゲームって何?」
主「デレステ、ウィズと、シャドウバースと……あとはファンキルを少しやったくらいかな? あとは少しずつ手を出して、1週間もやらずにやめちゃったりね。どうしても時間がかかっちゃうし」
カエル「まあ、ハマると時間は絶対食われるしね。場合によってはお金もかかるし」
主「結局スマホゲームでやるのが詰将棋とか、麻雀とかでさ。昔ながらのシンプルなテーブルゲームって、奥深くてやってて楽しいね。ルールさえわかればいつまでも遊べるし、飽きがこないし」
カエル「じゃあ、今回はそんな、モンストを触れたことがない人の感想だね。
それじゃ感想記事を始めるよ!」
モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ WEB限定動画30秒 冒険篇【モンスターストライク(モンスト)TV CM | XFLAG公式】
1 ネタバレなしの感想
カエル「ではまずネタバレなしで、ゲームも何もやったことのない人の感想だけど……どうだった?」
主「最高だった!
2016年は『君の名は。』などアニメ邦画が大ヒットした年だけどこの映画もそのヒットの中に加わってほしいくらい!
最近話題になった作品……君の名は。聲の形、この世界に片隅に、などはどうしても大人向けというか、中高生に向けたような部分があるじゃない? この映画は対象年齢がその3作に比べて少し落ちて、小学生などの子供をターゲットにしたアニメになると思うけれど……子供向け邦画なら今年NO,1だよ」
カエル「今年は子供も楽しめる子供向けアニメ邦画が伸び悩んだかな? という印象が少しはあるかな」
主「毎年恒例のお馴染みなキャラクターものや『ズートピア』などのディズニー、ピクサーをはじめとしたハリウッド映画がどうしても強いから、こういう単発の映画ってあまり注目を集めない印象がある。
もちろん、モンストというアプリゲームの人気はあるけれど、既存の人気キャラを扱っていない、テレビシリーズもなかった単発映画でこれだけの作品が生まれたことは、驚愕の一言だね。
多分スマホやブラウザアプリを題材としたゲームの、ひとつの完成系と呼ばれる映画になると思う」
あの名作の面影が!
カエル「やっぱり世代もあってこの作品を思い出すよね」
主「基本的に旅をして成長していく子供達を描いた映画なんだよ。そこにモンスターが絡んでいくことによって、物語は続いていくわけだ。
この構図はまさしくデジモン的だな、と思った。モンスターとの交流自体は少ないけれど、これは話の尺が圧倒的に少ないから仕方ない部分でもあるけれど、でもそのドラマが非常にうまくいっている」
カエル「この構図ってやっぱり人気を集めやすいよね」
主「そうだよね……
それ以外にもたくさんのアニメの要素が詰まっていて、大人も子供も楽しめる作品に仕上がっているし、それこそジブリテイストとか、エヴァっぽい部分とか、色々とね。
そういう部分を楽しむのもいいし、様々なエッセンスを加えていきながら、1つの作品として完成している。ラストとか、ED音楽の良さもあって、感動する要素もあったよ」
2 劇場版モンストの『革命』
カエル「どういうところが画期的なの?」
主「これは以前他の記事で読んだけれど……この映画はもちろん、スマートフォンの人気アプリから始まったアニメなわけだ。
最近ではそういうブラウザゲームとかアプリゲームからアニメがスタートすることも珍しくなくなってきた。その走りとなるのが『戦国コレクション』や『ドリランド』になると思うけれど、そこからここ数年で一気に本数を伸ばしてきた」
カエル「元々人気コンテンツの別バージョンに当たる『アイドルマスターシンデレラガールズ』は別としても『艦これ』とか、今期だと『刀剣乱舞』とかもあるもんね。PC版とスマホ版の違いとかはあるにしろ、ブラウザゲームであることは変わらないし」
主「そういう新しい流れの中で当然のようにアプリゲームもアニメ化してきて、さらにここ最近は……こっちも同日に見たけれど『チェインクロニクル』も全3章構成で劇場アニメ化してきたわけだ。
1部作品に関してはこれから結果が出る部分があるけれど、モンストのアニメは意味が大きく違う」
カエル「……意味?」
主「普通はテレビシリーズをやってから、劇場版への流れを作るわけだ。だけど、モンストはYouTubeでアニメを流した後に、一気に劇場版へと手を広げてきた。これは全くの新しい形だよね。
普通はビジネスとして考えた場合、作品の知名度を広げるためにテレビで公開して、そこから劇場版が普通だけど、今作のように元から知名度がある作品であれば、その必要性はないわけだ。
だからそこも含めて斬新なわけ。さらにいえば、初日の初回に見ようと思ったら、子供達を含めて長蛇の列でさ……これは劇場でももらえるプレゼント目当ての人がそれだけ多かったからだけど、これもまた面白い現象だよね。
ビジネスとしても新しい息吹を感じたよ。
この革命は小劇場でクラウドファンディングを駆使して大ヒットした『この世界の片隅に』にも劣らないビジネス革命になったんじゃないかな? 2016年はそんな作品が多いけれどね」
アニメ映画の革命に関してはこちらでも語っています
アプリ、ブラウザゲームの欠点の解消
カエル「じゃあ、アプリゲームやブラウザゲームの特長って何かあるの?」
主「……これはさ、ゲームの特性上仕方ない部分でもあるけれど、どうしても登場人物が多い作品になるんだよ。それは『艦これ』にしても『シンデレラガールズ』にしてもそうで……
現代のブラウザゲームやスマホゲームは、キャラクター数を圧倒的に増やして、ガチャの要素やコレクションする要素を加えることで収益を上げているわけじゃない? その中で人気キャラクターが出てきて、お気に入りが生まれて、より強いキャラクターが出てきて……という流れでお金を稼ぐ。
それをアニメとした時に、ファンならいいけれど初見からするとキャラクター数が多すぎるんだよね」
カエル「それはどのアニメでもあるよね」
主「最近はどのアニメもキャラクター数が増加傾向だけど、ブラウザゲーム原作アニメは比較にならないほど多い。そうなると初見は中々ついていくのが難しいよ。そしてファン向けになっていく、というのが主な流れだったわけ。
個人的には勿体ないなぁって思うよ。もっとゲームの裾野を広げるチャンスだけど、既存のファンのために……まあ、そっちも重要だからなんとも言えないけれど、あれもこれもと詰め込むことでわかりづらくなる作品が非常に多い。
最近では『刀剣乱舞』はそこいら辺をカバーするために、最初にアニメにおいてキャラクターの日常やギャグ調の作品を公開して、これからシリアス調の作品を放映するという話も聞いたけれど……これはキャラクターの理解をしてもらってから、シリアスな世界観で魅せていきたい、って意味だと思う」
カエル「アプリ系のアニメって艦これの時もそうだけど、ファンが求めているものを掴むのが難しいよね」
主「キャラクターのキャッキャウフフな楽しい面を売り出すか、それともシリアスな展開にしたがるかということの対立だよなぁ。シンデレラガールズのアニメもシリアスを加えたことによって、一部キャラクターが不遇なことになったと批判もあるからなぁ……
でも、このモンストはその欠点を見事に解消してきたんだよね」
キャラクター数を絞ったモンスト
カエル「原作ゲームはほとんどやったことがない人間の意見になるね」
主「まずさ、主要登場人物が4人の子供達、というのがわかりやすくていい。
熱血型の主人公、冷静でストッパー役の親友、そして可愛いヒロインと、おとぼけ役の女の子。このバランスが非常にうまい具合に設定されている。これでどんな物語も作ることが可能なんだよ。
もちろん4人なのは原作ゲームが4人まで協力プレーができるところから来ていると思うけれど、見事にその設定をアニメに落とし込んだ」
カエル「それ以外でも『大人と子供の対立』とか『大型モンスターの対決』とかも色々とあって、アニメの面白さをギュッと詰め込んだ1作になっているよね」
主「話の筋としては王道なんだよ。子供向けアニメとしてよくある『世界の崩壊をゲームやおもちゃが救う』という話。
そして旅を続けていくうちに、大きく成長していくという……まさしくデジモンやポケモンなわけだ。そこに悪い奴がいて、そいつをみんなで必死に倒すというね。
さらに今回は過去のお話でEP0 にあたるからさ、これが初見でもある程度わかるようになっている。そして見事なお話の作りになっているから、きちんと感動するんだよ」
カエル「そして肝心のアプリで登場するキャラクターを絞ったことによって、分かりやすいお話になっている」
主「ここでゴチャゴチャと出すと訳がわからなくなるけれど、あくまでも主題は少年少女4人の旅なんだよ。
これはね、1本のアニメとしても面白いし、大人が見ても楽しめる作品になっているんじゃない?」
以下ネタバレあり
3 優れた構造
カエル「じゃあここからはネタバレありだけど……」
主「まず大事なのは、この作品の構造がすごく優れているということだ。
先にも言った通り、YouTube版があるけれど、それを見ていない人も対象に入るわけ。それでも物語を楽しませるために取った手法がこのEP0商法、つまり過去の話をやるわけだ。
ここに至るために、未来からのタイムスリップするという構図になっている。もうここでキャッチーだよね」
カエル「時をかける系って最近の流行りでもあるよね」
主「時を戻るのもひとりだけなんだけど、そこで戻るということがすごく大事な意味を持つようにできている。
明らかな悪党が出てきて、その悪党が時間を戻っていくことでゴタゴタが起きる……だけど、そのあとの世界はどうやらそのトラブルを経たあとの世界のようでもあるわけだ。
ここなんかは自分は『映画ドラえもん 新・のび太の大魔境』ぽいなぁ、なんて感じたのね。過去の自分を助けに行くという展開が。
これは、タイムトラベル系の王道でもあるんだよね」
カエル「あとは『クロノ・トリガー』も連想したかな?」
主「それだけ『時代を超える』ということは、ゲームやアニメの中でもよく使われる手法なわけ。キャッチーだよね」
子供を主人公にしたことによって
カエル「でも実際の主人公は子供だよね?」
主「ここで子供を主人公にしたことによって、ある種の普遍性を獲得するとこに成功している。子供たちであれば、先述したデジモンやポケモンなどのように『旅をしながら成長する』という王道の面白みを味わうことができると思う。
そしてさらに、この映画にはもう一つの楽しみ方があるわけだ。
それが『スタンド・バイ・ミー』のような、どこか懐かしさというか、郷愁を誘う映画になっている」
カエル「歌いながら線路を歩くシーンなんてまんまスタンド・バイ・ミーだもんね」
主「彼らは家出をしているわけじゃないけれど、何があるかわからない場所に向かって、ただ旅をしていくわけだ。その中にある友情やトラブル、喧嘩などを通して彼らが成長していく姿に、観客も入れ込んでいく。
だからこの映画って、結構大人を受け入れる余地があると思う。あの歌だって、何で甲本ヒロトの『日曜日よりの使者』なのか? と問われたら、やっぱりあれも旅をする歌じゃない? ここからどこかに飛び出そうっていう。
それがすごくキャッチなーメロディであって、子供が歌いそうだし、実際その歌を口ずさみながら線路の上を歩くというのは、どことなく憧れを感じるんだよ。特にスタンド・バイ・ミーの大ファンとしてはね」
4 演出の良さ
カエル「演出?」
主「この作品は3Dと手書きアニメがミックスされている。それが画面の中でうまく調和しているんだよね。
3Dはゲーム画面というか、デジタルな存在という意味で使われて、あの時代の登場人物は手書きで描かれている。それが最大限活かされたのが、やっぱり序盤なのかな?」
カエル「カメラをグリグリと動かして、すごくスピーディにしていたよね」
主「そう。そこでキャッチーな作りにすることによって、見ている側がその作品世界にのめり込むことができるんだよ。3D特有のカメラワークだったり、戦闘描写の激しさでいい気に世界に引き込む。
だけど、そこから手書きのパートに入ることで置いてけぼりにしないんだよね。若干、設定の説明不足かな? と思う部分も序盤はあるけれど、それはただの伏線だから問題なし」
カエル「あの指輪がなんだったのかはよくわからなかったかもね」
主「そういうところは配信版を見るべきなんだろうね。これから自分もまた見て、もしかしたら2回目も行くかもしれない。
それから、作画パートのクオリティもいいよね。序盤だけど階段を下りるシーンとか、グネグネ動いていてびっくりしたよ!
あとは光と影の演出もしっかりしていたよね。線路を歩くシーンでレンだけが影の中にいる、とかさ」
様々な作品の長所
カエル「ちょっとここについて考えていこうか」
主「今回の監督を務めた江崎慎平は監督作品2作目に当たるけれど、その脇を固めた作画監督の金子志津枝はベテランでさ、ジブリでも原画を描いていたことがある人なんだよ。
そして脚本は岸本卓。このブログでも絶賛した『91Days』の脚本家で、何でも書けるんだなぁ、と感心する脚本家だけど、この人もジブリに在籍していた経験があるんだよね。
それもあるのか、やっぱりジブリテイストは少し感じた。特に『千と千尋の神隠し』の要素は大きかったかな」
カエル「オラゴンに乗って会話とか、あの毛を掴むシーンは千と千尋の神隠しの終盤を連想させるよね」
主「さらにいうと、EVAの使徒の……破壊光線とでもいうかな、攻撃の後にできる十字架とか、あとはやっぱり神社とかアーサー王からはFateみたいな部分も感じるし、それこそデジモンの要素もあるな、と思った。
だけど、単なるモノマネ作品には仕上がっていないんだよ。
それだけのいろいろなアニメの要素を詰めながらも、しっかりとした1本の作品として仕上がっている」
カエル「キャッチーでありながらも独立した1つの作品、ってことだね」
5 脚本の妙
カエル「じゃあ、脚本について語っていくけれど……」
主「子供のロードムービというのが基本にあるけれど、彼らの日常描写もしっかりと描かれていて、良かったね。
あの廃墟でのやり取りとか、オーバーテクノロジーじみた脱出劇とか、都合よくあるトロッコとか少しのご都合主義は感じるけれど、でもそれが気にならない。子供アニメだからというのもあるだろうけれど。
何よりもロードムービのお約束である『夜のキャンプファイアー』などもきちんとあるし」
カエル「夜だと怖い思いもするし、演出効果としても内向きな面に注目することになるね」
主「ここで彼らの不安などを重ねながら旅をするというのが、少年少女のロードムービーの鉄則でもあるわけだし。そして怪しい大人とか、怖そうだけど実はいい人なおっさんとかさ、そういうキャラクター像も子供の成長に大事だったりするわけだ。
さらにいうと、この少年少女の物語でありながら、10歳という年齢が絶妙なわけ」
カエル「絶妙?」
主「ここでもう少し歳をとると……例えば14歳とか、高校生とかになってくると、今度は恋愛描写が入ってきちゃう。あの子が近くで寝ていてドキドキ、とかさ。
でもそれって、この映画の中では余計なエッセンスでしょ? この物語は子供の成長を描いているわけで、恋愛とかはいらないの。それが余計な雑味になっちゃう。だけど、ある程度以上に年齢になると、それがないと逆におかしいわけだ。
だけど10歳だったら恋愛がなくて当然な気もしてくるし、絶妙な年齢だよね。ポケモンのサトシも10歳だし。まあ、あっちはそう見えないけれどさ」
子供時代とその後を繋ぐ話
主「この手の作品で難しいのは、EP0っていうのは、そのあとの作品に影響をもたらす可能性があるわけだよ。この後の作品を先に作っている場合『あの過去ってなんだったの?』ということになりかねない」
カエル「まあ、時系列で考えるとおかしなことになるかもね」
主「だけど、この映画のように全部忘れてました、ってことにすれば、すべて片付くわけだ。この場合は夢オチのような、あの冒険ってなんだったの? ということになりかねないけれど、中学生の主人公たちはその冒険を思い出しているからその意味もある。アニメ版も記憶がない設定みたいだけど、それも物語を効果的に始めるためだろうね。
さらにいえば、このお話ってもっと時代を超えてつながっているんだよね」
カエル「時代を超えてつながる?」
主「そう。年齢が原因で忘れていた、5歳の頃のお父さんとの記憶。それをふっと思い出して、10歳のレンは敵に立ち向かうわけだ。
そしてそのレンはその記憶を忘れてしまうけれど、14歳のレンはそれを思い出している。その父親の記憶であり、10歳の頃の記憶などが、全て思い出されて現在のレンや他の友人たちにつながっていく。
そういう『思いがつながる物語』でもあるわけ」
カエル「そう考えると、君の名は。に結構似ているお話なのかもしれないね」
主「だと思うよ。あっちも過去からの連綿とした記憶や思いが関係しているけれど、本作もそうだから。
だから感動の構造は似ているものになるんじゃないかな?」
最後に
カエル「今年はアニメ邦画が大豊作の年だけど、それに連なる作品になったね」
主「今年一番のダークホースになったよ、個人的には。
上が化け物だから今年1番と断言はできないけれど、例年ならば時期も時期だし、今年1番って発言していたかもしれない。物語る亀で賞、アニメ部門受賞だよ」
カエル「これだけの映画、中々出て来ないもんね」
主「これが正しく……というか、少しでも多くの興行収入を稼げるといいなぁ……子供向けアニメって実は結構興行収入が厳しい作品も多いのよ。昨年だと『GAMBA』もいい作品だったけれど、コケたしね。あとは『マイマイ新子』とか。
どうしても既存のキャラクターアニメや、ディズニーやジブリなどのブランドが出ているアニメ映画が強いから、どんなに良作を作っても興行収入では厳しいものになりやすい印象がある。
オタク向けな作品だったらSNSで宣伝しあって、何度も観に来るから意外と伸びるけれど……できればこの映画も特典だけでなくて、クオリティでも正しく評価されて欲しいな」
モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ (集英社みらい文庫)
- 作者: XFLAGスタジオ,相羽鈴,岸本卓
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2016/12/09
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