今回はテレビアニメも人気のライトノベル原作作品『この素晴らしい世界に祝福を!』の劇場版作品の感想記事になります!
……”この世界の〜”とタイトルを間違えそうになる自分に驚愕だよ
カエルくん(以下カエル)
「はい、そんな与太話は後にして今回は原作やアニメ版は鑑賞したの?」
主
「0ではないけれど、ほぼないようなもん。
アニメ版を……3話くらいまで観たかなぁ」
カエル「最近、ラノベ原作のファンタジーアニメが量産され続けていて追いきれないっていうのはあるかもね。
ちなみになんで3話で終わったの?」
主「特に理由はない。
つまらなかった〜とかもなく、単に忙しくてフェードアウトしていった面もある。逆にいえば……その程度にしかハマらなかったということかな。
あとは『ダンまち』とか『REゼロ』などのファンタジー系が多すぎて区別が付いていないのと、食傷気味というのも大きい」
カエル「それでも過去作を観ないで劇場版は観に行くんだね。
そういえばNetflixにあるのを知って観ようと思ったけれど、2クールあることに少し怖気付き後回しにして、さらに『全裸監督』や溜まっていた『鬼滅の刃』とかを消化していたら、結局見る事ができなかったけれど……」
主「アニメ映画に関しては半分義務感に近いものもあるかもしれないけれど……『ノーゲーム・ノーライフ ゼロ』が全くの初見でその年のTOP3に入るほどの大傑作だった衝撃もあるし……本当にいい映画は過去作などを観なくても伝わるものがある、という思いもあるからね。
流石にキャラクターくらいは知っているレベルの人間ですが……今回も挑戦してきます」
作品紹介・あらすじ
シリーズ累計発行部数が850万部を突破した暁なつめ原作の人気ライトノベルを原作としたアニメの劇場版作品。
監督はテレビシリーズに引き続き金崎貴臣、脚本は上江洲誠、キャラクターデザイン菊田幸一、音楽甲田雅人などの主要スタッフは変更がないものの、アニメーション制作はJ.C.STAFFが担当に変更されている。
キャストはテレビシリーズに引き続き福島潤が主役のカズマを演じるほか、雨宮天、高橋李依、茅野愛衣、堀江由衣、豊崎愛生などが出演しこのすばワールドを展開する。
交通事故にあってしまったカズマは女神であるアクアと共に異世界へと転生してしまった。その世界で中二病の魔法使いであるめぐみん、妄想癖のある女騎士ダグラスとパーティを作り冒険の日々? を送っていた。そんなカズマの元にめぐみんと同じ紅魔族の少女、ゆんゆんが現れて子供が欲しいと突然の告白をされる。話を聞けば故郷である”紅魔の里”が危機にあり、救う手段がカズマとゆんゆんの子供が救う、という占いが出たという。里の危機を救うために訪れた里でまつ運命とは……
感想
では、Twitterの短評からスタートです!
映画 この素晴らしい世界に祝福を! 紅伝説
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年8月30日
愛すべきおバカ映画の登場!
ギャグ満載で笑いも多いがなによりもオーバースペックじゃね? と思うほど動き回る!
アニメオタクならば原作、アニメ版未履修でもOKであろう、素晴らしきオタクアニメ映画に盛大な拍手を!
#このすば pic.twitter.com/4wVx0iWHeg
おバカなオタクアニメ映画として、笑いに満ちた作品だ!
カエル「今回、なんの予習もなく観にいったのに結構な高評価だね!」
主「この手のアニメ映画ってなんとなくクオリティが想像できる部分もあって……一部では”劇場版”と言いつつ、OVAレベルやテレビアニメの延長でしかないのでは? と思う作品もある。
あとは……最近では観客が求めているであろうスペックに足りていないアニメ映画もあった。
本作はその逆。
なんでここまで力入れているの!? と驚愕するほどにクオリティが高い”おバカ”な作品なんだ!」
カエル「えっと……褒めているんだよね?」
主「めっちゃ褒めてますよ!
基本としては”おバカ”なコメディ映画なんですよ。
下ネタもあるし、オタクであれば誰でも笑えるようなシーンが山盛り。で、やっぱりそういうシーンって……なんというか、そこまで力を入れていない作品も多いんだけれど、今作は日常描写もめっちゃヌルヌル動くしびっくりするレベル!
なんなの、これ!?
他にも音響なども全力投球で……話自体はバカバカしいのに、それ以外の映像、音響クオリティがそこいらのアニメ映画以上で、頭が混乱する場面すらあったよ」
このすば初心者にも安心設計に
じゃあうちのようなこのすばに詳しくないって人にもオススメできるの?
全く問題がないんじゃないかな?
主「もちろん、全くアニメを観ませんよ! という人には向かないと思うよ。
かなりオタクむけの描写があるから、その意味もわからないと思う。だけれど……一定のアニメオタク、それこそ”このすば”って聞いて青いダメな女神が出てくるとか、ファンタジー世界を冒険する異世界転生もの、ということが思いつくほどのアニメが好きな人であれば、誰にでもオススメできる作品になっているんじゃないかな」
カエル「でもさ、このすばファンじゃないとわからないネタとかも当然あるわけじゃない?」
主「それはあるかもしれない。そもそも、自分だってなんとなくでしか理解していないところはあるし……
でも、ある程度は親切設計になっているんだよ。
例えば重要なキーワードや物語の展開を理解するのに必要な専門用語はその前にしっかりと説明する。
だけれど単なる説明ゼリフの羅列にするのではなく、特にはギャグを交えながら説明するから話がわかっている人は笑うし、わからない人もその説明を気にすることもなく理解する。
だから最後の方になるとわからないなりにも、その世界観や重要な事柄がなんとなく理解できるようになっている。
もちろんファン向けの要素は強いし、自分もその本当の真価を味わったとは言えないだろう。
でも、わからない人にはわからないなりの楽しみ方があり、またこの話だけで完結しているから入門編としてもアリな作品になっているんじゃないかな?」
以下ネタバレあり
作品考察
この手のアニメの”あるある”を詰め込んだ作品に
では、ここからはネタバレありで語っていきます
この手の作品のあるあるがいっぱい詰まっている作品だったな
カエル「パーティメンバーや主要登場人物が女性ばかりだったり、あるいはモテ期云々というのもこの手の異世界転生系に多い設定のように感じられたね」
主「この作品がオタク向けに特化してしまっていることが、本当にいいことなのか? という議論はあるかもしれない。
劇場内も9割が男性だったし、それ以前に子供が観にくるような作品ではないけれど……
正直に言えば自分も前半に関しては疑問に思うシーンも多かった。
例えばおなじみのハーレム状態であったり、ラッキースケベやギャグで誤魔化されてはいるけれど、この映画で描かれたことには、見る人が見たら眉を潜めなかねない表現もある」
カエル「今の映画界におけるポリコレがどれほど多岐にわたるのか、ということがわかるけれど……この作品はゲスな行為、特に性的なギャグも多いからちょっと難しいバランスが求められているね」
主「そこもギャグになるレベルの微妙なバランスをしっかりと維持していると思ったけれどね。
自分が最初に語った”ラノベ原作アニメ”に苦手なものがすごく詰まっていた。
例えば『オークは女騎士をああのこうのするような存在』というエッチな作品ではよくある設定を逆手に取ったギャグがあるけれど、それはそのようなエッチな作品のあるあるを知らないと楽しめないものになっている。それに、女オークの声優に小林ゆうが起用されているけれど、これは彼女のキャラクターを知っているか否かでギャグとしての評価が変わるだろう。まあ、知らなくても面白いからそのバランスもうまいんだけれどさ。
他にもこの映画のギャグ描写はかなりメタ的な見方や異世界もののあるあるも含まれている。
それらはこの手の作品に対する共通理解が観客にあることを前提としているために、それが好きな人にはいいんだけれど、ダメな人には届きにくい作品になってしまっている場合がある。
で、自分はそれがある程度は理解できるんだけれど、その姿勢に対して疑問を持ってしまった」
中盤までの展開について
実際のところ、観ている最中はどんな気持ちだったの?
面白いけれど、なんか変な構成だなぁ……と突っ込みながら観ていたよ
主「今作はコメディだから当然! と思う人もいるかもしれないけれど、でもギャグ描写が長すぎる印象もあった。
描かれている物語そのものはテレビアニメに毛が生えた程度で、そこまで壮大とも思えない。中盤までは壮大にできる部分を全てギャグで潰している印象すらあった。
寝室でのやりとりも2回は多いかなぁ、なんて思っていたよ。
でもきっちりとキャラクターを可愛らしく描いており、力が入っているから、まぁいいかってなったけれどね。
物語のスケールがまるでテレビアニメ版のようだったのに対して、作画などはかなりレベルが高いわけ。
だから”オーバースペック”だと称した」
カエル「元々の作品を観ていない人にはあるあるとか、ギャグが多すぎるように感じるんだ」
主「この作品って最後までギャグで突き進むのか? って思ったよ。それはそれでありかもしれないけれど、自分は優れたコメディ”映画”とは笑いの中に批評性があるものだと考えている。社会や複雑な問題に対して笑いを交えながら告発する、あるいは何らかの物事を批評する。
だけれど、この映画の中盤までは一切そんなものは感じずに……ファン向けの人気作とはいえ、劇場版ってこんなものかぁ、なんて思っていた」
カエル「あれ、じゃあこの映画ってこれだけ褒めているけれどコメディ映画としては駄作なの?」
主「逆です。
終盤の展開を観て驚いた。
今作はコメディ作品として一級品と呼べるだろうし、きちんと”映画”に仕上がっていた。
作画以外の面でも映画にする意義はきちんとあったんだ」
本作が示した異世界転生系への批評性について
そのうちが賛辞を送りたい批評性について語っていきましょうか
異世界転生系って何が面白いの? ということをしっかりと答えてくれている
主「なんども語ったように、今作は異世界転生系のファンタジー作品に対するあるあるが多い。
そもそも、このすばの設定そのものがゲームなどのあるあるを逆手にとっている部分がある。
だけれど、じゃあ何でこんなに多かったんだ? という話になるわけ。それ自体がこの映画の根幹に関わるものに仕上がっているんだよ」
カエル「ふむふむ……」
主「この映画のラストが示したのは僕たちが愛するお約束、ある意味では”クサイもの”という厨二的なものに対する愛なんだよ。
これだけたくさんの厨二的な展開、異世界転生系のお約束を、特に中盤までは過剰と思えるほどに提示して笑いを取りつつ、その全てを肯定した。
ファンがなぜこれらの作品を愛するのか?
今では飽和した感すらある異世界転生のあるあるをギャグとして提示するのか?
その全てに完璧に答えて見せた。
これがスタッフからの作品やジャンルに対する愛であり、最大限の誠意と熱意を感じさせられて否定する材料なんて何一つとしてない」
カエル「この手の異世界転生系のアニメ作品が苦手だ、と言いつつ、そこまでいうんだ……」
主「ギャグだからこそできる自由度の高い作画、この”おバカ”なギャグコメディ映画に対して笑ってしまうほど力の入った爆発音などの音響で惹きつけて、映像面や音響面も高い評価を受けつつ、さらに高いレベルの物語としての満足度と批評性。
しかもファンにもきっちりと目配せしつつ、全くの初見さんやオタクアニメを全く観ない人はあれかもしれないけれど、そこまで詳しくない人でも楽しめるバランスの良さ。
これは高く評価されべき”映画作品”と言えるのではないだろうか?」
まとめ
では、この記事のまとめです!
- 映像の迫力やキャラクタクータの可愛さに溢れたファン向け作品に!
- 音響なども豪華で映画館で見るべき意義がある!
- 中盤までは異世界転生あるあるをギャグで見せることに疑問も……
- 作品やジャンルに愛を示した作品に!
こちらも掘り出し物の作品となっています!