今回は『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』の映画作品の記事です!
最近はこの手の作品が多いの
カエルくん(以下カエル)
「近年のラノベ原作らしい作品だよね。
いわゆるなろう系とはまた違うけれど、でも混同してしまう人もいるのはわかるなぁ」
亀爺(以下亀)
「今回の劇場版に備えてテレビシリーズ1期を観たが『噂では神様が無能だとネタにされておったが、随分と有能な働きをしているではないか』と思ったら、そちらは『この素晴らしい世界に祝福を!』と勘違いしておったわ。
他にも『灰と幻想のグリムガル』やら『転生したらスライムだった件』などもあり、詳しいファンでないとなかなか区別することが難しい状況かもしれんの」
カエル「観てみると違いがわかるもんではあるんだろうけれどね。
今作はテレビアニメシリーズは鑑賞済みだけれど、外伝の方は鑑賞してません!
多分、物語としてはそれで問題ないと思います。
原作も読んでいません」
亀「シリーズ初見ではないが、ほぼ初見の感想に近くなるのではないかの?
では、記事を始めるとするか」
作品紹介・あらすじ
2013年1月からGA文庫にて刊行を開始した人気ライトノベルシリーズ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』シリーズの劇場版作品。
2017年の夏に放映されたテレビシリーズのその後を描くオリジナルストーリー。脚本は原作者である大森藤ノが書き下ろし、本作では脚本としてクレジットされているも。監督はテレビシリーズでは幾つかの話数で演出を行っていた桜美かつしが担当する。
松岡禎丞、水瀬いのりなどのテレビシリーズで活躍したキャストも続投したほか、映画オリジナルキャラクターのアルテミス役に坂本真綾が起用されている。
巨大な地下迷宮『ダンジョン』を中心に栄える都市、オラリオでは冒険者たちが多く暮らしていた。冒険者は神と共に暮らし、神が作ったファミリアに所属することでその加護を得ている。
『リトルルーキー』の2つ名を持つベル・クラネルは、自分のファミリアの神であるヘスティアと共に赴いた祭りの余興で伝説の槍を引き抜いたことにより、外の世界への旅行をする権利を手に入れる。
しかし、その旅行は仮初めのものであり、ベルはヘスティアと同じ神であるアルテミスを巻き込んだ大きな騒動が起こっていた……
「劇場版 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ― オリオンの矢 ―」本予告
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#ダンまち
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年2月15日
テレビシリーズと変わらない雰囲気で安定感があるものの序盤のノリについていけるかで評価が変わるかも
(自分はちょい苦手)
ファン向け映画以上の評価はできないかなぁ
アクションなどの作画面は劇場版らしく◯
オールスタームービーだしダンまちがお好きな方はどうぞ pic.twitter.com/jNL2fMcKKj
まさしくファン向けの作品と言えるかもしれんの
カエル「アクションも迫力のある作品です!
一応、この作品自体は単独で成り立っているので、初見さんでもある程度これらの作品……つまり、ラノベ原作のダンジョン系異世界作品を見慣れている方であれば、のりなどが理解できるのではないでしょうか?
さすがに”全くアニメを観ないよ”という方にはオススメできませんが、ある程度の入門編にはなるのかな、という印象です」
亀「特に今回はテレビシリーズから監督が変更されておるものの、テレビシリーズでは何度も演出を務めた桜美かつしが監督をしているので、あのダンまちが好きな人でも安心じゃな。
もちろん原作者が脚本を務めていることもあって、多くのファンに受け入れられやすい作品となっておるじゃろう」
カエル「となると……やっぱり課題は、このノリについていけるかだよねぇ」
亀「もともとテレビシリーズからいわゆるハーレム要素のようなノリはあったものの、この劇場版でもそれは健在じゃが……かなり長いように感じてしまった。
作品自体は90分を切るほど短く、テレビアニメではOPやEDを抜いた4話分くらいのお話ではあるし、ある程度まとまっておるが、このノリについていけるかどうかというのが評価を分けるかもしれん。
とは言ってもそれもダンまちらしさであり、現代のラノベ原作アニメらしさでもある。
また、アクションや音響などのレベルも決して侮るレベルではなく、劇場で観ることをオススメしたい作品じゃな」
ダンジョンやゲーム的要素の利点について
最近は今作に限らずダンジョンやゲーム的要素が強い作品が多いよね
わかりやすいのが売りなんじゃろうな
カエル「やっぱりゲームに馴染みがあるもんね」
亀「それもあるが、小説で難しいのはアクション描写じゃな。
特に敵のレベルの高さ、強さを文章で表すことはかなりの技量を問われる。これが例えば漫画やアニメであれば派手な動きをさせれば視覚的にも伝わりやすいが、小説は視覚で楽しませる要素は少ない表現ジャンルじゃからの。
そのための工夫がこのダンジョンやゲーム描写じゃな」
カエル「ふむふむ……」
亀「例えば、わしもよく語るが以下の名作漫画たちは強さを数値化しておる」
- ドラゴンボールのスカウターによる戦闘力
- ワンピースの懸賞金
- 幽遊白書などのS級、A級などのクラス分け
亀「これらはそのキャラクターがどれほど強いのかということをわかりやすく表すための工夫の1つである。その数値が高ければ高い分だけ、そのキャラクターが強いことは明白じゃからの。
そしてその数値をわかりやすく、納得できるような視覚的な表現を描くことによって多くの読者を熱狂させているわけじゃな。
これは漫画に限らず現実でも同じようなことがある。
- ボクシングの階級内ランキング
- サッカーのFIFAランキング
- 相撲の番付
- 競技かるたや将棋の階級わけ
これらも同じ効果を発揮しており、誰が強いのか、実績があるのかがわかりやすくなっている」
カエル「そのキャラクターの強さをわかりやすくしたのがレベルわけやダンジョンの階層なんだ」
亀「レベルが2で、HPが100で、潜るダンジョンが18階層で……となっていくと主人公たちの強さや敵の強さがわかりやすいじゃろう?
これがこの手の作品が受けやすい理由の1つでもあるとわしは考えておる。
まあ、この手の数値化に頼りすぎるとインフレを招くものであるから、そこが考えものであるがの。
余談じゃが、ワンピースの場合は懸賞金の高さ=単純な強さではない、という設定が数値化だけで強弱を比べられない工夫であるかの。
とは言っても、インフレは避けられてないがの」
テレビアニメ版について
じゃあ、軽くテレビアニメ版についても触れておこうか
描いていることは王道の少年の成長譚じゃな
カエル「本当に真っ直ぐな作品だよね!
気になる女の子がいて、その子に近づきたい思いもあって努力して強くなって……決して主人公が最初から絶対的に強くて無双するわけではないないんだけれど、それが1つの味になっていて!」
亀「成長譚として見ごたえの多い作品でもあるし、キャラクターたちも愛らしく男性を中心に多くのファンを獲得するのもわかるの。
また、作画や演出面でも見ごたえがあり、ドラマ性も富んでおるために、なかなかいい作品じゃと思う。
しかし、強いて言えば……これは多くのラノベ原作作品に共通するが、軸のなさは気になったかの」
カエル「軸のなさ?」
亀「例えば主人公の目的が弱いこととかの。
強くなりたい、ダンジョンの深い階層に潜りたい、憧れのあの人に近づきたい……その感情はわかるのじゃが、しかしドラマの目標としてはどうしても弱いように感じてしまう。
これが例えば……ブラックなものであれば親や家族を傷つけた憎い敵を討つ、借金のために金を稼ぐ、などであれば短期的な目標もできてそのためのドラマが生まれやすい。
しかし、本作はそれがあまりないために、目的のなさがドラマの弱さにつながっている印象じゃな」
カエル「う〜ん……でもさ、ライトノベルって一般小説と違って、1冊で終わる作品はほぼないじゃない?
1冊1冊には区切りがあっても、シリーズ自体は続く物語だから仕方ないんじゃないの?」
亀「そうじゃな。
しかもテレビアニメの場合はシリーズでも序盤しか映像化されてない場合も多い。それを考えると致し方ないとも言えるが、だからこそ物語の弱さを感じてしまう部分もある。
本作はベルの魅力や賢明な努力は認めるが、彼がそれだけ成長する理由やモテモテの理由は主人公補正にしか見えない部分もある。
彼自身は魅力がないキャラクターではないが、少し弱さを感じてしまう部分もあるの。
これは近年のライトノベル原作の多くの作品に共通するものであり、今作だけがどうこう言う話でもないがの」
キャスト・音楽について
軽くにはなりますが、声優陣についても語っておきましょう!
もちろん文句なしじゃな
カエル「松岡禎丞にしろ水瀬いのりにしろ、テレビシリーズから魅力的な演技をしていたし、今作でもそれは健在!
この作品の人気の1つはキャラクター描写だと思うけれど、それも納得する演技だよね!」
亀「近年のアニメ作品において欠かせない2人に加えて、内田真礼、細谷佳正、茅野愛衣、早見沙織などの人気声優陣が総揃いでちゃんとアニメの演技をしておる。
これで文句が出る方がおかしいかの」
カエル「それでいうとゲスト声優の坂本真綾もさすがの存在感です!」
亀「強いて言えばキャストの多くが”これは代表作になる!”というほどの熱量や凄みを感じるものではないが、今作では主人公とヒロインである松岡禎丞と水瀬いのりの演技も相まって、涙腺が緩むファンもいるかもしれんの」
カエル「それと、今回音楽がとてもいいです!
本作は壮大な音楽が物語を盛り上げてくれます!」
亀「こちらも聞き応えがあるので、ぜひ映画館で見てほしい理由の1つじゃな」
以下ネタバレあり
作品考察
序盤から中盤の流れについて
ここからはネタバレありで語っていきましょう!
少しばかり、退屈になる場面もあったかもしれんの
カエル「え? それはなんで?」
亀「もともとわしは上記のように、テレビシリーズの軸のなさが気になっておった。そのために中盤までは面白いが、後半は少しだれたような気がしておった。
しかし、今作はその逆であり……中盤までが少しダレてしまった印象じゃな」
カエル「ファンの人には楽しいサービスシーンもいっぱいあったし、ギャグも面白かったじゃない?」
亀「今作は3部構成になっておると思うのじゃが
- 冒険の旅立ち〜遺跡周辺への到着まで
- 遺跡周辺での作戦会議やキャラクターの深堀り
- いざ対決へ
簡単に言えばこの流れになっており、物語の目的として『アルテミスのお願いによって遺跡にいるモンスターを倒す』というものになっておる。
その流れに向かって物語は進むであるが、本筋とはあまり関係ない枝葉の話題が多かったようにも思うの」
カエル「でもさ、それが最後につながっていくわけで物語としてのカタルシスには重要なんじゃないの?」
亀「そうじゃが、キャラクターの深堀の描写が多すぎるようにも思った。
例えば水浴びを覗きに行く流れはテレビアニメでもあるお馴染みの流れであるが、そこまでのキャラクター描写やギャグ描写が濃いので、まだ本筋のバトルが始まらないのか……と思ってしまうところもある。
言葉難しいが……本作は序破急の3幕構成にはなっておるが、その内情は
- キャラクター・世界観説明
- キャラクター・世界観深堀
- 対決・アクション
と、なっておるように感じてしまい、1幕と2幕の流れが同じようなものに見えてしまい、ドラマに問題を感じたのかもしれん。
とは言っても、先に述べたように本作はキャラクター描写が命の作品であり、とても丁寧に作られているのは伝わってくるので、この非難に関しては相性の問題になるかもしれんがの」
英雄誕生の物語の裏側に
今作を簡単にまとめるとどうなるの?
テレビシリーズで何度も言われたのが”英雄志望”という話じゃったの
カエル「スキルが発動して、英雄願望がある! というものだったよね?
このスキルもそれぞれのキャラクターの個性をわかりやすく出しているんだろう絵kれど……」
亀「その流れを考えると、本作は必要な物語だったと考えておる。
というのも、多くの作品がそうであるが……英雄であり多くの人を救うというのと、守りたい人を守るというのは、全く違う話でもあるんじゃよ」
カエル「えっと……功利主義とかそういう話?」
亀「似たような部分はある。
わしが本作を見て連想したのが『Fate/Zero』なんじゃが、あの作品は100人を救うために1人を見捨てる、功利主義な正義の味方を信奉するヒーローが、その自分の決断に涙する物語でもある。
とても大切な人を守りたいから英雄を望んだはずなのに、大切な人を傷つなければ多くの人を守れないジレンマ。
今作の終盤の展開などはまさしくそうで、あの選択自体は英雄として、とても正しい。
しかし、正しいからといって全てを簡単に割り切れるかというと、そんなはずはない」
カエル「そのことでベルもヘスティアもすごく悩んでいるし、傷ついているもんね……」
亀「しかし、逆に言えば窮地の場面でその選択ができる者が英雄となる資質があるとも言える。
その意味では今作はこの先の物語を作る上でも、決して欠かすことのできない重要な物語だったとわしは思うぞ」
まとめ
この記事のまとめです!
- テレビシリーズの魅力がそのままに、見所が詰まった作品!
- ただし、若干の軸のなさなどは気になるところも……
- 英雄になる物語として、非常に大事なことを描いた1作!
ファンには是非鑑賞してほしい作品じゃの
カエル「今回、テレビシリーズを見てから鑑賞しましたが、アニメなどに見慣れている方はそれでなくても大丈夫……だと思います!
入門編としてもありだと……思う……ので、興味がある方は是非!」
亀「とても優しい世界であり、人が亡くなることもあるが悲壮感があまりない。
シリアスすぎないのもいいかの。
わしとしては、なぜあの槍がベルを選んだのか? という理由などがわからなかったのが気になるが、英雄譚をはそういうものだと割り切ってみるならばいい作品じゃな」