夏目友人帳がついに劇場映画化したよ!
テレビアニメも6期も続く、大人気シリーズだからな
カエルくん(以下カエル)
「6期ってすごいよね……むしろ、もっと前に映画化しても良かったんじゃない?」
主
「深夜アニメだけれど100館以上で公開と、結構力が入っているもんな」
カエル「ちなみに6期全部見たの?」
主「いや……もうとびとびで見てるから、何期をどこまで見たか全く覚えてない。1期と2期は全部見た気がするし、途中から多軌とニャンコ先生を目当てに見ていたから、4期くらいまでは見ていたんじゃないかな?
夏目って全話見ないでも話がわかるからいいよね。
できれば日曜の夕方にでもやってほしい作品だよ」
カエル「ちょっと前で言うと『あたしんち』とかのような安定感があるよね。
では、感想記事の始まりです!」
作品紹介・あらすじ
緑川ゆきの現在23巻まで発売され、アニメも6期まで放送されている人気作品の初劇場映画化。テレビアニメ1〜4期の監督を務めた大森貴弘が総監督を務め、総作画監督などを務めた伊藤秀樹が監督を務める。脚本はテレビシリーズでもシリーズ構成などを務めた村井さだゆきなど、本作をよく知るスタッフが担当する。
声優には神谷浩史などのレギュラー陣に加えて、ゲストキャラクターには人気俳優の高良健吾、ベテラン声優の島本須美、お笑い芸人のバイキングなどが担当する。
小さい頃から妖が見えることで周囲から浮いていた少年夏目貴志は、祖母の夏目レイコが残した契約書”友人帳”を受け継ぐ。そこに名を書かれた妖たちに名を返してあげながら、様々なトラブルを解決していくのだった。
そんなある日、小学生時代の同級生だった結城と再会し、過去に少しだけ諍いがあったことを思い出す。また、レイコの知り合いだった津村容莉枝とその息子・椋雄と出会うのが、妖がらみの不思議な事件に巻き込まれていき……
感想
Twitterの短評はこちらです
#夏目友人帳
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年9月29日
あ〜夏目を見たなぁ〜という気分
もちろん好きだけど、映画として評価してって言われたら…困る!
舞台挨拶でも神谷さんが言っていたけど、夏目って何がいいか決め手はないけど、なんかいいんだよねぇ
ファンなら行くべし! pic.twitter.com/6MhldTcrLx
まぁ、夏目友人帳だよねぇ
カエル「そりゃ、夏目友人帳の劇場版だから当たり前ではあるんだけれど、いつもとほとんど同じようなことをずっとやっていて、安定感があったね」
主「下手なことを一切しないで、いつもの夏目をそのまま見せてくれたって印象だな。
先にも述べたけれど、夏目友人帳って別に1期の1話から全話見ないと理解できない、というタイプの物語ではない。
そりゃ、登場人物が増える回などもあるけれど、基本的には偶然テレビでやっているから観た、くらいでも全然いい、少し不思議な日常を扱った作品なんだよね」
カエル「それこそ、サザエさんとかちびまる子ちゃんのような、しばらく見ていなかったけれど、時々不意にテレビをつけるとやっていて、なんとなく見てしまうというような雰囲気のある作品だね」
主「そういう作品なので、原作やテレビアニメ版を見たことがない方でも、すぐに理解出来る作品です。
また、基本的な設定も非常に単純。
『妖(妖怪)たちに祖母が預かった名前を返してあげて、自由の身にしてあげる』ということさえ理解していれば、それでOK。
しかも作中でも説明してくれるので、とても理解しやすい作品に仕上がっています」
1本の映画として観ると……
今の所、レビューサイトの評価も高いようだね
基本的にはファン以外はあまり見に行きづらい作品というのもあるんだろうけれど……
カエル「じゃあ、1作の映画として観たときの評価ってどうなるの?」
主「う〜ん……非常に語りづらい。
もちろん、悪いとは言わない。
だけれど、夏目友人帳って独特の雰囲気を持つ作品でもあって……これは悪口ではないけれど、なんだか眠くなってくる作品なんだよね」
カエル「深夜のアニメということもあるし、派手なことの少ない、ゆったりとした作品で、特に癒し効果が多いのもあるだろうなぁ」
主「舞台挨拶で神谷浩史も語っていたけれど『何がいいのかわからないけれど、でも引き込まれる作品』というタイプだと思う。とても優しい世界観や、キャラクターの魅力があるということかもしれないけれど……
それは30分という時間だからこその魅力でもあって、じゃあ2時間の映画になったらどうですか? と言われると……少し言葉に困る」
カエル「まあ、派手なアクションや大きな物語があるわけでもなく、原作やアニメを見てきた人には衝撃の展開が! というタイプの作品でもないしね」
主「作画や演出のレベルもテレビアニメ版と大きくは変わらないように見えたかなぁ。
でもさ、そこを大きく変えて、劇場版だからと特別なことをしてしまうと、夏目友人帳の良さが全て消えてしまうと思うんだよ。
だからこそ、大きくいじることはしなかった。
それはそれで正解だと思うし、夏目友人帳の物語としては文句なし。だけれど、じゃあ映画作品として文句がないのか? と言われると……それはまた別の話かなぁ。
正直、眠くなったし、長く感じた部分はある。
でも、それが夏目友人帳の魅力ということでもあって……実は評価に困る作品でもあります」
舞台挨拶の中継を見て
今回は舞台挨拶の中継があったので、そちらのお話も少しだけ
色々とバラエティに富んでいたけれど、やっぱり神谷浩史ってすごいわ
カエル「この舞台挨拶では神谷浩史、井上和彦、小林沙苗、堀江一眞、佐藤利奈のいつものレギュラーメンバーに加えて、映画オリジナルキャラクターの声優を務めた高良健吾と島本須美、さらにはバイキングの2人も参加していました」
主「ここまでバラエティに富んだ人たちが一堂に集まる舞台挨拶も珍しいかもね。
元々テレビアニメで6期も続き、構築された現場の雰囲気もあって、しかも年齢層も結構バラバラ、さらには役者やベテラン声優、お笑い芸人もいるというのはかなりまとめる方も大変でしょう」
カエル「その点、アニメ業界や夏目友人帳に詳しくて、さらに芸能界にも通じているお笑い芸人のアメリカザリガニの柳原哲也を司会に選んだのは、いい人選だったね」
主「その中でも自分が印象に残ったのは、やっぱり神谷浩史かなぁ。
彼はすごく周りが見えていて、どうしても話に入りにくいであろう高良健吾をいじったり、話を振ったりと気遣いが見えた。
さらには軽口もあって、場を夏目ファンだけのものにしない、疎外感を与えないようにという配慮も伺えて、こういうところも人気の理由の1つなのだろうと感じたね」
カエル「井上和彦などは独特のマイペースに発言していたし、島本須美がバイキングをいじったりとしかして、結構楽しい舞台挨拶だったね」
主「いろいろな業種……と言ったら、みんな役者や舞台に立つ人だからあれだけれど、専門とする場が違う人たちをうまくまとめて、そしてあまり過剰に煽りすぎない、いい意味で緩い舞台挨拶でさ。
それって、夏目友人帳だからこそかもしれない。
あの優しい世界観と、周りの人を巻き込みながらも、抱きかかえるような作品だからこそ、生まれた雰囲気が舞台挨拶でも出ていたね」
キャストについて
それでは、今回のキャストについて語っていきましょうか
もちろん、悪くないですよ
カエル「いつものメンバーは当然のように安定しているし、今回は和彦さんが大変だったと思うけれど、しっかりと可愛らしいニャンコ先生を演じられていて、やっぱり夏目友人帳のマスコットキャラクターなだけはあるなぁ、と改めて教えられたというか」
主「……これは自分だけかもしれないけれど、佐藤利奈の演技が夏目の時はエライ可愛い気がするんよね。
もちろん、いつも魅力的な演技をするけれど、夏目の時はまた別の可愛らしさがあるというか。
まあ、それはいいや」
カエル「たぶん、心配されるのは高良健吾とバイキングの演技だと思うけれど……」
主「あれでいいんじゃないかなぁ?
高良健吾って元々声質がとても良くて、低くて通る声をしているから、とても声優向きな人でしょう。
ちょっと朴訥とした雰囲気が、いわゆる芸能人の声優演技にも聞こえなくもないけれど、本作の緩い雰囲気に見事に合致している。
癒しをあたえてくれる作品に仕上がった1つの要因は、高良健吾の声質でしょう。
文句なしです」
カエル「バイキングも言われなければ違和感がなかったんじゃない?」
主「そうだね。妖の演技ということもあるのだろうけれど、少しのっぺりした部分もあったけれど、それがかえっていい味になっていたし。
元々お笑い芸人は舞台で台本通りに演じることも多いし、発声などがしっかりしている人も多い。とてもいい味を出していたんじゃないかな」
以下ネタバレあり
作品考察
夏目貴志と夏目レイコ
ここからはネタバレありで語っていきます!
まあ、言うほど語ることもないんですが……
カエル「とても静かで分かりやすい話であるから、特にうちみたいのがなんだかんだと邪推したりする必要もない作品なんだよね」
主「強いて言うならば、終盤までは夏目の昔の知り合いである、結城大輔の必要性があまりピンとこなかったけれど、終盤でようやくその意味がわかったかな。
彼は夏目レイコと今作オリジナルの津村容莉枝の対であり、さらには夏目のもう1つの可能性だったのかなぁ、って思って」
カエル「あのまま喧嘩別れではないけれど、モヤモヤした感情を残したまんまだったら、レイコさんと同じような寂しい感情を持ってしまうからね」
主「本作の中ではとても重要なのがレイコの存在だけれど、その実態はよくわからない。作中でも語られているように、どんな人と結ばれたのか、その後の人生についてはほとんど語られていない。
作中に登場する学生時代は寂しい思いをしていたであろうというのはわかるけれど、そのあとは一切不明なんだよね。
それって、たぶん将来的には夏目貴志ともつながる部分があるんじゃないかな」
カエル「えっと、話を整理すると、まずはレイコさんと貴志の話をするのね」
主「たぶん、夏目友人帳の1つの物語の形としてあるのが、レイコの歩んだ道筋を貴志が辿るというもので……レイコが友人帳に名前を集めれば集めるほど、人との関わりは薄くなっていく。妖の世界に足を踏み入れる結果になる。
貴志はその逆であり、妖が見えるからこそ、疎外されていた部分もあった。
だけれど、その名前を返せば返すほど、知り合いも増えて人とうまく付き合えるようになっている……結果的にはそういう物語なんだよね」
夏目の祖父や家族が明かされない理由の考察
えっと、なんだかんだ言って考察するんだね……
いや、いまなんとなく思いついているだけなんだけれど
主「じゃあ、なぜ祖父や家族があまり多くのことを語れないんだろうか? という疑問が当然出てくるじゃない?
たぶん、それって現段階の貴志には必要ないんじゃないかな?」
カエル「……必要ない?」
主「夏目友人帳って”レイコの過去を貴志が辿る”という物語だとして、仮に友人帳の名前を全て返し終えたら、ではどうなるのだろうか? ということを考えてみる。
するとさ、思うのは……妖とあまり関係のない未来が始まるわけだ。
夏目友人帳は本当に日常の物語で、恋愛などのような要素がとても少ない。あっても友情以上のものは、超えていない印象だ」
カエル「貴志の相手候補もいないわけではないけれど、それは描かないようにしているように感じるかなぁ」
主「もちろん、終盤に大きな物語の波を持ってくるためかもしれないけれどさ、そこは貴志が知る必要はない、という判断もあるんじゃないかな?
今の貴志がやっていることは”学生時代のレイコ”を辿ることであって、その後のレイコを辿る必要性が、まだないのかもしれない。
じゃあ、それを辿るときはいつなのか? というと……例えばレイコにとっての祖父にあたる人、つまり貴志の恋人が出来た時とか、あるいは両親代わりの藤原夫妻が倒れた時に、両親について深く関わるのか……」
カエル「どちらにしろ、物語は終わりに近づいている時だろうね」
主「夏目友人帳には”レイコの思いや誤解されている部分を解放する”みたいなところがテーマとしてあるように思うんだよ。
レイコと貴志は対の存在だし。対である貴志に大きな変化が訪れた時にこそ、その隠された過去が明かされるんじゃないかな?」
貴志と結城
話を映画版に戻しましょうか
じゃあ、結城の役割はなんだったのか? というものだ
主「先にも語ったけれど、結城というのは夏目貴志の対になる存在だ。まあ、夏目友人帳はどのキャラクターも貴志となんらかの形で対になる場合が多いけれど……
結城の役割は”気持ち悪さを観客に伝える存在”である。
それと同時に学生時代に疎遠になってしまったレイコの友人である容莉枝とも同じような印象を与える存在じゃないかな?」
カエル「妖が原因で疎遠になってしまった容莉枝と、幽霊が見えると嘘をついたことも原因で疎遠になってしまった結城という対比だね」
主「たぶん、結城のキャラクターにどことなく嫌悪感を抱く人っていると思うんだよ。
だけれど、それって観客が『妖はいるのに、結城は嘘つきだ』と知っているからであって、作中世界の周囲からしたら、結城とレイコや貴志ってそこまで大差ないわけ。
気持ち悪いことをずっと言っているやつ、という評価だから。
あの結城が阻害されていたのは夏目貴志も同じような思いを抱いていたからであり、友達だと思っていたのに、実際は嘘だったから離れていった」
カエル「まあ、あれじゃしょうがないよね……」
主「でも、夏目友人帳は”レイコが果たせなかったことを貴志が行う”というのが基本的な物語であるならば、気まずい別れ方をした相手と再び仲直りをする、というのもその1つであるわけだ。
その結果、友人帳から名前は減るけれど、人間の友達が増えて行く……だからこそ、本作ではあまり活躍自体は少ない結城を出したのではないかな?」
受けれ入れていく物語
とても現代では大切な”受け入れていく精神”を大切にする作品だよね
もう一人、貴志と対になるのが名取の存在だ
カエル「石田彰演じる名取はとても人気の高いキャラクターだけれど、貴志と違って妖を払おうとする人だ」
主「悪い人ではないし、むしろ妖との付き合い方では貴志よりもよっぽど全うかもしれない。
で、本作が大事にしているのが『どれだけ多くの存在を受け入れるのか?』というものであり、本来ならば受け入れられないような妖や人間であっても、きちんと向き合って受け入れていく、その先に周囲を許容しあう社会が生まれていくわけだ」
カエル「夏目友人帳の世界観はとても優しいと言われているけれど、でもただ優しいだけではなくて、その世界を作り出すために貴志をはじめとしてみんなが努力した結果だもんね……」
主「時には受け入れるというのは苦しいこともあるでしょう。劇場版では、容莉枝が受けた思い……息子への愛は、時に彼女を苦しめることになる。だけれど、それを受け入れるような形に物語は進んでいく。
決して辛いもの、もしくは受け入れらないと思った相手を除外するのではない。
それではレイコのような悲しい人を増やしてしまうだけだ。
だからこそ結城のような癖のある人物でも、しっかりと向き合い、その心の底にある思いを受け入れた後の鮮やかな空模様と秋の風情が、とても心に染み入るのではないかな」
まとめ
では、この記事のまとめです!
- 映画としては派手さは少ないが、しっかりとした夏目友人帳の劇場版!
- 声優陣は好演が多し! 高良健吾も良かったよ!
- 夏目友人帳の核である”受け入れる”ことを意識した物語に!
それと、EDがとても良かったんだよ!
カエル「夏目友人帳はどの作品もOPとEDがいいんですが、今作もきっちりと沁みるいい楽曲を持ってきたね!」
主「あの曲を劇場で聴いて欲しいなぁ……本作の評価って本当に高いけれど、それはファン補正もあることは間違いないけれどさ、でもED曲が素晴らしいからこそ、観終わった後の清々しさが大きいというのもあるんじゃないかな?」
カエル「ファン向けな印象はどうしてもあるけれど、でも悪い作品ではないよね」
主「なんか、2000年代後半の幽霊などを扱った作品が見たくなってきた。あの時代って『蟲師』なんかが顕著だけれど、すごく独特の雰囲気の作品が多かったんだよね……蟲師、劇場で観たいなぁ。
まあ、それはいいとして、EDも含めて、ぜひとも劇場で鑑賞して欲しい作品です!」