今回は近年のディズニー映画を代表するアナ雪のお話です
2の全米公開日も決まったし、ここいら辺で語っておきましょうか
カエルくん(以下カエル)
「うちでもなんども記事の中で言及しているから、すっかり語った気になっていたなぁ」
主
「いつかは語りたいと思いつつ、先延ばしにしていたのでこの機会にね」
カエル「では、早速ではありますが冬にぴったりの映画の記事のスタートです!」
感想
では、まずはTwitterの短評からスタートしましょう!
アナと雪の女王を久々に鑑賞
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年1月3日
吹き替え版で見たが音楽と歌声が抜群に素晴らしく、万人にわかりやすくてあれだけのヒットにも納得する一方で、お話作りには疑問も若干ある
特に近年のディズニー(ピクサーも)の作品に顕著だが、敵の作り方が下手なんだよなぁ…https://t.co/oYonPh6WNK
近年のディズニー作品の方向性を象徴する作品だよね
カエル「やはりあれだけの大ヒットをした作品でもあり、日本でも特別に人気のある作品だよね。
あれだけ話題になった『Let it go』の歌は日米ともに素晴らしくて、何度も聴いてしまうほど!」
主「まず1つ言及しておきたいのは日本においてあれだけ流行った理由の1つとして原曲はもちろん、吹替え版も含めた楽曲の良さがある。
この辺りは『君の名は。』や、2018年末から大ヒットを記録している『ボヘミアン・ラプソディ』もそうだけれど、いい楽曲というのは、世代、性別、その他多くを乗り越えて万人に届きやすい。
つまりある種のミュージカル描写、あるいはライブ描写というのはエモーショナルな快感を映画としては発揮することができるんだ」
カエル「特にディズニーなんて伝統的にその描写が素晴らしいからこそ、ここまで人気を博してきたという歴史があるもんね」
主「これは近年の日本のテレビアニメもそうで、多くのアイドルアニメやバンド、ライブシーンのある作品、あとは……具体例を出すと『マクロスシリーズ』などもそうだけれど、絵と音楽が一体となった快感はとても大きい。
個人的にはディズニーってその描写に頼りすぎていない? って思う時もあるんだけれど、でもそれだけ重視するだけのクオリティはあって、それが最大限発揮された作品だ。
特に本作は吹替え版が良い!
この影響はとても大きくて、どうしてもアニメ映画は子供を連れて観ることも多いから、字幕よりも吹替えで鑑賞する人が多い傾向にある。そして松たか子と神田沙也加の歌声の良さが、本作をより魅力的にしているのは間違いない」
エルザとアナの対比構造と、本作の欠点
だけれど、お話作りには文句があるんだよね?
基本はシンプルな物語で、序盤は抜群にうまいんだけれど終盤がねぇ
カエル「これは近年のディズニー(ピクサーも)の弱点でもあるけれど、悪役の登場が雑だったりするのかなぁ」
主「本作は序盤から
”エルザ=氷の魔女
アナ=天真爛漫なプリンセス”
という構造になっている。それは序盤から特に強調されていて、最初は仲が良かった姉妹がある日を境に壁ができ、アナは戴冠式で『恋とはどんなものかしら?』と心待ちにしているけれど、エルザは『隠さなければ』と苦しい胸のうちを明かしている。
この対比自体はとてもよくて、序盤は特にうまく機能しているんだ」
カエル「エルザの孤独の理由もわかるし、姉妹だけで生きていかなければいけないという苦しみも伝わってくるもんね」
主「本作は多くの王道な童話であれば、エルザは悪の氷の魔女であり、アナはヒロインであって、クリストフが王子様、あるいはアナを救う英雄になるわけだ。
だけれど、この作品は氷の魔女に寄り添う物語でもあるから、エルザを倒してしまえばそれでおしまいということにはならない。そのために、物語としての目的が作りづらいわけだ」
カエル「最初は”町の冬を終わらせる”ためなんだけれど、後半はそれが最終目標としてあるけれど、氷漬けになったアナをどうやって救うのか? という方向にシフトしていくね」
主「物語としては”悪を倒してハッピーエンド”が1番わかりやすいんだよ。
実際、ディズニーのアニメ映画の中でも代表的な作品はそういう流れもいっぱいあるし。
だけれど、アナ雪はある種の”悪に寄り添う物語”でもあるんだけれど、それがうまくできない」
ディズニーの限界
これが前にもシュガーラッシュで語った”ディズニーの限界”の部分だよね……
悪党を作らないとドラマが作れない…わけではないけれど、そう思ってしまうよね
カエル「エルザは悪役にできないとしても、なんで途中からハンス王子を悪役にしてしまったのだろうか? って疑問が出てしまうんだよなぁ」
主「例えば、物語としては”最初は打算だったけれど、接するうちに真実の愛に目覚めた”という筋書きだってできた。まあ、そうなるとクリストフが全く意味のないキャラクターになってしまうし、かなりドロドロとした物語になってしまうから大幅な脚本の変更が必要だけれどね。
そもそもハンスのやってきたことというのは、あの手のひら返しの瞬間までは特に間違いでもなかった」
カエル「エルザを力づくでどうにかしようとしたのは、問題があるけれど……」
主「あの瞬間にはエルザは魔女であり、アナでも止められるかわからない以上、為政者の決断としては正しいものであると思う。
まあ、なんで衛兵が余所者のハンスやウェーゼルトン公爵の命令をあそこまで聞くのだろうか? 自国の王女を害する行動を止めようとしないのか? という疑問があるけれど、そこはファンタジーだからと答えるか」
カエル「その結果、最後の方は物語がグダグダになってしまうというね……」
主「流れとしてはわかる部分もあるけれど、エモーショナルな快感を呼ぶ脚本にすることはできなかった。ハンスもあの手のひら返しのシーンだけが特別悪党だったけれど、それ以外は悪党と言えるのか微妙だし。
エルザだって自分の力だけで牢屋から逃げ出してしまうし……それこそ、オラフがエルザを助けて、アナをクリストフが救うという物語の方がまだ納得できたかなぁ。
最後はご都合主義に見えるような作品になってしまった。
つまりさ、シュガーラッシュと同じで……悪党になりがちなキャラクターに寄り添う物語のはずが、ドラマの都合上さらに悪党を出すことになってしまい、物語がボヤけてしまったね」
アナ雪が描いた男女の姿
アナ雪が残した大きな功績
でもさ、うちでもなんども参考作品として出てきているけれど、アナ雪が残した功績ってとてつもなく大きかったわけじゃない?
近年の映画、とりわけハリウッドを象徴するような作品だからね
カエル「エルザの中ば破れかぶれの『Let it go』も、物語の流れを考えればそこまでハッピーではないけれど、映像と音楽はまるでハッピーエンドな物語のように明るく楽しげなんだよね。
これが独身でもいい、恋をしないでも好きに私は生きるの! という現代の悩める女性の気持ちを代弁したかのような作品となっているという話だけれど……」
主「最も象徴的なシーンはラストのアナの選択のシーンでさ、クリストフが走ってくる姿を見ながらも、姉の危機を見てそちらの方へ走って行ってしまうわけだ。まあ、状況的にしょうがないし、どっちを選んでも真の愛でアナの呪い自体は溶けたと思うけれど、結局は家族を思う気持ちが勝った。
つまり、男なんかいなくても、姉妹2人でも私たちはしっかりと生きていくのよ、という物語だよね」
カエル「旧来の作品であれば男の方に走っていきそうだけれど、そうじゃなくて家族を選ぶということが本作の最大の選択なんだね」
主「本作は自覚的に過去のディズニープリンセスを批判している部分もあって、その1つがあったばかりの男性と運命の人だと思い込んで恋愛に落ちてしまうところ。
これは多くのディズニー映画の王道でもあり『白雪姫』に至っては初対面で仮死状態になっている姫に王子様がキスをして結ばれるという、ある種のホラーのような展開にもなっている。
過去のディズニープリンセスは当然のことながら相手をよく知りもしないで簡単に惹かれてしまう、言ってしまえば世間知らずなお姫様だけれど、それが人気を博していた。そこからの脱却をうたった作品でもある」
カエル「そう考えると、この映画がヒットしたのは現代の女性解放の流れを考えるととても有意義なものなんだね」
男性の物語として考えると
一方で、ここで視点を変えて男性の物語として見てみようか
”男はつらいよ”な物語でもあるんだよねぇ……
カエル「クリストフって傍目から見てもかなりいい男なんだけれど、どこか抜けていて憎めなくて、それがかえって味になっているキャラクターだよね」
主「男としては応援したくなってくるよなぁ……
まあそれはそれとして、まず最初の氷を削る描写にもあるように、あの世界ではアメリカらしく”マッチョで力強い男がカッコイイ”という世界であるようにも見受けられる。そこに憧れて、子供時代のクリストフもそのようになろうと努力をしている。
しかも親兄弟はいないようにも見受けられるし、その結果氷売りとして仕事をしているのの、友人は少なく、あの冒頭に出た氷屋の団体にも所属していないことがうかがえる」
カエル「……そう考えると、明るい性格で紛れてはいるけれど思い状況にいる人物だよね。
しかも、アナとは当然のように身分が全く違うわけで……」
主「ヒーローのように振舞おうとしたところで、それもうまくいかないでコメディリリーフの役回りになってしまう。
今作の男像って旧来の理想の男性像の否定とまでは言わないまでも、疑問を投げかける部分があって……典型的な王子様キャラであるハンスは悪役だし、マッチョのクリストフはいい奴だし、最後はいい感じにはなるとはいえアナとは微妙な関係になってしまう。
このあたりは現代の男性がどのようになればいいのか? という疑問が生まれてくるような気分だよ」
カエル「アメリカの映画を見ても、もちろんドゥメイン・ジョンソンのように昔ながらのマッチョな人がスターである一方で、でもそういうスターは減っているように見えるということもあるよね」
主「このあたりは難しいところだけれど、女性解放運動が活発化すればするほど、男性はどうすればいいのかわからなくなるところがある。もちろん、女性解放自体はとても良いことだ。
でも同時に、現代社会における男性のあり方というのもなんらかの形で提示する必要があるのではないか? という思いがある。
次にディズニー、ないしはピクサーには”男性が何を目標とし、どのように生きればいいか?”を提示する物語を希望したいね」
まとめ
ではこの記事のまとめです
- 音楽映画として快感の多い物語であり、多くの人に魅力が伝わる
- ただし物語としては特に後半が雑な印象も
- 本作が描く女性の解放は今のハリウッドを象徴する物語に
アナ雪2も公開が決まっているし、楽しみにしたいね
カエル「ちなみに、2はどんな物語になると思う?」
主「それこそ『シュガーラッシュ2』になるんじゃないかな? と思っている。
エルザは王女様として王国を継いでみんなのために生きることを決意したわけだけれど、今度は”女性を縛り付けるもの=伝統的な家”という問題が生じてくるから、そこからの解放を描くか。
おそらく、アナ雪はあくまでもプリンセスの物語だからクリストフを掘り下げることはしないでしょう。
ここで女性同士の同性愛を描く可能性もあるけれど……まぁ、かなりきわどい問題でもあるから堂々と主題としては描かない気がする。この予想が外れたら自分は称賛するけれど、さあどうなるかな」
カエル「アナ雪2は2019年11月に全米公開予定! 日本もあれだけのヒットをしたら冬の間に公開してほしいところです!
というわけで、アナと雪の女王の記事でした!」