今回はテレビアニメも好評だった『劇場版幼女戦記』の話をしていきましょう!
ずっと気になっている作品ではあったんだよねぇ
カエルくん(以下カエル)
「なんか、最近はこの発言が恒例化してきた感もありますが、テレビシリーズも原作も手に取っていません!
とは言っても、設定自体は知っているレベルではありますが」
主
「別に”興味ない”とかではなくて、幼女戦記はめっちゃ興味津々だけれど、見る時間がないので後回しにしているうちに溜まってしまった作品だね。
ちなみに、うちのトルネにはまだ残っているのでいつでも鑑賞することができるのだけれど……」
カエル「原作もアニメ化前から話題になっていて、興味はあったけれどライトノベルらしくすごく長いから、手を出すのをやめてしまったんだよね」
主「なろう系ではないけれど、インターネット小説サイトから誕生した作品でさ。自分も”なろう系”なんて言って半分馬鹿にするような言説になってしまう時もあるけれど、でも2010年以降のアニメ、ラノベ文化はネットから生まれる作品を抜きにして語れない。
もちろん玉石混交ではあるけれど、中にはとても面白い作品もあって……幼女戦記もネット小説とか、ラノベだからといって馬鹿にできない作品だと思っている。
まあ、と言っても原作もアニメもほぼ未見で設定などをかじった程度だけれど、この劇場版を観て、その評価を強くしたね」
カエル「では、そのあたりも含めながら語っていきましょうか。
幼女戦記の感想記事のスタートです!」
作品紹介・あらすじ
作者のカルロ・ゼンが2011年からインターネットの小説投稿サイトで連載を開始し、2013年からKADOKAWAにて書籍化され連載され、2017年にはテレビアニメも放映された『幼女戦記』の劇場アニメ化作品。
監督は上村秦、脚本は猪原健太、キャラクターデザイン・総作画監督に細越裕治などテレビシリーズでも力を発揮したスタッフが手がける。
キャストは悠木碧、早見沙織、三木眞一郎、大塚芳忠、玄田哲章などの実力派声優がテレビシリーズと変わらずに好演。その他、戸松遥、チョーなどが新キャラクターに声を当てる。
日本においてサラリーマンだった男が死んだ結果、その記憶を持ちながら存在Xの手によって転生し、金髪碧眼の9歳の少女ターニャ・フォン・デグレチャフ少佐として成長していた。
彼女が率いる帝国第203航空魔導大隊は、南方大陸での共和国軍残党との戦いに勝利し、待望の凱旋休暇を楽しみにしていたがターニャが所属する帝国と対峙するルーシー連邦国境付近にて不審な点が確認され、新たなる任務に赴くことになる……
感想
では、Twitterの短評からスタートです!
#幼女戦記
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年2月8日
お〜も〜し〜ろ〜いぃぃ!!
架空の世界ではあるものの現実のヨーロッパの大戦を下敷きにした物語を楽しんだ上にターニャの悪党具合にメロメロに惚れ込んでしまう
アクションも素晴らしく空戦描写や爆発などでワクワクした!
テレビアニメの劇場版らしく繋がる話のようだが一見の価値あり! pic.twitter.com/eSyn7jLLx7
これはアニメファン必見! 楽しめるアクション映画でした!
カエル「いや〜、本当に面白い作品だよね!
ほとんどここまでの流れは知らないけれど、でもこの作品の魅力はすごく伝わってくるような内容で!」
主「基本的には世界大戦中のヨーロッパを参考にしているから、とてもわかりやすい物語でもある。というのも、多くの漫画やアニメ、ゲームではこの時代を参考にしたものも多く制作されているし、架空の戦記とはいえお話自体もこれらの作品に馴染みがあればついていきやすい。
これが完全にファンタジーな世界を舞台にしたものだったら、ついていくのがきつかったかもしれないな」
カエル「それに、今作が繰り広げる大迫力の戦闘シーンや爆発シーンなどが本当にすごくって!
この戦闘シーンを目的に劇場に向かってほしいくらいです!」
主「最近アニメ映画を見慣れているからか、今回の爆発シーンなどのエフェクトがあまりにもすごくて『これ、もしかした橋本敬史が作画監督みたいなことしているんじゃ?』ともったら、案の定エフェクトディレクターで参加されていました。
やはりエフェクトに関しては当代随一の迫力を持って描ける人であり、今作も爆発などの細かい描写が非常に迫力があります。
それに今作では空戦描写が非常に多く、その動きも素晴らしい!
劇場で観ることをオススメしたい作品になっています!」
カエル「そして今回は川崎にあるチネチッタで鑑賞しましたが、音響監督の岩浪美和が特別に音響調整しただけあって迫力が満点!
他にも立川シネマシティ、イオンシネマ幕張新都心で特別な音響調整がされており、どうしても東京周辺になってしまいますが、できればこれらの劇場で見てほしい作品です!」
主「いやぁ……砲撃シーンなどで震えたね!
これだけの大迫力を体験できる機会なんてほとんどない!
自分の評価もこの音響の効果もあって爆上がりですよ! 音圧で体がビリビリと震えだすほど!
ぜひ、これらの劇場で鑑賞できる方は行ってみてください!」
架空の戦記ものだからこそできること
そして戦争描写も素晴らしかったよねぇ……ターニャの悪魔のような振る舞いに震えちゃった!
戦争映画では描けない面白さが詰まっていたよなぁ
カエル「そりゃあね……日本では戦争は絶対的な悪であるし、もちろんそれは正しいし。命が失われる以上、それが娯楽であっていいはずがないというのも最もで、実写で戦争映画を製作すると、どうしても失われていく命の方に注目をしてしまうから少しくらい印象にもなってしまって……」
主「だけれど、本作はそのような湿っぽさが一切ない。
徹底的に合理主義のリアリストのターニャが主人公だからこそ、悪党でありながらもその魅力に満ちている。特に今作は明らかにナチスドイツがモデルとなっている帝国側に所属しているけれど、このような描き方って実写ではできないじゃない?
それをこのように描いてくれたこと……その突き抜け方が、本作の最大の魅力といえるだろうな」
カエル「もちろん戦争はダメだけれど、銃や戦車、爆撃にワクワクしてしまうのも人の性であって……あの宮崎駿ですらも戦車や飛行機が好きで何度も作品中に出しているしね。
これはアクション映画が好きな人にも共通するだろうけれど、なんだか何だ言ってもフィクションの中では人が倒れる場面を娯楽として楽しんでいる部分もあって……悪い奴が次々と撃たれたり斬られていく快感ってのも否定できないもんね」
主「それでいうと、本作はそのような快感に詰まっている。一部の作品では『殺さない主義』というものもあるけれど、それとは真逆にある作品だよね。
それに戦争描写の奥深さが大好き!
作戦の許可のために政治的判断を仰ぐために上に確認したり『戦争は外交の手段でしかない』というセリフにもしびれた!
このように当たり前のことを当たり前に描いている作品って、近年でもほとんどなかったような印象があるから、一気にテンションが上がりました!」
声優について
本作もキャストが超豪華です!
碧ちゃん最ッッッッッッ高ですわ!
主「自分は今の日本声優界において、女性で30歳以下では悠木碧と早見沙織がTOP1、2だと思っているんだよ。じゃあ、この2人のうちどっちのほうがうまいのか? と言われるとそれはすごく難しいけれど……今作のようなハッチャけた、言ってしまえば狂人のような演技に関しては悠木碧の方に軍配があがるんじゃないかな?
その魅力が最大限発揮されているし、今作が超絶的に面白いのは悠木碧の演技力が非常に大きいのは間違いない!」
カエル「しかもその副官に早見沙織がいて、相手役が戸松遥だもんね……これは声優ファンにはたまらない作品になっているのでは?
そして忘れてはいけないのが、今作はいい声をしたおじさんたちが非常に多いということです!」
主「幼女戦記の名前だけを聞くと、なんだかキワモノのような印象を受けるかもしれない。まあ、それそれはそれで間違いではないんですが、本作はそれだけでは収まらない魅力が沢山あります!
その1つが重厚なベテラン声優たちの演技であり三木眞一郎、大塚芳忠、玄田哲章、飛田展男、チョー、森川智之などのいい声のおじさんたちが非常に多い!」
カエル「やっていることはファンタジーもあるけれど、政治劇も含んだ戦争ドラマだよね。この可愛い女の子たちが目につくけれど、このおじさんたちがいるからこそ、女の子たちの魅力も引き立つわけで……」
主「戦争をエンタメで描く面白さがここにあるよなぁ。
この声優陣たちの名演技もぜひぜひお楽しみください!」
以下ネタバレあり
作品考察
正義と悪が逆転した作品
では、ここからはネタバレありで語っていきましょう!
今作がこれほどまでにエンタメ性に特化した作品になったのは、思い切った描写の数々にあるな
カエル「まずは正義と悪が逆転して物語、ということだけれど……確かに普通は帝国主義の国家って悪役として描かれやすいよう描かれやすいような……
スターウォーズなどでも敵は帝国軍だし、今の社会情勢からすると帝国主義はさすがに正義にはなりづらいのかなぁ」
主「今作の面白いところは、最初に帝国が敗戦することがすでに決まっていると明らかになっていることだ。
世界地図などを見えてもナチスドイツを連想する……もちろん架空の戦記モノなので、そこを強調するようなことはしていないけれど、現実の世界大戦がモチーフなっていることは明白。
さらに言えば……序盤の戦いにおいてターニャの使用する武器によって小規模ながらもキノコ雲が上がり、仮にあの戦争においてアメリカ以外……特に枢軸国が核兵器か、それに準ずる破壊力の兵器を持っていたら? という仮定に基づいているようにも思える」
カエル「……それを聞くと、諸外国ではとても大きな騒動が起きそうな設定だよね」
主「相当危険な橋だと思うよ。
だけれど、ターニャの描写をはじめとして悪党として描くことでそのバランスを取っているようにも見える。
では、ここで”本来ならば正義側の人間”に……今作ならばメアリー・スーに注目してみよう」
メアリー・スーの存在の意味とは?
今回の敵であるメアリー・スーだけれど、新兵とはいえ、独自の行動が目立ってしまっていたね
彼女の存在そのものが、今作の魅力に直結している
カエル「そもそも、名前だってメアリー・スーという意地悪なものだし……これって、二次創作などで作者によって都合よく作られた女性キャラクターの別称じゃない?
いかにも普通の名前っぽいけれど、こんな名前をつけられるキャラクターって可哀想だよねぇ」
主「……本作の作者であるカイロ・ゼンの作り込みに恐ろしさすら感じるんだけれどさ、本来ならばこの作品はメアリー・スーが主人公になるんだよ」
カエル「まあ、確かにターニャは悪役っぽいし、特殊な力を持った新兵であり、父親の仇を討つという目的を考えれば主人公っぽいかも……」
主「メアリーの描写で注目したいのは以下の3点。
- 新兵であり、他を圧倒する特殊な力を所有する
- 神への思いが強い少女
- 登場直後の描写
まず1番だけれど、これは物語の主人公としては王道中の王道だ。
新兵でありながらも特殊な力や能力によって覚醒し、敵を倒していく……例えば『ガンダム』のアムロ・レイ、EVAの碇シンジなどもこのパターンに該当するだろう。
カエル「新兵というと軍隊に限定しそうだけれど、普通の少年少女が特殊な世界に行って……などの設定のように考えれば、バトル物の主人公の大半がこの条件に該当するよね」
主「まあ、ターニャも同じなので、ここはターニャと対になる存在、本作におけるライバルやラスボスみたいな扱いだと考えるといいだろう。
面白いのは、2番の”神への思い”なんだよ」
神への反逆
メアリーが神様への思いが強い描写は何度も出てきたよね
今作は明確に”神や運命に抗う物語”である
カエル「ターニャという存在そのものが、運命や神様(存在X)への対抗心の塊みたいのものだしね」
主「メアリーは登場した描写からずっと一貫して、ことあるごとに神への愛を口にする。
さらに彼女の出身である合衆国はおそらくアメリカをモチーフにしているのだろうが、アメリカはそれこそ神の国であり、信仰が国家の根本にある国だ。
そして極め付けはラストバトル。
荒れ果てた教会での生々しい先頭の果てに、マリアを思わせる宗教的モチーフにメアリーの血が飛び散る描写などを考えても『神の信奉者(正義)VS無心論者(悪)』という対立関係がとてもうまくできているわけだ」
カエル「本来ならば正義の味方であり、神を信じるメアリーが敗れ去るのは珍しい展開かもしれないね……」
主「そして3つ目のメアリーが登場した直後の描写だけれど、彼女のどこか牧歌的な新兵訓練の様子などは、まるで映画のスタートの描写のようでもある。
特に自分は髪を切るシーンが大好きで、あそこが描かれたからこそ、本作は静かでありながらもたった数秒でメアリーを印象付けることができたと思うほど。
それだけ多くの……言うならばゲタを履かせてもらった存在がメアリーなんだ」
感情VS理性
だけれど、結局はターニャが勝つわけじゃない?
ここが自分が興奮したポイントなんだけれど、ターニャは感情で行動していないわけだ
カエル「バトルの終盤でも『明確に理性を持って彼女を討つ』みたいなセリフがあって、そこからは一気に流れが変わったよね」
主「後々に軍隊運営とは根性である、みたいなことを語る将校もいたけれど、本作はターニャの徹底的な合理主義とリアリズムに基づく思考によって、勝利していく物語だ。
ここで大事なのは”明確な理性を持って決意する”ということだ」
カエル「つまり、メアリーへの敵意は流れや事故による偶発的なものではないってことだよね」
主「これで誰かを救えば、ターニャはよくいる正義の味方の主人公になれただろう。
だけれど、今作においては明確に、確かな意思をもってしてメアリーを討つことを決めている。
つまり、そこには一切の言い訳する余地もなく、誰かを傷つけることが悪なのであれば、ターニャは明確に悪党である。
この描きかたが本当にシビれたんだよ!
敵に対する同情や感情移入する余地もなく、ただ必要だから討つ。このようなキャラクターがどれほどいるか!」
カエル「……なんでそこまで盛り上がっているのかはわからないけれど、まあ確かに戦争ものになるとどうしても戦争反対!とか、戦死したり巻き込まれて嘆き悲しむ人の感情は入ってくるよね」
主「他の描写も……
『戦争は外交の手段にしか過ぎない』
『戦争はどう勝つかが大事』
などのようなセリフにあるように、徹底的に戦争を合理化し、理屈で考えていく姿勢。それはこの作品のエンタメ性の根本から支えるものであり、レベルが高いものに思えたね」
まとめ
では、この記事のまとめです!
- 迫力満点! 最高のエンタメ戦争作品に!
- 声優陣も熱演! 特に悠木碧の魅力が100パーセント生きています!
- 正義と悪が逆転したことによって生まれるエンタメ性に満ちている!
映像表現のみならず、注目するポイントの多い娯楽アニメです!