物語る亀

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物語愛好者の雑文

『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』ネタバレ感想&考察 今年のポケモンはみんなが主役の物語!

 

 

今年もポケモンの季節がやってきました!

 

 

夏の季語に入れてもいいかもしれんの

 

カエルくん(以下カエル)

「えっと……季語?

 それはいいとして、今年の作品は特に注目しています!」

 

亀爺(以下亀)

「監督交代後、1作目のポケモン映画じゃからの。

 どのような作品にしているのか、とても楽しみじゃな

 

カエル「では、早速ですがレビュー記事を始めていきましょう!」

 

 

 作品紹介・あらすじ

 

 国民的人気アニメー『ポケットモンスター』シリーズの劇場作品第21作。

 前作公開の『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』から続く物語を描く。

 20作品監督を務めた湯山邦彦から矢嶋哲夫監督に交代し、新たな物語が始まる。脚本はアニメ作品を多く手掛ける梅原英司と高羽彩が連名で担当。

 また松本梨香、大谷育江に加えてゲスト声優に芦田愛菜、川栄李奈、濱田岳、大倉孝二、野沢雅子など様々な年代から起用している。

 

 

 サトシとピカチュウがたどり着いたフラウシティでは、1年に1度行われるという風祭りに向けて盛り上がりを見せていた。その最終日には伝説のポケモン、ルギアからの恵みの風がもらえるという。

 サトシの他にも参加したリサ・カガチ・トリト・ヒスイ・ラルゴという面々を巻き込みながら、物語は始まる。

 

 

 

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感想

 

 

それでは、Twitterの短評からスタートです!

 

 

 

悪い作品ではないが、評価に困る作品じゃな

 

 

カエル「この手の『評価に困る作品』って、何も語ることのない無難な作品に使うことも多いんだけれど……本作はその真逆です。

 とてもいい部分と、とても悪い部分の2つが同時に混在しており、しかもそのどちらもが切り離せない関係にあって……ダメな部分があるから、とてもいい部分があるという、何とも言えない状況になっています

 

亀「間違いなく今作は駄作だと断じる作品ではない。

 特に大きな挑戦が行われており、それがとても良い味を伴っておるし、何よりもポケモンだからこそできる味のある作品に仕上がっておる。

 賛否は少し割れてしまいそうではあるが、ポケモンファンである人たちはぜひとも鑑賞して欲しいの

 

カエル「あと、本作は結構懐かしい初期のポケモンも多くて、初代から金銀くらいのポケモンが多く見受けられるので、最近のポケモンはわからないなぁ……という方にも安心して見ていただけるでしょう」

亀「昨年の『キミに決めた』もそうであったが、特に昔から愛してくれている人たちのこともしっかりと考えている作品じゃったの」

 

 

今作で活躍するポケモン、ゼラオラ

 

矢嶋監督について

 

カエル「本作に対して特に大きな注目をしているのが、20年劇場版ポケモンの監督を務めた湯山邦彦監督から、矢嶋哲生監督に交代している点です。

 ちなみに、ポケットモンスターXYシリーズ以降のテレビアニメ版ポケモンの監督も務めている、若干33歳とアニメ監督として若い逸材として注目を集めています」

亀「特にわしが強く矢嶋監督に注目しておるのは、何と言ってもその若さじゃな。近年は30代のアニメ監督が徐々に頭角を表しており、京都アニメーションに所属する山田尚子や『宇宙よりも遠い場所』などでも監督を務めたいしづかあつこ監督などが登場しておる。

 そしてポケモンという子供向けアニメ映画の中でもトップクラスの注目度を集める作品の、バトンを渡された矢嶋監督は、これからさらに高い注目を集める存在になるじゃろう

 

カエル「それこそ、日本のアニメ界を代表する作品だしね」

亀「この世代は入社時からアニメ制作現場にデジタル環境が導入されており、生まれたときからパソコンやゲームに触れておるデジタル世代の申し子たちである。

 それまでのアニメと全く違うものを作る可能性も十分あるので、ぜひとも今後の活躍に注目しておきたいの」

 

 

 

 

キミにきめた! から本作へ

 

カエル「そして今作はタイトルにもあるように『みんなの物語』になっているよね。

 もちろん、伝説のポケモンであるゼラオラなども登場するし、活躍するけれど……今までの映画のようにその名前があるわけじゃないし」

亀「それと、今作の特長としてはサトシと同じように旅をする人間の仲間がいないことじゃろう。

 テレビシリーズのキャラクターがサトシとロケット団という、いつものメンツ以外は除くというのもなかなか画期的なことじゃな」

 

カエル「それをいうと昨年の『キミにきめた』もそうだったけれど……」

亀「あれはポケモン映画20周年という記念碑的な作品であり、あの時は発表されておらんかったが湯山監督がここで一度引くということを決めていた作品じゃからの。テレビアニメの人気エピソードを交えながら、ある意味では禁じ手のような演出をしておる。

 そのあとにこの映画が生まれている、ということに、とても意義がある

カエル「その辺りに関してはネタバレありのパートでもっと詳しく語っていきましょう!」

 

 


 

キャストについて

 

では、キャストの演技について語っていきましょう! 

 

とは言っても、今更、松本梨香や大谷育江の演技に関して語ることなんて何もないがの

 

 

亀「何十年と聞き慣れた声じゃからの。もはや文句をいうほうがおかしいじゃろう。

 では、今回のゲスト声優たちであるが……まあ、概ねよかったのではないかの?

 

カエル「芸能人声優としては芦田愛菜、川栄李奈、濱田岳、大倉孝二……それと、お馴染みの中川翔子だよね。

 芸能人声優ってちょっと嫌がられる部分もあるけれど、しょこたんなんて、もうプロの声優と共演しても違和感が全くないほど、とてもうまい!

亀「それにゲスト声優としていつものように山寺宏一と、そして今回はレジェンド野沢雅子が出てきておる。いやはや、とてもつもない映画じゃな」

 

カエル「確かに、芦田愛菜ちゃんとかは『あ、子役の演技だな』と思ってしまうようなところもあるけれど、でもキャラクターと合っているし……濱田岳はもう少し声量が欲しいかな? とも思ったけれど、キャラクターがキャラクターだからね」

亀「その中でも絶賛は川栄李奈じゃろう。

 若手女優の中でもアクションがとてもうまいことで注目を集めておるが、声の演技もなかなかのものじゃった。

 本作において彼女が担当したリサは、実質ヒロインとも言える重要な役どころであるが、その魅力を何倍にもしておったの

 

カエル「もちろん大倉孝二もカガチというおじさんの役によく合っていて、良かったです!

 これだけの名声優が多くいる中で、浮かないようにするだけでも大変だったと思うけれど、みんなキャラクターにも作風にも合っていたと言えるでしょう!」

亀「……そして、このキャスティングが本作に大きな意味をもたらしておるが、それは後々語るとしようかの

 

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それぞれが個性豊か!

(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku
(C)Pokemon (C)2018 ピカチュウプロジェクト

 

 

バトルシーンなどの演出について

 

カエル「じゃあ、ネタバレなしパートの最後に演出や作画について語っていきましょう!

 まずは見て欲しいのは、フウラシティの街並みだよね。

 アニメのポケモンはどの作品も美術や舞台設定が凝っていて、見ているだけで楽しいけれど、本作もそれは健在です!」

亀「やはり人とポケモンが美しい街並みの中で共存している姿を見るだけで、少し感動するところもあるからの」

 

カエル「それと……注目のバトルシーンについてはどうだった?」

亀「もちろんいいぞ。劇場で見るのにふさわしいクオリティになっておる。

 まあ、上を見ればきりがないし、もっと高いレベルと期待する声もあるのはわかるが、本作で重要なのはそこではないからの。

 空を飛ぶカットなども含めて、スピード感があり、また早すぎず子供の鑑賞にも問題ないくらいの派手さであった

 

カエル「そして、本作で注目して欲しいのはポケモンの表情や動きです!

亀「何よりもここが要の作品じゃからの。

 もちろん、サトシのかっこよさや、ラルゴやリサの可愛らしさも注目ポイントじゃが、何と言ってもポケモンの一挙手一投足、そして表情じゃの。

 ここがとても豊かであるからこそ、特別な言葉による感情表現をしなくても、しっかりみんなに伝わるし愛らしく感じるようにできておる。

 当たり前じゃが、ポケモンシリーズで重要なのはポケモンの姿じゃからの。例えほかが素晴らしくても、ポケモンの描写が適当ならばなんの意味もないからの」

 

カエル「ちなみに、今回のお気に入りはゴマゾウとメタモンです!」

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

欠点について

 

では、ここからはネタバレありで語っていきますが……まあ、やっぱり気になってしまうのが、本作の脚本だよねぇ

 

基本的には悪くないのじゃが、大きな欠点を抱えてしまっておる。

 

 

亀「それが、物語の軸がないということじゃ、

 物語には軸となるものが重要であり……例えば主役や、物語の中心となる事件や目標、またその作品を通して伝えたいメッセージなどじゃな。

 これは群像劇だとどうしようもない部分もあるが、本作は主役や事件の面ではとても弱かったと言わざるを得ない

 

カエル「う~ん……もちろん、サトシが主人公なのは良くわかるんだけれど、だけれど本作ではそこまで活躍しないというか……いや、活躍はするけれど大活躍はしないというか……」

亀「あくまでもこの作品で重要なのはサトシ以外の登場人物がどのように行動するのか? というポイントじゃからの。

 序盤は特にそれぞれのキャラクターの目的なども違うために、どこを向いていて何を目標にしようとしているのか、全く見えてこなかった。

 それで物語が続いてしまうと、やはり見ていて少しだけ辛いものがあるかもしれんの」

 

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主役なのは間違いないけれど、今作ではそこまで活躍しすぎないサトシ

でも相変わらずのマサラ人っぷりは存分に発揮!

(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku
(C)Pokemon (C)2018 ピカチュウプロジェクト

 

敵キャラクターの不在

 

カエル「そしてそれはこの敵キャラクターがいないということでも響いてきてしまって……

 もちろん、悪い人もいるんだよ。

 ポケモンを無理やり捕まえるハンターや、ロケット団も悪い人たちなんだけれど……なんというか、倒すべき巨悪はいないんだよねぇ

亀「誰かを、何かを倒したら終わり、という単純な物語ではないからの。

 物語を引っ張るポイントとして、それがあるとグイグイと進行して行くのじゃが、残念ながら今作はそれができなかった。だから、ある大きな事件が起こるまでは物語自体は停滞しているように見えてしまい、少し飽きてしまう部分もあったかの」

 

カエル「主役もいない、敵もいない、事件も起きない……がずっと続くと、流石に色々とねぇ

亀「ただし、これは大きな欠点であるのじゃが、同時に大きな魅力でもあるんじゃよ。

 だからこそ、本作は評価することがとても難しい。

 長所が短所、短所が長所の作品じゃらからの」

 

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おなじみのロケット団も登場!

彼らは最高のコメディーリリーフです

(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku
(C)Pokemon (C)2018 ピカチュウプロジェクト

 

本作最大の欠点

 

カエル「あと、語って起きたいのはやはり尺不足というか……

 どうしても一人一人のドラマが軽くなってしまう点だよねぇ」

亀「本作は全編で約100分ほどと比較的短い作品となっておる。いや、決して他のアニメ映画やシリーズと比べても特別短いというわけではないのじゃが……やはりこの尺に6人の物語を収めようとするのは、相当無理がある」

カエル「ここが群像劇最大の欠点だよねぇ」

 

亀「じゃが、わしが思うに今作最大の欠点はここではない

カエル「……というと?」

 

亀「映画泥棒の後に広告を入れるのは、大失敗じゃな。

 予告に対して賛否がある人もいるじゃろうが、わしはあの予告編の時間を宣伝の時間とともに、現実を忘れるための猶予期間だと考えておる。そして、それは映画泥棒が流れることによって『いよいよここから物語は始まるぞ!』という期待値が一気に跳ね上がり、物語世界観にのめりこめる。

 しかし、そこで広告を入れてしまうと、それが一度なくなってしまう。

 せっかく溜めた期待値が、削がれてしまう。

 おそらく、担当した人は宣伝として当然の選択として本編の冒頭に広告を入れたのかもしれんが……これはわしにしてみれば悪手を通り越して冒涜ですらある。

 他の欠点は物語制作上の仕方ないポイントでもあるが……これに関しては大きく声を上げていきたい。

 公式が映画の足を引っ張ってるぞ、との」

 

カエル「雰囲気づくりってすごく大事だからねぇ」

 

 

 

 

作品考察

 

キャストに込められた思い

 

ここからは今作を褒めて行くパートに入ります!

 

まずはキャストに込められた工夫について考えて行くかの

 

 

 

カエル「今回はおなじみのキャストはともかくとして、芸能人声優もたくさんいるし、みんな作中でしっかりと活躍しているよねぇ。ほんの一言二言、って人はいなかったね」

亀「ここで重要なのが、その起用された芸能人たちの年齢じゃ。

 今作では芦田愛菜が00年代、川栄李奈が90年代、濱田岳が80年代、大倉孝二が70年代生まれと年代がバラバラじゃ。もちろん、これはキャラクターに合わせたこともあるじゃろうが……わしは強い意思を感じるの

 

カエル「意思?」

亀「普通、この手の作品というのはゲストキャラクターは小学生ほどの少年少女や、せいぜい10代後半の子たちになってくるのが多いじゃろう。しかし、本作は明らかなおじさんや、もう還暦も過ぎたであろうお婆さんも重要なキャラクターとして出しておる。

 これはやはり『みんな』の部分に年齢による差別感を出したくなかったということじゃろう

 

カエル「……外見と中身を合わせてきたってだけじゃないのかもね」

亀「だからこそ、芸能人声優たちもそれぞれの年代の人たちを起用したのではないかの?

 特に高齢の野沢雅子は、物語に登場することに意義がある。

 そこに年齢や性別による壁などない、というのをしっかりと描くために、起用するゲストキャラクターの中の人まで選び抜いた結果じゃろうな。

 今作は特に昔からおなじみのポケモンも多く登場したが、やはり最近のポケモンばかりだと、しばらく離れておった大人たちが寂しさを感じるかもしれん。

 だからこそ『大人たちもポケモン世界を愛するみんなの一員なんだよ』ということをアピールするために、これだけの昔からいるポケモンを出したとも言えるのではないかの?」

 

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おじさんのカガチも良い味を出しています

ちなみに1番好きなキャラクターは彼です!

(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku
(C)Pokemon (C)2018 ピカチュウプロジェクト

 

ルギアの存在

 

カエル「本作はさらに伝説のポケモンとしてルギアが重要な役割を果たしているけれど、でも何でルギアなんだろうね?」

亀「おそらく、前作のホウオウと対になっているのかもしれん。

 アニメのポケモンにおいて、ホウオウの存在は非常に重要じゃ。テレビアニメの1話において、サトシの上をホウオウが飛んでいくが、この時点ではまだ金銀は発売されておらず、話題を呼んでおる。

 その後もことあるごとにホウオウは姿を現しておる。そして前作ではついに、そのホウオウが重要な役割を果たすことになった」

 

カエル「金銀では対になる伝説のポケモンだったもんね……」

亀「そしてルギアは劇場版でも2作目に登場しておる、重要なポケモンじゃ。

 次の作品も、あの伝説の作品が大きく絡んでくるということであるが、矢嶋監督なりのやり方で過去のポケモン作品に対してのリスペクトなのではないかの?

カエル「ホウオウからルギアという形で、ポケモン映画のバトンタッチをしているのではないか? ということだね」

 

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何と言っても可愛いリサ&イーブイ!

イーブイの可愛らしさにまいってしまう人も多いのでは?

(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku
(C)Pokemon (C)2018 ピカチュウプロジェクト

 

矢嶋監督の心意気

 

カエル「先にも書いたように、ポケモンで……しかも劇場版デビュー作で、群像劇ってとても勇気のいる選択じゃない? 難易度も高いし、時間も限られている中でこれだけの大勢のキャラクターを出しているし……

 もっと単純にサトシを主人公にして、悪者を倒すという物語にすることもできたと思うけれど、なんでそうしなかったんだろうね?

亀「……ワシが本作に強く心を打たれたのは、バトンを受け取った矢嶋ポケモン作品第一弾で本作を制作したことにある。

 なぜポケモン映画がこれだけ世界中で愛されるコンテンツになったのか? それはもちろんゲームやキャラクター人気もあるじゃろう。

 しかし、わしはやはり1作目の『ミュウツーの逆襲』の圧倒的なクオリティにあると考えておる」

 

カエル「あれは衝撃だったよねぇ。まさかポケモンの映画であんなに重いテーマを扱ってくるなんて全く思っていないかったし……」

亀「最初であれだけの作品を作ったことにより、一気にポケモン映画の価値が大きく高まったと言える。

 そして本作は監督が初めて交代しての、初めての作品じゃ。

 これにはその監督がどのような方向性を目指すのか、ということが如実に現れる。

 では、本作の特徴からどのような作品を目指したのか、ということを考えていくとするかの」

 

 

 

 

本作の長所について

 

特長1 サトシの存在

 

<p

>今作はもちろん主人公はサトシだけれど、他の作品のように大活躍するいかにも主人公、という働きはしないよね。

 

この作品が異質な点はサトシの存在だと考えておる

 

カエル「もしかしたら、リサやカガチの方が出番が多くて、主人公ぽいと感じるかも……」

亀「他の5人の主要人物はみな、人間らしい欠点を抱えておる。

 嘘をついたり、人前に出ることが苦手だったりというの。しかし、本作のサトシには欠点らしい欠点もない。

 そういう欠点の少ない人物が中心に入る物語……わしはそれを『アンパンマン』のようだと感じたの」

 

カエル「……アンパンマン?」

亀「アンパンマンには個の葛藤というものがあまりないヒーローである。

 正義と愛という目的のために行動して、特に欠点らしい欠点もない主人公が周囲の人を助けていく物語じゃ。

 そのヒーロー像を描くためには……こういうとなんじゃが、個人の中の葛藤などがあると、描けないものも出てきてしまう。

 本作におけるサトシも似たようなところがあり、サトシだけはポケモントレーナーとしての正義の味方としての行動をして、個人の葛藤とは無縁のところにおる」

 

カエル「えっと……何が言いたいの?」

亀「つまり、個人の成長や再チャレンジを描くことがが物語の意義だとするならば、サトシはそのようなキャラクターではない、ということじゃ。

 物語の中心にいながらも、皆を導くことで役割を終えるタイプのキャラクターじゃな。

 では、個人の成長や再チャレンジは誰が担当するのか……それは当然、リサをはじめとした他のキャラクターじゃよ」

 

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1つ1つの描写が本当に美しい……

(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku
(C)Pokemon (C)2018 ピカチュウプロジェクト

 

特長2 各キャラクターの描き方

 

カエル「今回、ほとんどのキャラクターが何らかの欠点を抱えているよね……」

 

亀「リサは足に怪我を負っており(挫折を知っている)ポケモンと触れ合う経験がないという欠点がある。まあ、誰もが通る道じゃろうが、これからポケモンに出会う人=初心者の存在じゃな。

 ラルゴはいかにも子供のような行動をしてしまい、言葉や思いは立派じゃが、行動は大きな問題を抱えておる。まだまだ人間として未熟であり、厳しく言えば思慮が足らん。

 トリトは優秀な頭脳を抱えておるが、それを他者に発表することが苦手で、人と接することがあまり得意でない。

 カガチは人を楽しませたい、という思いがあるのじゃが、嘘つきでその場しのぎの行動を多く取ってしまう。

 ヒスイはポケモンが嫌いで遠ざけてしまう。言うなればかつてポケモンに熱中し、そしてポケモンを卒業した人の象徴じゃろう。

 このように、サトシは特に大きな欠点がないのに対して、各キャラクターの描き方には明確に欠点を描いておる

 

カエル「他にもおなじみのロケット団は当然悪いことをしているし、ハンターもとても悪い人だよね……」

亀「群像劇だからこその魅力でもあるが、サトシというある意味では完璧なキャラクターを中心として、みんながそれぞれの欠点や過去を乗り越えていく、という成長ドラマになっておるわけじゃな

 

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みんながみんなで成長していく映画

今作もポスターが本当に素晴らしい!

(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku
(C)Pokemon (C)2018 ピカチュウプロジェクト

 

特長3 敵キャラクターの存在

 

カエル「え? 今作における敵キャラクターの不在って欠点じゃないの?」

亀「欠点じゃな。

 今作の敵キャラクターは強いて言えばハンターがおるが、扱いはあくまでモブであり名前も判明することがない。

 今作は明確な敵キャラクターが存在しない。

 先にも述べたように、これは大きな欠点でもある。しかしながら、これが大きな利点でもあり……監督がこの物語に込めたメッセージをとても強く感じることができるわけじゃな

 

カエル「……メッセージ?」

亀「つまり『みんなの物語』ということじゃよ。

 このテーマを描く上で注目したい描写は、ロケット団がまともな商売で売っていた実を全て買取り、街を救うための材料にしたことじゃ。

 今作ではロケット団は憎めないながらも、明確な『悪』として描かれておる。

 しかしそのような存在が売っていたものが、実は大きな効果を発揮するように描かれておる。

 この巨悪が存在しないことこそが、本作最大の魅力に繋がっておるのじゃな

 

 

ブレス

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  • ポルノグラフィティ
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今回、最高にマッチしているポルノグラフィティのブレス

本作を象徴するような楽曲です!

 

みんなの物語

 

カエル「つまり、この『みんなの物語』というのは……」

亀「言葉の通り『みんな』なんじゃよ。

 子供から大人、お年寄りも含めた全員であり、欠点を抱えていながらも毎日をしっかりと生きている、普通の人たち……『みんな』の物語である。

 サトシという一人のヒーローが救う物語でもなく、特定の伝説のポケモンが世界を救ったりするような物語でもない。それぞれは1人、1匹の力は限られておるかもしれんが、それを乗り越えてみんなの物語となっていく。

 誰かの人生は誰かに大きな影響を与えいく。ただ普通に生活しているいるだけでも、その影響は多くの人に波及していき、誰かの人生を劇的に変えるかもしれない。

 そのようなことを描いた作品じゃの」

 

カエル「そういうことを監督交代後第1弾で描いたんだね……」

亀「ここでみんなに共通するのは『ポケモンが大好き!』ということじゃ。

 つまり、ポケモンを支えてきて、ポケモンを愛してくれた全ての人たちに送る、まさしく『みんな』の物語なんじゃな。

 だからこそ、本作はサトシが決定的な大活躍をしないし、伝説のポケモンたちが大活躍をしないし、倒せば終わりの巨悪が登場しない。

 そのかわり、欠点を抱える愛すべき人々が、自分の短所や過去に対して目を向けながらも成長し、ポケモンと共に生きる物語になっておる。

 先にも述べたように『主人公不在・物語の本筋の不在・巨悪の不在』というのは大きな欠点ではある。

 その欠点を理解した上でも表現したかったこと……それは矢嶋ポケモン映画の方向性であり、心意気である。

 まさしくこの作品自体が、描いたテーマと同じことを表現しているわけじゃな」

 

カエル「それを考えると、本当に評価が難しい話なんだねぇ……」

亀「映画としては大きな欠点を抱えておる。

 しかし、この心意気は子供向けアニメ映画としても、ポケモン映画としても100点のものじゃ。

 だからこそ、わしはこの映画は是非とも多くの子供だけなく、ポケモンファンの大人たちや、卒業していった人たちにも見て欲しいの」

 

 

 

まとめ

 

では、この記事のまとめです!

 

  • 映画としては難ありな部分も……
  • ポケモンやキャラクターたちが本当に愛おしい!
  • 監督交代後に見てきた心意気
  • 長所は短所、短所は長所を体現したような作品に! 

 

わしは好きじゃよ

 

カエル「そして! ついに来年には驚愕の出来事が起こります!」

亀「これも矢嶋監督の1つの挑戦じゃな。湯山監督の残した偉大な功績に対して真っ向からぶつかっていき、どのような作品に仕上がるのか……非常に楽しみじゃ。

 過去のポケモンに対してリスペクトしながらも、新機軸をいかに生み出していくか……矢嶋監督の手腕は全く疑っていないので、是非とも全力を出し切ってほしいの」

 

カエル「来年、本当に楽しみにしています!

 ぜひぜひ新しいあいつを見せてください!」

 

 

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