今回は毎年恒例、クレしん映画の新作『ラクガキングダムとほぼ4人の勇者』の感想記事になります!
今年は公開前から期待値が高いからの!
カエルくん(以下カエル)
「2020年は『ドラえもん』などを含めた、毎年お馴染みのファミリームービーが、とても高いレベルにあるんじゃないか? と予想していて……それは予告編からも伝わってきたよね」
亀爺(以下亀)
「特に今作は”落書きを動かす”などという点でも、面白い試みをしているのは伝わってくるからの。
監督も交代し、どのような作品に仕上がっているのか楽しみじゃな」
カエル「では、感想記事のスタートです!」
『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』予告2【9月11日(金)公開】
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#クレヨンしんちゃん
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2020年9月11日
自由度の高いしんちゃん映画らしく、落書きに着目したアニメーション表現の志の高さか素晴らしい
上手い下手を超えた絵が動くことの快感を改めて教えてくれる
しかし、まさか2020年最高のヒロインが今作から生まれるとは…終盤は涙すら浮かぶ見事な作品に! pic.twitter.com/XelwO6oWeZ
さすがはクレヨンしんちゃん、と言いたくなるような作品であったの
カエル「今回は予告の時からはっきりとしていましたが、『落書き』を中心とした物語です。
もちろん、アニメーション表現も落書きを中心にしたシーンも多く、その映像表現だけでも大変みごたえがあります!」
亀「どちらかと言えば、初期のクレしん作品を思わせるの。
これは過去作の監督を務めておった橋本昌和もトークショーで語っておったが、クレヨンしんちゃんというシリーズは自由度が極めて高い。もちろん、しんちゃんが人を傷つける描写など禁止じゃろうが、描く作品のジャンルなどのタブーは少ないわけじゃな」
カエル「それこそ、代表的な存在とされる『オトナ帝国』も『アッパレ戦国』も、子供向けのシリーズ作品としてはかなり異例の作品で……前者はしんちゃんよりも大人が主人公になっているし、後者はすでにクレしん映画の枠を外れているかも……」
亀「もちろん、そういった作品がヒットしたということもあるじゃろうが、基本的にコメディであれば、ジャンルはホラーでも冒険譚でもなんでもいいわけじゃな。
この自由度の高さが作画にも現れており、ここがとても大事なメッセージとなっておる。
その意味において非常に評価が高く、志が高い作品となっておるの」
一方で、中盤などには課題もあったような‥…
全て終盤で解消される不満であるのじゃが、いかんせん、交通整理が必要だったかの
カエル「今回から監督が変わったこともあるのか、少しコメディのキレが悪いなって印象もあったんだよね……
もちろん、この辺りは趣味の範囲だし、肝心の子供たちがどれだけ楽しんでくれるのかを重要視する部分だから、ボクたち大人がどうこう言う部分ではないけれどさ……」
亀「少しテンポの悪さや、物語において課題があるように思われたの。
特にそれが顕著なのがキャラクター数の多さじゃな。
今作ではいつものしんちゃんファミリー、春日部防衛隊、幼稚園の先生たちなどに加えて、敵キャラクターやしんちゃんの生み出したクレヨンの勇者たちが登場する。
それらも魅力がきちんとあり、見せ場もあるのじゃが‥…そのせいで、かなり物語が広がりすぎてしまい、グダグダとなってしまった感もあるの」
カエル「でもさ、まさかこの映画から2020年最高のヒロインが登場するとは思わないよね……しかも、あんな見た目のキャラクターが……」
亀「ぶりぶりざえもんの復活などが話題となっておるが、それ以外の魅力的なキャラクターをぜひ楽しんでほしいの」
京極尚彦監督について
今作では京極尚彦が監督を勤めています
少し、近年と流れが変わった感があるの
カエル「基本的にはクレヨンしんちゃんシリーズは同じ監督が数年ほど作品を制作するというパターンが多いです。近年は高橋渉、橋本昌和の2人が交互に監督を勤めており、今年は高橋監督の順番ではありましたが、京極監督へとバトンタッチしています」
亀「京極監督はCG出身ということもあり、特に『宝石の国』のテレビシリーズが有名じゃろうか。CGでないとできないアニメーション表現、あるいは物語表現に挑んだ作品ということもあり、評価が高いの。
また、近年ではライブシーンの演出なども多く『ラブライブ!』の監督、あるいは『KING OF PRISM』シリーズの歌唱シーンなどの演出を担当しておる」
カエル「今作でもその京極監督らしさって出ていたよね。
落書きたちが歌う、ミュージカルのようなパートがあるけれど、こことかは京極監督の強みを感じたかな」
亀「また、『宝石の国』のようにアニメ表現を模索するという意味では、今作も落書きをモチーフにしておる点が大きいの。
近年のアニメの作画面の評価は線が緻密で丁寧とか、エフェクト作画が美しいなどもあるが、それはあくまでも方向性の一つでしかない。
もっともっと、根源的な面白さ……それこそ”絵が動く”ということに対して、迫った作品でもあるの。
その点は湯浅監督が中心スタッフとなっていた初期のクレしん映画を思い出すような気持ちもあったかの」
以下ネタバレあり
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作品考察
序盤から中盤の疑問点
では、ここからはネタバレありで語っていきましょう!
しかし、まあ、これだけ褒めても序盤から中盤はそんなに褒められたものではないかもしれん
カエル「やっぱり、監督が変わって色々とテンポとかは変わったのかなぁ……って思いはあるよね。また、ギャグのキレも悪くなっていたし、正直笑ったシーンはそこまで多くなかったような……」
亀「スタートからは確かにテンポはいいものの、全体的にやりたいこと=落書きを動かすということを中心に展開しすぎており、少し物語に重さを感じてしまったの。
また、今作はロードムービー要素があるが、それもこの映画に関しては少し邪魔に感じてしまった」
カエル「物語としてやることが多すぎたんじゃないかなぁってこと?」
亀「うむ。
今作の流れは
- 物語のスタート→事件の発生〜道中の山の中に行くまで
- 山の中でのサバイバル&ロードムービー
- 春日部に戻り、敵との対決
- 最後の大きな事件との対峙
というように、4部構成となっている。
ワシが思うに、この2部目……サバイバル&ロードムービーがそこまで必要ないように感じてしまったかの」
カエル「笑える場面も多かったし、ゲストキャラクターのユウマを登場させたかったのもわかるんだけれどね……」
亀「普段のしんちゃんの冒険譚を考えると、生み出した4人のキャラクターを掘り下げたかったのかな、という思いもあるが……各キャラクターの役割は以下のようになっておる」
- しんちゃん……主人公、いつものボケ役&推進役
- ブリーフ……ツッコミ役。しんちゃんの暴走を軌道修正する役割
- ニセななこ……ヒロイン。大人側として、しんちゃん達を支えていく
- ぶりぶりざえもん……いつものボケ役
亀「この4人が中心になる以上、キャラクターの深掘りをしなければいけないのは納得するのじゃが……物語としては若干停滞感を覚えてしまった」
それもこれも、やっぱりキャラクター数が多すぎるってことになるのかなぁ
敵側も魅力的だったからの
カエル「今回は王国ということもあり、いろいろな敵キャラクターがいるものの、活躍したのは防衛大臣くらいだったのかなぁ。
リンゴとかは、本当に怖い敵役で……あの辺りも初期の本当に怖い悪役を思い出したかな」
亀「さらに、本作では宮廷画家、姫、ユウマも登場させておる。
さすがにオリジナルキャラクターが多すぎるじゃろうな……
せめて宮廷画家と姫を同じ人物にして、最初に出会うのを姫にするなどのやり方もあったのではないか? という思いもある。
また、ユウマにも重要な目的や役割があるのもわかるが、それこそ風間くんなどでも代用できるような気がしてしまい……ひろしやみさえもそうであるし、シロもそうであるが、ずっと物語に絡まないのはもったいないと感じてしまった。
結局、1人1人のキャラクターの役割がぼやけてしまい、もう少し整理できたのではないか? という思いも強いの」
カエル「特に序盤はそういう部分が不満として大きかったんだね……」
亀「ラストで大きく回収してくるのではあるがな」
アニメに対する、根源的な面白さとは?
だけれど、それらの不満を全て帳消しにするのが、あのラストだと
アニメって何が面白いのじゃろうな?
カエル「えっと……やっぱりキャラクターが動き回ったりとか、そういうことじゃなくて?」
亀「もちろん上手い絵が動き回るのも、その魅力の1つではある。しかし、それだけではなく、もっともっと根源的な面白さ‥‥それは”絵や本来動かないものが動き、生命があるかのように見える”ということじゃ。
もちろん、商業作品である以上は一定のうまさを保証しなければない、それはそうであるが、同時に、巧さ勝負になると本当に大事なものがなくなってしまうのではないか?」
カエル「それが”自由な心で生まれた落書き”だと」
亀「落書きというのは、まあ確かに落書きではあるのじゃが、しかし絵描きのスタート、絵の面白さというのは落書きに詰まっているものじゃろう。そういった初期衝動を描いた作品でもある。
これは解釈を変えれば自由な気持ちで描く落書きによってエネルギーを得ている王国=アニメ文化。
辛い気持ちで強制的に書かされていくと落ちてしまう王国=辛い気持ちが勝ってしまい、魅力を無くしていくアニメ文化。
という風にも解釈することができる」
それはまあ解釈次第としても、基本は”楽しい”から始まるものだもんね
そしてタブレット文化などで落書きの形も変わってきておる
カエル「それはデジタル化によって変化する絵の書き方、あるいは楽しみ方って話だよね。それこそスタートでVR技術の話があったけれど、そういった新しい絵の楽しみ方もあるわけでさ」
亀「この映画の素晴らしさの1つに、子供たちの落書きを映像で動かすという点があるわけじゃな。
エンドクレジットの落書き提供の‥…春日部の幼稚園などの名前が多く出てきたのを見た時は、感動したの。
そういった初期衝動に向き合っていくというのは、特に自由な発想で生まれた作品の多いクレしん映画では重要じゃ。
また、ぶりぶりざえもんの見せ場のシーンなど、淡い色使いに変えるなどの表現方法の変化も面白く、全体的に”絵を描く、アニメという表現への言及”に満ちておった。それが100点を記録したからこそ、この映画は多くの物語の不満点がありつつも、称賛したくなるの」
レキシの『ギガアイシテル』が示す、今作のテーマ
テーマと手法がはっきりと合致しているってやつだ
それと、レキシの曲も見事に合致しておった
カエル「一部の歌詞を抜粋しますと
キミのその落書きも いつか誰かの宝物
消さないで 離さないで
残しておいて その思いを
このサビは、この映画のメッセージを全て内包しているね」
亀「この楽曲のPVは鳥獣戯画をモチーフにしており、アニメーションとしても面白いものになっておる。
結局は全てにおいて”落書き=初期衝動”というものを大事にし、スタートからラストまで自由な心で映像面を描き抜こうと意思が溢れておった。
もちろん、子供だけでなく大人も自由な発想で、楽しんで書いて欲しいという気持ちが込められておるの。
こういうのはいわば”いい子ではないしんちゃん”だからこそ描けることかもしれん。確かに落書きそのものは褒められたものではないかもしれんが、それから始まる面白さ、文化というのものたくさんある。
クレしん映画として、そして京極監督作品として、現代へのメッセージとしても高く評価する、まとまりのある作品になったのではないかの?」
最後に
では、この記事のまとめです!
- 序盤から中盤にはキャラクターの扱いなどに疑問も……
- ”落書き”を中心とした映像作りが面白い!
- テーマと手法が合致しており、主題歌も含めて感動の多い作品に!
ワシは今年も面白かったと太鼓判を押したいかの
カエル「ちなみに、あの悪役を作らない物語展開も良かったよね。近年のクレしん映画の特徴tも言えるのかな?」
亀「結局は防衛大臣の思いというのも、ある種の善意から始まるものであった。この視点は現代の正義を語るうえでとても重要な視点じゃろうな。
悪と思われるもの、間違えてしまったものも事情があり、みんなが楽しんで落書きをすることで救われていく。この作品にはピッタシだったのではないじゃろうか」
カエル「しかし……ニセななこ、凄かったね……あんなに完璧なヒロインムーブをするとは思わなかったよ……」
亀「自己犠牲が多くなってしまった点は少し考える部分もあるかも知れんが、それを差し引いても”ほぼ4人の勇者”の誰が欠けてもこの結末にはならなかった。
それを描けただけでも、正義と勇者の物語としても、評価できるの」
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