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物語愛好者の雑文

映画『海辺のエトランゼ』ネタバレ感想&評価! BL系作品でマイベスト級!恋愛って何? と根本的な悩みに切り込む作品に!

 

今回はBL描写もあるアニメ映画『海辺のエトランゼ』の感想記事になります!

 

 

 

 

60分弱と、短い作品じゃな

 

カエルくん(以下カエル)

「最近はBLを中心としたレーベルであるブルーリンクスの影響もあって、BL作品も見るようになってきたね。

 女性向けアイドル作品とかと同じように、勉強しないといけないなぁ」

 

亀爺(以下亀)

「いやはや、やはりアニメを好きでいるために勉強することが多いの。

 今作はメインスタッフが女性が多いようじゃし、BLなどの魅力を分かった上での作品になっているのかも知れんの」

 

カエル「それでは、早速ですが記事のスタートです!」

 

 

 

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(C)紀伊カンナ/祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会

 


映画『海辺のエトランゼ』本予告(60秒)

 


どこよりも詳しく!『海辺のエトランゼ』感想&座談会(ネタバレあり)と10月以降の注目アニメ映画紹介!〜アニなら#2-5 海辺のエトランゼ 編〜

 

 

 

 

 

感想

 

それでは、Twitterの短評からスタートです!

 

 

映像、音楽、芝居、物語……多くの点において、とても満足した作品じゃな

 

カエル「本当に、ケチがつかないんだよね。

 細かい登場人物の芝居や小道具の使い方がとてもうまくて、だからこそキャラクターの心情表現につながってくるというか……!

 全ての要素が物語に寄り添おうとしていて、全体的な満足度がとても高いです!

亀「ここ最近、コロナによる公開延期の影響もあるのか、アニメ作品のレベル全体が上がっている印象を受けているが、この作品がその疑問をより強めたの。

 正直、見る前ば60分もない映画に特別興行1800円はとても強気だと、憤慨する気持ちもあった」

 

カエル「一般的には1900円だけれど、前売り券とか、シネコンだと共通前売り券、サービスデーなどもあるから実は映画好きって1900円で見ていない人も多いよね。

 それが特別興行になると1800円固定になっちゃうから、ちょっと辛い部分があるというか……」

亀「見る前は『その価値があるのか?』と思っておったが……いやはや、見事。

 これだったらあと何回か、劇場に通いたいと思ったほどの作品じゃったな。

 1800円(1900円)の価値があると思わせる作品ばかりではないということを考えると、これ以上ない褒め言葉と受け止めてもらってもいいの

 

BL系でも、最高峰の作品と言えるのではないじゃろうか?

 

カエル「アニメ映画を多く鑑賞していることもあって、BL作品を見る機会も増えてきました。実は書き下ろしの書籍『現実で勇者になれないぼくらは異世界の夢を見る』でも、今後注目するジャンルとしてBLを挙げています」

 

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亀「宣伝お疲れ様。

 真面目な話、BLに対する評価はここ5年でも一気に変わった印象じゃの。ハリウッドでは同性愛に対して寛容どころか、認めない風潮に対して攻撃的な雰囲気も漂っている。その流れは日本にも来ているの。

 また『おっさんずラブ』の大ヒットや、近年ではジャニーズタレントがLGBTQを抱える人を描いていることも増えておる。

 アニメ界では、それこそ『BLUE LYNX』レーベルが『ギブン』なども出てきておる。間違いなく、BLは今後日本アニメにおいて、一定の注目度を集めるジャンルになるじゃろう」

 

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BL作品に対する思いと、その特徴

 

だけれど……これは相性だけれど、正直あんまり得意なジャンルではないんだよね……

 

ワシらみたいなのを相手にしているわけではないからの

 

カエル「そりゃさ、男性でもBLファンっているだろうし、現に友人でそこに興味ある人もいるんだけれど、やっぱり苦手意識が勝っちゃって……」

亀「同性愛描写もさることながら、濃いセックス描写がある作品もあるからの。

 そもそも、考えてみればうちは男女の恋愛でも濃い恋愛描写やセックス描写が苦手であるし、好きだの嫌いだのをどーでもいいと発する傾向にある。もはや、BL云々ではなく、恋愛ものに向いておらんのかも知れん。

 しかし、今作は非常に評価が高いの

 

そんな亀爺から見て、BL作品の魅力ってどこにあると思う?

 

ふむ……むしろ、『BLだから』と考えないほうがいいかも知れんの

 

カエル「確かに、あんまり見慣れていない人は”BLだから”あるいは”性同一性障害などの性に関する物語だから”という目線で見てしまうかもしれんばいけれど、それが必ずしも正解ってわけではないよね。

 それこそ、うちがとても高く評価する志村貴子の漫画作品は、とてもフラットに同性愛などを描いている印象があるかな」

 

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BLは”好きって何?”と言うことに切り込む作品じゃな

 

亀「これが異性同士の恋愛であれば、以下のような心理の流れになるかと思う。

 

相手を好きになる

 ↓

恋・恋愛に発展していく

 ↓

付き合う・キスする

 ↓

セックスを行う

 

 これがBLとなることで、以下のような流れになる。

 

相手を好きになる

 ↓ ←好きってなんだろう? 告白しても大丈夫かな?

恋・恋愛に発展する

 ↓ ←どこまでいっていいだろう?

付き合う・キスする

 ↓ ←もっと先に進みたい、だけれど相手に拒否されないか不安

セックスを行う

 

 つまり、1つ1つの行動の前に疑問が生じるわけじゃな」

 

でもさ、この疑問って別にBLとかだからこそ発生するものではなくて……それこそ、恋をしたことない学生とかなら、誰でも考えることなんじゃないかな?

 

そうじゃな、だからこそBLだからと考えるのはよしたほうがいいと思うのじゃよ

 

亀「多くの恋愛作品において、恋や恋愛の障害は外部的な要因になる。例えば……昔ならば『ロミオとジュリエット』のように家柄などじゃな。身分制度もそうなるじゃろう。

 今では……相手が既婚者(友達の恋人なども含む)、歳の差、病気モノ、死別、あるいは……もはや描くことが難しい時代になったが、人種や国籍の違いなどもその一環かもしれん。

 これらは2人が思い合っているのに、外部の理由で恋愛できないとも言える。

 その意味では同性というのも、体の問題という意味では外部的な理由ということができるかも知れん。

 そこで諦めるか、それでも恋愛するか……そういった”人間の葛藤”が描ける分野であるともいえる

 

カエル「でも、その葛藤って別にBLだから描けるってわけじゃない、と」

亀「うむ。

 言ってしまえば、今作は少女漫画などでありがちな恋愛模様ともいえるじゃろう。それをしっかりと丁寧に描き切った原作を、見事に映像化したからこその感動と満足度といえるじゃろうな」

 

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(C)紀伊カンナ/祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会

 

 

ソフトなBL描写と男性だけじゃない恋愛描写

 

今作が受け入れやすかったのって、BL描写がソフトだったから、というのもあるかもね

 

最近はハードな作品も多かったからの

 

カエル「この辺りは趣味になるんだけれど……個人的にはBLあるあるだと思うんだけれど、中にはオレオレ系がすぎる主人公像とかが、男性目線からすると違和感があったりするんだよねぇ」

亀「結局はBLというよりも、濃いキャラクター像が苦手なのかもしれんの。

 ハーレクイン的というか……この辺りも勉強じゃな」

 

カエル「でも、本作の場合は結構ソフトな表現が多かったよね。

 結局そこかい! となるかもしれないけれど……桜子がほんとに好きなんだよねぇ。

 元々負けヒロインに感情移入するたちだからかもしれないけれど!」

亀「男同士の関係性にヒビを入れる存在であるし、駿と実央の見方を一変させる存在でもあったからの。

 おそらく、多くの男性にも響くキャラクターとなっているのではないじゃろうか」

 

カエル「なんか、恋愛ってなんだろうなぁ……って思って。

 男だとか、女だとか、そういうことって本当にどうでもいいんだなって気持ちにさせてくれた。

 そのためにも桜子の存在ってすごく重要で……

 あと、BL描写があるけれど、そこを徹底的に美しく描いてくれたんだよね。

 エロティックな官能性を前面に出すのではなくて、あくまでも初々しい爽やかなものとしてやってくれたのが、とてもよかったなぁ」

 

亀「うちは男女のセックス描写でも濃いものは苦手じゃから、これくらいがちょうどよかったの」

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

作品考察

 

作画の美しさと小道具の使い方

 

では、ここからはネタバレありで語っていきましょう

 

ここが良かったということを羅列していく形になるかの

 

カエル「全体的に、キャラクターがすんごくよくて……特に冒頭かな、2人が海辺で出会うシーンだと、髪の毛のなびき方がとても印象的なんだよね。

 風を感じさせると同時に、世界一の美少女……ではないけれど、そのキャラクターになぜ恋をしたのかがはっきりと伝わってきたし!

亀「これはもはや基本の演出じゃろうが、家の柱などを通して心理描写を描いたり、あるいは光と影の使い方も見事であった。

 例えると……このシーンかの」

 

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(C)紀伊カンナ/祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会

 

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(C)紀伊カンナ/祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会
 

これだけで、物語が伝わってくるね!

 

カエル「夏の暑い時期のベンチと、夜の照らされているベンチの対比表現。

 そして半月っていうのが、2人でいたいはずなのに、1人しかいないもどかしさなどを伝えてくるね」

亀「こういった丁寧な芝居や演出が多いからの。

 船の中で飲み物として、炭酸飲料のマッチを持っているわけじゃが、その握り方などで感情を表現するわけじゃな。

 1回しか見ていないが、何度も見直すたびに発見が多い作品になると思うの」

 

 

桜子の思い

 

そして、中盤の大きな転換点になる桜子だよねぇ

 

原作からいい味を出しておったの

 

カエル「原作も読んでいますが、やはり桜子がすんごく好きなんだよねぇ。

 そして映画版は、さらに深く掘り下げてきてさ……

 あの幼少期のやりとり、何よ……『大きくなったら駿と結婚するの!』とか、幼なじみの負けヒロインって……お前……ってなったね……」

亀「1つ1つの描写が胸にくるものがあるの。

 特に白黒のようなシーンの中で、真っ赤なプレゼントが出てくるのじゃが……言葉はぶっきらぼうなところもありながらも、桜子の思いを色で、しかも周囲と全く違う世界や思いがそこにあるということを観客に気づかせる演出、そしてその色に気がつくことがなくて一方通行であることの演出……これらが胸にくるの」

 

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(C)紀伊カンナ/祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会

 

なんかさ……桜子の思いってゲイの男性に振り向かれない悲しみとも言えるけれど、そんな単純なものでもないよね……

 

もっと根源的なものとも言えるかも知れんの

 

カエル「実際には、結婚寸前までいったわけで……むしろ、あのまま何もしなければ結婚することができたのに、あえてそうしなかった……いや、桜子自身は結婚したかったんだと思うんだけれど、それでいいのか? って聞いちゃったわけじゃない……

 その時の思いって……」

亀「どうなんじゃろうなぁ。

 実央が最後に桜子にした、ある行動があるじゃろう。あれがこの作品の象徴的な部分だと思うがの。

 

  •  相手のことを思いやるがあまりに、自分から引いてしまうような行動をする桜子。
  •  相手のことを好きであるからこそ、我を通すような真似ができる実央。

 

 結局、桜子になくて実央にあったものは、ああいう思いだったのかもしれん」

 

それでいうと、今作をBLとか、あるいはゲイの人の話とするのもなんだか考えものなんだよね

 

そういう分類になるのはわかるが、必ずしもそう考えていいのかは難しいの

 

カエル「実央は明確に『自分は女性を好きになったこともある』と語るように、バイなんだよね。駿はゲイだと本人も認めて入るけれど、いろいろな事情があるとはいえ、桜子との結婚寸前まで行ったわけで……」

亀「わしは駿は男と女、どちらをとるか悩んでおったのだと思う。

 確かに本心では男が好きなのかもしれんが、好きな男が自分を受け入れてくれるとは限らない茨の道じゃ。

 それであれば、自分を好いてくれて誰も問題視しない桜子との結婚を選んだ方が、いいのではないかという思いもよぎる

 

カエル「……なんかさ、それって恋の悩みのようでありながら、あるある話だよね……。

 それこそ、やりたいけれど生計が立てられるかわからない好きのことを仕事になるように頑張るのか、それとも安定しているけれど好きじゃない仕事を続けるのか? みたいな話にも聞こえてくるような……」

亀「確かに目の前に自分を愛してくれる男性として実央が現れてくれた。それでも何かが引っかかっていたところに、桜子が来た。

 そして最後のあのやり取りで、駿は実央に背中を押してもらえた。

 だからこそ、自分の歩みたい道を選ぶことができたのではないかの

 

 

 

 

BL表現ならではの心理描写

 

この映画で最も感銘を受けた描写の1つが、2人が結ばれたときです

 

美しく、そしていろいろな感情が察せられる描写であったな

 

亀「この映画の最大のポイントとしてタチ・ネコの逆転があるわけじゃな」

カエル「これって原作からの改変ポイントだと思うけれど……原作では入れる前に駿が『入れる方できる?』と聞いているけれど、こっちでは一通り終わった後なのかなぁ……そのタイミングあたりで、タチネコの交代を相談しているよね?」

 

亀「ここがとても面白かった。

 男女の恋愛であれば、余程倒錯的なことがない限り、鍵と錠の関係は一定であるわけじゃな。そこを逆転した話もそれはそれで面白いが、意図が異なってしまう。

 しかし、BLであればタチネコは交代できる。そしてそれが心理描写にも繋がってくる。

 つまり……駿は結局、誰かに愛されたかったということじゃろう

 

カエル「愛する者と、愛される者ということだね」

亀「それは物理的にも精神的にも愛されたかった。だからこそ、そこでタチネコを交代したのじゃろう。

 この描写はわしからすると非常に斬新であり、面白いものだったの。BLならではの強みを発揮した形ではないじゃろうか」

 

 

 

最後に

 

では、この記事のまとめです!

 

  • 作画・演出・音楽・演技・物語……全てのバランスが揃った作品!
  • 60分弱でも満足度の高い完成度!
  • 恋愛の最も根源的なものに迫る!
  • それぞれのキャラクターの心理表現に心を寄せて……

 

これは掘り出し物じゃったの

 

カエル「これは公開規模もそこまで大きくないけれど、多くの方に見て欲しいよねぇ」

亀「特にBLに苦手意識がある人向けかも知れん。結構ソフトな表現が多いからの。

 そしてこの作品も……ワシは京アニ流日常表現の流れを感じたかの」

カエル「日常的な表現とキャラクターの魅力を前面に出すとしたら、やはりそこにたどり着くのかもね……」

 

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