物語る亀

物語る亀

物語愛好者の雑文

<辛口>『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』ネタバレ感想&評価 クレしん映画らしさとは何か?

 

今回は『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』の感想記事になります!

 

賛否が割れている作品じゃな

 

映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記 (双葉社ジュニア文庫)

 

カエルくん(以下カエル)

今回はちょっと辛口気味の記事になります

 

亀爺(以下亀)

ただし、ただ罵詈雑言を並べるだけの記事はやりたくないので、そこは気をつけねばいけないの

 

カエル「それでは、早速ですが記事のスタートです!」

 

 

 

 

 

この記事が面白かったり、感想があればTweet、はてなブックマークをお願いします!

 

 

 


www.youtube.com

 

 

 

 

Xでの短評

 

 

 

Xに投稿した感想

<‼️辛口注意‼️>
『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』を観ました

う〜ん……挑戦は認めるけれど、これはしんちゃん映画として近年では結構辛口になってしまう内容ですね

一言で表せば…アクセルとブレーキベタ踏みで蛇行運転している作品ですかねぇ

 


クレしん映画シリーズの最大の魅力は自由度の高さにあって、もちろん基本はコメディですがSF、ファンタジー、戦国(時代劇)、ホラー、ミステリーと多くのジャンルに挑戦できる作品です

その中でも恐竜というのはチャレンジだとは思いますが…

 

しんちゃんのTVシリーズに2020年ごろから携わっている監督&脚本家ということですが『しんちゃん映画らしさ』を追い求めてやりたいことを詰め込んだ結果、破綻しているし中身がなくなってしまった印象です

 

特にしんちゃんは『オトナ帝国』と『あっぱれ戦国』があまりにも大きな影響力がありますが、この2作はボクはしんちゃん映画の異色作であってスタンダードではないと認識していますが、それをスタンダードだと思っている人の制作した映画な印象でした

 

あとは物語でどのように観客の感情を動かしたいのかも迷子になっていて、泣かせにきているのか笑かしにきているのか、今このシーンでやりたいのはアクションなのか日常なのかのメリハリも効かず、アクセルとブレーキをベタ踏みしているような感覚を抱きました

 

でも世間で言われているほどドラえもんっぽいとは思わず、しんちゃんの恐竜映画にはなっていたのかなぁ

 

 

 

 

 

感想

 

それでは、感想を開始していきましょう!

 

あまりこういった作品を酷評したくはないのじゃが、辛口になってしまうのも致し方ないかの…

 

カエル「ウチが観測している範囲では、世間的にも評価が少し荒れてきている作品でもあります。昨年の3DCGのしんちゃんも荒れているので、こういった”叩きやすい作品に辛口をして叩く”のは、特に最近はやらないようにしているのですが、それだけ語りやすいのも事実なのでなるべく辛口になりすぎないように語っていこうか」

 

亀「逆に言えば、それだけ辛口になってしまう作品ということじゃな。

 特に近年のしんちゃん映画はとても素晴らしい作品が続いていたので、ハードルが高くなっているのもあるじゃろうが……この出来は残念としか言いようがないかの」

 

大雑把にどういうところが問題だと思う?

 

迷走しているところかの

 

カエル「今回は佐々木忍監督と、脚本にはモラル(”モラル”という筆名)が担当しています。佐々木監督は過去に映画の副監督なども歴任されており、脚本家のモラルと共に2020年からTVシリーズに関わっているとのことで、比較的フレッシュなメンバーとなっています」

 

亀「それでいうと、この2人の気合が空回りしているような印象があった。

 昨年のCGはともかく、今作は橋本昌和監督も絵コンテとして参加しており、制作スタジオも変わらずシンエイ動画なので、そこまで大きく変わるとは思えんのじゃが、かなり大きく様変わりして、それが失敗しているように見えてしまっているの」

 

 

物語の迷走①〜シーンごとの意図〜

 

じゃあ、まずは物語面について語っていくけれど、短評では「アクセルとブレーキをベタ踏みして蛇行運転」と語っているよね

 

その場面で何をしたいのかが、あまりよくわからないのじゃな

 

ポイント!
  • シーンごとの意図が明確でなく、バラバラに感じる
  • 物語が冗長な部分が多い

 

 

カエル「つまり、笑かしたいギャグシーンのすぐ後に感動シーンが来て、そのすぐ後にアクションが来て、日常が来て、またギャグが来て……というように、とても忙しい映画になっているってことだね」

 

亀「そのパートで何をしたいのか、というのが明確になっていることは観客の感情をコントロールする上で大事なのではないか。

 例えば……そうじゃな、食事においてコース料理を食べているときに、最初に付き出しのようなものが出て、前菜、スープ、魚、箸休め、主菜、デザートと繋がっていく。最初はさっぱり、徐々に濃く重いものになっていくようなもんじゃな。

 一方で今作は前菜、デザート、肉魚、スープ、肉、前菜、スープ、箸休め……みたいに、とても忙しなく続いていってしまう。

 それだけ物語が混乱しており、無駄なシーンが多すぎるわけじゃな」

 

それを「アクセルとブレーキのベタ踏み」といっているわけだね

 

そのシーンが何を意図しているのか、明確でないと観客はノレないわけじゃな

 

カエル「笑いのパートは存分に笑わせて、感動パートは存分に感動させるべきってことだね」

 

亀「笑いのパートに急に感動パートが入っても、人はびっくりするだけじゃ。そしてそれが続くわけではなく、また日常や笑いに戻ってしまう。

 具体的には後半に懐かしい楽曲が流れる笑いパートがあるわけじゃが……あそこでアクションを盛り上げたいのか、感動の下地を作りたいのかがわからん。

 そこまでの物語が切れてしまうわけじゃな。

 今作はそういったシーンが多すぎたのが問題なのではないかの

 

しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦~とべとべ手巻き寿司~ [DVD]

blog.monogatarukame.net

 

 

物語の迷走②〜テンポの悪さ〜

 

次は簡単に言えばテンポが悪いってことだよね

 

序盤など、まさにその通りで具体的な例を挙げていこうかの

 

カエル「序盤20分くらい? かけて今作の設定を開示していくけれど……」

 

亀「ワシとしては、まずディノズアイランドに行くシーンは丸々カットしてもいいとすら思った。その後にディノズアイランドに行かないのであれば、物語の起点として必要のない描写じゃ。あれならば、最初にもうディノズアイランドに行っているところからスタートしても良い。

 そしてナナとしんのすけが出会うまでが長すぎるかの。

 そこまでの日常の積み重ねがあるのはわかるが、機能しているとは思えん。

 子ども向けアニメーションであれば5分から10分で出会いや冒険の出発まで行うべきではないかの」

 

状況を作り上げるまで長かったんだね…

 

まるで80分の作品を106分に引き延ばしているように感じた

 

カエル「もっとコンパクトにしようと思えば、できたのではないか? ということだね」

 

亀「ギャグ描写などは物語に関与しない、停滞の場合もあるが……流れが重要な物語において、流れが全く出来上がっていないように感じたかの。

 総じてテンポが悪く、物語の意図が明確化されていないために、観客の気持ちが離れていってしまっているのではないか

 

 

 

 

映像面、作画について

 

映像・作画面についてはどうなの?

 

可もなく不可もなく、というところかの

 

カエル「シリーズ映画で映像面をどのように語るのかは難しいところではありますが、今作は……なんというか、語るところがあまりないんだよね…」

 

亀「良くもなく悪くもない、という印象じゃな。

 クレしん映画は歴史的には作画アニメでもあるんじゃが、それらの過去作と比較しても飛び抜けて良いと思う部分はなかったかの。かといって、悪いと罵倒するほどでもない……とても意地の悪い言い方をすると、普通で語ることがない

 

でも、恐竜作画がリアルで、全て手書きだけれど……

 

それがしんちゃん映画でどのような意味を持つのじゃ?

 

カエル「う〜ん……それを言い始めると、身も蓋もない気がするけれどなぁ」

 

亀「リアルで、今の研究結果に即した恐竜作画は確かに見事かもしれん。しかし、設定上は結局あれらは……ネタバレになるので言葉は濁すが裏があるわけである。

 そしてギャグ漫画じゃから、恐竜が人間のようにダンスしても違和感がないわけじゃな。そうなると、リアルな恐竜の作画が、今作の物語に何をもたらすのか?

 さらに言えば、その作画技術が物語に影響を与えるほどのものだったのか、あるいはなければ成立しないものだったのか?

 むしろ同じシンエイ動画も制作した『化け猫あんずちゃん』のアクションパートの方が……もちらん作画された尺の長さが全然違うが、しんちゃん要素を感じたかの」

 

ジグソーパズル 化け猫あんずちゃん あんずちゃんとかりん 300ピース (300-3141)

 

 

クレしん映画らしさとはなにか?

 

う〜ん……本作の難しさってどこにあると思う?

 

”クレしん映画らしさ”がなく、単純な過去作の劣化コピーになっていることじゃな

 

カエル「手厳しい意見ではあるけれど、シリーズ映画らしさってとても大事な話だよね…」

 

亀「しんちゃん映画らしさというのは、非常に難しい。

 本郷みつる監督時代の原恵一や湯浅政明などの名スタッフが揃った、ギャグ重視でありながら自由な作画表現であったり、あるいは『雲黒斎の野望』のようにデフォルメされたキャラクターでありながらも、当時の時代劇の検証に沿った映像表現を発揮する。

 原恵一のように、緻密なストーリーで魅了する。

 水島努のように、テンポの良いギャグ描写で圧倒的に笑わせる。

 そのような様々な側面を持ち合わせているのがしんちゃん映画であり、1つを限定して”これがしんちゃん映画らしさ”ということはできない

 

一般的には『オトナ帝国』と『アッパレ戦国』がしんちゃん映画らしいと言われているような気がするけれど……

 

むしろ、これら2作はしんちゃん映画の異色作であり、スタンダードでは決してない

 

亀「ワシはむしろ、その2作をスタンダードと認識するところから乖離することが大事だとすら思っておる。

 この2作はルパンでいえば『カリオストロの城』であり、押井作品であれば『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』であり、『パトレイバー2』な訳じゃ。つまりシリーズの象徴的な作品であるけれど、原作やシリーズを全て継承した作品ではない、むしろその設定をキャラクターを拝借しただけの作品と言っても過言ではない。

 『オトナ帝国』も『アッパレ戦国』も象徴であり、名作じゃ。しかしシリーズを続けていくのであれば、そこから離れる必要がある。

 そして近年のしんちゃん映画はそれができていた。家族と感動を描いていながらも、そこに偏ることのない映像表現が成立していた」

 

しんちゃん映画らしいものを作ろう、と意気込みすぎているのではないか? ということだね

 

それはそれで大事なことじゃが、その結果、名スタッフの劣化コピーになってしまっては意味がない

 

カエル「重要なのは、どのようなしんちゃんらしさを見つけるのか、ってことだよね」

 

亀「しんちゃんの素晴らしいところは、どんなジャンルでも物語でも受け入れられるところじゃ。SF、ファンタジー、ホラー、時代劇、ミステリー、西部劇など、コメディさえあればなんでもできる。

 であれば、監督たちが主導しながら、新しいその監督らしいしんちゃん像を見せられるか、というところにかかっておる。

 その意味では、今作は旧作のしんちゃんに囚われすぎじゃな。

 自分の作家性とやりたいことをしんちゃんというフォーマットを使って表現する、それくらいを受け入れる度量があるシリーズじゃと思うから、次を頑張ってほしいの」