物語る亀

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物語愛好者の雑文

<甘辛>『映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)』ネタバレ感想&評価! ドラ映画は平均点が高いだけに…

 

今回は『映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)』の感想記事になります!

 

今年はオリジナルアニメ映画ということもあり、しっかりと注目していきたいの

 

小学館ジュニア文庫 小説 映画ドラえもん のび太と空の理想郷

 

カエルくん(以下カエル)

ドラえもんシリーズがあると、ファミリーもそうだしアニメ映画ファンとしても安心するからね!

 

亀爺(以下亀)

やはり、この映画は春の映画としてスクリーンに重要な作品じゃな

 

カエル「それでは、早速ですが感想記事をスタートしましょう!」

 

 

 

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大手レビューサイト評価(3月5日時点)

 

Yahoo映画

4.0



 

映画ドットコム

4.0



 

Filmarks

3.9

 

平均的に高評価ですね!

 

作品紹介

◆主要スタッフ◆   

監督 堂山卓見 『ドラえもん(テレビシリーズ)』演出など

原作 藤子・F・不二雄

脚本 古沢良太(『コンフィデンスマンJP』『探偵はBARにいる』など)

アニメーション制作 シンエイ動画

 

 

声優・キャスト紹介

ドラえもん(CV 水田 わさび)

のび太(CV 大原めぐみ)

しずかちゃん(CV かかず ゆみ)

スネ夫( CV 関 智一)

ジャイアン(CV 木村 昴)

 

ゲストキャラクター

ソーニャ(CV 永瀬廉)

マリンバ(CV 井上麻里奈)

ハンナ(CV 水瀬いのり)

配達員( CV 山里亮太)

先生(CV 藤本美貴)

 

 

ゲストキャラクターのソーニャ

(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2023

 


www.youtube.com

 

 

 

 

感想

 

それでは、Twitterの短評です!

 

 

今年は正直なことを言えば、ちょっと辛口になってしまうかの

 

カエル「辛口とは言いつつも、そこはドラえもんなんだよね。

 ドラえもん映画って、あまりこの手のアニメ映画を観ない方にはピンと来ないかもしれないけれど……実はとても平均点が高い作品です!

 メッセージ性、映像表現、音楽、物語のバランスが良くて、もちろん残虐表現などもなくて、ファミリーが安心して観られるながらも、教育的な配慮も行き届いており、まさに子ども向けアニメ映画のお手本のようなシリーズです。

 その中では……今年は辛口になってしまうということだね」

 

亀「悪い作品ではないがの。

 最近は少しこの言葉を免罪符にしておるが……正直に言えば、近年の『ドラえもん映画』の中ではワーストに近い。

 しかし、それでも駄作ではない。

 むしろ、近年はドラちゃん映画は、このレベルでも駄作と言ってしまうくらいにレベルが高いということを、証明した結果になったのではないじゃろうか」

 

悪くないけれど、平均点が高いから辛口になってしまうんだね

 

平均80点ならば60点でも下位になってしまうからの

 

カエル「だから、今作が何かが悪い、というわけではないんだよね」

 

亀「色々と気になる部分があるが、それは好みの問題かもしれんな。

 大きな欠点があるダメなタイプというよりは、大きな強みが少なく、細かな欠点が重なってしまった結果で結果的に低い評価になってしまった、といった方が近いかもしれん。

 もちろん、人によっては今作が好きであるかもしれんし、それはそれで間違っているとかではなく、単なる好みの問題だとは思うがの」

 

(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2023

 

今作の脚本・古沢良太について

 

今回は目玉スタッフとして、脚本に『コンフィデンスマンJP』などの古沢良太が起用されています

 

今作が誰の映画か? と問われたら、わしは古沢良太の映画と答えるじゃろうな

 

カエル「うちはアニメがメインのブログだから、テレビドラマをあまり観ないこともあって、古沢良太は映画を一部作品みた程度だけれど……それでも古沢良太らしさというのは、とても伝わってきたね。

 近年はドラえもんファンとして有名な辻村深月や、アニメプロデューサーとしても有名な川村元気が脚本を担当するなど、色々な作家が各々の個性を出しながら作品を制作しています」

 

亀「今作はまさに”古沢良太のドラえもん”という印象であったな。

 その意味では、求められたものに対して、100%の回答をしたのではないじゃろうか。

 近年もいろいろな挑戦をしているシリーズではあるだけに、今回の試みそのものは面白かったし、意図は感じられた。実際に、古沢良太は求められた仕事をそのままこなしたのではないじゃろうか」

 

ということは、物語や脚本に関しては褒めなの?

 

……そうでもないのが、面白いところであり難しいところじゃな

 

カエル「あれ? そこまで褒めてない……」

 

亀「古沢良太らしさが出ていることと、ドラえもんらしさが出ていることは異なる。

 また、その脚本家の作家性という個性が良いのか悪いのか、という問題もあるじゃろう。

 ここいらへんも好みになるのじゃろうが、わしとしては『古沢良太らしさドラえもんらしさ』と感じてしまった。

 かといって、古沢良太らしさを減らせば丸く収まるというものでもないし、当然のことながら脚本が下手ということではないので、ここが評価が割れるポイントかもしれんな」

 

 

 

声優について

 

今回もゲスト声優が豪華です!

 

注目される芸能人ゲスト声優では永瀬廉、山里亮太、藤本美貴が登場しているの

 

カエル「今作のゲスト声優さんは、そこまで悪くなかったのではないか? と思っています!」

 

亀「そうじゃな、役と声があっておったようにも思う。

 しかし……ここもまた、アニメの難しいところでの。おそらく古沢良太なのか、堂山卓見監督なのかはわからないが……おそらく、今作に関しては当てがきをしている部分が多いようにも感じられた

 

(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2023

 

当て書き……つまり、役者を思い浮かべながらキャラクターを作るということだね

 

それ自体が悪いとは言わんが、少し芸能人声優の顔が浮かんでしまったの

 

亀「特に気になったのが山里亮太で、彼の演技はまさに普段の芸風、あるいは朝の情報番組で行なっているナレーション演技そのままであって、わしとしてはドラえもんの世界を壊している領域にも感じられた。

 この辺りは顔の知られた実写声優を使う難しさかもしれん」

 

(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2023

 

カエル「”キャラクター”ではなくて”キャスト”になってしまっていたのでは? という指摘だね。人によっては、それが笑える、あるいは憧れることになるだろうけれど……」

 

亀「それでいうと、永瀬廉も終始カッコいい役であったが、それ以外の演技が全くできておらんのが気になったかの。その意味では演技の幅などが試される役ではなかったから、ボロが出なかったとも言える。

 逆に言えば、監督や音響監督の采配が上手かったとも言える。

 問題はドラえもんという作品の世界観にマッチしたかであって……これがゲスト声優がそのままの形で出演することもある『クレヨンしんちゃん』ならば問題なかったのかもしれんがドラえもんには、少し合わなかった部分があるのかもしれんかの」

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

作品考察

 

古沢良太脚本だからこその序盤の問題点

 

では、ここからはネタバレありでの説明と参りましょう!

 

まずは、何と言っても序盤のテンポが死んでおった

 

カエル「あー……序盤からつまらなかった?」

 

亀「ここは古沢良太が実写をメインに書いている脚本家だからかもしれんが、序盤を含めてテンポ感が非常に悪い。

 近年のドラえもん映画は特にそうであるが、スタートして5分くらいでワクワクする冒険や遊びが始まっているもんじゃ。

 その辺りは昨年の『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ) 2021』の旧作とリメイクを見比べて貰えばすぐにわかると思う」

 

「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ) 2021」オリジナル・サウンドトラック

 

blog.monogatarukame.net

 

今回は序盤がかなり長い印象なんだよね

 

特にOPがないことも、それを助長しているかもしれんな

 

亀「例えば、今作では定番のテーマの学術的説明である”ユートピアとは何か”という説明から入る。それはいいのじゃが、その後がこのような流れになる」

 

序盤の流れ

○ のび太の0点なども含めたダメさの導入(テーマの説明導入)
 ↓
○ お馴染みのキャラクターに振り回される導入(周囲の登場人物紹介)
 ↓
○ ドラえもんの道具の説明(今回のキーアイテム説明)
 ↓
○ 裏山も含めた日常描写(物語の伏線)

 

こうやってみると、序盤から色々と仕込んでいるんだねぇ

 

じゃが、これらが少し拗すぎるんじゃな

 

カエル「これが実写とシリーズアニメの違いということなの?」

 

亀「うむ。

 例えばのび太のダメさの導入であったり、シリーズキャラクターについては『この作品からドラえもんに入る子ども』には必要じゃ。しかし、毎年公開するドラえもんシリーズでは、それらは説明不要かもしれん。

 つまりクドクドと説明せず、出来杉君の説明の後にいきなりテスト0点からの、裏山まで話が飛んでもワシは問題ないと思う。

 さらに言えば……今回はOPが縮小版であったが、OPに載せてそこをダイジェストでやってもいい。

 なぜならば、テレビアニメなどで何回も観てきたお馴染みの日常じゃからの」

 

ふむふむ……これが単発の実写映画の企画などならば説明がいるけれど、お馴染みの子ども向けアニメ映画、つまりプログラムピクチャーならば必要ないのでは? ということか

 

正直、のび太の0点やエラー描写などは説明不要な前提情報じゃからな

 

亀「そこを物語として強調したかったのはわかるし、意図は通じるし、意味もあると感じている。

 しかし……子ども向けアニメはその伏線の段階で飽きさせてはいけないし、テンポはかなり早くしないといけない。

 ここがのんびりとしたために、全体として脚本の意図が後半に入るまで活きてこない印象なのじゃな

 

(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2023

飛行船などのわくわくポイントを、もっと前倒しした方が良かったのでは?

 

古沢脚本のタイプの難しさ

 

これはやっぱり、古沢脚本だからこその欠点ということもあるの?

 

残念ながら、このような脚本というか、物語構成の場合は仕方ないのかもしれんがの

 

カエル「古沢脚本ってすごく雑に語ると、序盤にタネを撒いて後半で一気に回収する、つまり伏線と回収を売りにした作品な印象だよね。

 それこそ小説家でいうと伊坂幸太郎とかが似たような印象かなぁ。

 『キサラギ』なんかは、伏線と回収がはっきりと効いていてとても好きな作品ですね」

 

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近年では特に”脚本の上手さ”として評価されやすいポイントな印象もあるよね

 

ただ、欠点としては”伏線撒きが平坦になりがち”ということがあるわけじゃな

 

カエル「お話を広げるというよりも、その今後回収する伏線をいかにさりげなく、目立たないように撒くかということに注力する印象かなぁ」

 

亀「そうじゃな。

 ここで伏線を丁寧に撒けば、回収する際にまるでジェットコースターのような面白さが約束されている。しかし、この前半部分がダメになってしまう可能性もあるわけじゃな。

 特に今作は、この前半部分の説明がとても長く、そして山も谷も感じることができなかった。

 その辺りはドラえもん映画らしく作画クオリティが高いのでカバーはされておったが……残念ながら、ワクワクすることは難しく、ワシは途中で飽きてしまっていたの

 

 

 

 

今作の中盤の良かったポイント・悪かったポイント

 

良かったポイント 今作のメッセージ

 

では、この作品のメッセージは『個性って大切だ』ってことだよね

 

今となってはありきたりかもしれないけれど、でも大事なメッセージじゃな

 

カエル「その意味では、ドラえもんで描く必要性も感じられるしいいメッセージだったのかなぁ」

 

亀「もちろん、このメッセージに対して文句はあまりないがの。

 中盤の展開といい、ホラー映画並みの恐ろしさも感じたりもしたが……ワシは全体主義的な『みんな平等』という価値観が苦手な部分があるため、今作のメッセージは非常にわかりやすくて、受け入れやすい。

 一方では、その見せ方がもう少し工夫を……例えばのび太の特技である射撃が敵から逃れるのに重要だったとか、そういう形で『優れていないような人でも得意なことがある』という一面を出せれば、もっと良かったかの」

 

カエル「画一的な見方……一方的な価値観でいい子、悪い子を決めるのがおかしいという価値観を示したのは、ドラえもんらしくてとてもいいよね」

 

亀「上記のどんでん返しやメッセージ性、クスリと笑えるコメディ描写なども含めて、むしろ近年の『クレヨンしんちゃん』のような作風でもあったので、ドラえもんよりもしんちゃんの方が向いている脚本家だったのかもしれんな。

 まあ、それはそれで近年では『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』などもあるので、大変じゃとは思うが……」

 

 

blog.monogatarukame.net

 

 

悪かったポイント ゲストキャラクター

 

あれ、ゲストキャラクターって今回は悪かったポイントになるの?

 

残念ながら、印象に残るキャラクターが少なかったの

 

カエル「今回は注目すべきキャラクターが多くて、みんな活躍したけれど、同時に誰も印象に残らなかった、という感じなのかなぁ」

 

亀「おそらく公式としてはメインゲストキャラクターのソーニャを印象に残させたいのじゃろうが……それはわかるが、途中に出てきたマリンバ&ハンナの出番が多いこともあり、ソーニャが霞んでしまった印象じゃ。

 また敵キャラクターに関しても、今回は思想性が薄い上にあまり印象に残りにくい。

 声優さんがいい演技をしていたが、それが印象に残るだけでは……

 名敵キャラクターが多いシリーズだけに、今作はあまり印象に残りづらかった印象かの

 

 

 

 

終盤の展開について

 

終盤の展開

 

そういえば一部で『エヴァっぽい』という評価もみたけれど、そこに対してはどうだったの?

 

そういう意見もわかるが、ワシとしては別の映画を思い浮かべたかの

 

カエル「多分、個人の意思を無視して全体主義を志向する敵のポイントが『エヴァっぽい』という評価になったんだろうね」

 

news.yahoo.co.jp

 

それはわかるが、ワシは別の映画を思い浮かべたの

 

カエル「それが『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』だよね」

 

 

↑このツイートの答えは『逆襲のシャア』でした

 

どうしても、ああいう展開があると逆シャアを思い浮かべてしまうの

 

カエル「終盤の落ちていく建造物をどうにかするために、ドラえもんたちが自力でなんとかするという構図だけれど……ああいう状況を見ると、なんとなく逆シャアを思い浮かべてしまうね」

 

亀「ある意味では『Vガンダム』からの『逆襲のシャア』ということもできるからの。

 まあ、それは馬鹿話じゃ。

 これはわしが何でもかんでも逆シャアオマージュと思いすぎなのかもしれんが……そういう意味では〇〇っぽいが色々あった作品なのかもしれん。主に90年代くらいのアニメを思い浮かべるような、の。

 しかし一方で、ドラえもんっぽさがどれだけあったのかは、はっきりと語るのが難しいかもしれん、とは思ったのかの

 

(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2023

この後の展開も含めて、若干逆シャアっぽい?w

 

ラストの展開はアリか? ナシか?

 

ここで実は1番気になったのは、あのラストの展開なんですよね

 

あまり直接ネタバレはできないが……色々とごまかしながら語るかの

 

カエル「簡単に言ってしまえば『ダイの大冒険』の最終盤のシーンと言いますか……この間Twitterのスペースで話した中では『ONE PIECE』のペルじゃないかって話があったんですが、まあつまり、そういう展開があるわけです」

 

 

 

亀「わかる人にはわかる、ふわっとした説明じゃな。

 これはドラえもんとしてアリかナシか、というのを最初に考えてしまった。というのも……今作はあれだけ『個性が大事、無駄な人はいない』という話でありながら、最後は自己犠牲的な感動で締めるというのは、いささか前時代的で安直な展開で、子ども向けのアニメ映画にふさわしいのだろうか? とは考えてしまった。

 しかし、ドラえもんは……それこそ初期作で、ドラファンには歴代最高傑作とも名高い名作映画があるから、これはこれでアリなのかもしれん……などと思っておったのじゃが……」

 

あの感動? の展開の後であれがあったから……

 

いや、それをするのではあれば、展開そのものが必要ないのではないじゃろうか?

 

カエル「ここってドラえもんと考えたらすごく難しい問題で……

 例えば同じことになったのがドラえもんで、でも同じような理由があるからオールOK! って言ったら、大炎上すると思うんだよね。

 今回はゲストキャラクターだからOKみたいになっているけれど……イヤイヤ、機械の命をなんだと思っているんだ? という気持ちもあって」

 

亀「そもそも、あの展開を起こすならば最後まできっちりと覚悟を決めるべきじゃと、ワシは思ってしまうかの。

 あれではただの御涙頂戴であり、感動のためのシーンでしかない。

 そこにメッセージも教育的配慮も何もない。

 そういう姿勢でいるのであれば、ワシは今作を支持することがなかなか難しくなってしまうし……何よりも”機械との友情”を描いてきたドラえもんだからこそ、モヤモヤしてしまうポイントじゃな

 

 

 

最後に

 

というわけで、今回はここまでとなります

 

色々と辛口になってしまったの

 

カエル「全体を通して作画・演出面も良かったし、大きな加点も減点ポイントもないのですが……上記のようなところが気になってしまい、結果的にマイナス評価になってしまった、といったところでしょうか」

 

亀「かといって、最初に述べたようにドラえもんシリーズは平均点が高く、今作も駄作ではない。

 むしろ、全体のレベルは高い方だと言えるじゃろう。

 あくまでもドラえもん映画としては低い、というだけじゃ。

 決して下げたいだけではない、ということは伝えておきたいの」

 

カエル「また来年も楽しませてくれるでしょう!

 期待したいですね!」