物語る亀

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物語愛好者の雑文

<良作>『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』ネタバレ感想&評価! お笑いの中に社会的なメッセージを込めた、オリンピックにぴったりの1作!

 

今回は2021年のクレしん映画である『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』の感想記事になります!

 

 

 

今年も楽しませてくれる映画が登場じゃな

 

 

カエルくん(以下カエル)

「本来は4月に公開予定でしたが、コロナ禍による緊急事態宣言により7月末に変更されました。

 結局は緊急事態宣言直撃になってしまったけれど、興行収入は歴代最高の見込みと言われているよね」

 

亀爺(以下亀)

「今年の夏はポケモン映画もないし、ディズニー・ピクサー映画もない。

 毎年恒例のファミリー向けアニメ映画が少ない中で、その層をガッチリとつかんだということじゃろうな」

 

 

カエル「それでは、早速ですが感想記事のスタートです!」

 

 

 

 

映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園 (アクションコミックス)

 


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感想

 

それでは、Twitterの短評からのスタートです!

 

 

 

今年もクレしん映画は、良い作品を世に送り出してくれたの

 

 

カエル「いやー、さすがはクレしん映画!

 今年も安定して面白い作品を作り出していて、本当に褒めることばかりだよね。

 子供からお年寄りまで、家族みんなで多くの人が満足できる作品に仕上がっています!」

 

亀「近年は『プリキュア』『ポケットモンスター』などなど、毎年恒例のシリーズ作品の劇場版のレベルがとても高い。

 その中でも今年は公開されなかったが『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』は双璧を成す、素晴らしい作品を量産し続けているように感じられる。

 『ドラえもん』が世界中のどこに出しても恥ずかしくない、学習意欲も高まる良い子の作品だとすれば、『クレヨンしんちゃん』はお下品な部分もありつつも、それが作品自由度の高さとして成立している。

 この2作品の大きな特徴としては、宇宙を股にかけるSF作品から、ミニマムな作品まで、なんでも描くことができる自由度の高さにあるじゃろう

 

あと、これは声を大にして言いたいけれど、近年のクレしん映画はどれも一定以上の高いレベルの作品を作り続けています!

 

今作が特に評価が高いようにも感じるが、高橋渉監督作品ということを考えても、このレベルのものに仕上がっているのは、さすがとはいえ、ファンとしたら当然という感もあるの

 

 

亀「さすがは『ロボトーちゃん』『ユメミーワールド』などの高橋監督という他ないじゃろうな。

 今作に関しては、正義と寛容の社会のあり方描いた『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ 拉麺大乱』で感じられた社会性、社会批評を交えながらも、クレしん映画として子供から大人まで笑える作品に仕上がっておる。

 そのため、多くの人に刺さる作品になったのではないじゃろうか

 

 

 

 

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本作の物語について

 

それでいうと、子供向けアニメながらも深いテーマ性が表現されているんだよね

 

今作は風間くんとしんちゃんの関係性を軸に、エリートとノンエリートの格差社会を描いておる

 

 

カエル「原作でもそうですが、典型的なお金持ちキャラであり、エリート気質のある風間くんと、自由で快活なしんちゃんの対比が行き届いた作品になっています。

 ここ最近は、野原一家の家族愛を中心とした作品が多かったから、ここまで春日部防衛隊に着目した作品は、久々な印象もあるかな」

 

亀「脇役の描き方や、風間くんとの関係性では脚本家のうえのきみこが手がけた『映画クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃』に通じるものがあるじゃろう。一部で見受けられるホラー描写なども、共通していると言えるかもしれんな。

 アクション、ミステリー、ホラー、恋愛、もちろんコメディ……それらの様々な映画の要素が多く、とても満足感がありながらも、飽きがきにくい作品にしようとしているのではないかの

 

ただ、一方ではミステリーだからこその欠点も感じられたのかなぁ

 

どうしてもオリジナルキャラクターが多いミステリーの難しさはあるの

 

 

カエル「今作はミステリーとしての完成度は結構高いと感じていて……もちろん、大人向けのミステリーと比較したら『なんだよその推理!』となるものも多いのですが、そこはしんちゃんワールドということでカバーされています。

 しかもキャラクターたちがしっかりとみんな怪しくて、色々なミスリードさせる仕掛けなどもあり、誰が犯人なのか、見ていてわかりませんでした

 

亀「途中経過も含めて、よく練られておった。まさに誰が犯人であってもおかしくないミステリーであり、子供から大人まで楽しめるものであったのではないじゃろうか。

 一方でオリジナルストーリー&オリジナルキャラクターが勢揃いということもあり、その説明が難しかった印象もあるかの。

 これはミステリーの難しさということもあるのじゃが……物語としては端的に各キャラクターを紹介しており、そのテンポの良さなどに関しては確かに下を巻くものがある。

 しかし、その代わりに物語が進展しづらかったり、単なる説明になってしまったりと、停滞した部分ができてしまった。

 そこもカバーはしようと頑張っておったし、実際できておったが……結果的には、小学校低学年向け作品から、今作は小学校高学年向けくらいには、対象年齢が上がっていた印象もあるかの」

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

作品考察 

 

描きだされた社会的テーマ

 

ここからはネタバレありで作品に言及していきます!

 

今作もまた、社会的なテーマが描かれておったな

 

 

カエル「それこそ、先にも述べたけれど、社会的なテーマや哲学的な問いを物語に取り入れる子供向けアニメ映画は多くあります。

 むしろ、大人向け映画の方がそういった試みができていないような気がしてきて……

 そういえば、こんなツイートもしているよね」

 

 

 

この発言の意味は、ディズニー・ピクサーやジブリ作品をあげた方が伝わりやすいのかもしれんの

 

 

カエル「例えば、ディズニー作品では『スートピア』が顕著ですが、差別という社会的なテーマがはっきりと描かれながらも、マイルドな作風で大人から子供まで楽しめる作品になっていました。

 またジブリ作品では『もののけ姫』なんかは、どこが子供向け作品だ! と思うくらいの深い歴史性と社会的なテーマが込められている作品でもありますね」

 

 

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亀「これは他の日本の子供向けアニメ映画も同じじゃ。

 例えばドラえもんだと『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』では、歴史改ざん問題について言及しておる。

 またプリキュアでは『映画HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』では、社会悪に対する慈愛の精神を説き、またアンパンマン映画では”なぜ自分は生まれてきたのか?”という哲学的な問いを行なっておる。

 こういった作品たちは、子供たちを楽しませるということだけでなく、社会的なテーマを描くということをずっと行なっていたわけじゃな

 

 


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社会的テーマを描く高橋監督の作家性

 

そして、それはクレヨンしんちゃんも同じだと

 

ここ近年では『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ 拉麺大乱』『映画クレヨンしんちゃん 襲来!!宇宙人シリリ』などが顕著かもしれんな

 

カエル「『カンフーボーイズ』では正義の暴走による悲劇の連鎖と、それを止める融和の精神を示しています。

 これは間違ったことを多く行なってしまう”倫理的には悪い子”であるしんちゃんだからこその映画だとも言えるかもしれません。

 また『シリリ』では異文化交流と子供の親離れを描いています。

 こう言った社会的なテーマというのは、実はしんちゃんシリーズでもここ近年は特にずっと描かれており、単なるギャグコメディではありません

 

亀「むしろ、優れたギャグ・コメディというのは社会に対する風刺が含まれているものじゃ硬なぁ。

 さてさて、それでいえば今作の社会的なテーマとは……これは言わずともわかるじゃろう、学歴・格差社会じゃな。

 誰もが平等であり続けることもできない以上、どこかで必ず学歴による格差などは生まれてしまう。少し前ならば、小学生が主人公の漫画……それこそ『ドラえもん』などは、さまざまな階層の子供がゴッタにいたものじゃが、今では小学校もお受験になってしまい、幼稚園すらも格差社会の始まりになってしまったのかもしれんな」

 

 

風間くんとしんちゃんって、絶対に学歴の階層は異なるだろうからね……

 

あの5人が同じ階層にとどまるということは、まあないかもしれんな

 

 

カエル「だからと言って、しんちゃんたちを同じ階層に入れようとするのも風間くんの独善的な独りよがりだとは思うけれど……それも優しさだから別に今回は置いておこうか!」

 

亀「……わしは何も言っておらんぞ。

 これはわしはあまり好かぬ概念ではあるが、巷では”上級国民”という言葉も飛び交っておる。そういった階級社会の上位層の横暴を描くというのも重要であるし、しんちゃんが自由な発想の人物であることも、社会を動かす上では、また重要なことじゃろうな。

 また、今回の犯人も学歴格差社会による被害者だということもできるじゃろう。

 わしはこのような社会の描き方、あるいは融和を描くやり方は高橋監督の作家性ではないかと感じておる。

 しかも、しんちゃんという大枠を崩さないでやり切る点では、とても話運びなどがうまい作家じゃな。

 また、少しの描写で家族関係や友情の終わりを感じさせるような作りも見事と言える。

 先にも語ったように、ミステリーの描き方などに関しては大人向けの気もしてしまったが、色々と考え抜かれたうまい作家・作品であることは間違いないと言えるじゃろうな」

 

 

 

 

 

焼きそばパンと走ること〜青春とは〇〇だ〜

 

作画的には、時に荒々しい場面を見せていたよね

 

あのあたりは見応えがあったの

 

カエル「いつも語るけれど、走る描写って盛り上げにも向いているし、また物語そのものも溜めになっているよね。

 しかもそれが物語のラストで、かけっこというある種平等にも思える勝負であったこと、そして色々なサブキャラクターの活躍の場も用意できるということで、考えられた展開だったね」

 

亀「ここでも素晴らしいのは、例えば”番長の素顔がイケメン”という笑いポイントであると同時に固定概念を壊すような描写であったり、また”チシオの変顔が本気で走っているから笑いポイントになりづらい”という点じゃろう。もっとゲラゲラポイントにするのかと思ったら、ちゃんと真っ当に熱い場面にしておった。

 これが監督の意図通りなのかはわからないが、いい場面であったの」

 

 

それでいうと、焼きそばパンもいいアイテムとなっていたよね

 

この作品を語るのに、とても重要なアイテムじゃな

 

 

カエル「学校一位のサスガくんがカニとかの豪華な食事を食べているけれど、1人で寂しそうに、そんなに美味しそうに食べていないのに対して、競走して勝ち取ったものが焼きそばパンという売店の食事だけれど、それでもとても価値があるように見せている。

 同じ競走の果てに食べる食事だけれど、その描き方が全く異なるというね

 

亀「また、物語のラストにおいて、しんちゃんが焼きそばパンの焼きそばを食べるというのもとても良かった。

 勝者は風間くんじゃ。ここはいつものパターンであればしんちゃんが勝つのじゃろうが、あえて風間くんが勝つことでサプライズ感を与えていると共に、その努力に報いるような描き方をしている。

 しかし、商品である焼きそばパンの焼きそばを食べるのはしんちゃんである。ここは笑いとしては外しとして機能しておるし、1番美味しい部分はしんちゃん(敗者)が持っていく。

 そこには風間くんには勝者の栄冠を、しんちゃんには美味しい部分をという描き方ができておるわけじゃな

 

あー、なんかこれって、前作の『カンフーボーイズ』みたいだね

 

融和が描けない中での、勝負の結果というポイントではないかの

 

 

亀「『カンフーボーイズ』では、半ば強引とも言えるような理想が描かれておった。しかし、現実には確実に順位がついてしまうわけじゃな」

 

カエル「だから、こういう発言もしているわけだね」

 

 

亀「努力が必ずしも報われるわけではない、順位はどうしてもついてしまうのがオリンピックというイベントじゃ。そこで1番重要なのは勝敗・順位であるのは間違いないじゃろうな。

 しかし、クレしん映画はその勝負を否定せず、しかし格差は否定した。

 その勝敗というのは、必ずしも人生を決めるものではないと語りきった。

 それを象徴するアイテムとしての、焼きそばパンがあるわけじゃな」

 

カエル「ふむふむ……

 あと感動したのは”青春は〇〇だ”とかの言葉でさ。

 中には『青春は孤独だ』というネガティブなワードもあったんだよね。まるで、青春そのものはキラキラしているように扱いがちな中で、しっかりとネガティブな青春を送る人にもエールを送るような作品になっていて!

 

亀「ここでネガティブな人を切り捨てたら、この映画の意味が変わるからの。

 この描き方などは、それこそ『ユメミーワールド』であれば、母を亡くしてしまった子供に対する視線などのよう感じるじゃろう。家族がいること、勝者であることが当然ではない社会において、弱者や敗者、頑張れない人、笑われる人……それらの人に対して、優しい視線を送る。

 それがこの映画の魅力となっているのじゃろうな

 

 

 

 

 

最後に

 

というわけで、この記事も終了となります!

 

また来年、面白いしんちゃん映画を期待したいの

 

 

カエル「例年通りならば来年は橋本監督の番だけれど、どうなるのかな?

 どのような語り口になるのかも含めて、楽しんでいきたいね!」

 

 

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