いよいよ、初めてのプリキュア映画に手を出す時が来たんだね
……ドキドキするよ
カエルくん(以下カエル)
「本作は10月公開の中でも1番注目をしていましたが、やはり女児先輩たちのことを考えると朝の時間帯に鑑賞するのは控えて、レイトショーで観ました」
主
「いつもは『ドラえもん』などは子供達の反応を見ながら映画も楽しむけれど、さすがに女児向けアニメは通報されたくないし。
隣に座ったら、親御さんから警戒されそうだしね」
カエル「そんなバカな……と言いたいけれど、ご時世ですから。向こうはこちらのことを知らないわけで、ただの女児向けアニメ映画を一人で見に来ている大人というだけで警戒心マックスだしね」
主「でもレイトショーで大きなお友だちがたくさんいたよ。
プリキュア人気、恐るべしだわ。
ちなみに自分はプリキュアはにわかもいいところで『スイートプリキュア』と『スマイルプリキュア』しか観たことがありません。
映画自体も初です」
カエル「さすがに初代くらいは観ておいたほうがいいかな、と思いつつも、長いからなかなか手が出せないというね」
主「でも、そのわずか2作品でも人気の理由はとてもよくわかった。
特に『スマイルプリキュア』は今でも人気のあるタイトルだけれど、あの当時年間でも1番面白かったアニメかもしれない。
じゃあ、そんな人が今回のプリキュアを観たらどんな反応をするのか……
感想記事のスタートです!」
作品紹介・あらすじ
15周年を迎えた日本を代表する人気シリーズ『プリキュア』の中でも、第1作である
『ふたりはプリキュア』と、現在放送中の『HUGっとプリキュア!』を中心に、全作品のヒロインが登場するオールスター映画。
キャストには過去の15作のプリキュア声優たちが集い、ギネスブックにも登録されている。また、敵のミデンを担当するのは人気声優の宮野真守のほか、山本美月もゲスト声優を務める。
赤ちゃんであるはぐたんを育てながら日々を楽しく過ごしていた野々はな達の前に、突然謎の敵、ミルンが現れる。ミルンはプリキュア達の思い出を奪い、口癖や技をコピーしていく、強力な敵だった。
一向にピンチが訪れた中、キュアブラック、キュアホワイト達が駆けつけるのだが……
『映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』予告編
感想の前に〜HUGっとプリキュアの評価について〜
まずは、映画の感想に入る前にHUGっとプリキュアのテレビアニメに対する評価について語っておきましょうか
間違いなく世界規模で見ても現代最先端の物語の1つだろう
カエル「よくTwitterなどでも話題になるけれど、今回のプリキュアの社会性の高さは本当に素晴らしいよね。
子育てという、社会が最も理解して支援してあげなければいけない女性に多い問題をメインに取り上げつつ、さらにジェンダーフリーやライフワークバランスについても語っているというね」
主「自分はそこそこ物語を観ている方だけれど、これほど女性や性の解放を積極的に描いている作品はほとんどない。
もちろん、ディズニーやピクサーなどのアメリカの映画は女性解放運動などが盛んだけれど、さらにその上をいっていると断言できる。しかも政治的な匂いは一切しないんだよ!
まあ、映画とは描ける時間の長さも全然違うから、単純な比較はできないけれど……」
カエル「特に日本のレベルで話をすると、1作品だけ飛び抜けているような印象すら持つよね」
主「日本の場合、残念ながらジェンダーや女性解放の物語については遅れている印象を受けてしまう。
もちろん、漫画であれば志村貴子作品のように、とてもハイレベルな作品を発表している作家はいるし、自分が知らないだけというのもあるだろう。
でもさ、アメリカを始め”女性は男性に隷属するものではない”と語り、恋愛からの解放をうたった作品も『アナと雪の女王』や、最近であれば『オーシャンズ8』などもある中で 若者、特に女子中高生向けの恋愛スイーツ映画が毎月何作も作られている。
アメリカは行きすぎな印象もあるけれど、日本は女性を恋愛から解放し、家庭から解き放とうする運動なんてほとんど見受けられないのでは? という現状がある」
カエル「結局はおざなりにでも恋愛描写を入れれば売れると思われているしね」
主「HUGっとプリキュアは確かに基本は女児向けアニメだから、凝った表現はしていないように思われるかもしれない。
でも、実は極めてハイレベルなメッセージ性の強い描写を、さらりと描いてしまっている。
それが一緒に見ている親御さんにも伝わるんだよ。
最近だって『帝王切開はつまづきじゃない』『完璧な育児なんて目指さなくていい』という、とてつもなく深いセリフを発している。こんな作品が日本でどれだけあるか……少なくとも自分は知らないね」
映画の感想
ではでは、そんな前置きをした上で映画の短評からスタートです!
#precure#映画プリキュア
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年10月27日
何回泣かすの、この作品
序盤からクライマックスすぎて中弛みを懸念したけれどさらに盛り上げていくからマジですごい
見せ場しかないし、プリキュアをずっと追いかけてきたファンは号泣するでしょ
この内容はむしろ大人に刺さる
いや、もう言葉にできないほどの衝撃作 pic.twitter.com/UWuqAa08RY
ぶっちゃけありえないクラスの大傑作! これは間違いなく今年ベスト候補の傑作です!
カエル「もう見終わった後の満足度などもトンデモなかったもんね……最初に語ったように、プリキュアシリーズをほとんど知らないから『さすがに厳しいかな?』と思ったら、そんな懸念を見事に乗り越えてきた!」
主「映画好きにわかりやすく例えると『マッドマックス 怒りのデスロード』級の衝撃ですよ。
つまり、ほぼ全編にわたってクライマックス、中盤以降は感情がずっとフルスロットルで入りっぱなし。
それも感動→熱さ→感動という形で描くから、ちゃんと物語としてのジェットコースターもできている。もちろん、メッセージ性も完璧。
間違いなく、今年を代表するアニメ映画の1つであり、これが多くの大人たちに伝わらない可能性が高いということは、本当にもったいないです」
カエル「どうしてもプリキュアの映画は大人は観に行きづらいのはあるからね……うちも、このブログを運営していなかったら観にいかなかっただろうし」
主「気持ちはよくわかりますよ。
よくわかるけれど、本当に大傑作ですから!
あまりの感動に何回目に涙を浮かべ、そして本当に流れる寸前までいったことか……
プリキュアらしく熱いシーンも豊富であり、作画もしっかりと安定して迫力のあるものになっています。
シリーズを追いかけてきたファンはもう年間ベスト確定級の衝撃があるんじゃないかな?」
子供向け作品として
でもさ、オタクや大人向けに偏っている可能性はあるんじゃないの?
……まあ、自分はレイトショーで見たので子供はいない環境下だから劇場の様子は分からないけれどさ
カエル「子供にはウケが悪そうなの?」
主「もちろん、そこも配慮されているよ。特に今作はHUGっとプリキュアと、初代のふたりはプリキュアにスポットが当たっているけれど、他のシリーズのプリキュアも出てくる。
その中でも特に出番が多いのは『魔法使いプリキュア』と『キラキラ☆プリキュアアラモード』の、近年に放送された2作品だ。
当然知っている子供たちも多いだろうし、そこは好きな子ならテンションが上がるんじゃないかな?」
カエル「テレビシリーズでも過去のプリキュアを登場させたりと、色々と映画に入ってもらえるような配慮はしていたしね」
主「自分はTwitterなどでよく発言しているけれど『どうせ子供向け作品でしょ?』と言われることってすごく多い。
今では口コミで話題になっているけれど『若おかみは小学生』も絵柄などから舐めてました、なんて言われる始末で……自分に言わせて貰えば高坂監督と吉田玲子の脚本で外すわけがないだろうって思いもあるんだけれど。
子供向けアニメ映画って、とても夢と希望に溢れていながらも、それをお為ごかしな綺麗事に描かない。
むしろ、子供達をどう楽しませるか、本気で考えてぶつかっている」
カエル「それに比べて大人向け作品は……というのが口癖だもんね」
主「だって、大人向け作品はイケメンや美女の役者を出して、とにかく派手な演出でなんとなく結ばれました、めでたしめでたしなんて作品も本当に多い。どっちが幼稚なんだって話だよ。
子供向けアニメ映画だからこそ、万人が届くようなメッセージ性も兼ね備えて、しかも説教くさくならないよう配慮しつつ、面白い作品を作る……これがどれだけレベルが高いことか!
本作も紛れもなくその難技に挑み、見事に達成した作品ですよ」
以下ネタバレあり
作品考察
育児の物語として〜HUGプリの不満点〜
ここからはネタバレありで語っていきます
何から語ろうか迷うよね……
カエル「じゃあ、最初はこれだけ大傑作だと褒めているけれど、数少ない不満点があるんでしょ?」
主「そうそう。
テレビシリーズのHUGっとプリキュア(以下HUGプリ)は確かに素晴らしい作品だけれど、育児をテーマにした以上で描けていない……というか描けない? ことがある。
それは『育児の過酷さ』だよ」
カエル「はぐたん、本当に可愛くて今作でもその登場シーンから、もう愛らしさ全開だったし、それは育児の魅力の1つではあるけれどね」
主「育児というのはそれだけじゃない。夜泣きはする、目を離すと何に手を出すか分からないし、一日中暴れまわることがある。そして、それは成長するまで終わらないんだよ。
じゃあ、はぐたんはどうですか? って言えば、あの子は本当にいい子でさ。
あんな子だったらみんな赤ちゃんを欲しがるし、苦労はしない。
だけれど、テレビアニメだと初期の頃はともかくとして、仲が深まってくるとドンドンいい子になってしまうんだ」
カエル「本当ならば成長して行動範囲が広がるからこそ怖いこともあるけれど、プリキュアで話が進んでもその段階だったら『え、もう育児は嫌だ……』と思う子供も出てくるかもしれないしね……」
主「そこはある程度理解しつつも、でも綺麗すぎるな、と思ったポイントだった。実際は怒りたくなることも、思わず手が出てしまうこともあるだろうし。
だけれど、本作はそのストレスをきちんと描いていたんだよね」
映画が描いた育児のストレス
みんなが子供に戻ってしまった! というポイントだよね
あのシーンは理解もするけれど、こっちも参っちゃった
カエル「一気に赤ちゃんや子供が何人も増えて、でも保護者は数人しかいないって結構大変な事態だよね……」
主「しかもさ、さあやなんかはキチンと賢い。
彼女は自分が置かれた状況を……記憶を失っていても的確に理解し、大人からすると戦慄するような行動をとる。あれは中学生のはなだからセーフだったけれど、大人の男性は完全アウトだからね。
そういった子供の厄介さであったり、赤ちゃんえみるの単純にイヤイヤ期などなんて、一緒に見ている親御さんなどは戦慄したんじゃないかな?
子供にはお化けのようなミデンが恐ろしいけれど、大人には別の意味ではミデンは恐ろしい存在だよね」
カエル「子供がいない僕ですらそう思ったから、親御さんの恐怖は想像もできない……」
主「でもさ、そういうことを描くのってすごく大事なんだよ。
”赤ちゃんはかわいいよ”
”家族っていいものだよ”という良いことばかり描かないで、しっかりと子供を持つ面倒くささも描く。そして、大人(保護者)であっても泣きたくなるようなほど大変なこともあるということも描く。
そういったことを描けるとレベルも高くなるし、世の中の親御さんも”大変なのはうちだけじゃないんだ”って安心する部分もあるんじゃないかな?
それに、子供の側も育児の大変さを物語を通して知ることで、勉強になることも多いだろうしね」
カエル「そう考えると、今作はオールスタームービーではあるけれど、育児をテーマにしたHUGプリらしい作品に仕上がっているんだね」
近年の実写映画と比較して
じゃあ、せっかくなので映画ブログの強みを発揮して、近年の他の映画とも比べてみようか
ここで挙げるのは2つの作品だ
カエル「それが『タリーと私の秘密の時間』と『クワイエットプレイス』の2作品です。
タリーは若干公開規模も小さめなので知らない方も多いと思いますが、女優のシャーリーズセロンが18キロも増量した演技が話題となった、育児をテーマとした作品です。
そして『クワイエット』はヒット中のホラー映画ですが、この映画は育児や世間の声に抗うことをテーマにしているのでは? という見立てをしています」
主「今回のプリキュアの映画でもハリーは『プリキュアだから頑張らなければいけない』というけれど『プリキュアは普通の中学生なんだよ!』と返すシーンがある。
このシーンなんかは本当に象徴的で、プリキュアを母親に変えるだけで多くの人に届くでしょう」
カエル「『母親だから頑張れ、しっかりと躾しろ』って話だね……でも、母親だって普通の人間であるわけで……」
主「そういった声に対して『違うでしょ!?』と大きな声を張り上げるのが、HUGプリの先進性だ。
先に挙げた実写映画2作品も、育児が大変だけれど、社会はそんな母親の声を受け入れてくれないという一面をしっかりと描いていた。クワイエットは評価が割れるけれど、タリーは間違いなく現代でも最先端の物語であり、しかもエンタメとしてもしっかりと面白い。
そして今作もまた、同じようなことをサラリと、でもきちんと育児の過酷さを描いている。
こうやって比べてみると、世界基準で見ても現代最先端の作品の1つだということがわかってもらえると思う」
敵への接し方と15年の描き方
15年の重み
今作の敵であるミデンは思い出を食べてしまうんだよね……
この辺りは15年続いたシリーズだからこその重みだよね
カエル「もちろん、ミデンが各プリキュアの象徴的なセリフを次々と言うのもファン位はたまらないポイントだろうけれど……」
主「今回、宮野真守を起用したのは間違いなく成功でしょう。
あれだけの敵を、豊かな表現力でキッチリと描いてくれたからこそ、これだけの作品に仕上がっていた。
特にさ、初代とHUGプリだったら、もしかしたら親子でプリキュアを楽しんでいるかもしれないんだよね」
カエル「初代の時が10歳くらいとして、そこから15年だから25歳。プリキュアを楽しむ子供がいるにはちょっと早い印象もあるけれど、でも決しておかしな話ではないよね」
主「子供向け作品の重みってそういう部分にも表れていて、ドラえもんやクレヨンしんちゃんは大人も子供も楽しめる。それはもちろん作品の出来もあるけれど、それ以上にそれだけ長く続いて慣れ親しんだということもあるだろう。
それだけ長いシリーズだからこそ、思い出を消し去ってしまうということが、重みを増していくよね」
HUGプリの敵について
HUGプリがすぐれている面の1つが、敵の描き方だという話です
今作もそれが発揮されていた
主「これはさ、もしかしたら大人の方が理解されるかもしれないけれど……自分はHUGプリの敵が悪い人には全く思えないんだよね……」
カエル「一応悪の秘密結社として存在しているし、人々を苦しめているけれど、それでも悪い人ではないの?」
主「例えば初期の敵であるチャラリートは『自分が何者にもなれない中途半端な人間である』という苦悩を抱いていた。バブル期の女性のようなパップルは社内恋愛に身を焦がしながらも、結局はそれに破れてしまった……いわば”恋愛至上主義”の被害者なんだよ。
そして敵はブラック企業に勤めているけれど、それは全く笑えない。
風刺として見事に成り立っている」
カエル「元々、ブラック企業の面が話題になったもんね。軽いギャグ風ではあるけれど……」
主「……さらにさ、歳をとればとるほど敵のやりたいこともなんとなく理解できる。
”時間を止めることで未来を消失させる”とだけ聞くと確かに非道なようだけれど、でも未来に希望が持てない、あるいは過去ばかりを考えてしまう。いっそ時が止まれば……なんて思いがある人もいるんじゃないかな?
そして、やはりこの作品にも行き着くよね」
カエル「みんな大好き『オトナ帝国』だね。ケンとチャコとやり方は違うけれど、目的は結構似ているかも……」
主「自分は”未来はいつも白紙だ”という言葉は、希望的なものだとは思っていない。実は真っ黒で先がないかもしれないじゃない。
そもそも未来なんてなければいい、そんな考えに至ることは……決しておかしなものではないんじゃないかな?」
敵役に対するはなの眼差し
そんな敵たちに対する、はなの眼差しがとても優しいんだよね
本作はあくまでも”応援する”プリキュアなんだ
カエル「プリキュアの最大の魅力は肉弾戦であり、その戦闘描写のレベルの高さに多くのアニメファン、作画ファンが息をのんでいます」
主「でも、はなってそういう存在ではないんだよね。いつも誰かを全力で応援できる女の子として描かれている。
彼女自身は決してスーパーウーマンではない。む
しろ、その周囲の人物のスペックと比べると何も持たない凡人と言えるだろう。将来の夢なども明確に決まっている描写などはあまりない。
だけれど、過去の過ちを許してあげることもできるし、人のことを応援してあげることのできる、本当に強い子として描かれている」
カエル「だからこそ、本来は巨悪であるはずの敵の幹部ですらも救ってしまうわけだしね」
主「本作もそこは同じでさ……これは演出も本当に優れているけれど、雨のシーンのやり取りはそれまでの派手なシーンとの落差によって、涙腺を刺激させられた。
何も持たない少女だからこそ、何も持たない相手に対して寄り添ってあげることができる。
プリキュアだけれど、それ以外は何ら変わらない普通の少女だからこそ、応援してあげることができる。そこに、相手が立ち直り成功していく姿に1ミリの嫉妬もない。
ある意味では出来過ぎないい子だけれど、自己評価はそんなに高くない。
実はそれもまた特別な才能なんだけれど、そこには気がついてないないんだよね」
子供向けアニメ映画としての力強いメッセージ性
そんな過ちを犯してしまった存在でも、しっかりと寄り添ってあげることができる女の子かぁ
これは現代でも最も重要なテーマの1つだよ
主「現代は寛容と非寛容の対立の時代だ。
トランプ問題、テロリズム、移民問題、それから日本では一部の人たちに対するヘイトスピーチなどの問題もある。
中には過ちを犯してしまった人もいるだろう。そういう人に対して、徹底的に追い詰めていくような様相もある」
カエル「社会が非寛容になっているように感じてしまう瞬間は増えているのかなぁ」
主「そういう人や存在にそっと寄り添ってあげること、応援してあげることがどれだけ重要か。
もちろん、プリキュアたちの友情も美しいよ。
でも、はなの凄いところは全く縁もゆかりもない赤の他人、それどころか敵に対して理解を示す態度をとることだ。
これは今の子供向けアニメ映画で最も重要なことであり、多くの作品が描いている。でも、それらの作品よりもさらに一歩心に染みるのは、やはり”15年”の重みがあるからだよね」
カエル「あれだけたくさんのプリキュアがいて、子供から大人まで15年間たくさんの人たちの夢や希望を届けてきたヒーローだもんね」
主「ミデンみたいに『自分は空っぽだ』と思う人はいるかもしれない。特に、思春期の頃はどうしても他人と比べてしまって、劣等感を抱くかもしれない。
その意味では日本全国に、今この瞬間にも野々はなのような思いを抱える子はいっぱいいる。
それでも、創作物であり架空のキャラクターであるプリキュアを思い浮かべることによって、実は空っぽではないんじゃないの? って思うんじゃないかな。
あの時プリキュアが大好きだったという思い出、それは確かに架空のキャラクターかもしれないけれど、でも確かにあるんだよ」
カエル「創作物が生きる理由ですって人は、結構多いよね。今日は死にたくなったけれど、来月あの漫画の新刊が出るから生きますって話とかさ」
主「それは15年描き、ここまで全力で小さい女の子たちを中心に支えてきたプリキュアだからこそ、実感を持って描けるものなんだ」
子供達への大きな配慮
本作もまた大きな配慮がされているんだよね
みんながみんな恵まれている子供達ではない、というのは悲しい現実だ
カエル「ミデンという存在をどのように考えるのか? ということだけれど……その中の1つが、恵まれない子供達だよね…」
主「本作のように”思い出のない子供たち”というとちょっと抽象的だけれど、少し表現を改めて……例えば”写真(思い出)がほとんどない子供たち”としようか。
親が亡くなっていたり、あるいは虐待を受けていたりなど、必ずしもいい思い出を抱える子供ばかりではない。
プリキュアは絆の物語だけれど、それは愛する家族や友人がいるからこその物語とも言えるんだ」
カエル「だけれど、そんな思い出がない子供たちであろうとも、プリキュア達は優しく抱きしめて、一緒にいてあげるよと告げるんだね」
主「自分はこの手の描写……つまり”恵まれない子供達を除け者にしない”というのは、とても大事なことだと考えている。
もしくは、プリキュアを愛しているけれど、好きだと言い出せない男の子や大人だって含まれているかもしれない。
やっぱり、プリキュアに限らないけれど、作品を愛せるような環境にいる子供達ばかりではない。貧富の差や、環境の差はどんどん拡大しているという話もある。
だけれど、そういった子供達にも目を配らせている本作を、自分は高く評価したいね」
カエル「そういう作品が好きだもんね」
主「それと、ミルンの意味はもう1つあると思っている。
本作は”スマホとアナログカメラ”という対比もあるんだけれど、ここも深読みすると”CG(3D表現)と手書き作画”とも受け取れる。
少し前までは手書きは滅ぶとまで言われていた。だけれど、デジタルとアナログって対立軸ではなく、それぞれの魅力があるんだよね。
本作はそのCG表現の魅力と、手書き作画の魅力の両方を描くことにより、手書きだってこれから先も頑張るぞ! という意気込みも感じた作品だったな」
あまり恵まれていない環境にいる子供達を主人公にして応援する傑作アニメ映画は次々と生まれています
本来ならば危ない描写
本当なら危ない描写?
本作の特徴でもあるけれど、メタ的な表現があるじゃない
カエル「劇場で応援してねってやつだよね。
この手の作品では時々見る、昔からある手法だけれど……」
主「これって扱いが難しくてさ、物語世界から一気に現実世界に戻してしまうから、それまでの興奮が一気に冷めてしまう可能性があるんだよ。
実際、自分は本作を見ている時に、その描写が出た瞬間、ちょっと嫌な予感はした」
カエル「子供向けアニメのお約束ではあるけれど、大人ばっかりの劇場だとただのシュールな空間だもんね……」
主「でも、本作に限ってはそれでも全く違和感がなかった。
むしろ、さらに感動した。
なぜならば、そこに15年分の思いが詰まっていたから。
大人ばっかりだから特典などはもらえなかったけれどさ、子供ばっかりだったら劇場が光り輝くんだよ。
それは15年分の光だよ。
もちろん子供は最近のプリキュアの名前を叫ぶだろうけれど、かつてプリキュア少女だった女性たちやファンの大人たちは、それぞれ好きなプリキュアの名前を叫ぶでしょう」
カエル「今回は好きだったプリキュアの名前を叫ぼう! って話だったしね」
主「HUGプリって思い出とかに対する描写が非常に多いんだよね。
多分、これからテレビではルールーとドクターの思い出に関することも描かれていくでしょう。
今作って確かに15周年だから特別企画的なオールスタームービーと受け止めらるけれど、やっぱり育児と思い出について中心に語ったことも考えると、HUGプリの劇場版作品だったね」
まとめ
ここでこの記事のまとめです!
- 年齢を超えて多くのプリキュアファンに届く大傑作!
- 最先端の物語らしく、育児についてもキチンと描く!
- 15周年の思い出はいつでも君の胸にある!
今年トップクラスの大傑作です!
カエル「あ〜大ヒットはするんだろうけれど、もっと多くの人に届いて欲しいなぁ」
主「これほどの作品は、本当にそうそうお目にかかれるレベルじゃないです。
確かに見に行くにはハードルが高いのはわかるし、オールスターのファンムービーであるのは否定しないけれど……」
カエル「ちなみにさ、冒頭の横浜の戦いとかってなんだったんだろうね?」
主「……あれって自分は2つ仮説があってさ、全く信憑性はないけれど……1つはデジモンを意識したって説と、2つ目は……みんなが行く公園が立川にあるんだけれど、実はシンゴジラオマージュではないか? という仮説を立てる。
まあ、それを証明するのは難しいんですがね、最後の馬鹿話ということで」
カエル「本当に大傑作です、ぜひ劇場へ!」
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