今回は『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』の感想記事になります!
今年もやってきた、しんちゃん映画!
カエルくん(以下カエル)
毎年恒例ながら、楽しみにしているシリーズがやってきたね
亀爺(以下亀)
今年は和テイストということもあり、どのような作品になるのか楽しみじゃな
カエル「それでは、早速ですが記事のスタートです!」
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- 今記事の簡単なまとめ
- 全体的な感想 → ゲラゲラ笑えるコメディも、少しオトナ向けな印象?
- 良かった点 → 家族愛・歴史や過去から変化を促すテーマ性
- 今作で感じたポイント → クレしん映画の歴史と今後の変化への想い
感想
それでは、Twitterの短評です!
#映画クレヨンしんちゃん
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2022年4月24日
なるほど、これもまたまた作品自体は詰め込みが多く粗い部分も見受けられますが、やりたいことはよくわかるかと
特にクレしんの歴史について考えさせられたのは橋本監督のしんちゃんらしさなのかもしれません
大人向けな部分もありますがこれはこれで良きかなと pic.twitter.com/TG86wGbcmF
これは意欲に溢れておるものの、評価は難しい作品かもしれんな
カエル「近年のクレヨンしんちゃん映画って、とても色々な意味でレベルが高くて……もちろんコメディとしても面白いし、キャラクターも良いし、テーマも物語も作画・演出面も優れている作品が続いているんだよね。
日本では毎年恒例のアニメ映画って、いくつもあるけれど……その中でもドラえもんと、クレしんは飛び抜けてレベルが高い印象があります。
と言っても、今はどのシリーズ作品も、平均値がとても高いんですけれどね」
その高いハードルを課しているので、その中で比べれば……残念ながら、今年はわしの好みからしたら、少しだけ落ちるという印象もあるかもしれん。
亀「しかし、だからと言って悪い作品というわけではなく、しんちゃん映画に込められた思いなどを考えれば、今年も見るべき意義が多くあったという印象じゃな」
カエル「その分、少し詰め込みすぎたのかなぁ? という思いはあるけれど、それでも毎年のしんちゃん映画のような面白さはあるし、何よりもテーマ性がしっかりとしています!」
亀「もちろん、子供向けながらもアニメ表現もしっかりとしており、中には息を呑むような表現もあった。
わしは作品として難はあるかもしれんが、とても好意的に評価したいタイプの作品と言えるかもしれんな」
クレヨンしんちゃん映画の特徴
それこそ、最近の作品はレベルが高くて、昨年の『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』なんて、年間ベストに挙げている人もいるくらいの作品だったからね!
『天カス学園』に限らず、ここ10年のクレヨンしんちゃん映画に限定しても、どれも本当に素晴らしい作品が続いている
これは後程、詳しく語るが、クレしん映画ならではの強みは大きく分けて2つあると考えておる
例えば『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』は、落書きを動かすという、子供の自由な発想に基づいた作品たちだったものね
カエル「このように、クレしん映画というのは初期から続く湯浅政明などが主体となった、自由なアニメ表現が、とても強い作品になっています」
亀「また②の社会的・教育的メッセージに関しては、いくつも解説している。
各作品にのそのような要素については、以下の記事などを参考としてほしい」
今作の欠点について〜詰め込みすぎ?な要素〜
今回は、先にネガティブな話をしてしまいましょうか
少し、詰め込みすぎな印象を受けたかの
カエル「色々とやりたいことはわかるんだけれど、ごちゃごちゃしている部分も感じられたよね」
亀「今作での問題点は”詰め込みすぎ”という言葉に集約されるのではないだろうか。
子供向けのギャグ、大人向けの感動はもちろんのこと、メインとなるメッセージや隠されたメッセージなども行うには、少しごちゃごちゃしている印象があったの」
カエル「一部では『子供向けというよりも、大人向けの印象が強い』という意見も散見されていましたが、そう言いたくなるのもわかるのかなぁ……」
亀「元々やることが多いし、キャラクター数も多くて舞台も春日部&忍びの里を行ったり来たりしながら、さらにしんちゃん&ちよめパート、野原一家パートなど、複数の物語が同時並行している方式なのは、少し整理が難しい部分もあったかもしれんの」
声優について
ではでは、今作の声優について語っていきましょう
すっかり小林由美子のしんちゃんも、板についたものじゃな
カエル「もう違和感なんて全く感じないし、元々クオリティが高かったけれど、今もとても良いよね。
今作では山田孝之がシークレットゲストで呼ばれていたりして、これは……さすがに気がつきようがない🤣って感じだけれど、でもそこら辺も遊び心があって、面白かったね」
亀「今回語りたかったのは、川栄李奈じゃな。
もちろん、川栄自体は演技が達者じゃ。アクションもできる女優さんであり、わしはとても女優として好印象を持っておる。
そして今回は、川栄でないとできない役だったかもしれないな」
カエル「それはなんで?」
亀「単純に、川栄がお母さんである、ということじゃな。
まだ若いが、すでに川栄は出産経験もあることは知られておる。役柄に合わせるためにも、お母さん系の役者さんに来て欲しかったのじゃろう。
そうなると演技もできて出産経験もある川栄というのは、ナイスチョイスと言えるかもしれん。このあたりも含めて、キャスティングの面白みがある作品となっておるの」
以下ネタバレあり
作品考察
本作が描いたテーマについて
では、ここからはネタバレありで語っていきましょう!
まずは、本作が描きたかったテーマについて考えていこうかの
カエル「ボクが考える中では、このようなテーマなのかなぁ」
わかりやすいところでは①の家族愛で、しんちゃんが生まれた時を重点的に描いた部分だよね
あれは典型的な子供はキョトン、大人は感動のパターンかもしれんな
カエル「子供たちはしんちゃんたちのギャグだったり、屁が臭いぞうなどのしんちゃんらしいネーミングセンスでゲラゲラ笑えるけれど、自分が生まれた時のことなんてわかるはずがないからね。
なんかさ、ボクもオタマジャクシの頃に親ガエルと映画を見に行ったけれど、家族愛を全面に出したところで、なんか気恥ずかしくなってしまった印象があるかな」
亀「子供が生まれた瞬間というのは、それこそ大人にしかわからない感動じゃからな。
そこを前面に出してきたことは、まさに大人向けの感動というほかないじゃろう。とは言っても、今作はそれが悪いわけではない。それこそ『オトナ帝国』の懐かしいというのは、大人にしかわからないというのも、まさに大人向けの感情じゃからな。
テーマ~歴史や過去について語る~
今回語りたい重要なテーマは②の”歴史や過去に対して変化を促す”というパターンということだけれど……
ここが、今作では特に優れていた印象があるの
カエル「例えばわかりやすいところだと、忍者の里の学校の優等生である風子が『くノ一は長老になれない』と言ったところは、まさに旧態依然とした里の体質を示しているよね。
今時、そんなことを気にしている会社も少なくなった……と思いたいけれど、まだまだ残る風習ではあるのかな」
亀「うむ。他にも色々と閉鎖的な描写があったの」
特に、珍蔵のお父さんである屁祖隠胡麻衛門の苦悩なんて、まさに過去からの役割を押し付けられてしまっている人々の象徴だよね!
亀「このあたりの描写からも、今作では様々な過去の因習に問われている人々を描いているのが伝わってくる。
また、ちよめがそのことに対していい思いをしておらず『いっそのこと、里が壊れてしまえばいい』という思いを抱いているのも印象的じゃったな。
物語では重すぎることもあるのか、さらっと流れてしまっているが……ここは重要な描写だたように感じるかの」
子供を得て気がついた感覚
あのちよめの感覚は、やっぱり子供を得たからこそ気がついたことなのかもしれないね
それまでは当たり前のように思っておったことが、実は異常であると気がついたのは、とても大事な描写じゃな
亀「わしとして気になったのは”ちよめが第2子を妊娠している”という設定じゃな。
これは別にあってもなくても問題ないと感じてしまった……むしろ、物語に制限がかかるから、これは余計なのではないか? という思いもあった。
しかし、これが重要な設定だったのかもしれん」
カエル「まず考えられるのは”実際に子供を産んだからこそ、この里の異常性に気がついた”ということだよね。
自分の子供が里の役割を押し付けられて、無理やり良い子にさせられる……言うなれば、子供が子供でいられない状況があの里であり、それを第2子にも押し付けるわけにはいかない、ということだね」
亀「うむ。
地球を守るという里の役割はとても重要であるが、しかし、それによって搾取されてしまう夫の姿を見てしまうと、それが将来の自分たちの家であることは明白なわけじゃな。だからこそ、ここでその因果を止めてしまいたいと思った……
例え地球や里を壊しても、の。
そこまでいかなければ、里の掟の異常性などを内部では気がつくことができないというまで、行ってしまっていたのじゃろう」
過去に対して変化を決意するというテーマの重要性
本作で感じた過去作のオマージュ
それがとても重要だと感じた理由がいくつかあるらしいけれど、その1つが”過去作のオマージュ”です!
今作にも、過去作のオマージュがいくつも入っている
カエル「橋本昌和監督はしんちゃん映画としては5作めの監督作となる。
近年はしんちゃん映画は数年おきに監督が入れ替わりで起用されている。おそらく、同じ監督が毎年作るのではなく、2、3年かけて1つの作品をじっくりと作って監督してもらおう、という方針なのじゃろう。
そして橋本監督のしんちゃんの特徴は”過去作へのリスペクト”という点じゃ」
例えば『宇宙人シリリ』においては、過去の作品の象徴的なキャラクターが全員出てくるという、とてつもないことをやっています!
しんちゃん映画の過去作へのリスペクトを感じるの
亀「そして今回はしんちゃん映画30周年という節目の年でもある。
そこでこの作品で感じたのは……過去の名作たちのオマージュじゃな」
カエル「オマージュ?」
亀「うむ。
例えば、序盤で忍者とちよめの戦いがあるが、そこでは時代劇活劇として見どころがある描写が多かった。この辺りは『雲黒斎の野望』のオマージュであることが感じられた。
またひろしが足の臭いで戦うといういつもの流れといえばそうじゃが、そこで回想シーンを挟むというのは『オトナ帝国』のオマージュも含まれているようにも感じられる」
それを言い出したら、そもそも”和”をテーマにしたのも、かなりの挑戦ではあるよね
カエル「それこそ和をそのまんまテーマにしたのって『アッパレ戦国』以来であって、あれほどのシリーズを代表する名作があるからこそ、倦厭されてきたであろうテーマだしね」
亀「わしは残念ながら、そこまでのしんちゃんフリークではない。
しかし『雲黒斎の野望』『オトナ帝国』『アッパレ戦国』というのは、そんなわしでもわかるようなシリーズを代表する名作でもある。もしかしたら、もっと色々なオマージュがたくさんあったのではないかとも思う。
では、なぜそのような描写を入れたのか? という話になるわけじゃな」
しんちゃん映画の偉大なる過去の遺産
ここは、最初に説明した『しんちゃん映画はレベルが高くて名作揃い』という話に繋がるよね
それこそ、膨大な過去の遺産があるわけじゃな
カエル「だから、この作品って”橋本監督流、しんちゃん映画制作への思い”という読み替えもできます」
亀「素直に捉えても、この作品は社会的な見方ができる。
例えば以下の点がそうじゃな」
このように見れば、立派な社会派作品ということもできるわけじゃな
カエル「それこそ、目先のお金によって大切な安全管理を疎かにしてしまい、大きな事故が話題を呼んでしまっているご時世だからね……」
亀「今作が示したことは、決してゲラゲラと笑えるものではない。
むしろ、ゲラゲラと笑えるものにしていることがすごい、というべきものじゃな。
そして先ほどから挙げている”橋本監督流しんちゃん映画制作論”に置き換えれば、このような見方もできる」
このように置き換えることもできるわけじゃな
カエル「これはなかなか変な見方かもしれないけれどね。
ちなみに”モノノケの術=変化の術”は、なんでも変化させることができるアニメーターのモチーフではないか? という見方もできます」
亀「橋本監督がしんちゃん映画の過去作に対するリスペクトは、本物じゃと思う。それは過去に新文芸坐でのトークショーを聴いたときにも、しっかりと伝わってきたことじゃ。
しかし、それに甘えてしまって……過去の栄光にしがみつき、ただ単にお金を絞り出すだけのシリーズの知名度に頼り切り、何も工夫もせずに過去のままに止まり続け、監督などのスタッフの偉い人だけがふんぞりかえりご馳走を食べるような生活をしていては、里=スタジオや、地球=しんちゃん映画そのものがダメになってしまう。
そんな意図をも感じてしまう作品であった」
過去に囚われず、変化を続けるしんちゃん映画
半分は戒め的な意味合いもあるのかもしれないね
そう考えると、新たな子供が生まれるというのは、新たな作品が生まれるという意味合いなのかもしれんな
カエル「先にも挙げた『いっそ里や地球なんて無くなってしまえば……』という言葉の意味合いも、少し変わってくるように感じるかな」
亀「ここで重要なのは”過去をリスペクトする=過去に囚われる”という意味ではない、ということじゃ。
特にしんちゃんシリーズというのは、自由度が高いからこそ難しい。
そして過去に国民的な大傑作があるのも、話をややこしくしている」
カエル「誰もがしんちゃん映画というと『オトナ帝国』『アッパレ戦国』を思い浮かべるし、しんちゃん映画ファンの中でも『雲黒斎の野望』なんて、もっと語られるべき名作と思われているかもしれないね」
亀「どうしても……それはファンも含めてじゃが、しんちゃんの過去作に縛られてしまう部分がある。
実は近年……ここ10年でも上記の作品に匹敵するような名作・傑作は生まれている。
もちろんそこは個人の感覚もあるが、決してしんちゃん映画の新作は過去作に劣っているわけではない」
その中で大事なもの(金の玉)は受け継ぎながらも、変化する部分は変化する、という意味が大事なわけだよね
それこそ、今後は女性の監督が出てきても良いわけじゃしの
カエル「そういえば、しんちゃん映画って女性の監督がまだいないよね。
だけれど、絶対になれないってわけでもないし、性差だけで語るのも変な話だけれど、そういった変化があっても良いのかもね」
亀「過去をリスペクトしても、変化を恐れずに挑戦していく。
それはとても大切な姿勢じゃ。
そして来年のしんちゃん映画には、すでにそれが詰まっておる。
その新しい変化を、どのような自由な発想で表現してくれるのか……そこを楽しみにしていきたいことじゃな」
最後に
それでは、この記事を終わりにしましょう!
今年も意図が感じられる作品であったな
カエル「橋本監督らしいしんちゃん映画だったということもできるよね」
亀「そうじゃな。
来年の変化も含めて、しっかりと受け止めていきたいほどの作品だったの」