それでは、今回は『THE BATMAN ザ・バットマン』の感想記事になります!
苦手なアメコミ映画ではあるけれど、バットマンは比較的楽しめているから、どうなるだろうか?
カエルくん(以下カエル)
「うちはアメコミ映画は非常に相性が悪いので、むしろうちが褒めたら戦々恐々する人がいるのではないか? というレベルだよね」
主
「案の定、賛否が割れている模様だしね。
でも賛否が割れる映画はいい映画だし、今作の場合はバランスを無視してある部分に一点突破したタイプだから、これはこれで楽しめるのではないでしょうか」
カエル「それでは、記事のスタートです!」
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感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#ザ・バットマン
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2022年3月10日
映画には映画にしか流れない時間があり今作には3時間かけないと生まれない時間が濃厚に漂っていました
時に重く、暗い問いかけはヒーローや正義の根幹に関わるものに
アメコミ映画は苦手ですが本作は好きですね…だからこそアメコミ好きには不評かも? pic.twitter.com/wUWNoVoEEh
久々にアメコミ映画でヒットしましたね
カエル「2022年は公開待機していたアメリカ洋画もあったりと、色々な大作が次々と押し寄せてきているけれど『スパイダーマンNWH』に引き続き、アメコミ映画ファンが騒然となるような作品がまた登場したって感じだね」
主「うちはアメコミ映画に関しては、どうしても辛口になることが多いのかなって思っている。別に嫌いってわけじゃないけれど……ノリが合わないというか。
今回はそんなこともなく、とても満足感がある作品でした。
ただ、ということは、アメコミ映画としてはもしかしたら賛否が分かれる作品になるのではないかな、という思いもある」
○ 長尺映画独特の、3時間かけたからこその時間の流れを楽しめる!
3時間かけないとできない時間の流れをもつ作品に!
今回は3時間という長尺というのも、ちょっとハードルが高いポイントになっているよね
ただ、この長さというのは絶対必要だったと思うんだよね
主「今作って……見終わった後の感覚で言うと、意外かもしれないけれど、自分としては『ドライブ・マイ・カー』に近いものを感じたんだよ」
それは長尺映画つながりってことで?
それもあるけれど……3時間かけないと出てこない味わいがあるんだよね
カエル「3時間かけないと出てこない味わい?」
主「これは持論に近い……と言いつつも押井守監督も似たようなことを仰っているけれど、映画って時間を描くものだと思う。そして3時間の映画には、3時間かけないと出てこない時間の味わいというものがあるんだ。
今作は間違いなく、それが漂っていた。
それはじっくりと、3時間かけたことによって生まれる感覚だろう。
これは2時間でも、逆に4時間でもダメなんじゃないかなぁ……」
よく『時間があっという間でした!』という意見があるけれど、それではないの?
いや、体感時間としては3時間だと思うよ
主「長くもないし、短くもない。
3時間は3時間。
だけれど、だからこそできる3時間だったんだよね……。
逆にいうと、アメコミ映画に娯楽性とか、ポップコーンムービーを求めている人には、そこまで響かないかも……
アメコミ映画に何を求めるかによって、評価が変わるのではないかな」
とても自由なバットマン映画
うちはバットマン映画には全く詳しくないですが、どんな印象を抱いているの?
自由度がとても高い作品だよね
カエル「自由度?」
主「そう。
例えならば……日本で言えば『クレヨンしんちゃん』だよ。コメディに振ってもいいし、シリアスになってもいい。もちろん、しんちゃんほど子どもに向けられたライトさはないけれど。
実はしんちゃん映画も……特に近年は社会的な問題を多く扱っている。
今作が描いたことに近い作品だと『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ 拉麺大乱』辺りがテーマ的にも似たような部分があるのではないだろうか」
話をバットマンに戻すと、ギャグ的な作品もあれば、今作のような重厚な作品もあるよね
それこそCGをバリバリ使ったものもできるし、『ニンジャバットマン』みたいな奇天烈な作品だってありなんだよ
重要なのは”バットマンは人をあやめることがない”ことなんだ
カエル「これは『ニンジャバットマン』の時に脚本を務めた中島かずきが語っていますが、その条件さえ守ってくれと念押しされたようです」
主「これだけ色々なタイプの作品が作れるほど、自由度の高い作品やキャラクターってそんなに多くない。その振り幅が大きいからこそ『バットマンに何を望むのか?』がより問われるんじゃないかな。
今作は、その意味ではバットマンの持つ1つの魅力を最大限に発揮しているだろうし、1つの伝説になりうる作品であり、バットマンの可能性をさらに広げた作品ということもできるだろうね」
暗い画面と明るい光
そのバットマンの可能性を広げたということの1つが、画面だね
いやー、本当に暗い画面だったね!
カエル「近年はアメコミヒーロー映画がたくさん登場していますが、ここまで暗いのは他になかったかも。
それこそ『ブラックパンサー』とかもあったけれど……それよりも暗かったんじゃないかな?」
主「CGの粗などを見えづらくするために暗くすることはあるようだけれど、それだけじゃないよね。
バットマンという闇に塗れている存在だからこそ、暗い画面から出てくることに驚く。
特に今作は闇の黒がとても味わい深くて、そこに色々な恐怖や畏怖の感情がのるだろう。ただ単に暗いだけじゃない。
そこに時々目が眩しくなるほどの強烈な光があるんだけれど、これもバットマンという存在を表しているようで、とても良かったね」
以下ネタバレあり
本作のテーマについて
冒頭に示された象徴的な見せ方
じゃあ、ここからネタバレありで語っていきましょう!
今作のテーマは冒頭に示されているわけだ
カエル「冒頭というと、電車のシーンだよね。
町の中で色々な悪事がある。それに対してバットマンが悪党の無意識にも入り込んでいる。それを見上げて何処か恐怖心を抱きながら悪事を働く……という話の流れだよね」
主「そのスタートで、ジョーカーのような顔面にメイクをした若者集団が出てくる。その中の1人はハンパなメイクしかしておらず、半分はメイク、半分は素顔になっている。
これは明確に『正義と悪、その両方の心を持ち合わせており、天秤が振れている』という描写だ。
そして、その『正義と悪』の対比こそが、今作のバットマンのテーマなんだよ」
○ バットマンの存在は正義、悪のどちらなのだろうか
優れた映画というのは、冒頭の10分ほどでその作品のテーマを端的に語ってしまっているんだ
カエル「そういえばだいぶ昔だけれど『パラサイト 半地下の家族』の時も、冒頭10分ほどで全部物語を語っているという話をしていたよね」
主「そうだね。
闇の中から現れるバットマンが最高にかっこいいのと、そこで暴れ回る姿。
果たして彼の存在は正義なのだろうか……それを問いかけるような作品になっているわけだ」
強烈な黒のインパクトと朝焼けのオレンジが対比として美しい
なぜヒーローを正義の味方と称することができるのだろうか?
この映画を評価するのはうちがアメコミ映画に大きな疑念を抱いているというのもあるのかな
……ヒーロー映画を見ていると、なぜその人物が正義と言えるのか、そこが疑問なんだよ
カエル「これはMCU作品でよく語っていたことだよね。
『彼らの力はいわば核兵器みたいな強力な武器であり、それを個人が所有することの是非。そしてその暴力を個人の判断だけで行うことに、ヴィランと何の違いがあるのだろうか』という主張です」
主「それって言ってしまえば”米軍の行う戦争は正義”であり、アメリカの核は良い核兵器という論理に近い。銃社会であるアメリカだからこそ成り立つ論理だと思うんだよね。自分の身は自分で守る、そういった価値観。自己責任論が強い社会だからこそ、彼らをヒーローとして正義の味方として行動できる。
でも自分はずっとそこが疑問で……どうしてもヒーロー映画の主人公たちを”正義”の存在として見ることができなかった。
そもそも、そういう正義があんまり肌に合わないこともある」
それは極端だなぁ…と思いつつも、じゃあ警察官を正義の味方だと思っていますか? という話なのかな
当たり前だけれど公共の正義のために警察官をやっている人たちばかりではないんじゃないかな
カエル「日本では賄賂や汚職はほとんどないけれど、海外だと警察官というのは汚職まみれな国だってあるわけだよね」
主「これはすごく難しい問題をはらんでいるんだ。
○ 人を殺めるのはダメなのに、なぜ死刑は存在するのだろうか?
もちろん、これら1つ1つの疑問にはそれぞれ答えはある
主「この辺りは必要だと多くの人が考えているからだけれど、でもそもそも論として『なぜ復讐や暴力が許されるのか?』という疑問が発生してしまう。
- 暴力はダメだと多くの人が認識しているけれど、治安維持のための暴力は許される
- 人を傷つけるのはダメだけれど、人を傷つけた人にはその報いとして極刑を許される
なぜ、どうして?
その矛盾は許されてしまうのだろうか。
そういったことを考えていく作品だと、自分は感じたからこそ、ヒーロー映画が苦手でも、すごく好きになる作品だった」
バットマンとリドラー
その関係性を象徴するのが、バットマンとリドラーの対比関係ということだけれど……
この2人は立場が真逆なだけで、よく似ているんだ
カエル「こう言った点が似ていたのかな」
○ 己の正義に従い行動する
逆に、相違点はこのようになる
○ お金持ちで恵まれているバットマン↔︎貧困層のリドラー
この辺りは、社会性なども関わってきそうだね
根本的な部分は似ているのに、起こしている行動は真逆なんだ
主「ある意味では、手段が過激すぎるもののリドラーの起こした犯罪という名の正義に対して共感を覚える人もいるのかもしれない……
市長にしろ、リドラーが手を下した人々は公の正義の側にいる人々だ。そしてそれは社会的に強固に守られており、普通に行動したら……告発などを企てても、意味がないかもしれない。では、そういう人物に対して個人がどのように立ち向かうのか……
最も簡単な方法は暴力だろう」
カエル「個人が国家、あるいは公共に対して暴力を振るうことだね」
主「その通り。
何を悪と想定するかによって、この物語の見方は大きく変わるんだよ。
他者を傷づける存在を悪とするならば、市長などもまた同じ。貧困などの連鎖のみならず、結果的に弱者を虐げてきたわけだからね。それを除くことを目的とするならば、リドラーもまた形を変えた正義なわけだ。
そしてバットマンの正義も同じように悪を取り除くことであり、大まかには同じなんだよ。
ただし……バットマンは人を傷つけない。そこが大きく異なるポイントだな」
本物の知能犯であるリドラーがとても良い存在感を発揮していた
『マスクがあるから本心が出る』
これは作中でも出てきた、印象的なセリフだね
このセリフもまた、今作を象徴する一言なのではないだろうか
カエル「ブルース・ウェインという素顔の人物と、バットマンというマスクをした人物……どちらがより本心に近いのだろうか? という問いをされると、結構迷うというか……」
主「でもさ、これって一般人でも同じだと思うんだよ。
田中太郎さんや山田花子さんとして本名で生活していると、本音が話しにくいことがある。だけれど、ネット上の……TwitterなどのSNSであったり、Vtuberとかでもいいけれど、タロさん、ハナちゃんという仮名であれば、本心で話せることもあるのではないだろうか。
今作はリドラーもそうだし、バットマンそう。なんならば、リドラーに賛同した人々もそうだけれど、マスクで顔を隠すから本心を出すことができる。
まあ、その本心が残虐なものでもあるんだけれどね。そこが人間らしいというか、なんというか……」
本作で抱いた違和感
最後に、ちょっとだけ『ここはなぁ……』というポイントについて語っていこうか
……やっぱり、キャット・ウーマンとのやり取りが唐突で作品にいらないノイズがあったように感じたんだよね
カエル「一応、キャット・ウーマンも復讐で動いているという意味ではバットマンやリドリーにも通じるものがあるとも思うけれど……」
主「いや、それはいいけれど……
あの唐突なキスシーンとか、いらないなぁ……とか思いながら見ていた。よく特撮ファンから『この映画は恋愛描写がないから良かった』という意見があるけれど、今作で言えばその逆で、あの恋愛描写は自分には不要に感じたかな。
あとは冒頭はともかく、本題の入り方があんまり上手いとは思えなかったかな。
ちょっと公式サイトのあらすじくらいは確認してから行けば良かった……と鑑賞中は思っていて、途中から話とテーマを理解し始めた感じになっちゃったから、そこがちょっともったいないな、と」
あとは、これは自分だけが感じたことかもしれないけれど”時間の流れ方の変化”がもったいないな、と感じたかな
カエル「時間の流れ方というと、例の3時間かかる映画にしたか漂わない雰囲気のこと?」
主「そうそう。
特に中盤はその時間が濃密で、一部では『長い!』という意見もあるようだけれど、その長さがないとできない時間が濃厚だった。
だけれどリドリーが直接動き出した頃から……終盤に入るところ付近から、その時間の流れが一気に大作ヒーロー映画のそれになっちゃったんだよね。もちろん、今作も大作ヒーロー映画だから、それでいいのかもしれないけれど……
あの濃密な時間のままで駆け抜けたら、ボクはもっと評価したかもしれない。
ただ、そうなると今以上にアメコミ映画ファンの意見は賛否両論になりそうかも(笑)
カエル「……(笑)、じゃないんだよ!」
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