バットマンがニンジャになる作品かぁ……
トンデモナイ冒険だなぁ
カエルくん(以下カエル)
「正直、予告を見る限りではキワモノ感があったけれど……さてさて、どうなるものかしらん?」
主
「バットマンファンじゃない人間が見ても楽しめる作品だったら嬉しいなぁ」
カエル「この手の作品ってバットマンファンじゃないと楽しめない作品である可能性も十分あるからねぇ」
主「せっかくアニメで作るから、ご新規さんでも大丈夫、むしろアニメファンを取り込むくらい旧来と大きく違った作品にして欲しいけれどね。
では感想を始めていきましょう!」
映画『ニンジャバットマン』 日本用トレーラー【2018年6月15日劇場公開】
感想
では、いつものようにTwitterの短評からスタートです!
#ニンジャバットマン
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年6月17日
やりおったな神風動画!
やりおったな中島かずき!
めちゃくちゃ熱くてバカで面白い、エモーショナルな作品!
何度劇中でガッツポーズをしたことか…!
声優陣も豪華だし、目や耳が幸せになる!
でもバットマンファンには受けないかも…(笑) pic.twitter.com/WAvEd93AmM
再ッッッッッッ高に熱くなった作品だね!
カエル「なんていうか……ここまでやっていいの? という作品でもあって。
多分、バットマンファンが見に行くと面喰らうかもしれないけれど、アニメファンや特撮ファンが行くとめちゃくちゃハマること間違いなしです!」
主「やっぱり神風動画って大好きだわ……
たださ、アニメのレベルがそれだけ高いの? と言うと……それは賛否あるかもしれない。もちろん、かなりのレベルにあるけれど、今の日本のアニメのレベルはとてつもなく高くて、この映画よりもすごい作画の作品はいくつもある……と思う。もちろん素人目にはって話だけれどさ。
だけれど……この映画でしか味わえない感動や、エモーショナルな興奮があるんだよ!」
カエル「変な話だけれど……テレ東みたいな感じっていうのかなぁ?
1つ1つの表現自体はもっと上の作品もあるんだろうけれど、でも『え!? こんなことしていいの!?』という工夫と驚きの発想力でカバーする作品だよね」
主「だからこそ、バットマンファンが見に行った時が怖い作品ではあるけれどね。
そして、ある部分で目を疑うようなアニメ表現もあって、しかもそれが結構長い!
作画、脚本、音楽……その他たくさんのものが暴走し、それがとても面白い味を出していた作品です!
いや〜……本当にいいものが見れました!」
歴代ロビンが勢ぞろいしたことでも話題の本作!
神風動画について
カエル「最近、何かと話題の『ポプテピピック』を制作してた神風動画が、今回手がけた作品だったわけだけれど……」
主「最近流行した『ポプテピピック』が1番有名だけれど、実はそこまで色々な作品を元請けとして作っている会社ではなくて、多いのがゲームのCG映像だったりする。
例えば……自分が馴染みがあるのが『ファイアーエムブレム 覚醒』のOP映像だったり、あとはスマホゲームの『魔法使いと黒猫のウィズ』のOPとか『白猫プロジェクト』の PVなどを制作している。
色々な作品のOPなどを手がけているけれど、元請けとして活動を本格化させたのは、結構最近のようだね」
カエル「特に昨年公開された短編映画『COCOLORS』は良かったよね。
上映時間が短いこともあって、全国的に公開されたとは言い難い作品だけれど、CGアニメでもこんな情緒的な作品が作れる! という証明にもなったような作品で……」
主「どうしてもCGアニメの魅力は迫力のある爆発などを伴う戦闘描写や、スピーディーな動きにあるけれど、会話シーンなどの動くシーンでは退屈な印象がある。そこは手書きアニメにはまだまだ敵わないなぁ、と思う部分もあるけれど……
自分は神風動画のCG表現が好きだけれど、他のCGよりも暖かみを感じるというか、魅力があるんだよね」
カエル「なんていうか……キャラクターがのっぺりしてしまって、人形のように見えてしまうこともあって、いわゆる『不気味の谷』が発生してしまったり……」
主「だけれど、セル画のようなCGを目指す神風動画はそういうことがない。
本作もハーレクインなどの女性キャラは、きっちりと可愛いんだよ。
萌えを内包しているキャラクターになっている。
もっとすごいCGでのアクション描写を描く会社もあるのは事実でしょう。色々な方面のCGが出ている中でも、なかなか特異な会社と言えるね」
異色のバットマンとしてこちらもオススメ!
独特だけれど笑える作品です!
神風動画の特徴
神風動画の他の特徴はなんなの?
やっぱり『挑戦』に行き着くんじゃないかな?
主「もちろん、どの会社もそれぞれのやり方で挑戦しているし、とても素晴らしい結果を残している。
けれど、神風動画は他の制作会社とは違う意気込みを感じる。
それこそ、ポプテピピックなんてそうじゃない? あれは原作もぶっ飛んだギャグ漫画だけれど、30分の枠の中で、Aパートと Bパートを同じ話を声優を変えてやろうとは普通は考えない。
だけれど、その方法が見事にハマった形だよね」
カエル「さすがに禁じ手が過ぎると思うけれどね……」
主「例えば絵コンテ状態の背景やキャラクターが出てきたり、実写パートがあって顔出しで声優が出てきたりして、それがすごく話題になっている。
それだって立派なアニメの形なんだよ。
例えば、世界のアニメーションに目を向けると、人形や粘土を使ったアニメーションはもちろん、水彩画、油絵などもある。
果ては、紙を氷漬けにしたり、ビリビリに破ることで2次元世界の崩壊を描いた作品もある。
これらの作品は小規模公開や個人で行っているものもあるから、単純に日本のエンタメ作品と比べることはできないけれど……
でも、アニメ表現は本当に幅広い。
その中で、日本はアニメ表現を閉じ込めてしまっている可能性があるんだ」
カエル「それを広げるためのやり方の1つなのかな」
主「もちろん、これがシリアスな作品でも通用するかはわからないけれど……でも、とても面白い実験的手法の1つだよね。
本作でもそれは健在だし、先にも述べたように、あまり見かけないアニメ表現もあって、いろいろな挑戦に満ちている作品です」
アニメでバットマンを表現する意味
カエル「これは以下のインタビューにもあったけれど、アニメでバットマンを描く意味を面白く捉えている作品と言えるのではないかな?」
主「何が素晴らしいって、この作品は『アメリカ人の考えた間違った日本』に満ちているんだよ。
日本人が作っているのに!
でもさ、だからこそ面白い。そしてここまではっちゃけたら、何1つとして文句が言えないよね!
最近、人気シリーズをアニメ化する企画があったけれどさ……まあ、アニゴジのことなんですけれど、ここまでやってほしかったな、というのが正直なところです。だって、これは絶対に実写のバットマンじゃできないから!
映像としては再現可能かもしれないけれど……本作は『日本人のアニメ作家たちだからこそできるバットマン』になっている!」
カエル「これを実写でやったら賛否両論どころか、否定意見ばかりだろうね」
主「それがいいの!
バットマン系(DC系)のアニメでは『DCスーパーヒーローズVS鷹の爪団』などもあるけれど、こちらも低予算でアニメであることを最大限に発揮した、見事な作品だった。
本当、ギャグアニメとしても面白いし、表現としても真っ当な重要なメッセージが込められた作品だったんだよ。
本作もそれは同じで……中には本当に過激な、やりすぎだと思える描写もある。
それはハッチャケているというよりは、穿った……いつもの自分の考察だとトンデモナイ捉え方をされるような表現もある。
だけれど、それを恐れずに表現したこと……これに対して大絶賛です!」
以下ネタバレあり
考察
序盤について
ここからはネタバレありで語るけれど……まずは序盤から語っていこうか
ただ、ちょっとだけ残念なことがあるとしたらこの序盤かな
カエル「最近、ヒーロー映画の勉強をしていたし、バットマン関係は有名なキャラクターが多いからなんとなくわかったけれど……これ、バットマン初心者であったら理解できたのかな?」
亀「たぶん理解不能かもしれない。
その意味では不親切と言えるかもしれない。バットマンとジョーカーくらいならば知っている人も多いかもしれないけれど、ゴリラ・グロットやペンギンなどになると、どうだろう……ある程度のバットマンファンじゃないとついていけない部分もあるかもね」
カエル「説明してくれないからねぇ……なんとなく『そんな悪党もいるんだ』程度に受け止めるしかないし、あとは……アニメオタクならば声優で覚えるとか?」
主「自分は声優で覚えました。
子安ゴリラとか、諏訪部がマサマムとか……そういう記号的に覚えていたけれど、そういうことをしない人でもわかるかというと、微妙かも。
キャットウーマンは峰不二子って覚えればいいかもしれないけれど。
たださ、今作を見て改めて思ったけれど、バットマンシリーズって悪役の方が魅力的だよね。
元々悪役好きだからかもしれないけれど、キャラクターは濃いからすぐに覚えて慣れるかも」
カエル「それと、序盤が結構走っていて……今作は85分と比較的短い作品だけれど、その尺に収めるために犠牲になったのが序盤だよね」
主「正直、映像クオリティも……例えばアメリカのCGアニメーションほど動くわけじゃない。その意味では少し面喰らう部分もあるかもしれないね。
今作の欠点の多くは序盤に集まっていた印象かなぁ。
逆に言えばテンポがいいという考え方もできるけれどね」
やっぱりこの2人の魅力が作品をグイグイ引っ張る
高木渉ジョーカーの悪党ぶりと釘宮ハーレーの可愛らしさに注目!
外連味に満ちたアニメ
カエル「本作を一言で表すなら、まさしく『外連味』ってことになるだろうね」
主「今では派手な演出やハッタリなどを効かせた見せ方を称する際に使われる言葉だけれど、元々は歌舞伎から生まれた言葉なんだよ。中身がない派手で、奇抜な演出を指して『外連』と呼んでいた。
それでいうと、本作はまさしく歌舞伎のような外連味に満ちている!
例えば見栄を切る場面であったりとか、キャラクターの動きなども歌舞伎を連想する部分も多々あるね」
カエル「こう……ちょっと間違えた日本の時代劇って感じもして、それが余計に本作の外連味を増しているよね」
主「そして、本作が面白いのは数々の『あるあるネタ』を詰め込んできていること。
例えばロボットの合体シーンがあったりとか、そういう作品だって想像できるか? って話だよ。もう、あのシーンはあまりにもバカバカしいこともあって大笑いしてしまったね」
カエル「それでいうと爆発シーンなども特撮でおなじみの場面などもあったりして『これは一体何を見ているんだろう?』という気分にもなってくるけれど、でも最後できっちりと決めるところは決めてくれるし……もう最高! としか言いようがなくて!」
主「アニメの持つエモーショナルな快感がたくさん詰まった作品だ。
これだけの快感をもたらしてくれる作品はそうそうないです! いや、本当、今年トップクラスに熱くなったアニメかもしれない……」
実際に殺陣を撮影して作画されたアクション描写は見所抜群!
本作が描いたギリギリのライン
これだけ純粋に楽しめたのって、やっぱり小難しいことがないからかもね
近年のヒーロー映画ってちょっと哲学的なところもあったからな
カエル「作品にもよるけれど『正義とは何か?』を問うような作品も多くて、暗いイメージもあったかったかなぁ。
その点、本作はバカバカしいくらいに振り切っているから、見ていてスッキリしてくるような作品で!」
主「……ただ、穿った見方をすればメッセージ性がまったくないわけではないよ」
カエル「……え? というと?」
主「本作で重要な役割を果たすのがサルたちである。このサルの軍団が大活躍するけれど、まさか! という展開もあったりする。
じゃあ、サルといえば何を連想する?」
カエル「えっと……可愛らしいとか、戦国時代絡みならば豊臣秀吉だよね?」
主「それと同時に、東洋人に対する侮蔑用語でもある。
イエローモンキーと呼ばれていたことは、もはや説明するまでもない事実だ。
今作はそのイエローモンキーがバットマンたちと手を組み、悪党どもを倒していく。本作ではバットマンのオリジナルキャラクターがとても多く、日本人の新キャラはそこまで多くはない。もちろんゼロではないけれどね。
ここでサルと白人たち(バットマンたち)が手を組むというのは、日本人以外が表現したら結構危ない表現だと思わない?」
カエル「まあ、そういう風に受け取る人はいるかもしれないね」
主「今回は猿とコウモリが非常に良い働きをしていて、この2種類の動物がキーとなる作品でもあるんだよ。
コウモリ(バットマン)とサル(日本人)が手を組んで、ヒーローとして活躍する……これだけで結構攻めているな、って自分は思うかな。
しかも忍者だからさ、どちらかといえば影の存在じゃない? もちろん海外の人が好きそうなアイコンではあるけれど、バットマンだって衣装といい、闇夜の中で活動するというと忍者っぽいところがある。
やっぱり、バットマンシリーズを日本で描くことを意識した結果、かなりハッチャケてはいるけれど、しっかりと意義があるものになっていると自分は思うけれどね」
まとめ
では、記事のまとめです!
- 神風動画の作り出した異色なバットマン!
- 外連味に満ちた作画やお話が癖になる!
- 日本人が日本で描くことを意識し、他作品とはまったく違うテイストに!
やっぱりこれだけやってほしいよね!
主「バットマンを日本でアニメ化する意義などを考えても、今作は自分はケチのつけようがない。まあ、バットマンファンじゃないから勝手なことを言っているけれど……でもアニメファンとして、この作品はとてつもないエネルギーを持った面白い作品だった!
アクション作品として見所も多いし、キャラクターも可愛らしくて、名声優たちの共演を楽しめて……また見たい! と思うほどの作品だったよ」