カエルくん(以下カエル)
「では、少し遅くなってしまったけれどアニメ映画を2作品同時レビューを始めます!」
ブログ主(以下主)
「なんかさ、ここ最近毎月のように京アニ作品を劇場で見ている気がする……」
カエル「実際毎月なんじゃないの?
『Free!』の総集編の劇場版が2作品あって、『響け! ユーフォニアム』の劇場版が公開されて、それに伴って前作の劇場版も劇場公開されたから観に行って、合間合間に『聲の形』のイベント上映にも行っているし……
なんなら『氷菓』が公開されるからって、ニコニコ動画全話一挙配信とかもやっていて見ていたからね。
これだけ劇場映画を量産できるのも京アニの強みかもね」
主「その代わり2017年は『小林さんちのメイドラゴン』以外はテレビシリーズを放映していないけれど、2018年はおそらく冬期最もクオリティの高い作品になるであろうと言われている『ヴァイオレット・エヴァーガデン』があって、しかも『リズと青い鳥』以外にも色々と並行して動いているわけでしょ?
化け物かよ……」
カエル「アニメってこれだけ作らないといけないから本当に大変だよねぇ。
というわけで今回は『Free』の新作映画1作と、低予算アニメ映画の代表格である『鷹の爪』の新作映画を2作同時レビューします!
この2作を両方観た人って少ないかもね」
主「全然狙っているファン層が違うからな
じゃあ、感想記事に行ってみようか」
Free! Take Your Marks
作品紹介・あらすじ
おおじこうじの小説『ハイ☆スピード』を原案とした人気テレビアニメシリーズ『Free!』の新作アニメを4話劇場で公開。1つの独立した物語ではなく、短編が4つという形式になっている。
17年に公開された総集編映画2作品のその後の物語を描く。監督は『Timeless Medley』に引き続き河浪栄作、各話の演出には武本泰宏や山田尚子などが手がけている。もちろんキャストは継続し、島崎信長、鈴木達央、宮野真守などの人気男性声優が担当する。
高校3年生の大会が終了し、卒業の時を控えたメンバーたち。去る者もいれば残る者もいて、新生活に向けた準備をしなければいけないが(#1 運命のチョイス!)
鮫柄高校メンバーたちは去りゆく凛たちのために何かプレゼントしたいと考える。そんな時偶然に手にした福引券で当てたものは……(#2 秘湯のクーリングダウン!)などの個性豊かなメンバーたちの未来への一歩を踏み出す瞬間を描く。
#free
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2017年11月2日
いやぁ、笑わせてもらいました!
ファン向けのキャラクター映画、しかも番外編だけれどここまで追いかけてきたファンは感慨深いだろうなぁ
隣の席の女の子は号泣していました
笑えるシーンもあり、次につながる話もあり……続編おめでとう!
ごうちゃん可愛いよ!
(出番多くて嬉しかった)
感想
カエル「ということで、感想だけれど……まず、第一に言っておかなければいけないのは、本作は間違いなくファン映画だということ。
前作は総集編だったけれど、今作は完全新作映画ではある。だけれど、間口の広い多くの人を受け入れるような作品ではなくて、それまで追いかけてくれたファンへの感謝と、これからへの期待と応援のお願いを募るような作品になっていたね」
主「だから、この作品を『映画』として評価できるかというと、それは難しい。結局はOVA形式の、テレビアニメ4本を劇場公開するよ! というものだからね。作画のエネルギーに関しても、劇場で流しても問題無し! と言うほど高いものだとは思わなかった。
なので、例えばこの記事を読んで『じゃあ観に行こうかな?』と思う人は、まず少なくとも前回の総集編くらいは見てください、という話になってくる。物語としての前提条件がまるで意味がわからなくなるからね」
総集編2作の感想記事はこちら
カエル「じゃあつまらないのか? と問われると……もちろん、そんなことはないわけで!」
主「隣の席にいた女の子が終わった後に号泣していてさ……いや、そんな? と思うところもあったけれど、やっぱりファンからすると思うところがたくさんあるのもわかる。
特に、本作は4つの話それぞれにピックアップされるキャラクターや高校が違うから、それぞれの味などが見事にミックスされている」
カエル「本作は後日談なわけだけれど、ここから始まる物語もまたあるわけで……
その新しく出るであろうキャラクターの説明であったり、変わりゆく関係性などもしっかりと表現されていたね」
桜の中を歩く2人
京アニらしい構図でもある
ゲラゲラ笑える物語
主「そして何よりも面白いの!
ゲラゲラ笑えてしまうくらい、コメディとして優れている。
例えば3話目の『#3 約束のバタフライ!』などは残った後輩たちが水泳部の新入生を集めるために勧誘ビデオを撮るという話になっているけれど、その映像がまた笑えるんだよね。
京アニで映像制作というと『涼宮ハルヒの憂鬱』を連想するけれど、あれに近いものがある。あそこまで無茶苦茶なところはないけれどね」
カエル「でもさ、笑えるだけではないじゃない?
自分たちの水泳部の歴史であったり、それこそルーツを見つけて次の世代へ繋げていく……『Free!』という作品が描いてきた、水泳のリレーを通して仲間と繋がっていく思い、個人が努力し、全体で勝利するという思い……
それが世代を超えて連綿と行われていた、リレーされていたことも告げるいいお話だったよね」
主「4話目の『#4 旅たちのエターナルブルー!』では劇場内に大きな笑い声が上がっていたよ。コメディとしても結構うまくできていた。
そしてそのあとの全てを締めくくるフィナーレの水泳の映像はやはり力が入っていて、その差がいいメリハリになっていたね」
カエル「そして続編も決定しているし、これはファン歓喜の映画だよね! まあ、この作品を見ていて、これで終わりにするつもりはないなぁ、ってわかっていたけれどさ」
主「熱いファンが多い作品だし、ずっとついてきてくれるんじゃないの?
男性キャラクターの描き方などが汗臭さを感じなかったり、女性向けだなと思う部分もそりゃあるけれどさ、マネージャーの江ちゃんもすごく可愛いから、男女両性に楽しめる作品だとも思う。
これからも続く京アニ×Freeのドラマの一区切りになっているし、ファン向け作品としては100点でしょう」
DCスーパーヒーローズVS鷹の爪団
作品紹介、あらすじ
バットマンやスーパーマンなどのDCエンターテイメントの世界的に人気のヒーローキャラクターたちが低予算Frashアニメである『秘密結社鷹の爪』に出演するという異色作。正義のヒーローであり潤沢な予算を持って制作されるヒーローたちと、悪の秘密結社であり少ない予算で制作される鷹の爪の、真逆の2作品が織りなすコメディはどこにたどり着くのだろうか?
監督・脚本・声優など多くの役割をFROGMANが担当しているが、ヒーローたちには山田孝之などの俳優から、鈴村健一、松本梨香、中井和哉などの声優たちなどを起用している。
また制作費が安いために含まれる企業宣伝パートも見どころの1つ。
2017年の東京にあのスーパーヒーローがやってきた。その目的は東京へと向かったジョーカーを追い、その悪事を止めるためである。
いつものようにバカをやっていた鷹の爪団の元に接触してきたジョーカー達に秘密兵器を売ってしまい、ヒーローと共にジョーカーを止めることになる鷹の爪団。しかし、彼らには『予算』という最大の敵が立ち塞がるのだった……
#DCスーパーヒーローズVS鷹の爪団
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2017年11月2日
そうだよなぁ……これが低予算映画ですよ!
確かにアニメーションとしての見所は少ないかもしれない
でも低予算でも……低予算だからこそできる味に満ちている!
本作は『安い』物語ではない!
『安そうに見せている』しっかりとした物語だ!
感想
カエル「というわけで、この異色作の感想だけれど……」
主「かなり評価が高いです!
もちろん、低予算映画なのでアニメーションとして新次元を行くとさ、このクオリティに注目! ということはあまりない。今作は凝った映像を見せつける部分もあって……そこは素晴らしいけれど、全体の8割はいつもの鷹の爪であって、ほとんど動かないアニメーションになっている。
それはあのスーパーヒーロー達も当然一緒だね」
カエル「アニメとしてはそこまで評価できない?」
主「ただし、その欠点を意識して練られた脚本や工夫に満ちている。
『某漫画原作コメディ映画』の時に映画とは何か? ということにも触れて、その作品に否定的なことを言ったけれど、本作は逆。これぐらいの工夫をやってみろよ! と言いたくなった。
もちろん低予算だからさ、それを茶化すようなセリフもあるよ。パロディ、メタネタ、風刺となんでもあり。
だけれど、その根幹にあるメッセージ性がとてもすぐれている」
カエル「パロディだけでも色々とあったよね。昨年大ヒットしたあの作品はたくさん出てきていたし、それから島根県が舞台になることもあるけれど『島根にパソコンはねぇ!』というのも、ネットでお馴染みのデジモンネタでニヤリとしちゃう」
主「それ以外にも有名洋画をパロディとしたシーンも多々あるし、よくDC側が許可したなぁ……と思うようなキャラクターの崩壊もあったりして、それも見どころの1つ。特にこれからジャスティスリーグが公開されるけれど、その前にキャラクターを勉強するにも打ってつけの作品でもあるね」
お馴染みのヒーロたちと鷹の爪団の夢の? 共演
(C)Warner Bros. Japan and DLE. DC characters and elements (C)&TM DC Comics. Eagle Talon characters and elements (C)&TM DLE. All Rights Reserved.
本作の心意気
カエル「では、賞賛する理由についてこれから述べていきましょうか」
主「今作は『悪の秘密結社』である鷹の爪団がDCスーパーヒーローと手を組むわけだ。まずこの時点で異例なことである。予算も全く違うし、正義と悪の立場も違う。
だけれど、その根幹にある思い……社会風刺やメッセージ性が強いんだよ。それは政治を批判したからとか、そういうことではない。
『正義と悪の立場の違い』と、そして『その両者に共通するもの』の2つを見事に表現しているからだ」
カエル「この『正義とは何か?』というのは現代のヒーロー映画が抱えるテーマでもあるし、そして鷹の爪団が提示してきたことでもあるよね」
主「現代における正義とは……映画業界における正義とは『たくさんのお金を使い、豪華な映像やエンタメ性を見せ、多くのお客さんに鑑賞してもらうこと』だろう。
資本主義社会であり、間違っている! という人はほぼいない。もちろん、安くてもいい作品も作れるし、高いお金を使った作品が必ずしも良作でなかったり、売れなかったりすることもあるけれどさ。
逆に『安い予算で、しょぼい映像で公開する』というのはあまり褒められたことではない」
カエル「それを目指そうという人は普通はいないよね」
主「だけれど、その両者の根本にあるものは同じなんだ。
子供たちを楽しませたい、エンターテイメントとして誰かの助けになりたいという思い……それは全く同じ。
それを正義の立場としてヒーローたちに、そして悪の立場として鷹の爪団に投影している。
単なるオマージュネタやメタなネタで笑わせているだけじゃないんだよ!
これが映画だよ!」
しょぼいだけじゃない! 圧倒的なデジタル描写にも注目!
(C)Warner Bros. Japan and DLE. DC characters and elements (C)&TM DC Comics. Eagle Talon characters and elements (C)&TM DLE. All Rights Reserved.
映像の豪華さ
カエル「本作はもちろん低予算映画であり、アニメーションもそこまでレベルが高くないけれど、でも使うところではきちんと使っているんだよね」
主「かなりきちんと計算されている印象を持った。今作は予算配分のゲージが画面の横にあって、作画などのお金を多く使えば使うほどにそのゲージが減っていってしまう。
例えばOPなどはそのゲージが一気に減るんだよ。もちろん、それぞれのキャスト紹介など、声優が豪華だからということもあるんだろうけれど、でもスタートはキチンと魅せなければいけないという計算が伝わってきた」
カエル「まさかの題字で伊集院静、タイトルコールが大塚明夫を起用だからね……たった10秒ほどのために!」
主「そして何よりも映画らしい映像の豪華なシーンもある。そこを担当するのは『白組』と『GONZO』という、今CGアニメならば日本を代表する会社だ。この2社を起用した理由まではわからないけれど、でも意味はあっただろう。
鷹の爪はFrashを用いて制作されている、デジタルだからこそできるアニメだ。そしてこの2社も、デジタル技術に力を注いできた会社である。昔のGONZOとか映像が尖っていたし、自分は大好きだった。『岩窟王』や『LAST EXILE』とか『ガドガード』とかね」
カエル「まあ、色々とあった会社だけれどね」
尖った映像美というとこの作品を思い出す……
主「同時にデジタル技術の真価をも見せつけようという意気込みも感じた。
いつも言うけれど、アニメーションってもっと幅広いものなんだよ。同じデジタル技術を活用したアニメでもピクサー/ディズニーのようなアニメもあれば、ロボットアニメもあり、そして『夜明け告げるルーのうた』のようなFlashの作品もある。もちろん、鷹の爪もアニメだ。
その価値をどのように認めるか、というのは色々意見があるだろうけれど、でも心意気自体は変わらない。最新鋭のデジタル技術で派手な映像を作っても、逆に予算に配慮してしょぼいアニメを作っても、その両者は同じ思いで作られている。
そのことをまざまざと見せつけた、まさしくコメディがあるべき形で、役割を果たした作品だろう」
最後に
カエル「では、最後に締めの言葉となります」
主「クールジャパンと叫ばれて、日本アニメはレベルが高いとよく言われる。もちろん、そのことに疑問はないし、自分も大好きな作品たちがたくさんある。
だけれど、そこで注目を集めるのは『君の名は。』とかジブリのような、誰もが大好きな名作たちばかりだ。もちろん、それらの作品は素晴らしい、自分もそこは強く主張する。
だけど、日本アニメの底力ってまた違うところにある。誰もが息を飲むクオリティの作品が生まれる一方で、劇場ではファン向けの総集編映画や連作短編映画が、そして低クオリティのコメディ上映されている。
その幅広さ、そして挑戦する精神こそが日本のアニメの最大の強みなんだよ」
カエル「だからこそ、いつも『ガラパゴス化している』とか、同じような表現に成りかけてはいないか? というわけだしね」
主「色々な描き方があって、どの作品も素晴らしい……それが本当に発達した文化だ。アニメってもっと可能性がある分野なんだよ。特にデジタル時代以降はね。
そのことを痛感した作品たちでもある」
カエル「注目を集めにくい作品たちばかりだね……立派なことを言っているようでも、結局公開初週に書けなかった記事だし……」
主「ファン向けかもしれない。劇場で見るほどの作品ではないかもしれない。
でも、このような作品があるからこそ、映画業界、アニメ業界はもっと発展していくであろうということは、強く主張したいね」
カエル「じゃあ、ゴチうさとかもいかないと!」
主「……あ、うん、まあ、ね……考えはするよ、考えは……」
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