今回は久々の洋画大作! アメコミ映画の『ハーレイクインの華麗なる覚醒』の感想記事です!
アメコミ映画音痴だけれど、悪党を描いているから受け入れられる…と信じておるぞ
カエルくん(以下カエル)
「自他ともに認めるアメコミ苦手人間がどんな反応になるんだろうね?」
亀爺(以下亀)
「あのゲキエロなハーレイ様が見れるならば、映画館に一目散で向かうかの」
カエル「……そんな視点で観に行く奴は、ハーレイに滅ぼされちまえ!
というわけで、早速ですが記事のスタートです!」
映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』日本版本予告30秒 2020年3月20日(金)公開
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#ハーレイクインの華麗なる覚醒
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2020年3月20日
まあ、こうなるんじゃないですかねぇ
スースクの失敗をしっかりと取り返す見せ場などは良し、最大の功績であるハーレイクインの魅力にも溢れており抜群に楽しい映画ではある
ただ複雑化しすぎた物語の影響もあり尻すぼみな印象を抱いた
前半と後半でキャラ変わりすぎ? pic.twitter.com/D7RKynfcWR
例えるならば”大人向けの悪いプリキュア”というところか
カエル「前作といっていいのかなぁ? 悪党たちが大集合の『スーサイドスクワッド』は期待感も大きくあったけれど、どちらかというとガッカリな意見が並ぶ作品で……うちも記事がありますが、どちらかといえば否定的な意見になってしまいます」
亀「実は、この失敗が今作でも受け継がれてしまっておるように思えるがそれはいいとしよう。
そんなスーサイドスクワッドでも、誰もが認めるのが悪カワクイーン・ハーレイの登場じゃな」
カエル「マーゴット・ロビーの大当たり役となったよね。
世界的なアメコミブームの中で、注目度の高いヴィランをセクシーとバイオレンス混じりで演じきっていた!」
亀「今作ではそのハーレイ・クイーンの魅力が満載であったの。
あの他とは違う可愛らしさが2時間堪能できるだけでも、観る意義が大いにある作品になるのではないじゃろうか」
また、アクション映画としても優れています!
カエル「あれだけ女性陣が動き回る映画も、最近は珍しくなくなってきたとはいえ……今作の場合は結構バイオレンスな戦闘もあったりして、その辺りも面白いポイントかもね!」
亀「序盤ではマーゴット・ロビーの動きが重いように見えて『この映画は大丈夫か?』と思ったものの、後半はキレキレで動き回っておったの。
他にも”アメコミをいかに実写映像化するのか”という試みなども感じられ、映像面の工夫も良かった。冒頭の描写などは、割とお気に入りじゃな。
確かに面白いのではあるが……しかし、いくつか問題点もあったように思う」
本作の難しさ① 悪役が主役の物語の作りづらさ
えっと……その問題点が、さっき語っていたスースクにもつながるところ?
悪役が主人公の映画のハリウッドが作る難しさを感じたの
カエル「それこそ、世界的な大ヒット作である『ジョーカー』などもあったじゃない?」
亀「『ジョーカー』はまた特殊な映画じゃ。そもそも、娯楽映画というよりは文芸映画といったほうが近い作品でもある。
あれはアメコミ史上に残るヴィランであるジョーカーの映画というよりも……もっと社会性を内包した映画であり、あくまでもジョーカーではなく、アーサーの映画という印象じゃな」
カエル「まあ、色々とあるんだねぇ」
亀「悪役を主人公とすることによって、勧善懲悪ができなくなる。
MCUであったり、スーパーマンなどのような描き方ができなくなってしまうわけじゃな。彼らが正義の味方として描けておるか、という問題は個人的に思うが、今回は置いておこう」
悪党を正義のように描くと、却って小物感が出てしまうというか……
悪党の描き方は難しいんじゃよ
亀「その方法がいくつかあって、1つはピカレスクロマン……つまり、滅びの美学にするというものじゃ。名画では『明日に向かって撃て!』などがそうなるかの。アニメでは『コードギアス』『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』じゃな。
これはラストで主人公隊が滅びることにより、より物語を盛り上げるやり方じゃな」
カエル「……いや、ハーレイが滅んじゃダメじゃない?」
亀「もしくはマフィア映画の路線などもあるが、それはハーレイの描き方とは少し違う。
悪党が躍動しながらも、観客に嫌悪感を抱かれないような描き方……それが必要とされるわけじゃな。
それでいながらも、正義の味方の真似っこや、小物のように見えない描き方じゃな。
スーサイドスクワッドの場合は、それができなかった。稀代の悪党が上層部にいいように使われている……これだけで興醒めじゃな。
また、同じようにヴィランの映画として『ヴェノム』もあったが……あれでは、ただの気の良い兄ちゃんに見えてしまったかの。
本作はそういった悪党を主人公に、ヒーローのように描く点の難しさの解消を……まあ、半分はできているが、半分は失敗した印象もあるかの」
本作の難しさ② 成長できないキャラクター
次に問題となるのが”成長できないキャラクター”です
これは、なかなか難しい問題じゃな
カエル「なんらかの欠点を抱えている人物が、物語を通して変化・成長する姿を描く、というのが王道だよね?」
亀「しかし……ハーレイのような確固としたキャラクターは成長のさせ方が決まってしまう」
カエル「急に改心して、警察に自首したり……あるいはいいひとになったら、それはそれでキャラクター性の崩壊だもんね……」
亀「そうなると取る手はいくつかある。
- 別キャラクターを成長させる
- 破滅に向かう物語にする
などじゃな」
……結局、破滅になるんだね
悪党は破滅させるのが手取り早いからの
亀「まあ、ハーレイやジョーカーは案外しぶとく生き残るのが魅力でもあるんじゃがな。
ここで語りたいのは、できる手が限られてしまうということじゃ。その中で本作は……ハーレイ自体の成長を中心には描かず、それ以外のキャラクターの変化を中心にするようにした。まあ、良い手ではあるじゃろうな。
しかし……その結果、後半は問題が多くなってしまった印象もある」
本作の問題点〜凝りすぎた物語とキャラクターの変化〜
で、その問題点って何?
物語を凝りすぎている印象があるかの
カエル「時系列シャッフルもあったし、色々と視点が変わるのも評価が難しいポイントかもねぇ」
亀「作中でも語っておるが、物語を複雑化しすぎている。
その割にはしっかりとまとまっており、わりかし理解しやすい物語のようにも感じられたがの。
しかし……そのせいで、ハーレイのキャラクター性がぶれてしまった印象じゃ」
カエル「冒頭はしっかりと悪だったのに、後半はその魅力がなくなってしまったかなぁ」
亀「あの子供がしれっとバディのようにおるが、観客であるワシとしては、なんの思い入れもないキャラクターである。それほど重点的に描かれているわけでもないしの。
また、ダイヤを飲み込むことによって複雑にしておるが……ハーレイのキャラクターであれば、内臓を〇〇して、取り出す方がより自然な気もするがの」
……子供には見せられない映画になりそうだね
それが悪党の魅力であるし、序盤・中盤の暴れっぷりを見たら、むしろそうしないのが不自然ではないかの?
亀「これがセクシーな歌姫姉ちゃんや、警察官であればあの選択も納得じゃが……ハーレイはそっち側の人間ではない。
なぜその選択に至ったのか、ワシには謎であった。
また、その後の物語もよくわからず……全く思い入れもない、急に登場した女キャラクターが次々とアクションを繰り出すのを観て『はて、ハーレイクインの映画を観に来たのでは?』という気分になった。
アクション自体はキレきれであり、見応えがあったから良いのじゃが……ハリウッドお得意の政治的メッセージ込みじゃろうな」
カエル「結局、悪党であることが魅力あるキャラクターなのに、またもや善人のように描かれてしまっているということだね……」
亀「結局は相手も悪党であるから、どんな無茶やっても良いんじゃがな」
女性が主人公の映画として
でもさ、女性の権利拡大を訴える映画でありながらも、今回はその説教くささが少なかったような印象もあるんだよね
悪党同士の潰し合い、というのも大きいかもしれん
亀「最近思うのが、この手の映画を作るときに女性・有色人種などのマイノリティ側は特別な人間、レベルが高い人間と描きすぎなのではないかの?
それが歪な構造となり、まるで説教されているような印象を受けてしまう。
しかし、本作の場合は……ハーレイがクソ悪党であるのと同時に、敵も同じくらいクソ悪党という点が”女性の映画”として、時に過剰にも見えてしまうフェミニストの視点を和らげていたのかもしれん」
カエル「その結果が”大人の悪いプリキュア”ってところなのね……
亀「”女の子だって暴れたい”がコンセプトとなったプリキュアに対し、本作は同じような部分があるのではないか?
ハーレイはジョーカーの付属物ではないと表明したような作品であるしの。
その割には、冒頭の爆破シーンなどは『ダークナイト』の有名な病院爆破シーンのオマージュのようであり、決別でありながらもそうなり切れていないように感じた。
また、ジョーカーとハーレイを切り離すのが、果たして正しいのかはわからん。
『食パンマン様〜♡』と言わないドキンちゃんが、果たしてドキンちゃん足り得るのか、という疑問はあるものの……それでいいというのであれば、それでいいがの」
カエル「その例えはどうでも良いとしても、今後ジョーカーとまたくっついたら『あ、やっぱり恋愛脳なんだ……』ってなっちゃうし……次回作を作るならば、ちょっと難しいことになっちゃったかなぁ」