今回はドラえもんの新作映画『のび太の新恐竜』の感想記事になります!
ようやくアニメ映画も本格始動じゃな
カエルくん(以下カエル)
「コロナショック以降、アニメ映画に関してはほぼ公開延期か中止状態で……一部作品はあったものの、長編の大規模作品は今回のドラえもんが初になるんだね:
亀爺(以下亀)
「しかし、わしはドラえもんでアニメ映画が再開して良かったと思っておる。
もちろん、2020年はドラえもんが連載開始から50年という節目でもあり、年内に公開したい思いもあったじゃろう。また元々の公開時期からして、作品制作そのものにはコロナショックはそこまでなかった……のかも、しれん。他の作品はそもそも制作スケジュールが大幅に遅れているじゃろう。
じゃが、それ以上に『ドラえもん』というタイトルに意義がある」
カエル「なんだかんだ言っても、日本を代表する国民的コンテンツであることは間違いないもんね」
亀「それと同時に、ドラえもんは誰もが楽しめるだけでなく、近年の映画作品は色々な意味ですごく優秀じゃ。
ドラえもん以降、色々なアニメ映画が公開するが……その先頭に立つ存在として、これ以上に心強い作品はないじゃろう。
言葉は悪いかもしれんが、どんなに大ヒット作であっても……コナンもしんちゃんもプリキュアでもFateでもヴァイオレット・エヴァーガーデンでもなく、やっぱりドラえもん。
やはりそれだけ特別な作品であると、わしは考えるの」
カエル「それではそんな国民的コンテンツの新作はどうだったのか、感想記事のスタートです!」
『映画ドラえもん のび太の新恐竜』予告編【2020年8月7日(金) 公開】
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#のび太の新恐竜
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2020年8月7日
さすがはアニメ映画界の優等生、今年も誰でも楽しめるであろう、とてつもない作品を…!
特にドラえもん50周年のメモリアルイヤーとあって作画・演出面はフルアニメーションかと思うほど動く動く!
一部細かく言えば思う部分はあるものの、これほどの作品を堪能して眼福でした pic.twitter.com/CeWtqnxeQP
さすがはアニメ映画の優等生! 今年もしっかりとした作品を生み出したの
カエル「今年は50周年というメモリアルイヤーということもあり、絶対に力を入れてくるというのはわかり切っていたけれど……いやー、それにしてもとてつもない作品だったね!
特に作画・演出面にはフルアニメーションかと思うほど動き回り、鳥肌ものの衝撃シーンが何度も出てきたよ!」
亀「まあ、予告の段階でわかり切っておったの。
もちろん予告はいいシーンを見せる部分ではあるが、スネ夫の指パッチンのシーンの作画などは、本当に痺れる思いがした。
もちろん、そこは見せ場ではなく……いやいや、大事なシーンとは思うが、全体としてはほんの数秒でありながらも、ここまで力を入れることができるのは、潤沢な予算と力のあるスタッフを揃えた証拠じゃな」
カエル「恐竜の描写などはもちろんのこと、細かい動きに至るまでグリグリと動き回って、正直目が回るかと思うほどだったね」
亀「おそらく、2020年のベスト作画アニメの1つとして語られることは間違いないじゃろうな。
今作を超えることができる作品がいくつ生まれるのか……アメリカの作品も含めて、楽しみになってきたの」
懸念だった物語に関しては特に大きな文句はないんじゃない?
おそらく、多くの方が面白かったというのではないじゃろうか
カエル「正直、脚本が川村元気という時点で嫌な予感がして、少し怖かった部分もあるけれど……今回は大筋では良かったんじゃないかな?」
亀「細かいことを言い出したら突っ込みどころもあるものの、それはアニメ映画じゃし、そこまで大事なことではなかった。
もう少し密度がほしいと思った部分も正直あるが、これだけの作画・演出じゃ。その魅力を押し出すための物語としては、比較的シンプルにできていて良かったと思うの。
一部思うところもあるものの、それは個人的な趣味嗜好によるものである。
全体としては、わしが知る限り川村元気が脚本の作品では最高傑作と言ってもいいのではないかの」
今井監督などスタッフについて
では、少しだけですが監督やスタッフを紹介していきましょう!
今井一暁監督作品ということもあり、やはり大きく動かしてきたの
カエル「今井監督はテレビシリーズを含めてドラえもんに長く関わっており、2018年の『のび太の宝島』でも、激しく動き回る驚きの作画で多くの人を魅了しました。
特に動のドラえもんというか、明るく楽しく冒険しよう! という、ある種ドラえもん映画の王道な流れを感じるかな」
亀「そうじゃな。2020年は今井監督と聞いて、わしも非常に楽しみにしておったが……何度もいうように今作も”動き”だけで感動するポイントがいくつもある。
これらはアニメを語る上では最も根源的で大事なことじゃ。
それらがワクワク感にも繋がってくるし、ドラえもん作品に対する大事な信頼にも繋がってくるとワシは思っておる」
カエル「激しい冒険に説得力が出るもんね。
今作ではあえて恐竜をCGにすることで恐ろしい生物であることを示すほか、見方となる恐竜は手書きで描くことでデフォルメすることで、よりキャラクター感を出すなどの工夫を行っています」
また、今作のキャラクターデザイン・総作画監督には小島崇史が務めています
日本を代表する若手アニメーターの1人じゃな
カエル「とても描くのが早い上に、しかも上手いということでも有名で、一人で1話分の原画を描くことも何回かある、スーパーアニメーターの1人です」
亀「今回はビックタイトルの総作画監督にじゃったが、これほどの動きを見せられるとさすがとしか言いようがないの。
まだ30代と若い力が画面からも溢れ出しているようであり、今後も継続して注目していきたい人物であることを、再確認した形じゃな」
子供向けアニメとして
今作は子供向けアニメとしての巧さも際立っていたよね
ドラえもんは毎年、子供たちへの教育的な描写があるものじゃが今年もうまいこと描かれておったの
カエル「今作の場合は序盤の流れなので簡単に説明してしまいますが。恐竜であるキューとミューを育てる描写が入ります。
生き物を育てる難しさ、そして責任感と達成感も伝えてくれる場面であり、この2匹に対する感情移入が強くなるシーンでもあります」
亀「その中でワシが感動したのは以下のシーンじゃ。
- キューとミューが新種の恐竜(未知の存在)であること
- 専門家に話を聞きにいき、考え方のヒントを学ぶ
- 自分で調べていき、少しずつ答えを見つけていく
- ジオラマなどを自分で作っていく創意工夫
新しい謎が出てきたとき、まずは調べることから始めるじゃろう。しかし、調べても答えが出てこない場合はどうするのか? という部分も掘り下げていく
カエル「専門家の先生が出てくるけれど……この人もすんごくキャラが濃いんだけれど、その人ものび太くんの疑問に真剣に向き合ってくれる。
そのヒントを元に自分で考えていくという姿勢だね」
亀「これらは説教臭くなく、子供たちにもすんなりと受け入れられていくじゃろう。
またニンテンドーラボではないが、ジオラマなどで自分で作り上げていく要素があったのも良い。子供たちに自分で物を作る、その創意工夫を教える存在として、またその楽しさを伝える作品としても魅力的じゃ。
このようにドラえもん映画の優秀性がとても感じられた作品であったの」
以下ネタバレあり
作品考察
褒めるポイント
キューとミューのかわいらしさ
では、ここからはネタバレありで語っていきましょう!
何と言ってもキャラクター描写じゃな
カエル「キューとミューは問答無用で可愛いんだよ!
恐竜の子供なんて誰も知らないと思うけれど、それぞれの性格も感じさせつつ、愛嬌のある動きを披露していて……どのシーンもキュンキュンしちゃったんじゃないかな!」
亀「今作で最大の注目ポイントじゃからな。
ここがダメだと物語が破綻するが、その心配が一切なかった。だからこそ、のび太の様々な葛藤に対して観客ものめり込むし、感情移入していく。さらに子供たちにも解りやすい感情を描いており、とても素晴らしい表現じゃったな」
カエル「今回は泣き声だけで喋らないという難しいキャラクターでしたが、遠藤綾と釘宮理恵の名声優2人が感情たっぷりに鳴いてくれたおかげて、声だけでも様々な感情が伝わってきたね!」
亀「少しだけゲスト声優にも触れておくと、渡辺直美と木村拓哉は若干気になる部分もあったが、十分うまかった。
特に渡辺直美は低い声質がとてもよく、ワシは好きじゃな。
経験を重ねていけば、芸能人声優として重宝される存在になるのではないじゃろうか」
カエル「……ちなみに、今作もしずかちゃんはとてつもなかったね……」
亀「あんなのは反則じゃな。もはや”子供の頃のアイドル”なんてレベルに治まらん。
あそこまで可愛らしいと、子供だけでなく大人も含めて色々なものが歪んでいくかもしれんぞ」
擬似的な子育てを行う
今作を『のび太の宝島』と比較すると、どういう点が気になった?
やはり家族の物語かの
カエル「今年は毎年恒例のシリーズ映画はそのテーマが多そうだね。予告で見たポケモンもそういったテーマみたいだし、もちろん元々子供向けアニメ映画では多いテーマの1つではあるけれどさ」
亀「前作の『のび太の宝島』でも家族の問題が何度かフューチャーされておった。残念ながら、少し物語が荒れてしまい尺に収まりきらなかった感覚もあるが、やはり監督・脚本が同じということもあり、こういったテーマにするのかもしれんの。
今作では擬似的な家族として、のび太が親となるパターンじゃ。
これは1作目の『のび太の恐竜』をイメージしているのかもしれんの」
カエル「今回は明確な悪役というのをわざと設定しなかったのも英断なんじゃないかな。
結局、悪い人間が出なくても大きなトラブルはあるわけだし、恐竜が相手なんだから人と戦う必要がないし……」
亀「今作の場合は
- キューとミューの誕生〜旅立ちまで
- 冒険の日々
- 目的地についた後の最後の戦い
とうまい具合に三分構成になっておった。そして合間合間で盛り上がりポイントを作り、MV的な映像を入れておったが、これもうまくいったと思う。
細かい部分はあれとしても、全体の構成などはなかなか文句がつきづらいのではないかの」
気になったポイント
では、ここからはちょっと気になった部分に触れていきます
基本は褒めるべき作品じゃが。パーフェクトではないからの
カエル「とても高く評価するんだけれどね」
亀「一部で川村元気が原因かは解りかねるが、気になる描写もあったの。
例えば……1番これは酷いと思ったのは、双子の目玉焼きじゃな」
カエル「すんごい可愛らしくキューとミューが生まれて、生き物としての可愛らしさを表現しているにもかかわらず、お母さんが『あれ、卵が双子ね』と目玉焼きを作るのはね……
あれ、一歩間違えたらキューとミューモあんな風になったんじゃないかと思って、どことなくサイコパスじみた何かを感じちゃったかな」
亀「他にも考古学の先生のテンションが高すぎる。
考古学の先生の住所をどうやって調べたのか。
説明セリフが多すぎる。
などはちょっと感じたが……まあ、イチャモンじゃろうな。
これらのことはとりあえず気になったこととしてあげるくらいで良いのではないかの
個人的に気になる点①〜キューの描写について〜
では、個人的に気になるってところはどこなの?
まずはキューの描写についてじゃな
カエル「今作の重要人物であるキューは空を飛べない恐竜でもあります。その辺りはのび太と共通する部分もあり、キャラクター設定としてはとても大事な物だったのではないでしょうか」
亀「しかしのぉ……ワシとしては少しだけ気になってしまった部分がある。
それを象徴するのがのび太の『みんな空を飛んでいるんだから、ミューモ飛べるはずなんだ』というものじゃ。
いや、理屈はわかる。
空をとべる恐竜であり、飛ぶことで生存競争を生き抜くわけだから、それができなければいけないというのは、至極真っ当な理論ではある。
しかし……その『誰もができることができない』ということで苦しめられているのがのび太という存在ではないかの?」
カエル「だからこそ、できないことをできるようにする=成長であり、しかもそれが感動を呼ぶわけじゃない?」
亀「もちろん、理屈としてはわかるのじゃが……ワシとしては”オスは空を飛べずに、その代わり海に入ることができる”などの別の魅力があって欲しかった。
やはり『みんなができることは、お前もできるだろう』という価値観そのものに、あまり納得することができない」
う〜ん……でも頑張ることってすごく大事だし、そういう経験を持つことはとても良いことだと思うなぁ……物語もうまくまとまったし
じゃから、これはワシの趣味じゃな
亀「こうしなければいけなかったこともわかるが、ワシには毒親とまでは言わんが、スパルタ親の独善的な姿勢のように見えた。
もちろん、のび太自身も努力しているので、そこはカバーしているのかもしれんが……それは追い詰めるだけなようにも思うの」
カエル「結局、教育ってあるべき姿ってものがないからこその難しさなのかもしれないね。
僕たちが称賛した考え方を否定する人もいるだろうし……ドラえもんという子供向けアニメを作る上では避けられないのかなぁ」
亀「その意味では、決して悪い作品ではないし、意義はわかる。
ワシは引っかかったというぐらいかの」
過去に縛られ続ける? 川村元気
あとは……あの隕石の映像はどうしても『君の名は。』を連想してしまったかなぁ
ここは評価が割れるかもしれんの
カエル「予告であの映像を見たときも『あ〜、これは君の名は。だなぁ』って思ったんだよね。もちろん歴史的な事実だし、変なことではないけれど、そういう描写をほぼそのまんまの形で入れるんだってちょっと考えちゃったというか……」
亀「もう少し工夫があっても良いと思うの。
『君の名は。』以降、確かに模倣したと言われている作品も次々と生まれておる。ワシはそこまで気にならないし、そんなに多くもないと思っておるが……どうやら世間的にはそうではないらしいの。
それはそれとしても、アニメ界全体が『君の名は。』の大ヒットにつられているという評価もある中で、実は最も引っ張られている男が川村元気なのではないか、とな」
カエル「まあ、元々プロデューサーだし『こうすれば売れる!』くらいの思惑な気もするけれど」
亀「ワシは『君の名は。』などの一部の作品には311以後のアニメ作品としての描き方があるような思いがあった。しかし、今作の場合はあくまでも物語を動かすための障害になっているだけのように思えてしまう。
その辺りを模倣しない限り、単なる劣化コピーにしかならないと思うのじゃが……そこは今井監督、美しい映像を生み出して気にならなくなっておった。
物語そのものは一部を除き。そこまで作り込まれているとは思わんが……いや、訂正しよう。作り込まれている部分とそうでない部分の差が激しいと思うが、やはり作画・演出力でカバーした形じゃな」