今回は映画『青くて痛くて脆い』の感想記事になります!
かなり独特な記事になるかもね
カエルくん(以下カエル)
「先に語っておきますが……今回は映画評としてはかなり異例の記事になります!」
主
「そもそも、これは映画評なのか? ってなるかもしれない」
カエル「もちろん、映画について語っていますけれど……それ以上に、ある作品の影響について考えています」
主「最近、本を書いていたこともあって、そういう見方ばっかりしていたからねぇ」
カエル「というわけで、記事のスタートです!」
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#青くて痛くて脆い
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2020年9月2日
涼宮ハルヒになれなかった秋好とキョンになれなかった楓
ハルヒをもじりつつ大きく変わりゆく物語が紡ぐのは現代の風刺か諦観か
描き方そのものは面白い部分があったものの、映画としてはあと一歩踏み込んで欲しかったか pic.twitter.com/mcsjtJC5fx
今回は、少し異例の見方をしてしまったかもね
カエル「えっと……映画として面白い、面白くないで考えるとどうなの?」
主「う〜ん……ぶっちゃけていうと、今回はそういう見方をしていないんだよね。
普段ならば物語のメッセージ性、構成、映像表現、役者の演技……そういうものを中心に見ていく。もちろん、今回もそれらを全部無視したとは言わない。
だけれど、自分はこの作品に関しては注目したのはたった1点‥…それは『涼宮ハルヒの憂鬱』に対して、どのように向き合ったのか、という点だ」
カエル「言ってはなんだけれど、ちょっと変な見方をしたわけだね……
元々は鑑賞する気は薄かったのですが、フォロワーさんに『ハルヒっぽいよ』と教えらて、非常に気になって映画館に向かいました」
主「その意味では、最初から見方が他の方と違っていたのかもしれない。
この映画は原作はもちろん、監督などの映画のスタッフも『ハルヒを下敷きにしている』ということをはっきりと理解しているんじゃないかな。
そうでなければ、このような作品には全くならないと思うんだよね。
だからこそ、自分はハルヒを中心に鑑賞したってことを、これからズラズラと書いていくことになる」
それは理解した上で、それでも簡単な作品評としては?
う〜ん……惜しい、ってこところかな
カエル「全体としては悪くないけれど、それでも色々と思うところはある、と」
主「すんごくいい演出や表現もあるんだけれど、全体的に間延びしてしまった感もある。
あとは単純に物語が弱く感じたかなぁ‥…もしかしたら、登場人物に共感する人はそうでもないのかもしれないけれど、自分は結構突き放して見ていたから、キャラクターが弱いようにも見えてしまった。
『このキャラクターを掘り下げてほしい!』と思ったら、途中からいなくなってしまったり……そういう部分がもったいなく感じた。
それと……これは完全に苦言だけれど、やっぱり引きこもりなどに対する理解が全くないのは気になったね。
邦画って引きこもりを、まるで”学園生活の落伍者”のように描く、理解のなさが目立つよなぁ。まあ、これは主題じゃないからいいっちゃいいんだけれど‥…」
カエル「でも、アニメーションを用いた演出なんかもあって、あれは評価高いんじゃない?
結構作り込んでいたし……」
主「アニメーション自体はよかったよね。
ただ、自分は上記の見方をしていたから、やっぱり『アニメーション(ハルヒ)への言及』に思えたっていうのは、あるのかなぁ」
原作者・住野よるの物語の作り方
そういえば、うちは住野よるのデビュー作である『君の膵臓をたべたい』も、そこまでハマっていないんだよね?
……まあ、ねぇ。そこは相性もあるだろうし、今作に関しては原作を読んだわけではないんだけれどさ
それでも、伝わってくるものがあると?
……これって自分の感覚なんだけれど、最近の若手作家の小説って、あんまり読めないんだよね
カエル「え、何、それは昔に文章表現で身を立てることを目指していた、屈折してしまった文学青年崩れだから?」
主「まあ、それはそれで正解なんだけれど……ほんと、老害になったな、という印象だわ。老害と呼ばれるお年寄りって、たぶんまだまだ現役気分で、自分たちのやってきたことに対するプライドがあるから、色々と言いたくなるんだろうなぁ……と、最近納得するよ」
カエル「……いや、あなたは何も為していない……あ、でも逆にそういう人だから厄介化するのかも……」
主「でさでさ、住野よるの物語の作り方というのは、自分でもよくわかっちゃうんだよ。
というのは、多分だけれど、住野よるって自分とそこまで世代が変わらないはず。そして、読んできた作品やその傾向も似ている。だからこそ、その作り方がなんとなく理解できてしまうし、同時に”それは思いついても自分は選択しない”ってやり方をしているように思える」
……なんとめんどくさい話なんだ
住野よるの作り方って『既存の作品のフォーマットを基に、それを壊す展開を与える』という制作手法に思える
カエル「つまり、キミスイは一時期流行ったよくある純愛系のパターンを踏襲しながらも、その展開を大きく裏切るような作り方をしていた、という話だよね?
そして今作はハルヒを基にしていると……」
主「その通り。
今作も基本のフォーマットはハルヒなんだよ。
元々は電撃文庫に投稿していたようだけれど、そんな人であれば間違いなくハルヒは読んでいるし、影響を受けている。というか、序盤なんかそのまんま、その後の展開もハルヒを結構意識しているように感じた。
だけれど、その崩し方が問題。
この崩し方って、多分ハルヒファンならいの一番に考えつくことだと思うんだよ。
だけれど、誰もやらない。その手法を選択するのは……なんというか、ありきたりでダサい気持ちになる。
それをやるんだけれど、自分からしたら新鮮味も感じないってところかなぁ‥…
結局は趣味の問題って話なのかもしれないけれどさ」
役者について
次に役者について語っていきましょう
まあまあ、よかったのではないでしょうか?
カエル「えー、この作品ではうちが苦手とする杉咲花ちゃんが主演ということですが……」
主「声優としては大好きなんだけれどね。声質が本当にいいし。
ただ、怒鳴る演技が多いのがなぁ……見ていて辛い。
その点では、今作は怒鳴る演技がないから、だいぶ見ていて面白かったよ」
カエル「それから、吉沢亮くんなども出演していますが‥…」
主「安定しているというイメージかなぁ。
この2人ともだけれど、今作が代表作になるほどの思い入れができるとは思わなかったかなぁ……」
その中で存在感を発揮したのは……松本穂香と茅島みのりなのではないでしょうか
美味しい役だったということもあるだろうけれどね
カエル「ある種、健康的で可愛らしい女の子である松本穂香と、少し影のある後輩の茅島みのりが目を引いたね」
主「いい役だよねぇ。もしかしたら、杉咲花よりも出番が多かったのではないかな?
それくらい出番も多いし、また色々な側面を見せることができるキャラクターということもあった。
やっぱり、途中から出番が少なくなるのがもったいないくらいだたったよ」
以下ネタバレあり
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『涼宮ハルヒの憂鬱』に、いかに向き合うのか?
序盤から全開のハルヒ節
それでは、ここからは涼宮ハルヒの憂鬱にいかにこの作品が向き合ってきたのか、という点について語っていきましょう!
序盤から、ずっとハルヒが始まっていたじゃない
カエル「今作の流れを説明しますと……」
- やる気の薄い学生、田端楓の日常
- 秋好のトップな発言
- 偶然の2人の出会い
- サークルの入会→2人だけのサークルを立ち上げる
主「この流れはハルヒの序盤と全く一緒だよね。
秋好の『世界平和について』というのは、ハルヒの『ただの人間には興味ありません』というのと一緒。確かに高校生の厨二病的な言動の多いハルヒと、大学生の……厨二病とは違うけれど、スケールが大きすぎて誰もついて来れない、という言動がもたらす意味は全く同じなんだよ」
カエル「つまり、モアイというサークルはSOS団であると?」
主「そう。
おそらく、この映画のスタッフはそこを完全に理解しているし、意識しているだろう。そうでなければ、ああいう序盤の構成にはなっていないはずなんだよ。それくらい、ハルヒと全く同じ。
そして同時に、序盤にある長回しのシーン……楓と秋好が歩きながら会話をするシーンがあるけれど、横断歩道の白いところだけを渡るシーンなどは、同じ京都アニメーションの『たまこラブストーリー』の名シーンを思わせた。
ここが意図的なオマージュなのか、それともこちらが京アニ脳になっていたからの既視感はわからないけれど、かなりそちら側に寄せてきているような印象が強くて、正直、もうその目線以外ではこの作品を見れなくなったほどだった」
この令和というタイミングで、平成のオタク文化を代表するハルヒブームを題材にっていうことは、わからなくはないのかなぁ
ただし、大きく異なる点もいくつかある
- 秋好には超能力じみた、神の力は存在しないこと
- モアイが大きなサークルとなること
主「この2点はとてつもなく大きい。
ハルヒというのは”自身が神の力を持つことを知らない少女の物語”ということが大きい。超常現象もあるのに、それに気がつくことはできない。だからこそ、SOS団は小さなキワモノ団体のようになってしまう。
一方で秋好は神でない。
だからこそ、人としでできることをやっていく‥…それがとても面白いわけだ。
そしてそれがキョンとハルヒ……楓と秋好がすれ違っていく部分に繋がっていく」
中盤から後半の”あるべきだったハルヒ”の形
そして物語は楓と秋好が仲違い? をして進んでいきます
ここからは擬似的なSOS団の登場だよ
カエル「つまり、あの4人組はハルヒのいないSOS団だと?」
主「簡単にまとめると、以下のようになる」
- 主人公=キョン・楓
- 主人公の親友=古泉・董介
- 可愛らしいマスコット的な女性=みくる・ポンちゃん
- 無口な後輩の女子=長門・川原理沙
主「そしてもちろん秋好=ハルヒということになる。キャラクターは現代風にアレンジされて若干異なっているけれど、基本フォーマットは似たようなものになるように設定されている。
それでいうと、あの4人はハルヒのいないSOS団であり、その意味では本来あるべきモアイの形だったのかもしれない。
だけれど、SOS団が大世帯になり、自分たちがいなくなったからこそ、ああいう形になっていった」
カエル「そう考えると、キョンが自分を無視して大所帯となったSOS団=モアイを潰そうとするのは、ある種の必然だと?」
主「そういう描き方をしているよね」
それを象徴するのが、後半の”あったかもしれないIF”の描写だ
カエル「この作品では後半の見せ場として、あり得たかもしれないモアイの姿を映し出しています」
主「あれは、自分にとってはものすごく既視感が大きいものだった。
つまりさ『僕たちが見てきた、正史の涼宮ハルヒの憂鬱』なんだよ。あれって」
カエル「……はぁ?」
主「SOS団の5人が集まり、馬鹿騒ぎをしている。時には学園祭にも顔を出して、歌を聞いている……それらは確かに青春劇の王道の描写でもあるけれど、ここまでハルヒの描写や要素を積み重ねてくると、バンドのシーン……いや、バンドではないのか?
まあ、学園祭で歌うシーンなどは『ライブアライブ』を連想するよね。
面白いのは、ハルヒは……というか、京アニって結構邦画の影響を受けていると言われている。有名なところでは『ライブアライブ』の演奏シーンは、『リンダリンダリンダ』と全く同じ構図も多い。
こうした邦画に影響を受けてきたアニメ表現が、再び邦画に影響を与えている‥…先祖返りではないけれど、こういった部分が面白いなぁ、と感じたね」
その上で大きな不満点
じゃあ、ここまでハルヒのIFストーリーだと語ってきて、それでも不満点ってどこなの?
<p
>……やっぱり中盤かなぁ
主「相変わらず、邦画って引きこもりに対する理解が全くないなぁ……というのもあるけれど、それは置いておくとして……中盤の描写が非常に気になった」
カエル「あの、中盤から後半の大きな転換となる、楓と秋好の対峙の場面だね」
主「あそこでさ、『気持ち悪い』って言わせるのはどうなのよ?」
カエル「あ、つまりエヴァじゃんってこと?」
主「そうそう。
ハルヒってエヴァ的なセカイ系的要素も含みつつ、その先に向かっていった作品でもあるわけだよね。そこで大きな転換ポイント、状況も結構似たような部分で『気持ち悪い』を使うことは、すんげぇエヴァっぽいなって思って、そこで萎えた。
結局、歴史が逆戻りすんのかい! って感じで」
カエル「いや、それはあなたがハルヒの見方に囚われているからとも言えるわけで……」
主「そっちとは違う方向の話では、秋好に『私は何も変わっていない。ただ現実を見て、根回しをすることも大事で……』って言わせたのが、本当に最悪。
これで一気に秋好ってやつがつまらない、どーでもいいキャラクターになってしまった。
理想型っていうのは、あくまでも理想に燃えるからいいんだよ。
それこそ、ハルヒが『いろいろな人を巻き込むのは失礼なので、ちゃんとPC研にお願いして、先生にも根回ししましょう』なんて言い出したら、そんなのつまんないじゃん。
エーデルガルトが『紋章をなくすために教会と対話をしながら、貴族たちを説得していきましょう』なんて言い出したら、なんだこの女? ってなるでしょう。どんな犠牲を出そうとも、強引な手段で対立する相手を全てを駆逐してでも、理想の社会を作り上げるというほどの覚悟があるから、その覇道に力を貸そう! と魅力につながるんじゃないの?」
……ファイアーエムブレムの風花雪月をプレイしていない人には分かりづらい例えはやめてください
理想重視型のキャラクターって、荒唐無稽ともいえる理想のために暴走するから魅力があるんだよ
主「もちろん、理想のために裏で陰謀を繰り広げるタイプもいるけれど、今作は陰謀じゃないじゃないじゃん。単なる正攻法、普通のやり方を選んでいる。
暴走しない、陰謀も凝らさない、ただ普通にコネを広げていく‥…それの何が面白いんだって話。
そんなやつに執着する必要もないし、物語として魅力もない。
楓がバカってだけならばいいけれど、そこまで物語を見てきた観客である自分も『あ、こんな女に注目してきてバカだったわ』って思っちゃった。
あの秋好についていきたいと思う?
単にメリットがある、出会いや就活に結びつくってだけで、あんなやり方して秋好の目的に何1つ近づいていかない」
ひどいこと言っているようだけれど、あんなやり方で世界平和に向けて何ができるんだよ
主「コロニー落とししてでも変えたい社会と理想があるからシャアは暴走するけれど、単なる正攻法じゃ何も変わらないよ。
しかも、ただの普通の女の子がさ、サークルってごっこ遊びに興じている。せめて起業するならばともかくさ。
じゃあ、世界平和なんて大言壮語なこと、口にすんなって思わない!?」
カエル「え、なんで急にそんなにスイッチ入っているの?」
主「そんな役割はテンがやればいいけれど、こいつも小物だしさ……
本当、キャラクターに魅力がないよね。
あとさ、最大の不満点では先にも語ったけれど、ハルヒを元にするならばこのやり方は誰でも考えつくよ。しかも、面白くない。せめてハルヒと同等とまでは言わないまでも『なるほど、この手できたか』とか、そういう驚きは欲しいよね。
そういうのが何にもなかったのが、非常に残念だったなぁ」
最後に
えー、なんだか、ラストがアレなので辛辣な記事になってしまいました……
映画としては、刺さる人には刺さるんだろうけれどね
カエル「……なんか、なぜ若手作家の作品が読めないのか、伝わってしまう記事になってしまったね」
主「老害感が出ているよねぇ。
映画としては悪くないのかもしれないけれど、ハルヒを下敷きにって視点からすると、まあ、褒めることはできないかな」
カエル「……その見方もどうなんだ? って思いもあるだろうけれど」
主「なので、全く当てにならない映画評でした!」
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