いよいよ公開、アニメ映画のキミスイです!
なんだかんだで1年くらい待ったのかな?
カエルくん(以下カエル)
「昨年、あれだけの大ヒットを記録した作品のアニメ映画化だからね!
期待値も高いですよ!」
主
「予告のキラキラ具合とかも期待値を上げているし、楽しみな作品だな」
カエル「原作を読んだ時も『ラノベっぽいしアニメ化向きの作品かな?』と思ったしね!
実際、アニメになってどうだっとなか……感想記事を始めましょう!」
“キミスイ”旋風ふたたび!劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』予告映像
感想
いつものようにTwitterの短評からスタートです
#キミスイ
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年9月1日
う〜〜〜〜〜ん…
いや、これは、うーん…評価が難しい
大胆にいじってきた点について高評価、終盤は涙をすする音も広がる
でもなぁ…物足りなさが残るんですよ
特に前半から中盤はなぁ…
劇伴は良し! pic.twitter.com/AwzF4Oxgjc
う〜〜〜〜〜ん……悪くはないんだけれどね
カエル「最近多いよね、この”悪くはないけれど”パターン」
主「見所もあるし、物語自体もこの手の病気ものらしく、泣ける展開が続く。劇場を出た人が『泣いた!』なんて口々に語っていたのも事実だし、はまる人ははまると思う。
だけれど、自分はかなり思うところがある作品に仕上がってしまった印象があるかな」
カエル「結局、これで原作、実写映画、アニメ映画と3作品ともある程度は認めつつも、文句のある作品という評価になってしまったね。
キミスイに向いていないんじゃない?」
主「まあ、そうかもね。
この作品を純愛だ、生きる意味だ、と語ることもできるだろうけれど、自分には疑問のある描写もある。
結構キミスイの場合は原作、実写、アニメ映画もいじってきている部分もあるから、3作とも独特な味わいを獲得していると思うんだけれど、それが合わなかった印象かな」
カエル「ちなみに、この3つのバージョンではどれが好きなの?」
主「う〜ん……どれも良し悪しはあるけれど、原作をオリジナルの解釈を含めて構成して、映像化に向くようにうまく構成しなおしたという意味で”うまい実写版”の一方で、”好きなのはアニメ映画版”という印象かな。
ただ、やっぱり自分は元々の物語に違和感があるのか、この3つともに思うところはある。
それを考えると……1番いいのは原作という話になるのかなぁ」
情報量の不足
ダメだったって、ネタバレしない程度に語ると何がダメだったの?
情報量が足りていない印象があるんだよね
カエル「……情報量?」
主「例えば今年登場した化け物映画だと『リズと青い鳥』が象徴的だったけれど、特に劇的な物語は起きない脚本がある。描かれているのは人間の内面に関する日常的な物語であり、戦闘もロボットも爆発も銃も出てこない、ファンタジーやSF展開は一切ない。
そんな物語をより魅力的にするには、映像の情報量を増やさないといけない」
カエル「……もっとわかりやすくお願いします」
主「最近は日常的な物語が増えたけれど、例えばキャラクターデザインが同じ『月がきれい』も日常的な物語だ。だけれど、この作品は例えば主人公の男の子が”はっぴぃえんど”のアルバムをオススメされることで、彼がどちらかといえばニッチな、サブカル寄りの好みをしているということが伝わってきたり、太宰の話をすることで文学少年んだということがわかる。
また、リズに話を戻すと特に劇的なことはあまり起きない、日常的な物語だ。
だけれど、登場人物の動き……部室に入る前に一回転するとか、視線でうなじなどを見てしまうとか、そういう細かい描写を大量に入れることによって、映像の情報量が圧倒的な作品だった」
カエル「もちろん山田尚子の演出力もさることながら、京アニスタッフの見事な作画能力も相まってのお話だし、そこまでを望むのは難しいのは重々承知です」
主「他にも、テレビアニメならば『恋は雨上がりのように』であれば、登場する本がこの先の展開を予感させていたり……という風に小物をうまく使うことで暗喩などの映像の情報量を増していた。
だけれど、本作はそういった工夫が残念ながら自分には伝わってこなかったんだよね。
また詳しく語るけれど、だからこそ退屈に思ってしまうシーンも多かった印象かな」
声優について
声優について語りましょう!
高杉真宙くんは個人的に応援したい俳優さんです
カエル「その贔屓目込みでどうだった?」
主「う〜ん、残念ながら高杉くんは少し叩かれるかもしれないな、と思った部分はある。
棒読みに思われかねない演技かなぁ。ただし、主人公の性格を出すには納得の演出だったし、演技力はあると思ったよ。初声優でこれなら十分だと思う。
ただし……本作は相当難しかっただろうね」
カエル「……褒めているの?」
主「この映画って8割くらい主人公の”僕”と山内桜良の物語になっているけれど、先ほどから挙げているように物語があまり動かない、ほぼほぼ会話劇のようなシーンが続く作品だ。
そういう作品こそ、演出力や声優の演技力が問われてしまうけれど……じゃあ、物語を魅力的に演出するだけの演技をしていましたか? と言われると、それは疑問かなぁ」
カエル「あまり抑揚のない話し方で、感情を見せないキャラクターという意味では合っているんだけれど、ちょっとそれが続くと単調に感じるのかな?」
主「これはLynnにも少し思うところがあって……もしかしたら浜辺美波よりも可愛いかもしれない、声優界屈指の美人女性声優だし、芸歴などもそれなりにある人ではある。で、明るい喋り方なども桜良に向いているとも感じた。
ただし、演技の引き出しはあまり多くないタイプのようにも感じられてしまって、ずっと元気な女の子のままで物語が進行してしまう。
他の作品だったら、そこまで違和感がなかったかもしれない。
だけれど、キミスイは本当に8割くらい2人だけの会話劇で物語が進んでいくから、主演2人にかかる重圧はとても高いんだよ。
もっと言えば声だけで、音声だけで物語を魅了し、観客を圧倒するくらいでないと厳しいものがあるんじゃないかな?
そのレベルには……達していないかな」
芸能人と声優メインの役者を混ぜることによって
それは結構ハードルが高い話だね
日常系の作品って、そんな難しさがあるよねぇ
カエル「2時間ずっと物語を引っ張っていく演技力かぁ」
主「自分は基本的に芸能人声優に対して、そこまで否定的ではないです。
確かに彼らでないと出せない演技もあると思うし、中にはいい演技をする人もいる。
だけれど、本職のアニメ演技が多い声優と混ぜるのは慎重にならないといけない」
カエル「アニメ演技が多い声優は”ザ・アニメ”ともいうべき作ってきたような演技をしてくることに対して、芸能人声優はどうしてもそこまで作り上げることができるわけではない、という話だね」
主「オペラ歌手とロックの歌手が同じ舞台で歌ったら、違和感はどうしたって出るんだよ。別にオペラの方が上、ロックの方が上という話ではなく、歌の系統の問題。
それと同じように演技の系統が根本から違うから、この2つを混ぜるのは危険なようにも思えてしまう」
カエル「特に本作はLynnはアニメの女の子の演技をしているしね」
主「会話が中心となる物語だと、自分は『ハーモニー』が……もちろんアクションシーンもある作品だけれど、会話が多い作品だったなという印象があった。そして沢城みゆきや上田麗奈、榊原良子などの演技でグイグイと引っ張っていく物語だったように思う。
本作は友人たちも出番が多くない分、僕の朴訥とした演技の中にも色々な感情を含める必要があるし、桜良の明るい演技の中にも様々な受け取り方ができる多重的な演技の質を組み込まなければいけないんじゃないか?」
カエル「……それってめっちゃ難しくない?」
主「めっちゃ難しいよ!
無茶振りもいいとこだよ!
でも、日常的な展開が続く物語を2時間見せるっていうのはそういうことだから。ちょっと前までアニメが苦手としているジャンルだったからさ!
その意味では映像面、演技面も情報量が全然足りていないし、観客を呑み込むような演技ではなかったかなぁ、というのが率直な感想かな」
以下ネタバレあり
作品考察
前半の穴が……
ここからはネタバレありで語ります
……原作読んだのが1年前でだいぶ忘れているなぁ
カエル「確か、本作のスタートって原作とはいじっているよね。時系列が違かったような印象があるけれど……」
主「ある程度は忠実でありながらも観客を引き込むための改変があったんじゃないかな」
カエル「でもさ、アニメ映画では観客を引き込むために重要な OPもちゃんとあったわけじゃない? それでもダメなの?」
主「ダメというか、引き込まれなかったというか……曲はいいけれど、キミスイの物語であのアゲアゲなアップテンポのロックサウンドが果たして正解だったのか? と云う思いは若干あるかな。
違和感が大きいのが序盤から中盤にかけてで……
これは物語を知ってしまっているというのもあるのかな?」
カエル「旅行に行ったりと色々しているけれど、やっていることは2人の会話劇メインというのは変わらないしね」
主「原作そのままのシーンもあるけれど、例えば序盤のおばあさんを助けるくだりなどが単なるキャラクター紹介レベルで留まってしまったしまったんも気になったかな。
あとは……これは映像で見るとより強く思うけれど、やっぱり自分は『なんだよ、あの女』って言いたくなる」
カエル「これは実写版の時も語っていたねぇ」
主「あそこまで男の子を連れ回して、一緒のベットで寝かせて、それでもクラスで3番目に可愛いと思っている女子に手を出さない童貞くんに対する態度じゃないよね。あれ、彼は相当我慢したよ。
家にまで呼んでいざ手を出してきたら怖がるって、お前なんやねん! と云うのは変わらない」
カエル「それが女子の不安定さであり、桜良の身勝手さやまだまだ少女であるということなのかもしれないけれど……」
主「それしてもこの女、やっぱり男をダメにするわぁ……と思ってしまったかな。
無自覚なだけタチの悪いファムファタルですよ」
カエル「そのあたりは好みの問題もあるけれど、キャラクター性に疑問があるという話でした」
情報量の薄さ
カエル「この部分をより語っていこうか」
主「なんというか、最近新海誠ブームがきているな、という印象もあるかな。画面を光多めのキラキラ感を増すことによって、美しい映像を作り出すというさ。まあ、新海誠が特徴的なだけで、昔からある手法だけれど」
カエル「特に海のシーンなんかは本当に良かったよね」
主「もちろん、情報量が薄い薄いと言っても全編にわたって薄いわけじゃない。
海のシーンなどのように、一部のシーンではとても美しく、劇場映えするようなシーンもあります。
ただ、全体的に物語の情報量が薄くて画面の補完はできていないという印象は変わらない。
引き算で成り立つ映画と、スカスカな映画って違うんですよ」
カエル「例えばどういうシーンがダメなの?」
主「例えば、図書室の本かな。本作では『星の王子さま』がとても大事な作品として映画内でも語られているけれど、それ以外の本を出しても良かったんじゃないかな?
出てきたので印象に残っているのは夏目漱石の『こころ』で、確かに月が綺麗の逸話だとか、あるいは物語の最後、先生の言葉を読み上げるシーンなどは意識しているのかな? と思いつつも、もっとグッと掴むような演出が欲しかった」
カエル「小物の使い方かぁ」
主「あとはキャラクターの使い方も正直イマイチだった。
元彼とか、あとはガムをくれる男なども後々意味があるのはわかるけれど、全体的に本当に必要なのか? まるでとってつけたように見えてしまう部分もある。
モブに毛が生えた程度だし、実際そのレベルで十分と判断したかもしれないけれど、そのあたりが適当というか……
原作は僕の一人称だらか気にならない部分も、映画はどうしたってカメラが入る分3人称になるから、その改変がうまくいったようには思えなかったね」
後半の描写について
でもさ、後半は良かったんじゃない?
アニメ映画で描く意義が見えてきた描写ではあった
カエル「本作でも登場したある作品をモチーフとした後半をはじめとして、物語も佳境を迎える後半はとても良かったんじゃないかな!?」
主「……まあ、アニメ映画化した意義はあったよね」
カエル「え? その程度?」
主「う〜ん……なんていうかさ、主人公の僕がこの作品のメッセージを語るシーンがあるけれど、それを言葉にしてペラペラ喋るのは悪手じゃないのかな? って。
しかも、そこそこ長く語るし。
あのシーンはとても当たり前とされる価値観をペラペラと話すことで、桜良からいろいろな思いを受け取ったというシーンになっているけれど、その描き方も含めて丁寧とは思えなかった」
カエル「あとは回想シーンの多さとか?」
主「結構なんども使われたよね。3回くらい回想があったのか?
この構成にした時、最初にゴールが示されているから、結局映画としては全部”僕”の回想なんだよね。
回想を何度も見せることでわかりやすくエモーショナルな感動を提示するのはわかるんだけれど、それがいいとは思えなかった、というのが本音かな。
結局さ、この映画って映像に対する情報量が不足しているのが根本原因な気がしてくる。だから、それをカバーするために非常に音楽を……あ、音楽は文句ないです。
音楽を会話シーンなどで流すことで間をもたせたりとか、いろいろと工夫は重ねているけれど、大元の問題が解決していないように見えてしまうんだよね。特に、近年は映像クオリティの高さの平均値が年々上がっているから、この作品は埋もれてしまうんじゃないかな?
多分、一昔前ならばそこまで気にならなかったかもしれない。
だけれど、現代の異常なクオリティのアニメ映画たちと土俵は同じだと考えると、ちょっと疑問がある。
初監督ということもあるかもしれないけれど……期待値が高かっただけに、ごめんなさいというのが本音かな」
まとめ
では、この記事のまとめです!
- 悪くはないが、良いとも言いづらい……
- 映像の情報量が足りない印象も……
- 役者陣も頑張ってはいたが、難しい役すぎたか?
アニメ向きだと思ったけれど、ここまで会話劇が多いと難しいかな
カエル「う〜ん……厳しい評価になってしまったね」
主「自分は主人公の名前を最後まで明かさなくても良いと思っているし……それは僕と桜良の秘密として機能させた方が、個人的には好みかな。
悪い作品じゃないんだよ、ただ語りづらい。ものすごく分かりやすい、典型的な難病もののプロットに頼った作品にも見えてしまったのが、ちょっと残念かな」
カエル「もともとそういう作品とはいえ、相性の問題かもねぇ」