き~んこ~んか~んこ~ん
キリ、レ、セキ!
もう挨拶にすらなっていないね
カエルくん(以下カエル)
「では、いよいよこの自由研究も最後の記事になります!」
主
「いやー、長かったね」
カエル「色々な粗や強引な説明を繰り返しながらも、論評はいよいよ00年代のお話になります。
まあ、ツッコミどころが多々あるのは当然でしょうが、そもそも戦後70数年をわずか数万文字で表現できるわけがないので、そこは勘弁いただいて……」
主「いやいやいや! 急に何を弱気なことを!
この論評は完璧だよ!
たとえ嘘だとしてもそれは主張していかないと!」
カエル「あ、嘘だってことは認めるんだ」
主「そりゃ色々な意見があるとは思うけれどさ!
1つの意見として捉えてもらいたいね」
カエル「では、記事を始めます!」
セカイ系の流行
では、まずはセカイ系の流行から話は始まります
ここでこの記事におけるセカイ系の定義をあげておこう
カエル「『主人公の選択(もしくは恋愛)が世界の運命に直結する作品群』というものだね。
おそらく最もポピュラーな定義だとは思うし、作品としては『ほしのこえ』『最終兵器彼女』『イリヤの空、UFOの夏』が代表的かな。
あとは有名どころだと『涼宮ハルヒの憂鬱』などもセカイ系に分類されることが多いかな」
主「一部では『ラーゼフォン』や『蒼穹のファフナー』を入れている場合も見受けられたけれど、これらはエヴァ以降のロボットアニメの鬱感や個人の内面の世界を取り入れているという意味でのセカイ系であり、この記事の語るセカイ系からは除外します。
特にファフナーなんて戦えない無力感を抱える大人が、世界の脅威と戦える子供をとても大切に支援しているし、その親の苦しみも描いている作品だから、この定義からは完全に外れている」
カエル「それだけ定義がバラバラな作品だということだねぇ」
主「ちなみに、劇場版のラーゼフォンEDの坂本真綾の『turn the rainbow』名曲中の名曲であり、我が人生でも最高の楽曲なので心して聞くように!」
カエル「はい、話がずれてきました。
ちなみに上記の作品は?」
主「大体見たし、好きな作品ばかり。細かいところは忘れているかもしれないけれど、どれも一見の価値がある名作たちだと思う。
特に『イリヤの空』なんてラノベ史上最高の文章力のある作品と称されるのもわかるくらい、美しい空気感で表現された作品じゃないかな?」
なぜセカイ系は流行したのか?
カエル「では、ここからが本題ですけれど、なんでセカイ系って流行したの?」
主「それを語るのに、ここまでの流れが必要になってくる。
95年について語った記事において『世界が混迷し、若者が革命を果たすために戦う相手がわからなくなった。そのために自己革命としての宗教や自己啓発に関心が向いた』ということを語った。
自分はこの流れが行き着いた先が、セカイ系だと考える」
カエル「……うん?」
主「自分が変われば世界が変わる、というのは、自己啓発本などでよく登場する概念であるが、それを物語に落とし込むのは難しい。それを行なったのがEVAだけれど、あの作品が果たして成功したのか、失敗したのかは意見が別れてしまう。ちなみに、自分は成功したとは思うけれど、その代償でEVAは終わることができない物語になってしまった、と思っている。
だから、EVAって完結してはいけない物語なんだよ」
カエル「もっと説明をお願いします」
主「自己変革のゴールなんてないじゃない? 明るい自分になればゴールなのかって聞いたら、それはそれで不満が出てくる。
自己変革なんてゴールがないんだからさ、物語にはならないんじゃないかな?
だから未知の敵などを設定して、それを倒すなどの明確な目標が必要になる。
それは結局外部の変化だから、自己変革の物語と言えるのか? と問われると、それは微妙じゃない」
カエル「……はあ? 意味がわかるような、わからないような……」
主「だけれど、すごくわかりやすい自己変革ってあるんだよ。
それが恋愛だ」
セカイ系に恋愛作品が多い理由
上記の代表的セカイ系作品はどれも恋愛要素を多く含む作品だね
最もみじかな自己変革って恋愛だから
カエル「恋をすれば世界が変わるって話?」
主「そうそう。恋愛というのは、特に高校生の恋愛初期状態というのは、とてもわかりやすい非日常なんだ。それまでの退屈な日常が、全て一変してしまうほどに心がトキメキ、恋人のことで頭がいっぱいになり、それ以外のことが考えられなくなる」
カエル「……自分で言ってて恥ずかしくないの?」
主「恥ずかしいわ!
平穏な少年の日常が、特別な彼女が登場することで一変する。だけれど、その彼女が世界を変える大きな力や使命を持っている、というのがセカイ系の代表的な物語である。
『自己変革が世界を革命する』ということを表現するのに『恋愛』と『世界の終わり』はとてもわかりやすい。
キャラクターの魅力である萌えもあるし、物語のラストをもわかりやすく、エンタメとしても表現できる。
この連載で何度も書いているけれど『若者は常に現状に不満を抱えている』わけだが、その世界の変革と自己変革をイコールで描くことによって、EVA以降の若者の心理と物語の面白さを同一に描いたのではないか?
だからこそ、ヒットしたのではないか? というのが自分の考察です」
日常系の台頭
そしてその次には日常系が人気を集めるわけだけれど……
これがここ最近の社会を反映している
主「はっきり言わせてもらえば、この現象はとても驚愕だ。
そして、これが現在の若者文化に影響を与えているんだよ」
カエル「はぁ……」
主「端的に言えば『若者が改革を志さなくなった』んだよ!」
カエル「……?」
主「つまり、改革を諦めてしまったんだ。
それまで語ってきた物語たちは、現状の日常を否定し、新しい価値観や未来を求める物語が多かった。今の現状に満足をしないからこそ、無頼派の台頭があり、政治的革命を志し、ヤンキー文化に傾倒し、自己改革を試みていた。
だけれど、ここでそれが全て否定された。
改革を志すのではなく、現状の日常を楽しもうよ! という物語が人気を集めたんだ」
カエル「まあ、でもその日常も女子高生の特別な日々だけれどね」
主「でもそれまでのロボットやSF、ファンタジーとは全く違う作品であり、コメディよりではあっても描いているのは日常なわけだよ。
本来、日常というのはドラマにならない。普通の何事もない日々だからこそ、日常なわけだからね。
だけれど、それを美少女を入れることでエンタメ性を確保している」
社会と日常系
主「本来、若者はリベラルなものとされていた。現状を否定し、新しい運動を求めるのが若者らしさとされていたが、長引く不況の影響もあって、簡単に挑戦することができなくなってしまったことも影響しているのだろう」
……でもさ、この時って保守勢力である自民党が徐々に力を失っていき、民主党政権が誕生する頃じゃない?
……まあ、そうなんだよねぇ。
主「一応、2005年の漫画『嫌韓流』の発売などもあり、韓流ブームに対するアンチイズムが活性化し始めた時代でもあって、世の中は右傾化する傾向を見せつつも、実際には自民党の支持率低下によって相対的に民主党が支持される世の中になってきたんだよねぇ。
まあ、政治体制への期待そのものがなくなっていったという、安定志向という意味での、保守化だったような気もするんだけれどさ」
カエル「そもそも日本の若者は無党派層が多いから、なんとも言えないところはあるかも」
主「ちょっと時代はずれるけれど、2010年から2014年の世界価値観調査によると、20代の若者のクリエイティブ精神や冒険精神というのは、世界各国に比べて異常に低いことが統計として出ている。
2008年のリーマンショックもあり、長くにわたる経済不安などの不安定な社会の中で、現実を変えようという動きそのものが力を失ってしまった時代の象徴が、日常系ブームにあると考えている」
そして現代は?
じゃあさ、現在はどんな時代なの?
……強いていうならば『異世界転生もの』の時代かな
カエル「もちろん、東日本大震災を意識したような作品も生まれていて、それが大ヒットを記録していることもあるけれど……」
主「まあ、でもジャンルとして何か人気があるというわけではないしなぁ。
何というか、自分の見立てではそこまで来たかぁ、という思いも強くてさ」
カエル「そこまでってどこまで?」
主「セカイ系に対する批判も多々あったけれど、あれって確かにヒロインの力や恋愛主体ではあったものの、まだ現世を変えようとした運動だったと考えている。日常系も今ある日常の面白さを発見しよう! というもので、大きな挑戦などはないけれど、それでも現実を生きるという意思を感じた。
だけれど、異世界転生ものって一回転生しないといけないわけで、ついに現実ですらなくなっていった。
現実を変えようという作品たちではなくて、現世は諦めて一回転生するか、もしくは次の世界で無双するという作品も多い。
もちろん、単なる物語の傾向ということかもしれないけれど、何かそこまで来たかぁ、という思いはあるね」
カエル「つまり現実社会での不安や不満があるけれど、現実を変える方向ではなくて、新しい社会に行こう! という物語が人気を博していると?」
主「この辺りはネットが身近になったこともあるのかな。インターネットって誰でも現実の自分と違う自分をアピールすることができる。
例えばTwitterなどで現実の自分と全く違う一面をアピールしている人もたくさんいて、その意味では仮想世界であるとも言える。
ネットゲームなどもあるし、現実の自分と違う自分をロールすることが、かなり身近になったことも大きいのかな」
カエル「それでいうと、SAO辺りから一気に増えたかも……」
主「もともとは『.hack』みたいなインターネット環境に閉じ込められる話もあったけれど、そこから派生しているのかもしれないな。ただ、SAOなんかはまだ現実社会への影響 ……つまり敗北したら現実の死がある、という意味では、純粋な異世界転生ものとはまた違うだろうけれど、かなり重要な作品だと思う。
まあ、何が言いたいのかというと、若者を中心とした社会に対する不安というのはそこまで来ているんじゃないかな?
もう1回人生をやり直すしかない、というところまで、ある種の諦念が来ているのかもね」
まとめ
では、この記事の最後のまとめです
- セカイ系は自己変革を恋愛と絡めた物語群だった
- その後、革命を求める物語よりも日常を大切にする作品が流行する
- 現代は異世界転生が特に流行しているが、これも社会不安の表れか?
かなり偏っているのは事実です
カエル「納得する人もいるかもしれないけれど、批判も多そうだなぁ、というのはわかっているんでしょ?」
主「そもそも戦後の社会情勢と物語を絡めて書くのはとてつもなく難しいですから。
この連載はかなり無茶苦茶なことを言っているというのも理解した上です。近年だってセカイ系、日常系、異世界転生だけが流行ったわけじゃないし、そもそもオタク文化だけが若者文化じゃないし。
日常系や萌えアニメの流行は2005年前後の『電車男』から連なるオタクブームの影響もかなり大きいとみているし」
カエル「全部を網羅するのは難しいよねぇ」
主「ただ『ハルヒ』と『まどマギ』はちょっと特別な存在とも思っていて ……
セカイ系の要素を取り入れつつ、日常系の雰囲気も取り込んでいたハルヒ。
日常系の柔らかい雰囲気も取りれつつ、異世界転生(ループもの)でもあったまどマギ。
この2作品というのはちょうど流行の境目に爆発的ヒットを果たした作品とも言える。
まあ、これからもちょっとずつ考察して行って、都合のいいデータがあったら補強して行って、ということになるのかな」
カエル「……都合のいいデータしか見ないダメな研究になるよ」