2018年の冬アニメも次々と終わっていくね
と言っても、今期も見れているのは『グリッドマン』と1年見てきたプリキュアだけなんだよ
カエルくん(以下カエル)
「いつでも観れると思うと、逆に見なくなるんだよねぇ。
時間を作って少しずつ見ないと録画がたまってしまって、さらに億劫になっていくし」
主
「テレビアニメが多すぎる問題もあるし、キービジュアルやタイトルからは想像もできない物語だったというパターンもあるから、本当は1話くらいはたくさんチェックしたものだけれど……
どうしても映画が中心になってしまうのを、実はどうにかしたいとも思っているんよ」
カエル「話題作ばかりを中心的に見るけれど、それだけ実は隠れた名作! という作品は見逃してしまいがちだしねぇ」
主「来年からはさらに頑張ってテレビアニメも見るようにしたい!」
カエル「……いや、頑張ってテレビアニメも見るというのも変な話だけれどね。
というわけで、今期の中でもTwitterを中心に話題に挙がることも多いグリットマンの感想記事のスタートです!」
10.6(土)~スタート!新番組『SSSS.GRIDMAN』放送直前PV!
感想
それでは、まずは最終回のTwitter上の感想から始めましょう
#ssss_gridman
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年12月22日
最終回まで見終えて感想を簡単に
作品としては初代を知らないけれど楽しめた部分も多いし、多くの人が支持するのも納得
だけれどオマージュが多すぎて”アニメのグリットマンでないとできないこと”が見えてこなかったのは残念
平成の終わりにふさわしいトリガーらしい作品だったかな
ちなみに特撮版は見ていません
カエル「ゴジラは大好きだけれど、ウルトラマンなどのヒーロー系の特撮はあまりはまってこなかったから、グリットマン自体もこのアニメ化で存在を知りました。
今でもあんまり”正義の味方”が好きじゃないけれど、この時から続くのかもね」
主「まず、最初に面白いかつまらないかで言えば間違いなく面白いし、好きな作品だよ。
少なくとも12話を見続けてよかったと思うほどには。
特にキャラクターは魅力があったし、ヒロイン2人の高い人気も納得。
キャラクターデザインも素晴らしいけれど、さらに宮本侑芽と上田麗奈の演技もまたよかった。
上田麗奈に関しては個人的には今作のMVPをあげたいくらい。
元々劇場アニメの『ハーモニー』のミァハなどで高い演技力を発揮していたけれど、今作では彼女の陰の演技がハマったからこそ、ここまで面白くなったんじゃなかな」
カエル「もちろん広瀬裕也、斉藤壮馬の若手男性声優も良かったし、何よりも緑川光のザ・ヒーロー演技や稲田徹の悪役演技も絶賛だよね。
脇を固めた鈴村健一や新谷真弓も良かったし、いちいち挙げていったらキリがないほど!」
主「それに戦闘描写も見応えがあり、特に日常パートも独特の間の使い方などもよかった。
でも、同時に色々と言いたいこともあるのも、また事実ということかな」
本作のオリジナリティとは?
”面白かったし好き”だけれど、不満点があるという話だけれどどんなところが?
まずは、9話鑑賞時点でのツイートを参照してください
とりあえずグリットマンを9話までみた
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年12月17日
あと一歩欲しい
オマージュが多すぎてオリジナリティが欠けているような気がしてくる
悪い作品ではないだけにね
主「本作の人気の1つが特撮描写の他にも、多くのアニメのオマージュを重ねている。
その1つ1つはとても面白いし、元ネタをなんとなく『あれっぽいな』とわかるから、その意味でも楽しんでいたんだけれど……今作はそれがあまりにも多かったようにも思えるわけ」
カエル「そもそも、グリットマン自体が1993年に放送された特撮シリーズであるわけだし、これが完全オリジナルの作品ではないというのもあるのかな?」
主「それもあるかも。最終回は特に前作を見ていないとわからない演出もあったし。
今作の日常描写はそれこそEVAをものすごく意識している。
間の取り方、無音も含めた音楽の使い方、生っぽい演技なども含めてあのEVA独特の雰囲気をとてもよく醸し出している。
それから合体シーンや攻撃シーンは数々のロボットアニメも元にしてて、『トップをねらえ!』のイナズマキックや勇者シリーズ、それから『グラヴィオン』を連想させる合体シーンなども出てきて、それが物議を醸した」
カエル「ロボットなどの作画やデザインで有名な大張正己もTwitterで苦言を呈していたよね。どこまで本気で怒っているのはわからないけれどさ」
主「まあ、みんなが真似したくなるほどの影響力が強い作品を生み出してきた方だから、ということもできるわけではある。
そもそも、日本のみならず世界中の作品で様々な過去作のオマージュはたくさんあって、それをパクリとして断罪すると、おそらく世界中の99%の物語がこの世から姿を消す。
それだけ完全に誰にも影響を受けていないオリジナルの作品を生み出すのは難しいというのはわかる。
だけれど、グリッドマンがそれが行き過ぎなだったんじゃないの?」
カエル「パクリだからダメだって話?」
主「というかさ、5年後10年後に『これはグリットマンのパロディだ!』と思わせるほどの何かがあったのか? という話。
結局パロディとオマージュを重ねて、新しいものを作ることが……少なくともアニメーションの、特に戦闘パートの上ではほとんどできていないようにも見えてしまった。
本作は”うまくいった『メアリと魔女の花』”なんだよ。
過去作へのオマージュが多すぎて批判されたという点でも同じ。
だけれど、それがこの作品の最大の欠点であり、同時に面白いポイントでもある」
平成最後の年だからこそ
じゃあさ、なんでこんなにパロディを重ねたんだろうね?
おそらく、平成のロボットアニメやガイナックスへの言及をしたかったんじゃないか?
カエル「あ〜、やっぱり平成最後だし?」
主「いや、今さっきまで『パロディが多すぎてオリジナリティがあまり感じない』って言っておきながらなんだけれど、今の若い子……それこそ10代の子がこの作品を見た時に、自分がパロディと思ったものが、若い子にはオリジナルに見えることもあるのかなぁ? とも思うんだよ。
じゃあ、今EVAを見たことがある人が10代でどれだけいるのか? 20代でももしかしたらアニメ好きでもテレビ版を見たことがないかもしれない」
カエル「今の作画に慣れてしまうと、90年代の作品ですら作画的には見落としてしまって見る気がしないかもしれないかなぁ。
僕も今から『鉄腕アトム』とか『鉄人28号』を見ろって言われたら嫌がるかも……」
主「インタビューでも雨宮監督が『本作は90年代ロボットアニメ、特に大張正己への愛を込めてます』と語っている。
それはもしかしたら予期していないことかもしれないけれど、結果的に”平成の特撮、ロボットアニメとは?”という言及にもなっているようにも思える。
特に近年はロボットアニメは少なくなっており、特にいわゆるリアル系ロボットアニメはガンダムやマクロス、ファフナーなどが作られているけれど、勇者シリーズなどのようなスーパー系はあまり作られない」
カエル「監督自身は『今作が特撮への入り口になってくれれば』という話もしているよね?」
主「結果的には今作は特撮のみならず、90年代のロボットアニメに興味を持つきっかけにもなるんじゃないかな。
そしてそれは……今年『フリクリ』が劇場で上映されたこともあって自分が意識しているんだけれど、新谷真弓がお母さん役で出ているのもフリクリに対する敬意というか、鶴巻和哉監督への敬意なども感じるんだよね。
結果的にはいろいろな作品の要素を詰め込みすぎて、逆にオリジナリティが見えづらくなったけれど、でも平成最後に……特に平成初期のロボットアニメやガイナックス作品を踏襲するというのは、トリガーにとっては必要なことだったようにも感じるんだよ」
カエル「でもさ、そのごちゃごちゃになったこともまた、グリットマンの個性につながっているんじゃない?」
主「だからこそ言及が難しいところがあるよなぁ……」
作品考察
本作の主人公は誰?
では、ここからは作品の考察に入っていきます
まずは本作の主人公は誰か、ということから考えようか
カエル「えっと……当然、裕太とグリッドマンだよね?」
主「もちろん公式にはそうだし、誰もが認める主人公は裕太だよ。
だけれど”物語の中心人物”としての主人公に裕太がなっているかというと、決してそうではない。
これは作品にもよるところはあるけれど”最も大きな変化、成長を遂げた人”を主人公とするならば、裕太はほぼ成長していない。
彼は失った記憶を取り戻し、自信がグリットマンであることを思い出しただけとも言える。彼自身の状況は一切変化することはなかった。
なぜならば、彼は初めから完成されたヒーローであったからだ」
カエル「小さな成長はしていても、グリッドマン自体は最初から最後まで一切変わらないヒーロー像だったもんね」
主「では、この作品の中心人物は? というと、それは当然新条アカネなわけだよ。
ここでOPの歌詞を思い出して欲しい。
直接的に歌詞を全部んのせることはできないけれど、この歌は”グリッドマンがアカネを救いに来た歌”と解釈した方がしっくり来るとおもんだよね」
カエル「”君を退屈から救いに来たんだ”の君って誰? というと、それは完全にアカネだよね」
主「それでいうと、この作品の日常パートはとことん退屈感、停滞感があるように作られている。一部ではグリットマンの停滞感が苦手という意見もあるようだけれど、それはまさしく制作側の狙い通りだろう。
だいたい、日常なんて退屈で停滞感があるものだし、いつもと変わらないから日常であって、特に中高生時代の頃の思春期はその感覚が強いだろうしね」
アカネとは何者なのか?
結局、新条アカネは何者だったの?
……個人的な趣味で言えば”作者”と言いたいけれど、それはちょっと違うかもな
カエル「アカネは神様ではあるし、あの箱庭のような世界を作り上げて人を思いのままに作り、あるいは排除することもできたことを考えると、創作物における作者のようだ、という考えだね」
主「ただし万能ではない。
消したい人物が絶対に消えるというわけではないし、邪魔者であるグリットマンを倒すことはできなかった。言ってしまえば、能力的にはだいぶ限定された神様だよね。
その新条アカネという神様が抱える退屈からどのように救うのか? という物語と聞くと、まあ多くの人が連想するのはこちらの作品」
カエル「みんなご存じ『涼宮ハルヒの憂鬱』だね。
つまり、アカネは自分の力に自覚的なんだけれどSOS団がいないハルヒみたいなものだと」
主「そうそう。
で、この”退屈感”もしくは”閉塞感”というのは近年のアニメ界、ひいては物語においてはとても重要なワードであると考えている」
今作を貫く”退屈”とは?
以前にも近年のアニメが描くものと、その時々の若者事情について語っていたよね
基本的には若者はリベラルな存在であり、何かを変えたいという思いが強いんだ
カエル「変えたい、あるいは変わりたい、もしくは成長したいという欲求とでもいうのかな。大人になると安定感や変わらないことを求めたりするものだけれど……」
主「基本的に若者はいつも鬱屈を抱えており、それを変えるために行動する。
それが恋愛やスポーツの人もいれば、勉強の人もいたり、あるいは悪事である人もいる。
アニメの場合は退屈からの変化を色々な形で描いてきた。
その1つが”セカイ系”だ」
カエル「本作も広い意味ではセカイ系に該当する作品だろうね」
主「セカイ系作品の1つのパターンとして”平凡な少年が特別な異性と出会い、2人の関係性が世界を左右する”というものがある。つまり、退屈な日常を恋愛などを交えながら変えていき、そして世界を左右する大きな展開に発展するという物語だ。
ハルヒもこのタイプの物語と言える。
そのセカイ系の次にブームになったのが『けいおん』などに代表される日常系。
つまり、退屈な日常を肯定し、変わらない日常を愛するという物語たち」
カエル「実際のところは女子高生などの限定的な日常であって、しかもちょっとはドラマが起きるんだけれどね」
主「そして日常系の次に……今現在ブームを迎えているのが異世界転生系。つまり、今の退屈な世界を飛び出して、新しい世界に行って生活、あるいは無双しようという物語だ。
セカイ系と違うのは”違う世界へ行く”ということ。
つまり、今の世界を変えるのではないということだ。
このように、2000年以降のアニメ業界のトレンドは”退屈”といかに向き合うのか、という視点でも語ることができる。まあ、かなり大雑把な語り口であるのは認めるけれどさ」
カエル「はあ……それがグリッドマンにどうつながるの?」
”神様”を救うために
それでいうとさ、グリッドマンって何系になるの?
う〜〜〜ん……この3つの要素をハイブリットしているように思うんだよ
主「アカネが世界を創造し、好き勝手できるといえば”セカイ系”
ドラマパートの退屈感のある演出などは”日常系”
戦う時別の世界へ行き、変身するといえば”異世界転生系”だ。
正確には戦う時だけで見れば転生ではないから、異世界変身系ぐらいになるんだろうけれど」
カエル「そして戦った後は全てリセットされているというのも、グリットマンに元々あった設定ではあるけれど、結構都合がいいよ」
主「この辺りも近年のアニメ業界の流れを踏襲しているようにも思える。
では、セカイ系としてアカネの退屈から救う相手は誰なのか? というと……これは男性の役割ではなくて、当然六花の役割になるわけだ」
カエル「直接的な恋愛関係が世界を左右するというセカイ系とはまた違うわけだね。もちろん、あの2人の関係性は百合っぽいところがあるけれど、でも恋愛というよりは友情と名付けたいものだったし……」
主「そして神様であることもやめて現実世界で生きることを選んだ。
言ってしまえば”夢から覚めた”ということであり、作者というよりは夢を見ている人物と捉えた方がいいわけだな」
カエル「そう考えると、アカネにとっての六花ってイマジナリーフレンドでもあったんだね」
主「結論としては”夢から覚める”ということ、それは同時に”物語から脱却する”ということでもある。
だけれど、それは物語の批判ではなくて生きる糧としているわけだろう。
ものすごくざっくりと結論を話すと、この作品は
新条アカネが夢の中の”異世界に転生”し、”退屈な日常を紛らわせる”ために、神様(夢の創造主)として活動し、六花というイマジナリーフレンドやグリッドマンの影響もあり、その”セカイ”(夢)から覚める
という物語であるわけだな。
長々と話してきたけれど、主役をアカネにすることでだいぶ見えてくる物語が変わってきたんじゃないかな?」
カエル「夢だからこそ、創造主だけれど好き勝手にはできなかったと考えると、ちょっとはわかりやすいのかな?」
まとめ
では、ちょっとアヤフヤな記事になってしまいましたが、ここでまとめます
- 面白くて好きな作品だが、オマージュが多すぎるような?
- 平成のロボアニメや特撮の入門編にふさわしい作品へ
- セカイ系、日常系、異世界転生系の流れを組む作品へ?
とりあえずはこんなものかな?
カエル「あとは語るとすれば『なぜアカネは怪獣を愛したのか?』というところだけれど、ちょっともう少し考えてまとめてから追記するか決めます」
主「トリガーらしい外連味のある作画や魅力もあったし、いろいろ語ったけれど、そんなに難しいことを考えなくても楽しめる作品でしょう。
次はウルトラマンか……原作漫画も途中で読むのを止まってしまったから、またおさらいしようかな」
カエル「次の作品も楽しみにしています!」