今週公開のオタクのキラキラ映画です!
最近はオタクにフューチャーした恋愛作品が増えたの
カエルくん(以下カエル)
「それだけオタクに市民権が生まれたってことかもね。
でも考えてみれば電車男もあったし、最近はずっとそうなのかな?」
亀爺(以下亀)
「今作はオタク描写にも力を入れているということなので、そちらも楽しみじゃな」
カエル「では、早速ですが記事を始めようとしましょう!」
作品紹介・あらすじ
那波マオ原作の同名漫画を実写映画化した作品
監督を務めるのは『あさひなぐ』や『未成年だけど子供じゃない』などの若手役者を中心とした青春映画などを勢力的に撮る英勉が務め、脚本はまだ20代と若い高野水登が英勉と連名で担当する。
中条あゆみと佐野勇斗が主演を務めるほか、清水尋也、恒松あゆみ、上白石萌歌、ゆうたろうなどが友人役を務める。
アニメが大好きな筒井光(佐野勇斗)はひょんなことから、学校でも人気上位の美少女五十嵐色葉(中条あゆみ)と知り合う。オタクである自分が好かれるはずがないと達観していた光だったが、なぜだか色葉は気に入って付き合おうと話しかけてくる。
果たして生粋のオタクと誰もが憧れる美少女の恋は成立するのか?
色葉の真の思いとは?
感想
ではTwitterの短評からスタートです!
#映画3D彼女
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年9月15日
前半大傑作か!? と思いつつも失速して後半盛り返したものの全体的には良作止まりかなぁ
前半の演出は賛否あるだろうけれど大好き
展開が読めてしまったのが痛い
このテーマならもう少し突っ込めたような…
本当、惜しいです pic.twitter.com/HaGaxVFs00
前半が良かっただけに、少し惜しい気がするの
カエル「本作はオタクが主人公ということもあって、結構オタクを意識した演出が多いんだよね。
アニメキャラクターの声をプロの声優としても評価が高い神田沙也加が演じていて、そこも手を抜いている様な感じは一切しなかったかな」
亀「おそらく、あの手のアニメーションを多用した演出であったり、派手なコメディを狙った演出は賛否がはっきりと割れてしまうかもしれんの。
わしはとても面白くゲラゲラと笑ったが、これは相性が良かっただけかもしれん。
仮に相性の問題としても、前半は『今年1番の恋愛スイーツ映画が誕生か! ?』と心踊ったことは間違いないしの」
カエル「それだけに中盤から後半の展開が少しおざなりの様に見えてしまったことが残念で……いや、別に伏線がなくて唐突ということでもないし、見ている最中に『あれ、もしかしてこういう流れに行くのかな?』と思ったら、ちゃんとその通りになったんだけれど……」
亀「それがかえって良くなかったかもしれんの。
中盤からキレキレだった演出も少し影を潜めてしまう部分もあり、本作最大の売りが損なわれてしまった印象もあった。
後半はまた盛り返してきたが、それで全体がカバーできたとは言い難いのも事実じゃがな」
カエル「あ、でもEDの演出はとても可愛らしくて全く飽きないので、ぜひぜひ明るくなるまでしっかりと鑑賞して欲しい作品です!」
オタク描写も結構しっかりしていた印象
まあ、オタク全員がフィギュアや美少女好きではないですが
(自分の家には1体もないです)
(C)2018 映画「3D彼女 リアルガール」製作委員会 (C)那波マオ/講談社
オタク描写について
本作もいわゆる”オタクに恋は難しい”系の作品だよね
邦画ではおざなりな描写も多いが、本作は結構しっかりとしていたの
カエル「恋愛のハードルとしてオタクであるという理由は日本以外でも最近増えていて、人工知能の声と恋愛をする『har/世界で一つだけの彼女』や、他にもオタクの中年男性の恋愛を描いた『好きにならずにいられない』なども面白い作品です。
邦画だと、最近では松岡茉優が初主演を果たした『勝手にふるえてろ』が特に印象に強いかな」
亀「残念ながら、この手の若手役者を見せる恋愛キラキラ映画の場合、あんまり気持ち悪いオタク像にならないことも多い。
アニメが好きな爽やかイケメンじゃな。
逆に最近では『銀魂2』が顕著じゃが、オールドタイプのバンダナをつけてリュックにポスターを刺した、一昔前にいる様なオタク像か、そのどちらかに極端に振り分けられている場合も多いの」
カエル「その中でも本作はしっかりとオタクのコミュ障や人とうまくコミュニケーションをとれないという欠点を描きながらも、過度に気持ち悪くみせないように配慮されていたんじゃないかな?」
亀「予告編でもあるが『美女×野獣(オタク)』という触れ込みである以上、オタク描写はある程度美女と釣り合わない野獣性、すなわち気持ち悪さをある程度描きながらも、佐野勇斗を始めとした役者陣のイメージを落とさないレベルの気持ち悪さに抑えるとバランスは取れておる。
また、テレビで放送されているオリジナルアニメのクオリティもそれなりに高く、キャラクターデザインも現代的な、女児向けであればありそうなものになっておるの。
部屋のフィギュアなども現実に存在するものを使用したり、本屋さんに……まあ棚一面を使うのはやりすぎじゃが、専用のNEW TYPE(アニメ雑誌)を置くなどの芸の細かさも見せてくれたの」
役者について
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肝心の役者について語ろうとしようか
全体的に派手な演技じゃったの
カエル「この手のキラキラ映画には多い演出だよね。若手の、あまり慣れていない役者を生かす場合は、派手な演出にして派手な演技と合わせるのがいいのでは? という持論があるけれど、今回もその例にハマったんじゃないかな?」
亀「今作はリアリティはあまりない派手派手な演出と演技であるが、それがあるからこそ役者も生きたように思えた。
ただし、それも前半と後半でガラリと演出が変わってしまうから、それで違和感に生じてしまう部分もあるかもしれん」
カエル「まずは主演の佐野勇斗は、結構良かったんじゃないかな?」
亀「先ほども語ったようにしっかりとオタクらしい演技を披露しておるし、バランスのとれた演技だったのではないか? これから先が楽しみと思わせるだけのものは披露したと思うの」
カエル「次にヒロインの中条あゆみだけれど、彼女もしっかりと世界一のヒロインになっていたんじゃないかな?」
亀「正直、顔立ちやスタイルなどはわしの好みとは違うのじゃが、それでもしっかりと彼女の可愛らしさを発揮しておったじゃろう。少し難のある部分もあるにはあったが、後半の展開などは難しい演技が求められるじゃろうから、十分合格点じゃろう。
ファッションも流石に可愛らしかったしの。まあ、少し細すぎなのは気になったを通り越して心配になったが……」
カエル「親戚のおじいちゃんじゃないんだから。
他の脇役陣は?」
亀「清水尋也は『ミスミソウ』や『ちはやふる』などのように少し不良気味の少年をよく演じており、この手の役が得意なのは伝わってきた。
恒松祐里は『虹色デイズ』でも親友を守る強気な女の子の役じゃったが、主人公に対して当たりが強い女の子の役を得意とするのじゃろうな。この2人もこれからの活躍が楽しみになっておる。
上白石萌歌は年下のオタク女子の役じゃが、彼女も可愛らしかったの。ゆうたろうは残念ながらかなり独特な役であり、初めましてなのでなんとも言えんが、決して悪いとは思わなかったの」
カエル「……なんか、可もなく不可もなくという評価だね」
亀「まあ、こんなものではないかの?
一方で大人組は派手な演出が足を引っ張ったかもしれん。
竹内力は普段のイメージと大きく違うので、それが違和感に繋がったかもしれんが、三浦貴大は……役も悪かったかもしれん。
後半の割を食った感じかの」
以下ネタバレあり
作品考察
惜しいテーマ
では、ここからはネタバレありで語って行きましょう
惜しいと言わざると得ないかの
カエル「えっと……何がそんなに惜しいの?」
亀「本作を大雑把に説明すると4幕構成になっており、4つの壁を設定しておる。その4つの壁をそれぞれの構成で乗り越えるというような設定になっておる。
まずは4幕の説明をするが、はっきりとネタバレになってしまうので気をつけてほしい。
- 出会いから2人の交際まで
- ゴタゴタがあり、別れ話騒動が終わるまで
- 友人たちも巻き込んだ恋の行方、旅行が終わるまで
- ハロウィンからラストまで
という風になっておる」
カエル「こうやってみると、結構はっきりと分かれているんだね」
亀「次に本作の邪魔をする4つの恋の壁を説明すると、このようになっておる」
- 次元の壁(オタクのモテるわけがないという自意識)
- スクールカーストの壁
- 友人との関係性の壁
- ある展開の壁
カエル「ちょっと4つ目の壁については流石にネタバレがすぎるので、誤魔化させていただきます」
この6人が重要になる
それぞれ味があったのでは?
(C)2018 映画「3D彼女 リアルガール」製作委員会 (C)那波マオ/講談社
恋のハードルについて
カエル「じゃあ、もっと詳しく恋のハードルについて語っていこうか」
亀「少し濁している部分はあるものの、徐々にそのハードルが高くなっていくわけじゃな。
オタク男子だからこその次元の壁、つまりマイナスの強い自意識の壁じゃ。
いまの若い子はよく知らんが、オタクであるということは気持ち悪いこと、バットステータスという考え方も根強い。
それを打破することからまず第1段階は始まる」
カエル「確かに”自分なんかがモテるわけがない”という意識にとらわれていたら、恋なんてできるはずもないよねぇ」
亀「そのハードルを打破した次に生まれるのが、スクールカーストの壁じゃな。
黒板に生態系ピラミッドがあったが、スクールカーストは学校内では大きな問題であり、最上位の子とオタクが付き合うというのは実際に難しい。その壁を乗り越えた先に、友人を手に入れてスクールカーストが崩壊し、彼らのグループはとても居心地がいいグループとなる」
カエル「そして生まれるのが友人たちの壁かぁ」
亀「言ってしまえば三角関係……いや、三角なんて単純なものではないが、男女のグループが出来上がれば必然的に生まれてしまう壁じゃな。
そしてそれを乗り越えた先に究極の試練が待っておるわけじゃが、それはここでは濁させてもらおうかの」
恋のハードルを乗り越える弊害
ハードルを乗り越える弊害ってあるの?
弊害というよりも、このハードルを強く意識しているからこそ問題が発生してしまう
カエル「……問題?」
亀「次元の壁を演出するために序盤はより強くアニメ的な演出を繰り広げておった。
これに強く反応し、わしなどはとても面白いと思ったのじゃが、それはそれでいいとしよう。
次に生まれるスクールカーストの壁でもアニメ的な演出であったり、特徴的な演出はまだ見られたのじゃが、問題は2幕から3幕じゃな」
カエル「確かにアニメを用いたオタク描写は少なくなったかも……」
亀「そして残念なのが、3つ目の壁は多くの恋愛映画やスイーツ映画で取り扱われる壁であり、オタク男子である必要性がなくなってしまう点である。
そこでもあるキャラクターに恋の告白をさせることによって意外性を出しておるが、それも唐突感があり微妙なことになってしまっておる」
カエル「あれって本気だったのか、それともある子の恋の代弁をしていたのかよくわからなかったんだよねぇ」
亀「結局、本作の面白かった部分を失ってしまい、勢いがなくなってしまった。
そのまま……これも演出や構成からは納得ができるのであるが、若干展開が無理やりな4幕に入ることによって、本作はかなり疑問視する流れになってしまったの」
全体の構成について
あの展開って予想していたの?
むしろ、あのような展開にならないとおかしいじゃろ
カエル「え? そこまで言い切る?」
亀「前半にあれだけ無理やりテンションを上げるようにコメディやオタク描写を繰り返しておったことを考えても、後半にあの展開を持ってくることで一気に落とす算段があったというのはわかる。
あえて前半を派手に演出することによって、後半をさらに感動的なものにできると踏んでいたのじゃろう。
実際、その通りだとも思う」
カエル「……でも、そこまで高い評価はしていないんだよね?」
亀「まあ、後半になればなるほど雑すぎたかの。
前半である程度伏線を張ったり、それを窺いしれるようにしてはおるものの、やはり唐突な感は免れんし、さらにはふわふわしておったじゃろう」
カエル「予告にもあるけれど、あのハロウィンのダンスはなんだったんだろ?」
亀「それこそハロウィンの意味を考えればわかるじゃろ。
ハロウィンとはあの世とこの世をつなぐお祭りじゃ。そこであれだけ幻想的に踊るということは、あれはある種の儀式であり、一言で語れば葬式じゃな。
だからこそ、あれだけふわふわして、ある種幻想的な物語にしておった」
カエル「あ〜なるほど、だからラストはああいう展開になったんだ」
亀「ある種の復活を描いておるからの。
本作は演出に関してはそれなりに工夫されており、エンタメとしてしっかりと面白くなるようになっておるが、残念ながら1つ1つの描写がいまいち甘い上に、後半がファンタジー色があまりに強くなりゴチャゴチャになっておる。
そこをしっかりとしてくれれれば、とても面白い作品に仕上がったかもしれんの」
ハロウィン描写も嫌いではないものの、唐突感はあるのかな?
(C)2018 映画「3D彼女 リアルガール」製作委員会 (C)那波マオ/講談社
本作の疑問点
カエル「あと、うちとしてはこれは語るべきなんだよね。
なんというか、2次元を好きな気持ちをある程度否定されてしまったような印象もあって……
いや、わかるんだけれどね。
わかるんだけれど、なんだかなぁという気持ちもあって」
亀「もちろん2次元のアニメキャラクターよりも3次元の現実の恋の方が大事なのは当然じゃろう。そこは3次元(現実)をしっかりと見つめて、生活していくことが大事になる。
しかし、その描き方が2次元を否定、あるいは決別を果たして3次元に向かうというものに見えてしまったのが、モヤモヤするかの」
カエル「最近ずっと語っている気がするけれど、映画だって虚構であって、嘘の物語なんだよね。でもそれを好きな気持ちと現実の恋愛をする気持ちって両立している人だてたくさんいるじゃない?
なんでアニメは卒業しなくちゃいけないんだろうね?
本作のアニメ描写をアイドルとか、映画とかにしても同じような演出にするのかな?」
亀「差別や偏見とまでは言わん。確かにアニメキャラクターよりも現実の方が大事であり、終盤に語ったことはよくわかったし、あの演出も痺れた部分もある。
しかし、2次元を愛しながら現実も愛するという選択肢は果たして不可能なのか?
そこは二者択一で選ばなければいけないものなのか、という疑問はどうしても残るの」
まとめ
では、本作のまとめです!
- 前半はいいものの、後半になる連れて失速気味……
- 恋のハードルなどの構成などは練られているものの、持ち味を失ったか?
- 役者陣は概ね良かったため、今後に期待!
演出はとても好きだったし、アニメ描写に見所があったので良作だとは思うがの
カエル「今週はプーさんもそうだけれど、アニメと実写が交わった演出が目につく週なのかな?」
亀「映像演出の手法がそれだけ多様化しているということじゃろうな。映画のアニメ化が進んでおるが、邦画もその道を辿っておるの。
わしはこの手の演出は好きじゃから、結構歓迎しておるがの」
カエル「好みは分かれそうだけれど、新しい手法にどんどん挑戦して映画業界を盛り上げてもらいたいね!」