亀爺(以下亀)
「それでは、年末恒例になるであろう企画のスタートじゃな」
ブログ主(以下主)
「これより、物語る亀で賞
2017年年間映画ランキングの発表です!!」
カエルくん(以下カエル)
「この賞は2017年に公開された新作映画の順位をランキング形式で発表していきます。
今年は洋画を中心に話題になった作品が多かったものの、2016年と比べると盛り上がりは後一歩足りなかった印象もあります。まあ、昨年が異常だったのですが」
亀「2017年に劇場で鑑賞した作品は208作品であり、DVD鑑賞を含めれば220作品くらいになるかの。
その中で記事にしたのは……ほぼ2/3というところじゃろうか」
カエル「まずはルールの発表です。
① 2016年10月1日から2017年12月29日までに劇場公開をされた作品が対象
② 2016年にノミネートした作品は除外
③ リバイバル上映は除外。国内初上映は制作年がいつのものでも対象
となっています」
主「簡単に言えば『2017年に公開された新作映画が対象』ということです。2016年の10月からの作品も含めたのは、小規模公開映画などは鑑賞する機会が少なく、年をまたいでしまう可能性があるからです。
なお、当ブログでは毎月ランキングをつけていますが、その中でも対象は公開3ヶ月以内のため、それに倣った形です」
カエル「ですが、一応対象ではありますが記事の後半に『特別賞』として大体の順位とともに発表していきます。
なので、基本的には2017年の新作映画のみのランキングになります」
亀「ちなみに劇場で鑑賞した作品は月間ランキングにてご確認してほしいの。さすがに多すぎるので、全て羅列することはできん。
あと、このブログはアニメが多めであるが洋画、邦画、ドキュメンタリー、アジア映画なども問わずに鑑賞しておるので、一風変わったランキングにもなっておる。
そこも楽しんでほしいの」
カエル「それから、12月度のノミネート作品は後ほど12月の月間ランキングを発表します。おそらくここに来て年間ランキングは変わらないと思いますが、場合によっては変更の可能性もあることをご了承ください」
主「では、2017年の映画ランキングTOP30を発表していきます!」
30位から21位まで
第30位
タレンタイム〜優しい歌〜
第29位
私はダニエル・ブレイク
第28位
東京喰種〜トーキョーグール〜
第27位
キングコング 髑髏島の巨神
第26位
きみの声を届けたい
第25位
メッセージ
第24位
劇場版Fate stay night Heven's Feel 第1章
第23位
3月のライオン(前後編)
第22位
KUBO クボ二本の弦の秘密
第21位
かいけつゾロリ ZZの秘密
21位までを振り返って
カエル「というわけで21位まで発表したけれど……多分1番不満が噴出しそうなのはメッセージの低さでしょうね」
亀「そこに関しては後述する。ランキング全体を見て貰えば納得してもらえると思っておる。ちなみに、これでも相当削った方で……『あれもこれも入れたいなぁ』となっていたからの。
かなり絞るのが大変じゃった」
カエル「上半期ランキングだと5位だったキングコングはだいぶ評価を落としたね」
亀「やはり時間が過ぎると、色々と印象も変わるものじゃな。特にキングコングは最後の興奮で高く評価をしたが、時間が過ぎて冷めていった部分もある。
それからFateは第1章ということで、これでもマイナス評価をしておる。それで22位じゃから、さすがのクオリティだったということじゃな」
カエル「小規模やアニメがポンポン入ってくるのが、このブログの特徴になるのかなぁ……
ちなみに『30位ってことは微妙かな?』と思う方もいるでしょうが、全体の上位15%に該当するので、評価はかなり高いです。
何せ分母が多いので……」
亀「では続けて発表していこう」
20位から11位まで
20位
打ち上げ花火、横から見るか? 下から見るか?
2017年最も賛否が荒れた作品でしょうが、個人的には絶賛です!
やはり上位1割の中には入れたかったので、この順位にしました。
第19位
わさび
30分しかない短編映画ですが、芳根京子の魅力が詰まった傑作!
見る機会は少ないかもしれないけれど、ぜひとも鑑賞してほしい……彼女の未来に対する諦念にすごく感情移入しました
第18位
コクソン
個人的には趣味ではないものの、本作はやはり高く評価されるべき作品でしょう。
何が正解で何が不正解か、これは映画でないとできない世界観を構築していたのではないでしょうか。
第17位
劇場版ソードアート・オンライン-オディナル・スケール-
隠れた大ヒット作品。
ファン向け作品ではありますが、それにしてもこの作品の世間評価は低いように感じています。神田沙也加の歌や梶浦由記の音楽と映像の融合などの映画としての快感性は非常に高く、オタク向け映画の枠組みを超えていると思っています。
第16位
三度目の殺人
こちらも賛否が別れましたが、是枝裕和の描いていてきた『家族』というテーマの裏を顔を暴いた1作。そして役者陣の好演と、演出も攻めており中々面白い1作に仕上がっていたのではないでしょうか?
第15位
真白の恋
小規模公開の傑作。
とある事情で『普通』になれない女の子の、普通の恋愛を美しい富山県の風景と共に描き出した作品。愛のこもった脚本や、美しい音楽などがこの恋を盛り立てる。
主題歌も入ったサントラCDを購入してしまったくらい、お気に入りの作品です。
第14位
勝手にふるえてろ
年末に現れたダークホース!
今作が出てきたからゾロリはTOP20を外れてしまった……という話は置いておいて、松岡美優の快演と痛い女子の恋愛劇は、隠の気質を抱えた多くの方に響いたのではないでしょうか?
今年様々なミュージカル映画が生まれましたが、本作も決して負けてません!
第13位
劇場版 響け! ユーフォニアム 届けたいメロディ
テレビアニメの総集編……かと思いきや、思い切った構成によって全く違う新しい物語として生まれ変わった作品。
京都アニメーションの圧倒的な映像美を音楽、そして魅力的なキャラクターによって織り成すリアルな青春劇に胸を撃ち抜かれた人も多数いるでしょう。総集編なので若干減点はしていますが、それでもこの順位を獲得するほどの傑作です。
第12位
マンチェスター・バイ・ザ・シー
自分でも嘘だ! と思わず叫んでしまった、惜しくもベスト10入りを逃した作品。すっごくいい作品ですが、上位と被ってくるので泣く泣くTOP10圏外に……
それでも本作が残した衝撃はとても強く、上半期4位に選んだだけあってお気に入りの1作です。
ケイシー・アフレックの名演技とこの静かな世界をぜひ楽しんでください!
第11位
SING
今年を代表するアニメ映画でしょう。吹き替えも字幕も両方とも音楽的に優れている作品であり、アニメーションの持つ快感性が十分発揮されています。また、それぞれのキャラクターが人種を暗喩していたり、個性豊かで見ていて面白くて万人が楽しめる作品でしょう。
作品の粗も指摘されていますが、そこも含めてイルミネーションらしいエンタメ性に満ちた映画になっているのではないでしょうか?
ここまでを振り返って
カエル「はい、ではここまで振りかえってみると、小規模と大規模映画、また洋画と邦画、アニメのバランス良く配置できているんじゃないかな?
アニメ映画が多いのはうちの特徴なので」
亀「ここまで観てもわかるように、荒々しい映画であったり、バイオレンス要素の強い作品はランクインしてこないの。
どちらかというと優しい映画が多い傾向にあるのかもしれん」
カエル「映画に何を望んでいるのか、ということでもあるけれど……でも、観た人が少ないであろうわさびはともかくとして、このTOP20の作品は……賛否分かれた打ち上げ花火を除いて評価する人も多い作品なんじゃないかな?」
亀「その打ち上げ花火だってTOP10に入れている人はちらほらおるからの。アニメが好きな層にはダイレクトに引っかかるが、普段アニメを観ない層に受けが悪かったということもできるかもしれん」
カエル「では、ここからはいよいよTOP10の発表です!
ここから先が……なかなかカオスになってくるので、ぜひ楽しんでいってください!」
10位から6位まで
第10位
人生フルーツ
カエル「このランキングで初めてドキュメンタリー映画が出てきたね。
本作は1月2日に公開されていて、結婚60年を超える津端夫妻に迫ったドキュメンタリーとなっています」
亀「変な話じゃが、今回のランキングをつけるときに1番最初に決まったのが『人生フルーツは10位』ということである。というのも、ドキュメンタリーということもあって、他の映画と比較が難しい。
ただ、この映画が持つ力というのは疑いようがなく、TOP10に入れたかったからこそ、最初に10位と決めてしまった作品じゃな」
カエル「現代において『結婚』というのは多くの世代に重要なテーマになっているけれど……なんていうか、初めて映画を見て『あ、結婚っていいなぁ』と思った映画かもしれないかな。
他にも奥様の英子さんが作る料理が非常に美味しそうだったり、料理映画としても楽しめます」
亀「人が生きるとはどういうことなのか、ということを考えさせられるの。
ドキュメンタリーでありながらドラマ性もあり、多くの人にオススメしたい1作じゃな。特にお正月に鑑賞するのがいいかもしれんの」
第9位
ラ・ラ・ランド
カエル「やっぱりこの映画は TOP10に入るよね」
亀「もちろん作品としても面白いのじゃが、今年の主役を1作選べてと言われたらわしはこの映画を推す。
賛否はあれども多くの人に話題を振りまき、その夢の世界へと誘った功績は非常に大きい。そして音楽とダンスもさることながら、演出面も凝っており、スタートのハイウェイのシーンは心震えた人も多いのではないか?
この作品は『TOP10になくてはいけない映画』としてこの順位に入れておる」
カエル「好き、嫌いを超えた評価だよね」
亀「色々と記事では語ったが……今でもサントラを聴いているほどお気に入りの音楽たちでもある。誰が見ても損はしない作品に仕上がっているじゃろうな」
第8位
夜明け告げるルーのうた
亀「そして湯浅政明の最新作じゃの。5月度のランキングではTOPを獲得しておったが、この順位に決まったの」
カエル「実はSING、ララランド、ルーはほぼ同列の評価です。間に元々10位に決まっていた人生フルーツが入ってきた形になったけれど……その中でも本作が上に来たのはなぜ?」
亀「単純に1番感動したのが本作じゃからな。
興行的には苦しい思いもしたが、世界的に高い評価を得た作品となっておる。そして何よりも『優しすぎるくらい優しい物語』を提示したことが琴線に触れたということじゃな」
カエル「もう、初見の時から涙が溢れてきたもんね……」
亀「アニメーション表現としても今の日本の最先端を行っておるし、子供も楽しめる作品に仕上がっておる。
またなぜ人魚なのか? という暗喩も含めてアニメーションならではの映像の力を見せつけておった。
湯浅政明の今後の作品への期待も込めて、この順位をつけさせてもらったの」
第7位
ブレードランナー 2049
カエル「そしてヴィルヌーヴがまた登場!」
亀「本作は驚きに満ちた作品に仕上がっておる。まず、誰もが不可能と思われたブレードランナーの世界を完全に踏襲しながらも、さらに未来にアップデートしておる。そしてその映像すらも現代的になりながらも、決してチープになることがない。
それでいながらヴィルヌーヴの作家性も込められており……まさしく驚愕の1作じゃった」
カエル「紡がれる物語がまた切なくてね……Kの過酷な運命だったり、ジョイの健気な姿にときめく人も多かったんじゃないかな?」
亀「そして1作目も思い出させてくれる演出も多々あり、あるシーンでは思わず息を飲んでしまった。これだけ熱く、カルトなファンの多い作品の続編なんて誰もが文句を言うと思っておったら、それを作品で黙らせてしまったからの。
少し長いところなど、難がまったくないわけではないじゃろうが……是非とも今年オススメしたい作品になっておるの」
第6位
ギフテッド
カエル「11月に大絶賛した作品がここで登場です!」
亀「なんといってもマッケンナ・グレイスの魅力にやられてしまったというところかの。
子役でありながらも、子供らしくない大人びた面も見せてくる。しかし、やはりその芯は子供らしさを感じさせるという見事なバランスの上に成り立った演技が見事じゃった。
もちろん脚本も素晴らしい。
ギフテッド……つまり天才に対して、どのような教育をするべきなのか? ということをしっかりと考えた上で、詰め込み教育とゆとり教育の両方を提示した上で、観客にどちらが大切だと思うか投げかけておる」
カエル「その才能を伸ばすことが大事なのか、それとも普通に育てるのが大事なのか……自分の子供が天才だったら、色々やらせちゃうのはわかる話だよね。息子がイチローだったら、娘が浅田真央だったら、本人の希望関係なく野球やスケートをさせる人って多いんじゃないかな?」
亀「そう言ったテーマを獲得しながらも夕日のシーンなどに代表されるように美しく情緒的であり、細かい演出が目を引いたの」
TOP5の発表!
第5位
パーフェクト・レボリューション
カエル「ここで公開当初に『今年1番!』とまで言い切った作品が登場だね。結果的には5位だけれど、かなり高い評価をしました。
あらすじとしては、脳性麻痺を抱える身体障害者と精神疾患を抱える患者の恋愛映画であり、リリー・フランキーが主演を演じています」
主「じゃあ、ここからは自分で説明しますか。
現代において恋愛の壁はなくなってきている。地域による差別はほぼなくなり、身分の差も恋愛の障害にはならない。同性愛もOKな風潮になっている。
そんな中で、誰もが恋愛の障害と認めているのに表現されてこないもの……それが身体障害であり、知能障害であり、精神疾患である。
そして、健常者はそういった人々に対して、悪意なき偏見を抱いている」
カエル「実際、自分の子供が結婚相手に障害を抱える人を連れてきたとしたら、それ以外は社会的にも肉体的にも健康で文句のない相手でも反対する人って……実は結構多いんじゃないかな?」
主「そういった悪意なき偏見が暴走し、排除に走った例が相模原の事件だ。
我々は偏見を抱いて生きている。
脳性麻痺の患者は口調がおかしかったり、頭の回転が鈍いという、根拠のない『当たり前』が満ちている。
でも、それは1人1人状況や環境が違うし、症状も違うということも描いている。
そして障害を抱えていても恋愛もするし、性欲もあるという、ごく当たり前のことを当たり前に描いた。全く逃げることなくね。
この作品は全ての恋愛映画にパーフェクトなレボリューションを起こしました。
すごく社会的な意義のあった作品でした」
第4位
光(河瀬直美監督)
カエル「そして河瀬直美監督の『光』がここで登場です。
視覚障害を抱える方向けの映画の音声ガイドを製作している女性と、視覚が徐々に弱くなっていくカメラマンの交流を描いた作品ですね」
主「生まれて初めて映画を見ていて『目を瞑りたい』って思った。
音声ガイドを製作する人について全く考えたこともないし、多分健常者の人の大多数は利用したこともないと思う。だけれど、映画館に行けば大きなところではバリアフリーに対応している場所も結構あって、最近は字幕付上映なども徐々に増えてきてはいる。
その音声ガイドを作る人たちはどのような苦悩を抱いているのだろうか?」
カエル「難しいよねぇ……それが公式の設定になってしまうという恐怖もあるし、極端なことを言えば言葉にできないから映画にしているのに、その映像を言葉にするというのは無茶ぶりかもしれない。
だけれど、じゃあ視覚障害を抱えていたら映画を見る資格はないのだろうか? と問われると、それこそ変な話だし……」
主「自分が信じる究極の表現って、目の見えない人に伝わる絵や小説、耳の聴こえない人に伝わる音楽などだと思う。誰もその表現から排除しないこと。
聴覚障害を抱える人でも音楽を聴きます。
視覚障害を抱える人でも映画を観ます。
そんなごく当たり前のことに向き合って、誠意を持って作り上げた作品だね。
それと、永瀬正敏の演技を絶賛します!
視覚障害の演技というと目を閉じて明らかに見えてませんよ〜演技も多いけれど、永瀬正敏は弱視の演技が『本当に見えていないんじゃないか?』と思わせるもので……しかもプロのカメラマンが弱視になる苦悩をしっかりと演じきった。
脚本、演技、演出、メッセージ性などにも優れた1作でしょう!」
第3位
僕と世界の方程式
カエル「部門賞では脚本賞を受賞した作品がここで登場して、上半期と同じく3位のままで年間ランキングも駆け抜けました。1月公開の映画がここまで評価されているのも、すごい話だよね。
あらすじとしては、自閉症を抱える少年が天才的な数学の才能に恵まれて、台湾で行われる数学オリンピックに出向く……という話だけれど」
主「圧倒的な完成度が心を打ちました。はっきり言えば、1、2位の作品よりも完成度で上でしょう。今年NO,1だと思います。
今作はギフテッド、パーフェクトレボリューション、光の抱える要素を全て足して、そしてうまく過不足なくまとめた作品です」
カエル「今作は恋愛映画でもあり、親子の映画でもあり、師と弟子の継承の映画でもあり、障害や病気の映画でもあり、音楽映画でもあり、国際的な映画でもあって……でも、その全ての要素が数学を通じて表現されているね」
主「今年も自閉症=天才という設定の映画がいくつも散見された。でもさ、それで負けてしまった人はどうなるの?
『自閉症は天才だ!』という意識が、その子を追い詰める事だってある。そこで負けてしまったら、それこそ人生を否定されているようなものかもしれない。
才能よりも、結果よりも大切な事はもっとたくさんある。
そして彼が愛する数学がどこにでもあるように、世界はもっと寛容で受け入れてくれるものなんだよ。
願いと祈りに満ちたこの映画を、自分は高く評価します」
第2位
ノーゲームノーライフ・ゼロ
カエル「ここで登場! ダークホースアニメ映画だったノーゲームノーライフゼロが年間2位を獲得しました!
原作やテレビアニメの前日譚となる作品で、ゲームで全てに決着をつけるという世界がなぜ生まれたのか? ということを描いた作品です。
映画好きに簡単に説明すると『ローグワン』+『ブレードランナー2049』ですね」
主「社会性だ、メッセージ性だということを抜きにして『じゃあお前が1番エンタメとして面白かった映画はどれなんだよ!』と言われたら、自分は本作をあげます。
オタク映画でファン映画です。
初見に優しいとは全く言えないし、設定が理解できなかったり、特に女性キャラがオタク受けするように演出されているように見えて、嫌悪感がある人もいるかもしれません。
典型的ラノベアニメであり、萌えアニメであり、アニメが苦手という人が1番ダメなタイプの映画かもしれません」
カエル「……そこまで言うのに2位なの?」
主「……自分は初見時、テレビアニメも原作も全く知らなかった。
『どうせオタクアニメなんでしょ?』と思いながら……若干下に見ながら見に行った部分もある。アニメ映画だから行きましたよ〜ぐらいな気持ちだった。
そしてこの作品で3回鳥肌が立ちました。
1作の映画で3回鳥肌がたったのは今年最多。その次の日にすぐ映画館に向かい、また鳥肌が立ち、結果的に3回鑑賞した。
今年は3回同じ映画を見たのはこの作品だけです」
カエル「ファンの人以外はあまり観ないというのもあるだろうけれど、評価もすごくいいよね。Yahoo!映画だと4,5 映画ドットコムで4,4 フィルマークスで3,9だったかな?
映画館でエンドロール中に誰も席を立たないのが3回中3回というのも異例だったね」
主「説明台詞をある程度排除したのも英断だったし、映像クオリティも高く、しかも主題歌までこの作品に寄り添うようにかなり工夫されている。
そしてエンドロールの最後の最後まで観客を楽しませるために、本当に工夫に満ちていて……絶対にエンドロールの最後まで見てください!
キャストも名演技揃い、特にヒロインのシュヴィはブレードランナーのジョイと匹敵するくらい印象に残っています!
もっと評価されていい大傑作だと思うので、ぜひご観賞を!」
第1位
静かなる叫び
カエル「カナダでは2009年公開であり『メッセージ』のヴィルヌーブの作品が上半期と同じく1位だね。
本作はカナダで実際に起きた銃乱射事件を扱った映画で、全編白黒、時間も77分と非常に短いのが特徴だけれど……」
主「上半期からずっと深く印象に残っている。
なぜヴィルヌーヴの映画が素晴らしいのか? という疑問に対しては、本作を観て貰えばわかるよ。
これだけ制限された表現手段の中で、圧倒的な映像美を生み出せる実力があるからこそ、あれだけの名作群が生まれている。
カエル「本作の魅力を簡単に話すとどういうことになるの?」
主「何度か説明しているけれど、映画の歴史って情報量を増す進歩の歴史なんだよ。
どういうことかというと……映画はサイレント時代から構図などで勝負してきた。そして音が入ってトーキーになり、色がついて、今ではCGを多用したりして、豪華で派手な情報量が多い映画がたくさん生まれている。
だけれど、ヴィルヌーヴはこの現代において全く逆のことをしたんだ。つまり、引き算の演出にでセリフも極力カットして、音楽も少なく、銃を撃つシーンはあるけれど抑制されていて、爆発やCGなどもない。そして果てには色を失わせ、尺も必要最低限のものにした。
その結果何が生まれたのか?
それは人間の持つ本来の美や尊厳であり、それを奪っていく恐ろしさであり、そして男と女の性の業であり、ひいてはそれが物語となる。
これは映画表現の1つの究極の形なんじゃないかな?」
カエル「そこまで言い切るんだ」
主「なぜ映画を見るんですか? と尋ねられたら、自分はこの映画に全ての答えがあるといえる。
映画って……表現って情報のコントロールなんだよ。そしてそのコントロールとは足し算だけのものではない。引き算でもコントロールできるし、むしろ足し算よりも引き算の方が大切だろう。
他の大作映画が派手であればあるほど、豪華に、楽しくあればあるほど、本作の異様な完成度が光り輝く……そんな映画だよ」
特別賞
無垢の祈り
カエル「最後に2016年公開ながらもソフト化もされていないために鑑賞が2017年になってしまった中から、どうしても入れておきた1作を紹介します。
それがこの『無垢の祈り』で……映倫を通さずに公開されたR18の映画となっています」
主「最初にこの映画の話題を聞いた時は『映倫が認めなかったR18の映画って相当グログロなんだろうな』と思っていたら……もちろん、グロテスクな描写もあるけれど、それ以上に強く引き込まれた映画だった。
世界的にも児童に対する虐待の描写……特に性的虐待は描けないから映倫は許可をしなかったし、自主的な上映になってしまったけれど、でもとてつもない願いと祈りに溢れた名作です。また演技のタイプが全く違いますが、主演の福田美姫はマッケンナグレースにも全く劣っていません。
このランキングだったら……5位相当かなぁ。
ちょっと趣旨と外れるので特別賞として名前をあげさせていただきました」
総評
カエル「というわけで、上半期と同じようにヴィルヌーブの2009年の作品が1位に輝きました!」
主「なんで『メッセージ』が少し伸び悩んだのか? と聞かれたら、これが理由です。他の人たちがハードル走を飛んでいる中で、ヴィルヌーヴだけは棒高跳びのハードルを用意されているようなものだから。
その滅茶苦茶高いハードルでも、簡単に飛び越えてしまうのがヴィルヌーヴであって、それはブレードランナー2049でも余裕で飛び越えているから。本当に偉大な映画監督です」
カエル「戦う相手が1位の作品だからね。
TOP30では実写の洋画が9本、実写邦画が9本、アジア映画が2本、アニメ映画が10本となっていて、バランスは取れているんじゃないですかね?」
主「上位が小規模やマイナーな映画が続いたのはちょっとあれかもしれないけれど……でも、今年はいうほど邦画やアニメが不作な年だとは全く思っていないです。確かに大作はそこまで……という位気持ちもあるけれど、小規模公開に目を向けると傑作が次々生まれている。
ただ、それらの傑作や注目作が日の目を浴びなかっただけです!」
カエル「あと、話題になった洋画はこのランキングには中々入ってきていないのかなぁ?」
主「ヒーロー映画やアクションがそこまでハマらなかったのかもね。だからこそ、このようなランキングになったのかも。
あー……やっぱりTOP30でも語り足りない! TOP50くらいにすればよかったかなぁ?」
カエル「見る方が大変だよ、それ……」
主「いっその事、220位まで決めちゃおうかなぁ」
カエル「……いや、ランキングつくるのに何日かかるのさ?
まあ、好きにしたらいいんじゃない?」