物語る亀

ネタバレありの物語批評

映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』感想と解説、批評 静かに染み入る余韻の多い作品

ブログ主(以下主)

「なんだか、久々に新作映画レビューを書く気がする……」

 

亀爺(以下亀)

「先週は結局新作映画をみにいかなかったからの」

 

主「この時期って色々と忙しいからね。歓送迎会だ、呑み会だ、映画会だって年度始めを迎えた上に連休前後だから、結構この手のイベントが目白押しの季節でもあるし」

亀「……呑んでばっかじゃの」

主「あんまり呑み会って好きじゃないんだけどねぇ。そんな時間があるなら映画を見て、そして語っていたいよ」

亀「唐突な最近の若者らしさをアピールしておるの。それで『自分は若者だよ!』と喧伝しておるのか? 若さをアピールし始めたらもう若くないぞ。

 ましてや、さだまさしやチャップリン、ビリーワイルダーなどが大好き、というだけでなんとなく察するものもあるがの……」

 

主「人生って色々あるんだよ。女の子がウルトラマンが好きだったり、男が口紅などをつけることだってありうる。固定概念はよくないよ! さだまさしのコンサートに行く中高生だっているんだから!」

亀「……なんとなくライブをコンサートと呼んでいる段階で一昔前のような印象があるのはわしだけかの?

 駄話はここまでじゃ。今回は語ることが多いのじゃから、感想記事に入るとするかの」

 

 

 

 

マンチェスター・バイ・ザ・シー

 

1 ネタバレなしの感想

 

亀「本作は『ムーンライト』『ラ・ラ・ランド』などと同じようにアカデミー賞作品賞候補となっており、脚本賞と主演のケイシー・アフレックが主演男優賞に輝いておる」

主「ということは一定のクオリティは保証されているわけだ。当たるか外れるかわからない作品が多い中、これは安心して観ることができて嬉しいなぁ。

 アカデミー作品賞候補作品は来週『メッセージ』があって、夏に『ハクソーリッジ』があるけれど、できれば全作品劇場で上映してほしい。本作も比較的小規模公開になってしまっているけれど、劇場はいっぱいだったよ」

亀「もったいない話ではあるの。これほどの作品が全国で30館も上映しておらんはずじゃからの」

 

主「2番館とかもこれから増えていくんだろうけれどね。

 で、そんな話は置いておいて……とりあえずざっくりと感想を語ると『人生に対して誠実に向き合った映画』という印象を受けた。多分、これってこの映画を見た人の多くが受ける印象だと思うんだよ。

 映画なんだけど、いい意味で物語らしさがない

亀「生きていること、実はそれだけで人生には大事件が訪れる。そしてその事件は誰の元にも訪れる可能性がある。

 それに対して映画や物語のようにスーパーヒーローが現れて解決してくれることはないし、トラブルや事件、過失、過去……そういったものを受け入れてそれでも生きるしかない、ということを描いた映画じゃな」

 

主「すごく簡単に言うと『男2人の共存のお話』なんだよ。なんなら、主人公の兄を含めて男3人と言ってもいいかもしれない。出てくる人たちもみんな普通の人たちで、しかも結構いい人たち。だけど自分の人生を歩むのに精一杯だから物語のように颯爽と助けてくれるわけではない。

 そして主人公たちにも日常があって、どのように生きるか選ばなければいけない時が訪れる、という作品かな

 

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今回名演が光るケイシー・アフレック

(C)2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

 

語られざる思い

 

亀「この作品で主演男優賞に輝いたケイシー・アフレックについて触れておこうかの」

主「なぜこの映画の演技が評価されたのか? それはこの映画を見て貰えば一発でわかる。

 今回のケイシー・アフレックの演技は素晴らしい!

 すっごく大雑把に言うけれど、映画って2種類あるんだよ。今回のアカデミー作品賞候補でいうと『ラ・ラ・ランド』とか、まだ見ていないけれど予告の雰囲気とかを見ると『ハクソーリッジ』のような爆発や派手なエンタメ要素で魅せるタイプと『ムーンライト』のように静かな演出などで合間合間を想像させる作品。

 で、今作は後者なの。つまりわかりやすいお話ではない。だけど、この映画が評価されることはとても素晴らしいことだし……ある意味では観客を試すような映画とも言えるかもしれない

 

亀「もちろん、どちらがより優れているとか、この映画がわからないと見る目がない、などという話ではないというのはハッキリと伝えておこうかの。趣味の問題もあるし、相性もあるからの」

主「例えば『ラ・ラ・ランド』などのエンタメ作品って見終わった後の感想が『楽しい!』とか『悲しい!』とかって単純化できると思う。まあ『ラ・ラ・ランド』ってそんな単純なお話でもないからちょっと例えが悪いかな?

 だけど、本作や『ムーンライト』は受け手、観客の受け止め方にすごく委ねてくる。なぜ彼はこのような行動をしたのか? この時の心情は?

 そんなこと、いちいち説明しないし語ってくれない。

 その行間にある演出意図や演技の思いを汲み取ることによって、この作品はさらに輝く

 

亀「つまり『観客に委ねる映画』であり、それが観客を試す、という意味じゃの」

主「そう。多分、この映画の解釈って色々あると思う。これから自分の解釈を書いていくけれど、それに反発を覚えるかもしれない。

 その『間』がこの映画はトンデモナイ!

 ムーンライトもあえて語らない、間の多い映画だったけれど、本作もそれは同じかもしれない。ただ、ムーンライトは結構計算して間を空けている印象もあるけれど、本作はさりげなく間をもたせているからね。

 自分は本作の『語らなさ』『間』の方が好みかな」

亀「本作のケイシー・アフレックをはじめとした役者陣の演技、そして演出、脚本にはその『想像させる間』があったということじゃの。その意味では助演男優賞を獲得したムーンライトのマハーシャラ・アリと理由は同じかもしれん」

 

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

2 スタートから語りかける

 

亀「ではここからは作中に言及しながら語っていくとするかの」

主「自分はスタートの画が素晴らしいと思った! ここだけでこの映画がトンデモナイということがはっきりとわかった。

 まずはマンチェスターの街と海をしっかりと映すんだよ。そして賛美歌が流れながら、船に乗る少年と男が出てくる。この時点ではこの2人が何者かは語られてなくて、ただ釣りをしているわけだ。

 そしてその船の名前が……英語が苦手だから間違っていたら申し訳ないけれど『グロロリアス・マリーン号』なわけ。

 まずこのカットだけで自分は一気にハマった。

 この映画のすべてがこのシーンにある

 

亀「典型的なモチーフに溢れていながらも、実は何よりも雄弁に語る演出ということじゃな」

主「そうだね。解説をすると、まずマンチェスターの街、しかも少し淀んだ街並というのは『この街が舞台である』というのと同時に『そこまで美しくもない過去』という意味を持っている。

 この街が舞台として重要な意味を持っているんだけど、雪景色の中で美しい街並みではない、というのはすごく重要なんだ。

 そして海を渡る1隻の船と、2人の男と『グロリアス・マリーン号』

 これはどういうことかというと、そのまま『人生』を言い表している」

 

亀「『人生の荒波を乗り越えていく船』というのはよくある比喩表現じゃからな。

 そしてその名前が『グロリアス・マリーン』という。直訳すると『栄光の海』となるかの。

 つまりこの映画を比喩表現で見ると『人生の荒波を渡る男2人が、栄光の人生を目指す』という物語ということができるわけじゃな」

主「おそらく彼らに目的地はないんだよ。ただその日々を楽しんで、釣りを楽しむだけ。それってどういうことかというと『人生に明確な目的地はない』ということを示している。

 これだけ上手くて拍手を送りたいスタートだよね。

 こんな暗喩が満ちている映画だよ」 

 

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2人と兄の3人の物語であることを示唆するスタート

(C)2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

 

映画としての魅力

 

主「そしてそれは暗喩だけではなくて、技術論としてもしっかりしているなぁ、と思った」

亀「まず、映画として誰に注目すべきか? という説明をするのがファーストカットの重要性じゃが、この映画は2人の男に注目をしてほしいということじゃな。この2人はもちろん、それはケイシー・アフレック演じるリーと、ルーカス・ヘッジスが演じるパトリックのことじゃ。

 映画は基本的にこの2人の関係性を持って進行しておる。それをスタートで説明しておったわけじゃな」

主「結構複雑な脚本で混乱することも多いんだけど……過去と現在を行ったりきたりするし、兄貴の家庭とリーの家庭の2つのお話をするけれど、これがどうつながるのかもよくわからなかったり。

 その意味では難しい映画でもあるんだけどね。『非日常を楽しみたい!』という観客には向かないかも」

 

亀「じゃが、このスタートは引き込まれると思うんじゃがな。

 船が重要なアイテムであることもここで説明しておったし、さらに賛美歌が流れておった。わしは賛美歌について明るくないので何の歌なのかはわからんが、賛美歌は神やキリストを讃えるとともに、人生の苦悩なども歌い上げたものじゃからな。

 本作では賛美歌が何度も流れるが、それが人生に対する応援歌にもなっておったのと同時に、賛美歌の力を借りて『日常の中の非日常の世界への誘い』にもなっておった

主「多分、日本人以上に教会に行く機会の多い西洋人の方がこの演出は効いたんじゃないかな?

 教会って『日常の中の非日常』の場なんだよ。それは映画とある意味では同じ。劇場と教会は豪華に作られている、というのとね。

 映画のスタートで大事なのは『日常を忘れること』つまり『映画の世界に没頭すること』だけど、本作もそういったスタートができていたんじゃないかな?」

 

 

 

3 リーの葛藤

 

亀「そして物語はリーの一人称視点になっていくが……」

主「この辺りは数少ない減点かなぁ……自分も見ている最中に、何が何だかわからなくなったから。

『余命10年ってこれ誰よ?』とかさ、『あの子供は誰?』『死んだの? 誰が?』とか、そういう疑問が何度も続く。アジア人の医者の先生も歳を取らないから余計にわからんよね。

 その原因は過去と未来、そして家族単位でコロコロと話が変わってしまうから。もちろん、その意味は当然あるけれど、これは観客に対して優しい脚本とは言い難い。

 やりたいことはわかるけれどね」

 

亀「しかし、今にして思うとうまい部分も多々あったの」

主「アパートの便利屋として働くリーは能力はあるけれど無愛想だということが明らかになる。じゃあ、それはなぜ? と言われると、見終わった後になら過去に問題があることがわかるわけだ。

 スタートにおいて恋愛物語が始まりそうな出会いもあるのに、それを無視してしまう。そんな気分じゃないんだよね。多分、誰であってもその心を開くことができない」

亀「あんなことがあったと知ったら当然のことじゃがな」

 

主「でも最初は何があったのかわからないから、ただの陰気なやつにしか見えない。

 最初にすごいなぁって思ったのは、やっぱり兄の死が告げられるポイントで……ここですごくぶっきらぼうに『死んだのか?』などの乱暴な言葉を使っている。

 これって葛藤があるんだよ。マンチェスターの街や過去に向き合わねばならないという苦しみと、兄が亡くなった悲しみと、そしてどうすればいいのかわからない憤り。

 それがあの乱暴な物言いに現れていた」

亀「この辺りは他の役者もうまかったの。親友はリーが立ち去った後に泣き叫んでしまうし、息子のパトリックは父の遺体を眺めてほぼ1秒もせずに帰ってしまったの」

 

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映画はこの2人の関係性が重要

(C)2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

 

パトリックの苦悩

 

主「パトリックをどう見るかっていうのがこの映画の評価を分けるポイントだと思うけれど……彼は確かに父が亡くなったその日かな? に彼女を呼び出してイチャついているわけだ。しかも友達とゲラゲラと笑い話をしている上に、二股して……って割と人間としてはそこまで褒められない行為をしている。

 だけど、それは表面上のものであって、彼もまた混乱しているわけ。だからこそなんとかして平常心の自分を見つけようと、いつもと同じような生活を送っている」

亀「これはわかる話じゃな。

 家族が亡くなった直後というのは実はそこまで悲しくないんじゃよ。まあ、ここは個人差があるがの、葬儀やこれからのことなど考えることが多い上に、しかも急すぎて実感がわかない。だからこそパトリックは父親の遺体を見て確認するわけじゃ。

 じゃが、実際にそれが現実となるとどうすればいいのかわからなくなる。だからこそ、とりあえずいつもの生活を送ろうとする」

 

主「それが爆発してしまうのがあの冷凍チキンの下りで……

 自分はあの感覚ってなんとなくわかる。人がいなくなる時って、ある瞬間にふっと思うものなんだよ。実は心臓が止まった、葬儀が終わった、だから泣く、悲しい、なんて簡単なものじゃない。

 養老孟司は父がなくなって何十年も経ったある日、電車の中で父の死を実感したんだって。そして涙が止まらなくなった。

 人生ってそういうことだと思う。喪失感というのはある日急に迎えるものであって……嵐のように訪れるものなんだ。そしてそれは予測できない。パトリックは相当早い方だと思うよ」

 

 

 

 

4 許されざる者

 

亀「これはもちろんリーの過去についてじゃな」

主「リーには実はすごく重い過去がある。それについては直接言及をしないけれど、まあ、うん……言葉にならないくらい重い過去。

 ここもまた本作の脚本と演技が圧倒的に優れた部分でもあるけれど、リーはその原因を調査している時に、実は言わなくてもいいことまで伝えているんだよ。友達と遊んでいる時の、その過去とは直接には関係な過失について告白している」

亀「じゃが、状況が状況であるし、その過失も証拠がないからの。どうしようもないということでその日は帰ることになるんじゃが……」

 

主「だけどそれに1番納得していないのがリーのわけ。

 リーは罰を与えて欲しかった。自分の過失によって起こってしまった重い出来事を誰かに問い詰めてほしかった。誰かに口汚く罵ってもらったら、まだ少しはマシな人生が送れたかもしれない。

 だけどそんなことはなかった!」

亀「……あれは周囲の判断も納得できるものであるし、しょうがない出来事ではあるが……辛かったの」

主「だから自分で自分を罰しようと思ったんだよ。そのための行動がその直後の銃を手にした場面でもあり、おそらく最初のバーの乱闘騒ぎでもある。

 リーは誰かに責められたかったし、罰して欲しかった。だけど、リーが思う以上に世間のみんなは優しくて……慰めてくれるし、庇ってくれる。兄は兄のままでいてくれるし、身近に人はいる。

 その状況が誰よりも許せなかったのがリーなんだよ。だから、あんな収容所のような部屋に暮らす」

 

亀「じゃがその生活も家具を揃えてくれるわけじゃな」

主「もう、このシーンって胸にきて……あれほどまで罰して欲しいって気持ちもわかるし、だけど誰も責められないのもわかる。立ち直って欲しいと周囲は思うけれど、自分が立ち直る資格があるのか? と思う気持ちもわかる。

 多分、配管工の仕事もリーなりの罰のつもりなんじゃないかな? だからあれだけ辛い無愛想な対応を取ってしまう。なんならオーナーがクビにしてもいい。

 だけど、そんな事情を知らないオーナーも庇ってくれるんだよね。その優しさが……リーをさらに傷つけていく

 

 

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リーの変化

 

亀「それが象徴的に変化したシーンがあるの」

主「兄の形見を整理していた時の話だけど……コレクションしていた銃を売るんだよ。そしてそのお金で船のエンジンを直すわけだ。

 ほら、冒頭に言ったでしょ? 船というのは『人生のメタファー』であると。壊れたエンジンというのはリーと、そしてパトリックの壊れてしまった思いや情熱ということでもある。

 自分はこのシーンを評価するのは、あの時に銃を欲しがって自分を罰しようとしていたリーが、パトリックと話し合って自分の人生のメタファーであるエンジンを直そうとするところなんだよね。

 つまり、この描写だけで『人生の再生、再出発の決意』という意味がある。

 この映画が高く評価されるのはこのような描写が多いからであり、派手さがない分すごく退屈に思えるけれど、自分は一瞬たりとも気が抜けなかった。ずっと頭がフル回転だよ」

 

亀「このブログはメタファーがどうのという話が好きじゃからな。

 じゃが、それを差し置いても本作は圧倒的な『巧さ』に満ちておったように思うの

 

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訪れる元夫婦の対面の時

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唐突な救いと戸惑い

 

亀「じゃが、それだけ再出発をしようとしてもやはりそう簡単にはいかないわけじゃ」

主「少し不思議なお話だなぁ、と思っていたんだよ。ここで終えればすごく明るい人生救済物語で、時間としても丁度いい。だけどそうじゃなくて、ここからがまたすごい。

 この映画の脚本のうまさでもあるんだけど、ここで向かい合う対象がかつてのリーの奥さんということになる。

 この映画はリーとパトリックの物語なのに、ポスターはリーと奥さんが向かい合ったところを使っていて……この意図が素晴らしいなぁ

 

亀「奥さんの描写もまた特徴的じゃの。あの件があって以降、そりゃ離婚するわな、ということでもあったが……」

主「さっきの『罪と罰』理論で言うと唯一罰を与えてくれたのが奥さんだったわけ。だけど、その奥さんも子供を得た瞬間に、自らの過去に立ち向かうことができた。

 リーとしてはそれはすごく難しいことで……ある意味では2人は同じ境遇の同志であり、そして対立する関係でもあった。だけど、その関係が消去されてしまったわけだ。

 これって実は辛いことだと思う。リーの存在を根底から覆してきた。リーが欲しかったのは『救い』ではなくて『罰』なんだから、唯一の罰を失ってしまったんだよね

 

亀「それと同時に奥さんの変化は『リーとの決別』ということもできるかもしれん。

 それまで向かい合っていなかったことによってなんとか成り立っていた唯一の家族であり、そして同じ境遇の仲間が、他の人と同じようにリーを赦し、励ましてきた。この瞬間に奥さんだった存在は姿を変えて、単なる他人になってしまったのかもしれん。

 だからこそ、リーはそれに戸惑うわけじゃな」

主「あのポスターの瞬間って、初めてこの夫婦が向き合った瞬間でもあるんだよね。それまでは事件前でも少し仲が良くなかった。

『夫婦が向き合った瞬間が別れの時だった』と考えると……すごく悲しいようだけど、この映画にピッタリな気もしてきてしまう」

 

 

 

5 本作が脚本賞を受賞した理由

 

主「話が急に変わるようだけど、なぜこの映画が脚本賞を受賞したのか? ということを考えたい。自分も今回アカデミー賞関連の映画は何作か観たけれど、この作品は確かに素晴らしく『うまい』映画なんだよ。

 それは今まで語ってきたようにメタファー云々もあるんだけど、それだけじゃない。そこをこれから語っていくよ」

 

亀「本作は『リーとパトリックの関係』に終始しておる、ということじゃな」

主「簡単に言うと以下のようになる。

 

リー 子を失った父親

パトリック 父を失った子

 

 そして先ほどから語っているリーの奥さんは『子を失った母親』であり、親という意味ではリーと同一の存在だ。だけど『再び子を得た母親』という存在になることによって、リーとは決別してしまうわけだ

亀「結局リーは子供を失った父親からの脱却はできないわけじゃな」

主「だけど『父を失った子供』の後継人にはなれる。

 その最後の選択はパトリックに委ねたわけだ。

 本作は『親と子供』の映画として見事に成立している」

亀「そして2人は同じ船に乗るわけじゃな

主「この意味を考えるとすごくうまいよねぇ……それから、この映画の最初と最後で語る言葉が『決めるのはあなたです』というのがすごく象徴的で……結局人生というのは自分で決めるしかない。二者択一の選択までは用意できるかもしれないけれど、結局は選ぶしかないんだよ。

 そういう暗喩やメタファーに満ちていながらも、それに終始することなく人生を描ききった。だから本作は高く評価されるんじゃないかな?」

 

 

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人生って何?(少し余談)

 

亀「では最後になるが語りたいことはあるかの?」

主「劇中で下手くそなキャッチボールがあるでしょ? あれって何かというと、それこそ『コミュニケーション』の比喩表現なんだよ。誰かの投げたボールをキャッチできる時もあれば、そうできない時もある。そもそもキャッチしようとしない時もある。

 だけどトンデモナイところに転がったボールも拾いに行けばいい。それがキャッチボールの意味なんだろうな」

 

亀「そして余談になるの」

主「この映画を見て連想したのが『3月のライオン』なんだよ

亀「今も公開しておる、羽海野チカ原作で大友啓史が監督を務めた邦画じゃの」

主「この映画のテーマって実は3月のライオンと全く一緒で、親と子の物語でもあり、そして人生の戦いの物語でもある。

 ライオンの中の名台詞で『人はこんなにも時が経った後で、嵐のように救われることがある。』ということもある。この映画が描いたことも実は同じ。

 ただ『救いが救いになるか、対象が救いを求めているか?』というのは別の問題なんだけれどね」

 

亀「人生や日常に対してもがいて、もがいて、それでも闘うしかない、というのは同じかもしれんの」

主「もちろん公開時期が近いから印象に残っているというのもあるんだけど……人生について高らかにうたっているし、救いもある、いい映画だったね」

 

 

 

最後に

 

亀「さて、今回も長めの記事になったの」

主「ぶっちゃけて言うと、この映画を鑑賞中って嫌な客と隣あって、最悪な環境だったけれど、映画は最高だった。2時間以上、眠くなることもなく鑑賞していたし」

亀「派手さはない分人は選ぶかもしれんが、じっくりと見て欲しい1作じゃの」

主「もしかしたら今回のアカデミー作品賞候補の中で1番好きかもしれない。じんわりと染みてきて、味のある映画に仕上がっていたよ。

 まあ、多分来週の『メッセージ』がこの余韻を全て超えてくるんだろうけれどね!」

亀「……本当にヴィルヌーヴ贔屓じゃの」

主「でも、こちらの映画も脚本賞なども納得の出来なので……本当に小規模公開なのが勿体無い1作なので、鑑賞してほしいな」

 

 

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マンチェスター・バイ・ザ・シー

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