では『ミッドナイト・サン タイヨウのうた』の感想を始めましょう!
今回は少しばかり短めの内容となっておるぞ
カエルくん(以下カエル)
「といっても、いつもが長すぎるだけかもしれないけれどね」
亀爺(以下亀)
「少しはコンパクトに、スマートに語ることも覚えないといかんからの」
カエル「あまり長すぎても書く側も読む側も大変なだけだからねぇ……
というわけで、早速ミッドナイト・サンの感想記事のスタートです!」
作品紹介・あらすじ
2006年に公開されたYUIが主演の映画『タイヨウのうた』のハリウッドリメイク作品。
監督はスコット・スピアーが務め、主演はベラ・ソーンがキュートに恋をする女の子を演じるほか、作中で魅力的な歌唱力も発揮する。相手役にはアーノルド・シュワルツェネッガーの息子であるパトリック・シュワルツェネッガーを起用したことでも話題に。
太陽の光に当たることができない病気『XP』を抱える少女、ケイティは学校に通うこともできず、父と共に暮らす日々を送っていた。ある日、夜の駅にギターを持って歌っているところ、窓から眺めていて惹かれていた同年代の青年、チャーリーと出会う。
昼の世界の住人であるチャーリーと、日光にあたれない少女ケイティ。2人の恋の結末は……?
感想
では、Twitterの短評からスタートです!
#ミッドナイトサン #タイヨウのうた
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年5月12日
中盤は少し退屈になりながらもラストで画面がぼやける事態に…
水漏れで服も濡れるし…
みんな可愛らしく、精一杯がんばって生きる姿に声援を送りたくなる、真っ当な恋愛映画
何より音楽がいい!
日本の原作は観てなくてもオススメしたい逸品です pic.twitter.com/5wWw6L42dl
ストレートに感動できる作品じゃったの
カエル「ちなみに原作となる日本版は全く見ないで映画館へ向かったけれど……それでも何も問題のない作品に仕上がっていました。
すっごくまっすぐで、彼女たちがとても純粋に相手のことを思い、そして愛していることが伝わって来る作品だったね」
亀「言ってしまえば王道の病気ものではあるし、お涙頂戴の物語ではある。しかし、それは逆にいえばうまく作れば効果覿面であるということでもあるの。
若干中盤は退屈なシーンもあるが、終盤は胸がぎゅっとなるシーンも非常に多い作品じゃ」
カエル「主なんかは季節外れの花粉症で目を赤くしながら『画面が歪み水漏れも発生する……それに鼻をすするようなノイズが酷い映画館だった』とブツブツ話していたから、まあ映画館に欠陥をもたらし、目が腫れてしまう映画だということでしょう。
久々にここまで真っ直ぐな恋愛映画を見たかも知れないなぁ……」
亀「本作は決して悪い人が出てこない。それぞれがそれぞれの悩みを抱えながらも、主人公であるケイティの病について向き合っていこうという物語である。
すべての人が他人を思い、他人のために行動する……その理由は愛という、普段であれば嫌悪感を催すほどのくっさいくっさい物語ではあるが、だからこそ非常に胸に響く作品になっておるの」
カエル「……いや、全部褒めているけれど、もっと素直に褒められないの?」
原作のYUIが主演でヒットしたこの映画を覚えている方も多いのでは?
監督は『ちはやふる-結び-』などの小泉徳宏!
楽曲の良さ!
カエル「タイヨウのうた自体は日本でも大ヒットして、映画もドラマも発表されているよね。
主演がYUIだったことも大きな話題を呼んで、この作品を皮切りにYUIがあの時代を象徴するアーティストへと登って行った印象もある作品だし、好きな人も多いんじゃないかな?」
亀「特に音楽が高く評価されていたの。
今作もそれは同じであり、ケイティがアコギ1本で駅で歌うシーンなども思わずiTunes Storeをすぐに開いてしまいそうになるほどの楽曲たちばかりじゃ」
Bella Thorne - Burn so Bright from the Midnight Sun Original Motion Picture Soundtrack - YouTube
カエル「やっぱり、YUIもそうだったけれど若い10代の女の子が1人でアコギを奏でながら歌っている姿って、とても胸にくるよね。
しかも、YUIの場合は社会に対して毒づくような歌もあって、可愛らしい恋愛ソングが注目を集めがちだけれど、その姿そのものが『若者の反抗!』って感じがして、惹かれていたなぁ」
亀「本作もやはり恋愛の歌がとても多いものの、そのが曲の魅力は健在じゃな。
今作の主演を務めたベラ・ソーンは若干20歳の若き才能でありながらも、女優として活躍する一方で音楽も発表しておる。まさしくYUIのような女性であると言えるじゃろう」
以下作中に言及あり
まっすぐに作られた物語
メタな視点をから観ると……
カエル「それから……ちょっとメタな視点の話をすると、元々タイヨウのうたってYUIの人生のような話でもあって、高校を体を壊して中退したYUIが音楽を必死で頑張ってデビューする姿とかぶるところがあるわけじゃない?
今作もそれは同じで、ベラソーンは公立学校をやめて自宅で勉強を重ねる少女時代を送っていて……それがこの作品と重なってくるんだよね」
亀「さらに言えば2人とも音楽で勝負をしている人間じゃからの。
この作品の病気にあたるXP(色素性乾皮症)は日光に当たると強い紫外線によって肌が癌などを起こしてしまう病気である。そのために夜に活動することを余儀なくされるわけじゃが……同時に神経障害などを引き起こす場合もある。
場合によっては脳に影響が出てしまい、知能障害なども発症してしまうという病気である。日本の作品の際はそこまで突っ込んだ描写はしなかったようじゃが
……この映画版ではそのリスクもきちんと描き、重要なテーマとなっておった」
カエル「手が震えてきたりして、楽器が弾けなくなったり歌うことが難しくなってきたり……それって歌手としては、はっきり言えばもう終わりに近いような状態じゃない?
唯一伸ばしてきた、大好きなものが奪われそうになる瞬間が、音楽でも勝負するYUIやベラソーンと被ってきて……それが余計に涙を誘うんだよね」
チャーリー役を務めるパトリック・シュワルツェネッガー
アーノルド・シュワルツェネッガーの息子です
本作の注目の演出ポイント
この作品で注目して欲しい演出ってどこなの?
圧倒的な世界の美しさと、2人の対比じゃな
亀「冒頭の話をしてしまうが、この作品ではカメラがぐっと地上から空を見上げて始まる。そこで遠くに見えている日の出を移し、タイトルが表示される。
それは日の出を連想させるし、それまで暗い夜の世界で暮らしているケイティが、明るい外の世界へと目を向ける……羽ばたこうとしているという描写にも見えてくるわけじゃな」
カエル「まさしく物語のスタートとして、とても印象に残る始まりだよね」
亀「それから、何と言っても注目してほしいのが彼女が見る世界の美しさじゃな。
この作品は基本的にはケイティが主人公であるために夜の物語である。しかし、彼氏役のチャーリー(パトリック・シュワルツェネッガー。あのシュワちゃんの息子)がとても明るい光の世界で、船を操舵する海の男でもある。
その対比構造がとても上手い上に、彼女たちが暮らす世界が全く違うことを表しており、その先の展開に対して想いを馳せること間違いなし、じゃな」
カエル「パーティに向かうシーンもオタクばかりで冴えないパーティにさえ初めて向かうケイティに対して、チャーリーは人が多い派手な(下品な)パーティに行くのも、2人が歩んできた人生の違いなどがよく分かるシーンだよね……」
亀「それから、見所としてはケイティをはじめとした登場人物の衣装もそうじゃな。
特にこのパーティドレスを着るシーンはとても美しくて、男女ともにうっとりすること間違いなし! じゃな」
カエル「でもさ、決して泣かそう、泣かそうというだけの映画じゃなくて、ギャグや笑いどころもきっちりと入れているんだよね。
親友のモルガンという女性がいるけれど、彼女も非常に美しくて、しかも色々と力にもなってくれる。モルガンとケイティのやり取りなんて、ちょっとクスってなるし女心を発揮した、ほっこりとするシーンだよね」
亀「等身大の彼女たちの友情と、愛情、そして1日を精一杯生きる姿がとても響く映画に仕上がっておる。
『病人ではなく、1人の女として接して欲しい』という気持ちがよく伝わって来る映画じゃ」
本作を彩る名言たち
カエル「そして忘れてはいけないのが、ケイティのお父さんであるジャック(ロブ・グリル)の存在だよね!
こういう娘の恋愛を見守るお父さんというと、ちょっと頭の硬いキャラクターが多いかもしれないけれど、本作はとても理解があっていいお父さんなんだよ!」
亀「とても印象に残る言葉も多く、この作品のコメディの部分を多く担当しているの。
娘に対するプレゼントで
娘『……何これ? センス悪すぎじゃない?』
父『プレゼント最悪だろう! 3件回って探したんだ!』
と嬉々として話すシーンなどは観客としてほっこりするものがある」
カエル「あとはこの病気を説明された時も『100万人に1人だなんて娘はラッキーだな』と言うんだよね。普通さ、逆じゃない?
だけれどこのお父さんは絶対にマイナス思考に考えることはないし、娘を信じているし、精一杯彼女のために果たしたいと思っている。
だからこそ、父が下した大きな決断に涙が出てくるんだよね」
亀「どうしても恋愛映画というと男女の愛ばかりが注目されがちじゃが、この作品は親子の愛、そして母と娘の継承も描いておる。どうしようもない病気という過酷な現実の一方で、父は娘を愛して、娘も父を愛する。
そして相手のためを思いやり、そのためにお節介かもしれない行動をする……だけれど、それは100パーセント相手のためじゃ。
この作品は本当にどストレートの、まっすぐな思いにあふれた映画で……特別な変化球なんて何もない。だけれど……だからこそ、観客の心に強く響く作品になっています!」
まとめ
少し短めだけれど、この記事のまとめに入ります!
- ストレートすぎるほどまっすぐなみんなの思いに感動!
- 世界の美しさと2人の住む世界の対比が観客の心を揺さぶる
- 彼女たちの思いがストレートに表現された楽曲たちがとてもいい!
感動傑作じゃぞ!
カエル「Twitterのタイムラインを見てもそんなに見ている人は多くないようだし、公開館数も決して多いとはいえません。
だけれど、だからこそ応援したくなる作品だよね」
亀「この手の作品は苦手という人もいるじゃろうし、かつてタイヨウのうたにハマっておった世代は、今は親となり映画館に行きづらかったり、いくならば子供を連れてアニメ映画やアクション映画を見る人も多いかもしれん。
『やっぱり昔の映画やドラマの方が……』と思う人も多いかもしれんが、彼女たちが必死に生きる姿をアメリカでとてもよく描いてくれておる。
デート中の若い世代だけでなく、年頃の娘を持つ親世代にもオススメしたい作品になっておる。
是非とも音響のいい映画館で見て欲しい作品じゃな」