物語る亀

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物語愛好者の雑文

<良作>『野生の島のロズ』紹介&感想! CGが織りなす自然とロボットの映像表現が見事!

 

今回は『野生の島のロズ』の紹介記事になります!

 

試写会で鑑賞させていただいた作品の紹介をする記事になるぞ

 

画像20

(C)2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.

 

カエルくん(以下カエル)

ドリームワークスが制作して、アメリカアカデミー賞アニメーション部門の有力候補とも言われる作品だね

 

亀爺(以下亀)

こちらは試写会で鑑賞したので、前半は紹介、後半はネタバレありの感想記事になるの

 

カエル「注目している人も多い作品なので、参考にして欲しいですね。

 それでは、記事のスタートです!」

 

 

 

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Xに投稿した感想

#野生の島のロズ

#pr

25年2月7日公開

試写に招待されたため字幕版を鑑賞しました

東京国際映画祭でも上映されたほか、すでに公開されたアメリカなど各国で話題になるのも納得、25年のアメリカアニメーション映画では1つの基準であり最高峰になりうるであろう、見事な作品です

 

まず映像表現の美しさが印象に残ります

ロボットのロズがCGの持つ硬質感を活かして描写されていますが、野生の島の自然美が発揮されるシーンなどもあり、その対比関係が効果的に発揮されており、とあるシーンでは息を呑みます

 

また物語もシンプルながらもテーマも重層的で今作をどのように解釈するのか、観客の立場によって異なるのではないでしょうか。ファミリーで鑑賞した後に親と子では印象も異なるでしょうが、だからこそ楽しい映画に仕上がっています

 

多分アニー賞やアメリカアカデミー賞などにもノミネートされそうな作品ですし、ボクも自信を持ってオススメできる作品ですので、公開時はぜひ鑑賞してほしいですね

 

 

 

 

感想

 

それでは感想からのスタートです!

 

2025年のアメリカアニメーション映画のものさしになりうる作品じゃな

 

カエル「ものさし、というのはそれだけ色々な意味で優れた映画って意味だよね。

 もちろん2025年に公開されるアメリカアニメーション映画の大作としては、2月と早い時期だから……M-1のトップバッターのように、比較される作品になるということでもあるけれど、このハードルはかなり高いんじゃないかなぁ」

 

亀「このまま2025年ベストのアメリカアニメーション映画、となることだってあり得る作品じゃな。

 今作よりも優れた……この優れたの意味合いは色々あるが、どのような視点であれ優れた作品が登場したら、2025年は豊作と言っていいじゃろう。ワシはこのままアメリカのアカデミー賞長編アニメーション部門を取るのではないか、と予想しておる

 

それだけ、各方面でレベルが高い作品なんだね

 

老若男女が楽しめるファミリー映画でありながら、映像も物語も音楽もハイレベルに感じたの

 

カエル「その意味ではすべての分野が80点以上をマークしていく映像作品といえるのかな。

 ちなみに音響面も評価されており、アメリカアカデミー賞では作曲賞、音響賞もノミネートされています」

 

亀「パラメーターで言えば綺麗な六角形ができるような作品じゃな。

 うちは字幕版で鑑賞したため、吹き替え版に関してはなんとも言えないが……予告を見る限りではイメージを阻害するものではなさそうじゃし、こちらも合わせて期待していいのではないかの」

 

 

 

 

映像表現について

 

アニメーション映像について語っていきましょうか

 

今作の映像表現の美しさが際立っておるの

 

カエル「もちろん、アメリカの大作アニメーション映画なのでCGの魅力が発揮され、映像表現が優れているのはいうまでもないですが、今作もその美しい映像表現が楽しめます!」

 

亀「今作で重要な点として、舞台が島ということがある。

 つまり自然が豊かな島であるのじゃが、この自然の美しさが見事に発揮されている。

 CGキャラクターの魅力と、自然の魅力が合致している作品ということじゃな」

 

簡単に言っているようだけれど、これがすごいことなんだよね

 

CGの得意分野と不得意分野があるからの

 

カエル「今は映像のレベルが高まっており、自然描写も素晴らしい作品が多いですが、CGは硬質的な印象を与えてしまうため、身近なもの……特に自然描写などは苦手とされています。

 そのため他作品でも車、ロボットなどの機械は特にCGが多く使われていますが、例えば人間だったり、動物は”キャラクター化”されていることが多く、洋服を着せるなどして自然の姿とは異なる形をしている作品が多いです」

 

ズートピア (吹替版)

動物に服を着させる擬人化の例

 

もちろん、全てがそうというわけではないがの

 

亀「CGで人間などを造形する際は、あくまでもキャラクターであり、リアルな人間でない場合も多い。

 それでいうと今作はなるべく自然に合わせながら、キャラクターとしての側面も併せ持っており”自然な姿”でキャラクターを生み出すということをしている。ここでロボットのCGと動物のCGが浮きすぎず、かといって近過ぎないという絶妙なバランスが求められるわけじゃな」

 

画像3

(C)2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.

ロボット(機械)と動物(自然)のバランスの良さが目立つ

 

ロズはロボットだから感情表現が豊かというわけではないけれど、それでも感情が伝わるというのも凄いよね

 

無機物のロボットに感情移入できるというのも、創作的な難易度が上がるポイントじゃな

 

カエル「もちろん、動物たちも”キャラクター”的な要素は強いんだけれど、それがロズとの対比にもなっていたりするね」

 

亀「それと、やはり背景などの自然描写に着目して欲しいの。

 特に今作は”島”という自然が豊かな場所が舞台というのもポイントの1つじゃからの。

 背景美術の美しさであったり、決めシーンの自然描写の雄大さなど、絵画のアーティスト15人が描いた絵をモチーフにしているということじゃが、それが大きな意味を持つことがよくわかるはずじゃ」

 

 

 

物語面について

 

ネタバレしないように物語について語っていきましょうか

 

色々な見方ができる作品じゃな

 

カエル「ロボットのロズが野生の動物たちが多くいる島に上陸して……という内容だけれど、これが色々な示唆に富んでいるんだよね!」

 

亀「ネタバレしないように話すと、ワシは対比構造の見せ方がとても上手だと感じたの。

 物事には色々な見方があるが、今作はそれを対比として描き出すことによって、色々な人が”自分だったらこの立ち位置”という見方ができるようになっている。例えば……ファミリー映画であったら親目線、子目線なども異なることが多いじゃろう。

 物語を単純化することで語ることも1つの手法ではあるが、今作はそうしない。いくつもの対比関係を忍ばせることで複雑な世界を描き出すことにチャレンジしており、一定以上の功績を収めている作品じゃな」

 

ふむふむ……ここは公開した後に、しっかりと語りたい部分だね

 

だからこそファミリー映画としても、誰が鑑賞しても力強い作品となっているわけじゃな

 

 

以下ネタバレあり

 

 

作品考察

 

3つのテーマ

 

 

それでは、ここからはネタバレありで語っていきましょう

 

今作で優れている点は、3つのテーマを過不足なく入れているという点じゃろうな

 

  1. 親子の視点のテーマ  
  2. 自然と人工の対立  
  3. 現代のアメリカ  

 

この3つの視点を入れたテーマだね

 

カエル「この3つの視点が、過不足なく物語に反映されており、さらにその人がどの立ち位置で作品を見るかによって、評価が変わるのではないかの」

 

 

親子の視点のテーマ

 

まず、親子の視点のテーマについて語っていきましょう

 

ここは親と子の両方の視点があるの

 

カエル「ファミリー向け映画として優れている、という評価になる理由だよね。
 親の目線のロズと、子供の目線のキラリ、そのどちらの気持ちもわかるようにできていて、そこが上手だよね

 

亀「また、ロズがロボットという設定は、初めて幼い子を持つ親御さんが投影しやすくなり、そしてヤンチャなキラリの様子もまた、子どもたちの気持ちを反映しておる。  
 さらに成長していくキラリを見守るロズというのも、子育てを終えた世代の父母以上の保護者にとって、さまざまに感じ入るものがあるじゃろう。
 まさに”観客の誰でも””キャラクターの誰かに”感情移入ができる作品と言えるじゃろうな」

 

 

 

 自然と人工の対立

 

次に挙げるのが自然と人工の対立ということだけれど……

 

ここは詳しく話すと長くなるので、コンパクトに語っていこう

 

カエル「まず1つ目はCGという人工的でデジタル感が強い表現を使用して、ロボットたちの工業的な社会を描いたところだよね。
 そして対する自然や背景では、手書きの作画を引用してアーティストの表現を活用することによって、その相対する映像の良さを引き出して素晴らしい映像美に仕上げたことかな」

 

亀「上記でも述べたが、CGではデジタル的なロボット描写は得意じゃが、自然の描写は苦手な一面があった しかし”手書き””CG”という手法の対立が、そのまま”自然”と”人工”という物語上の対比関係になるように作られておるのも、非常に上手じゃな」

 

 

 

機械と自然の対立が根深い西洋

 

このロボットと自然の対立は、かなりアニメーションの歴史にも関わってくるんだよね  

 

アメリカ・ヨーロッパの表現の歴史、といっても過言ではないかもしれん

 

カエル「ロボットや機械に対する警戒感は、日本はそこまで強くないですが、アメリカやヨーロッパでは歴史的に根強いものがあります。

 例えばチャップリンの『モダンタイムス』では、機械文明の発展によって、人間らしさが失われていくことに警鐘を鳴らしました」

 

モダン・タイムス(字幕版)

モダン・タイムス(字幕版)

  • チャールズ・チャップリン
Amazon

 

 

その後、複雑な経緯を経て機械文明≒共産主義、という認識がアメリカで広がっていくわけじゃな

 

亀「例えば『ターミネーター』なども機械が相手であるし『ロッキー4』などを見てもわかるように『アメリカなどの自由主義は人間味があるが、ソ連などの共産圏は機械的』という対比関係で物語を作ることは、決して珍しくない。
 これはアニメーションに関しても同様で、ウォルト・ディズニーの『蒸気船ウィリー』を見ても、機械は硬質的なものではなく、まるで生き物のように意思を持った柔らかいものとして描かれている  
 これは機械文明ではなく、生物本位の世界を描こうという意思と受け取ることも可能じゃな

 

 

理想のアメリカ

 

そしてこれらの表現が”理想のアメリカ”というテーマに繋がってくるんだね  

 

つまり自然・人工という対立や、CG・手書きというアニメーションの対立がない社会へ、ということじゃな

 

カエル「それが後半の、自然の脅威が襲ってきた後の描写になります」

 

亀「あのシーンでは多くの生物たちが寄り添い、そして自然の脅威をやり過ごすという内容になっているが、それこそが今のアメリカが望むであろう社会じゃな。

 人種差別もなく、多くの偏見もなく、誰もが寄り添いながら生きていける社会、理想のアメリカ。
 それは草食動物であろうが、肉食動物であろうが……機械・動物、CG・手書きという区分なく共存し合える関係性というテーマを内包しておる。
 ここまでのテーマをいくつも内包しながら、レベルが高くまとまっているという点で、今作の評価が高いことを伺えるじゃろうな」

 

 

 

 

今作で気になったこと

 

この島は”自然””文明”

 

ここまで褒めておいてなんだけれど、今作で気になったところがあったの?

 

この島を”自然”と考えるか”文明”と考えるかで、解釈が変わるからの

 

カエル「邦題だけれどタイトルでは『野生の島の』とついているから、島が自然の場所と考えるのが妥当なのかな?」

 

亀「そうなると後半の展開の解釈が難しくなるの。
 後半では吹雪が島を襲い、多くの動物たちがそれに苦しめられる、という展開になる。上記のようにここが描いたことというのは、アメリカという国の理想の姿ということも可能じゃが……それは”文明社会”の話であって”自然”の話ではない

 

自然と文明社会だと、あの吹雪の解釈が変わるの?

 

災害と自然撹乱(しぜんかくらん)の違いじゃな

 

カエル「撹乱(かくらん)とは、自然環境下で発生する大きな環境変動のことです。例えば火山の噴火、吹雪、地震、洪水、山火事などが該当します。
 撹乱が発生すると、多くの動植物がその被害に遭い、木々などが倒れたりするなど環境が一変することが知られています」

 

亀「確かに人間目線で見れば、上記の”災害”は防ぐべきものじゃろう。
 しかし自然環境における撹乱は、とても重要な行いである。

 大きな自然現象が起き、それまで多数派であった種がなくなることで、新たな環境が発生する。
 例えば、大きな木が生い茂っておったとする。しかしそれが山火事や地震などで多くが倒れると、大きな木によって遮られていた光が多くの草花を照らしたり、あるいは倒れた木を棲家として新たな動物が繁殖したりするわけじゃな」

 

 

 

 

撹乱が発生しないと起こらない自然のサイクル

 

その撹乱が発生しないと、自然のサイクルはどうなるの?

 

かえって多様で自然な環境が阻害されるわけじゃな

 

カエル「その地域がとても大きな被害を受けるような猛烈な自然の変化こそが、むしろその地域に安定をもたらすんだ……」

 

亀「撹乱によって種が進化したり、あるいは自然淘汰によるサイクルが起きるわけじゃな。 
 一部のマツは火によって炙られることによって、種子が発芽するようになっておったりする。

 詳しくは以下の記事を参考にしてほしいの」

 

https://www.nishigaki-lumber.co.jp/site/wp-content/uploads/2018/05/himorogi_52.pdf

 

自然環境を守る行動が、必ずしも自然を維持するというわけではないんだ……

 

長い目で見れば、それは現在優勢な種を守るだけになるかもしれん

 

亀「仮に撹乱が起きなかったとしたら、その環境で優勢な……つまり強い種が生き残ることになり、逆に多様性が損なわれるかもしれん。
 もちろん、人間による伐採撹乱などの自然破壊は良くない。しかし同時に、人の手が過剰に入った自然の守り方もまた、その自然を守ることにはならない

 

ここが人間の文明から見た”災害”と、自然の中の”撹乱”の違いじゃな

 

カエル「2025年1月に話題になったアメリカ・LAの山火事も、自然の目線で見れば大切なことなのかもしれないね……」

 

亀「もちろん、人間の文明という目線で見たら人命はもちろん、インフラや家などの資産の被害があり、防ぐべき”災害”ということになるのは間違いない。
 しかし同時に自然環境という目線では、その山火事は撹乱として必要なことかもしれん。 
 それでいうと、今作があくまでも”自然の島”なのだとしたら……後半に描いたことは、人間の文明基準ではいいことなのかもしれんが、自然の有り様としては、むしろ不自然であり、あまりよろしくないのかもしれんな

 

 

 

 

最後に

 

色々いったけれど、バランスの優れたとても上手な映画だったね

 

この映画が今のアメリカで評価されるのは納得じゃな

 

カエル「特にトランプ大統領になったから、その反動でより多様性が重視されるとしたら、確かに今作がアメリカアカデミー賞を受賞する可能性が高いと言われているのも納得かも」

 

亀「アニー賞でも多くの賞を受賞したことだし、2025年の……アメリカ公開年でいえば2024年のアメリカアニメーション映画では中心的な作品であることは疑いようがない。

 とても面白い作品なので、多くの人に見て欲しいの」