プーさんまで実写化か……ディズニーの名作が次々と実写化するね
アラジンなどの実写化も近いかもしれんの
カエルくん(以下カエル)
「あれ、今回は亀爺なんだ?
いつもディズニー映画といえば親の仇のごとく噛み付くのに……」
亀爺(以下亀)
「『もう喧嘩はやめようよぉ〜……蜂蜜美味しい』とのことじゃ」
カエル「別にディズニーサイドは痛くもかゆくもないと思うし、一方的に文句を言っていただけなんだけれどね……
まあ、ディズニー映画について文句を色々言って入るけれど、世界一の物語制作集団とは認めるわけだし……だからこそて厳しいというのもあるかもしれないけれど」
亀「少なくとも、ディズニー映画として凡作というのは、普通の映画としてみれば傑作じゃからな。これだけ万人が80点以上をつけるであろう作品を量産する能力があるスタジオもそうそうないの」
カエル「じゃあ話もそこそこに記事を始めていきましょう!」
感想
では、Twitterの短評からスタートです
#プーと大人になった僕
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年9月14日
さすがはディズニー、良い作品でした
あまり派手にできない(バトルや爆発がない)地味な作品をしっかりと魅了してくれる
綺麗すぎる印象もあるが、プーさんのファンタジーだからこれでOK
ただし堺雅人は上手いんだけど合ってないんだよねぇ pic.twitter.com/VFxXX03Igw
プーさんの実写映画として、十分な作品だったのではないかの?
カエル「プーさんって他のディズニー映画と比べても、何か特別なことが起きる作品ではないもんね。
物語自体も短編、中編には向いているけれど、1つの長編ストーリーとするのは少し難しいというというか……
今でいうと日常系に近いノリがあるというか」
亀「あくまでもあの世界での日常を描いた作品じゃからの。
これが……例えば『美女と野獣』などであれば恋愛やアクション、ミュージカルなどもあるし『アラジン』『ライオンキング』はアクションてんこ盛り『ピノキオ』は冒険があって物語を魅力的にすることができる。
しかし、プーさんでそんなアクションを求めている人は、そうそういないであろう」
カエル「それを求めたら同日公開の『プレデター』を観に行くよね……あの世界観にいるプーさんもちょっと気なるけれど……そんなバカ話は置いておいて、長編物語を1つ作るのは難しいということだね」
亀「今作はそこをクリストファー・ロビンを大人にすることによって物語を魅力的に作ることに成功しておる。
若干地味な印象も拭えないが、それでも万人が楽しめるディズニーらしい”綺麗な”映画に仕上がっておった。
また、脚本家の一人であるトム・マッカーシーは『スポットライト 世紀のスクープ』のような社会派作品を担当しており、同じく共同脚本のアリソン・シュローダーは黒人差別と宇宙開発を描いた『ドリーム』の脚本を務めておる。
それを聞くと、本作は社会派の一面もあり、ディズニー映画らしい社会に対する風刺もしっかり忘れていないというバランスの良さがうかがえるの」
1つのアニメーションの形?
今作の最大の特徴はなんといっても、プーさん達の風貌が人形のようだということです
原作の設定通りではあるが、このような造形で物語を作ることに若干驚いたの
カエル「もっとCGをフルに使って、いかにもなアニメキャラクターの実写版みたいなこともできたと思うけれど、今作ではそういうことはしていないんだよね」
亀「もちろん、原作がぬいぐるみという設定だから、ということもあるじゃろう。
しかし、わしはこれは1つのアニメーションの形を見た気がするの」
カエル「……アニメーションの形?」
亀「もともと、ディズニーで作られたプーさんのアニメーションはとても高クオリティであり、今見ても腰を抜かすほどヌルヌルと動くほか、クリストファー・ロビンの重心のブレなどもしっかりと描かれておった。
残念ながらディズニーはセル画部門を閉じてしまったが……わしは今作はまるでストップモーションアニメのようにも見えた」
カエル「つまり、プーさんのぬいぐるみを少しずつ動かしてアニメーションのように動かしているようにも見えたってことね」
亀「別にこの手法自体が新しいということではないがの。近年、 CG化が進んでおり、背景や特殊効果などはCGで全てを描く実写作品も当たり前じゃ。それはわしに言わせて貰えばアニメーションと本質的に変わらんのじゃよ。
そしてぬいぐるみのようなキャラクターを現実世界に置くことによって、プーさんたちのキャラクターが現実から離れた存在のように見せている。
これは今作では大事な設定じゃな。
この実写とアニメーションの融合という意味においても、今作は面白い発見がある作品と言えるのではないかの?
もちろん、序盤のアニメーションを含めて、アニメ好きとしても満足する作品であったかの」
吹き替え版について
今回は吹き替え版で鑑賞したので、その感想を
もちろん、悪くはないぞ
カエル「ディズニーはあんまり吹き替え版も外さないって印象があるかなぁ」
亀「ただし、主演のクリストファー・ロビン(ユアン・マクレガー)を演じた堺雅人だけは、少し思うところがある。それは芸能人声優だからとか、演技が下手だからというわけではない。むしろ、演技自体は普段の堺雅人らしいものであり、しっかりとしたもので特別浮いているとは思わなかった。
役にもあっておるが……いかんせん、堺雅人の印象が強すぎて顔がちらついてしまったかの」
カエル「舞台もうまい役者さんだと、声質が独特だから吹き替えや声優業もぴったりと合うことも多いけれど、今作はそれが裏目に出た印象だね。
オリジナルからだから本来は違和感がないはずなのに、ティガーの声優が玄田哲章だと、普段の吹き替えではごついおじさんのイメージが強すぎてちょっと違和感というか、声優好きとしては笑ってしまうというか……」
亀「この辺りは役者の悩みどころかもしれんの。別に誰が悪いというわけでもないし、役柄にも堺雅人はあっていたと思う。
強いて言えば、ユアン・マクレガーとは合っていなかったかもしれんが、例えばよくユアンの吹き替えをしている森川智之だとしたら、それはそれで味がまた大きく変わったかもしれんし、難しいところじゃな」
カエル「もともとアニメーション作品だし、実写版にする難しさが出た形かな?
それから……これはプーさんファンにはちょっと暴言に聞こえるかもしれないけれど、プーさんの話し方などが結構ゆっくりでちょっとイラッときちゃったんだよねぇ」
亀「ゆっくりとした話し方じゃからの。特にロンドンが舞台の際は、周囲と全く流れている時間が違うことを声でも演出しておったが、それがちょっと間延びしているようにも感じたかもしれんの。
しかし、全体的には好印象だったのではないかの?
普段は思うところがある子役の演技も、今作に関してはもともとクリストファー・ロビンの演技で慣れているところがあるからかもしれんが、全く違和感がなかったの」
以下ネタバレあり
作品考察
プーさんが示したもの
ではここからはネタバレありの項目になります!
そもそも、プーさんとは何だったのかの?
カエル「……クマのぬいぐるみで、クリストファー・ロビンのイマジナリーフレンドでしょ?
あれ、みんなに見えるというのがとても驚きだけれど……」
亀「もちろんそれはそれで正解なんじゃが、わしは幾つかの対立軸があると思う。
特に大きいのは、わしの言葉で説明すると『都市のロビン』と『自然のプーさん』じゃな」
カエル「都市と自然の対立軸はよく語ることだよね」
亀「本作はロビンが大人であり、プーさんは子供時代の象徴でもある。
ある時まで少年だった子供は、いつの日か大人になり、父や仕事の役職という役割を果たさなければいけなくなる。その役割を果たすうちに、子供時代のことを忘れてしまうというのが、本作の重要なポイントの1つじゃな」
カエル「それをプーさんが訪れることで、その頃の時代を思い返すという意味合いがあるんだよね」
亀「例えば、序盤でプーさんがロンドンにやってきた時、家の中をめちゃくちゃにしてしまう。レコードプレーヤーを破壊したり、カーペットを汚したり、棚を壊してしまったり……棚は少し違うかもしれんが、レコードプレーヤーやカーペットはあの家を考えると、それなりに上質のものなのじゃろう。
そういったお金を払って獲得したきたもの=都会のものを、自然や子供の象徴であるプーさんが壊してしまうという、対比構造のワンシーンになっているわけじゃな」
”役割”からの解放
カエル「これって結構現代的なテーマかもしれないね」
亀「そうじゃな。現代の1つのテーマは”役割からの解放”があると考えておる。
先ほども述べたように、子供から大人になるということは、何らかの役割を果たすということじゃ。この映画で言えば、ロビンは学生となって勉強しなければいけないという”学生の役割”を果たすことを求められた。
また成長するにつれて”軍人の役割”や”父の役割””仕事の役割”を果たすことを求められる。そういったものにがんじがらめになってしまったのが、あの大人時代のロビンの姿じゃな」
カエル「でも、一方で現代社会はその役割からの解放が重要なテーマなんだよね?」
亀「例えばワークライフバランスの問題は今の日本でも叫ばれておるが、残業時間を減らして過労死などを減らそうという試みじゃな。
日本が経済的に盛り返しているとはいえ、その実感がないのは休みがなかったり、お金を使わないからじゃろう。仕事をしているとどうしてもお金は使わない日が多いから、貯金はたまるかもしれんが、経済全体でみるとマイナスじゃな。
もっと労働時間を減らしてお金を使うようにいっぱい従業員にお金を渡して、個人の貯金や企業の内部留保などを減らしていくのが、経済を回す最善の策だとはみんな思っていると思うが……まあ、将来への不安などもあるからそう簡単ではないか」
カエル「話を映画に戻そうか。
でもさ、その役割からの解放ということを考えると、近年のディズニーやアメリカが描く女性主人公の映画も”女性という役割からの解放”をテーマにしている作品も多いよね」
亀「本作自体は現代の設定ではないが、このお話自体は現代でも十分に伝わるものじゃろう。
特に現代、わしは男性の役割の解放が全然足りていないと感じておる。『グラントリノ』や『レスラー』などの映画が描いたように、白人男性は相対的にイニシアチブを失っていき、その失意の中にいる。日本で言えば中国や韓国の躍進によって、元気がない状況に近いかの。
それでいながらも男性は父として、男としての役割を求められてしまう。
そこからの解放を描いた1作として、綺麗すぎて挑戦的な物語とは思えないものの、意義のあるお話だったのではないかの?」
赤い風船の幸せ
今作でちょっとしたアイテムとして登場するのが赤い風船だよね
ほとんど意味のないアイテムじゃな
カエル「まあ、後半で少しだけ役に立つんだけれど……でも、別に赤い風船である理由ってあったのかな?」
亀「おそらく、わしが知らない設定などもあるのじゃろうが、ポスターにも使われるくら大事にしているアイテムじゃな。
わしが風船に注目したのは、このセリフがあったからじゃ
『持っていると幸せだった。君はどう?』
風船自体は特に大きな意味はない。ただ子供に持たせて、それでおしまいの、ただ空をふわふわ浮かぶだけのアイテムじゃな。
しかし、それを持っているだけで楽しい、幸せだったという感覚は、誰にでもなんとなく伝わるのではないかの?」
カエル「牧歌的で平和の象徴みたいなところもあるよね。日本ではピースバルーンと言って、核兵器の廃絶や平和を願って空へ上がることもあるけれど……」
亀「『何にもしないをしよう』というのが今作では重要なキーワードじゃが、この意味のない幸福の象徴である赤い風船をプーに手渡すこのポスターこそが、本作最大のメッセージだったのではないかの?」
まとめ
この記事のまとめです!
- プーさんの実写版として、一定以上の満足度は得られる作品!
- 吹き替え版は役者の顔がちらつくことがあれども、決して悪くはない!
- 本作が示した役割からの解放と赤い風船は、現代人に響くメッセージ!
思ったよりもいい作品じゃったの
カエル「やっぱりディズニーにハズレなしだよね。地味だけれど、見所がたくさんある物語に仕上げてしまうわけだし……」
亀「過去の人気作もいっぱいあるしの。
本作の興行次第じゃろうが、1926年のプーさん発行から100周年に向けて、また映画を作って欲しいものじゃな」
カエル「これだけ世界的に人気のあるキャラクターもそうそういないもんね……
もしかしたらミッキーを超えているかも?」
亀「それはなんとも言えんが、強力なカードを切ってきた以上、興行の結果も楽しみじゃな」