物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『ライオンキング(実写版)』ネタバレ感想&評価! ……これって実写化する必要性があったのかなぁ

 

今回はみんな大好き? なディズニールネッサンス期を代表する名作である『ライオンキング』の実写版作品の感想になります!

 

 

 

……実写化の定義から揺るぎそうな話だな

 

 

カエルくん(以下カエル)

「まぁ、CGでリアルに作っただけでコンピュータ上で動物たちを生み出しているという点を考えれば、やっていることは手書きかリアルなCGかの違いがあるだけでアニメと一緒だもんね」

 

「それがわかっているから”超”実写版なんて苦しい謳い文句になるんだろうな。

 正確には実写版ではないけれど、実写を超えているから大丈夫! みたいなさ

 

 

カエル「苦しい話だけれど実写版といって実写版と言ってしまったら、本物のライオンや動物たちを調教する必要があるしねぇ……いや、誰もそんなところまで気にしていないだろうし、なんならわかっているわ! って話かもしれないけれどさ」

主「ちなみに『ライオンキング』も『アラジン』と並ぶほどに大好きな作品でさ。思い入れが非常に強いので、かなりアニメ版に偏った愛情を持つ意見になるというのは先に語っておきます

 

カエル「逆にアニメ版を見ないで今作を観た! という人の感想を聞いてみたいよね。さすがにこのルックだったら『ジャングル大帝レオのパクリだ!』という人もいないだろうし……」

主「あの時代のディズニーってきな臭い噂が多くてさ、一説には『アラジン』もその当時製作されていた大型アニメ映画に対抗するために作られたミュージカル映画で、その影響もあって大型アニメ映画はかなり不本意な形で公開されたという話もあるんだよねぇ」

 

カエル「詳しく知りたい方は『パーしスタンス・オブ・ヴィジョン リチャード・ウィリアムスと幻の長編』というドキュメンタリー映画を観てください。日本で見る手段があるのかは知りません!」

主「てなわけで感想記事のスタート!」

 

 

 

ライオン・キング (オリジナル・サウンドトラック)

 


「ライオン・キング」プレミアム吹替版予告

 

 

 

 

感想

 

では、Twitterの短評からスタートです!

 

 

 

ここまで完コピすると言葉に困るよなぁ

 

 

カエル「最初に独特の声が流れて始まる『Circle of Life歌唱シーンは構図や流れが全くアニメーション映画版と同じだからびっくりしたよね!

 だからこそ色々と見えてくるものがあったというか……」

 

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主「まず、映画としては……どうだろう、やっぱり自分には退屈なところが多かった印象なんだよ。

 物語自体も『アラジン』のような大きな改変はなく、ファンとご新規さんで賛否が分かれそうな部分もなかった。

 だけれど、ここまで完コピされてしまうとなぁ……改めて実写(仮)で映画化した意味って一体何だったんだろう? って思うわけですよ

 

カエル「監督のジョン・ファブローは『アイアンマン』などのCGを用いた大作でヒットを飛ばしており、技術的には今作を語る上で欠かすことのできないであろう『ジャングルブック』の監督も務めています」

主「多分、ジャングルブックってライオンキングを作るための下敷きのつもりで作ったんじゃないかなぁ? 

 動物たちが動き回るシーンはもちろんのこと、物語の流れや火が重要な舞台を盛り上げる装置となる終盤のシーンなど、かなり既視感があった。

 じゃあ、映画としてどちらが優れていますか? と言われると……難しいけれど、自分は『ジャングル・ブック』に軍配を上げる。

 今作はやっぱり作る意義を見いだすことができない作品となってしまったかな

 

ジャングル・ブック (吹替版)

 

映像のリアリティが高すぎることによって生まれる違和感

 

”超”実写版の意義とは?

 

その作る意義が見出せないって”超”実写版の存在意義だよね?

 

何でもかんでもリアルに作ればいいってものでもないんですよ

 

 

カエル「近年はCG技術も進化しており、一見すると CGと実写の区別がつかなくなっていたり、あるいは CGで人物を作る・過去の造形をある程度再現することも可能になっています。

 でもリアルであればそれでいいのか? という問題はずっと付いて回るよね

「いつも語るけれどさ、アニメーションってリアルならばそれでいいというわけではなくて、アニメ・漫画的な記号的表現に基づいた表情の変化などが面白かったりするわけ。

 例えば自分もリアルだ! と言って大絶賛した『リズと青い鳥』だって色彩や動き、タイミングなどほぼ全てをコントロールしているからこその面白さであって、リアリティに裏打ちされた感動があるし、それだけリアルに描く意義がある作品だから大絶賛するんだよ。

 では、この映画は『リアルだ!』を超えた何かがあったのか? という問題ですよ」

 

カエル「単純にリアルなだけではなダメなんだね……

主「そりゃそうでしょ。

 だからディズカバリー・チャンネルって言われるわけで。

 自分はこの映像に能登麻美子あたりの声がナレーションで入って、動物たちの日常を楽しむ作品だったら最高だな! って思ったよ。

 でもそうはなっていないし、そうしたら『ライオンキング』としては評価できないから難しいけれどさ……」

 

 

 

 

リアルだからこその違和感

 

なにせ、リアルなライオンやハイエナが話し始めるんだもんね……

 

そんなの違和感バリバリじゃない

 

カエル「しかもアニメ的な表現は一切なく、普通に話すことが当たり前のようだし……」

主「いや、不気味の谷とかは感じないよ? でも動物が話をして物語が進行するだけでそれはもはやリアルじゃないわけ。

 言うなれば動物番組ではいる動物の気持ちを代弁したナレーションと一緒。

 だから元々”アニメ的なお話”なんだよ。

 動物が話をしても一切の違和感がないというね」

 

カエル「もちろんそういった動物が話す作品は他にもあるけれど、それもファンタジー要素を多く入れていたりするものだし……ライオンキングってその意味ではファンタジー要素はあまりないんだよね。

 神話とかの要素は感じるけれど……」

主「それが出てしまったのは”食事”のシーンだよ。

 これはディズニーの悪癖もあるだろうし、元々もそうだけれど草食動物を襲って捕食するシーンはないんだよ。シマウマの足を食べるシーンはあるけれど、それはすでに解体されているものだった。

 その代わり虫を食べるシーンは相当グロテスクにも感じるように作られていたけれど、今作はその虫を食べるシーンもそこまでグロテスクに感じないようにされている。

 これで『命は円だ』みたいなことを言われても納得できますか? って話でさ。

 食物連鎖や生体ピラミットをテーマの1つとして教育的に描くのであれば、そこは綺麗ごとにしないで描くことも重要ではないかね?

 それに、なんで自分たちを捕食するライオンの王様を草食動物が崇めているんだって話でさ、その時点で違和感がバリバリなわけ」

 

カエル「そこをリアルに描いたら描いたで、子供達が怖がるかもしれないけれど……」

主「超実写版ってそういうことでしょ?

 その意味では今作は中途半端。

 一説では今作の動物たちは全員ペニスがなくて去勢されているという話だけれど、そういうことをするのであれば実写版にするべきじゃないんじゃないの? 現実の動物には性器がないならば間違っていないけれどさ。

 結局綺麗なところしか見せる気がないんじゃないの?

 

カエル「全部見せる必要性もないと思うけれどなぁ」

主「肉体や動き、ルックだけを真似てもなぁ……

 実写化する、あるいは実写のように見せる意義ってものが感じられないからこそ、自分は今作には大きな不満がある

 

 

 

 

物語に大きな影響を与えた声優陣

 

物語の流れについて

 

でもさ、物語自体には大きな変更点がないんだから、それを考えたら同じなんじゃないの?

 

いやー、はっきり言えば今作はアニメ版よりも幾分も面白くないよ

 

カエル「そりゃミュージカルシーンとかは結構現実的になっていたり、カンフーシーンとかもなかったり、ブンバァのフラダンスもこのルックでやられたら違和感バリバリだっただろうから柔らかい表現になっていたけれど、それがないからダメって話じゃないよね?

主「いや、そういう話。

 ライオンキングって物語だけだとそれなりに重くて、リア王を参考にしたらしいけれど王位を巡る骨肉の争いがあるわけじゃない。もちろん作中ではきっちりと中盤に重いシーンもあるけれど、その後にティモンとブンバァのコメディ要因が明るく楽しくダンスを踊ってカバーしている。

 それらはアニメーションの面白さもあって自然と山谷の流れができているわけだ

 

カエル「だけれど、今作はシリアス一辺倒だからそれがなかったと?」

主「そういうことだね。正直、物語の流れが鈍重にも感じたし眠くなった部分もある。リアルな映像や可愛らしいライオンたちを愛でるだけの映画になっている感があり、それならアニマルプラネットで十分じゃない?

 ここまで完コピするならばアニメーション版でいいし、流れもよかったんだよ。

 歌も同じわけだしね

 

カエル「でもさ、普段はディズニーらしい物語の改変があったらそれに対して文句をいうけれど、今回は全くいじられてないのに文句を語るわけだね」

主「それはそれ、これはこれってね。

 リメイクは難しいって話だよ」

 

アラジン (オリジナル・サウンドトラック / 日本語版)

 

blog.monogatarukame.net

 

最も残念なスカーの矮小化

 

ちなみに、なぜここまで不満ダラダラなのかというと、うちはスカーがディズニーの中でもトップクラスに好きなヴィランだからです

 

特にアニメ版のスカーは大絶賛を送りたい分、今作はねぇ

 

カエル「アニメ版のスカーを愛してきたからこそ、今作のスカーが気になるというお話ですが、考えてみればライオンキング自体は強大な敵に挑む! という話なんだけれど、でも力ではスカーの方が劣るから口八丁と策略でどうこうするというヴィラン像なんだよね。

 それこそ、ソーとロキの関係性にも近いところがあって、強大な力を持つ兄を憎み口八丁と悪い策略によって成り上がるヴィランという意味では古典や神話を発端とする王道の家族と権力を用いたドラマと言えるよね」

 

主「そうなんだよ!

 ここでスカーの大事なポイントは”真意が見えずらい”ってところにある。

 本当にやりたいことはなんだったのか? 政権が欲しかったというよりも兄を超えたいという思いだけであったのではないか? と伺えるけれど、でもそれを口に出して話さないというのがスカーの魅力の1つであった。

 だけれど、この映画ではその魅力がほとんどなくなってしまっている。

 というよりも……矮小化されているというべきなのかなぁ。元々サラビを巡って兄と対立していたという設定自体はあったと思うけれど、それが今作の場合は表に出すぎていた小物化が進んでしまっていた」

 

カエル「元々小物じゃん、って意見もあるにはあるだろうけれど……」

主「ライオンキングを現代で描くことの難しさの1つがスカーの扱いであって、彼は家族の中でも邪険にされているし、オリジナルのアニメーション版ではムファサもそこまで名君という感じではなく、侮るような態度をしていた。だからこそ、より腐ってしまったと伺える。

 だけれどそのような”家族に愛されなかった存在”を悪とするには問題があり……またスカーフェイスなどのような傷のある男を悪党として描くのも近年のポリコレとしては議論がある部分である」

 

カエル「むしろ現代でこの物語を描くのであれば『ライオンキング2』の方が向いているよね。あれは追放されたライオンと王族のお話だし……」

主「その中で今作は基本的には一切物語の変更をしない代わりに、ムファサをより名君として、スカーをより小物として矮小化することによって対立関係を作り出しているけれど、自分にはこれがいただけなかったかなぁ

 

ライオン・キング2 シンバズ・プライド (吹替版)

 

声優について

 

今作は吹き替え声優の評価が非常に重要になります

 

おそらく、字幕版と吹き替え版では全く別作品と言っていいほどの差があるのではないだろうか?

 

カエル「そこまで変わるものなの?

 物語は同じだし、他の作品でも字幕と吹き替えの差はあるとはいえ、別作品とまで言い切ることはないと思うけれど……」

主「今作はリアルなライオンだからその演技が乏しいんだよ。

 個性が感じられるものではあるけれど、当然ながら人間に比べると表情や仕草でその感情をなんとなく見せるのは難しい。

 『自分が父を殺してしまったという自責の念で家族に会えないけれど、母や家族に会いたい相反する気持ち』をライオンの CGで演技のみで描くなんてことはおそらく不可能だ。だからこそ、その声を担当するキャスト陣の演技がキャラクターの肝となる

 

カエル「ライオンの細かい機微を描くのが難しいのはアニメ版も一緒だと思うけれど、それ以上なんだ」

主「こっちはリアルに見せようとしているから、余計だよね。

 で……まず褒めから入ると当然ながらムファサ役の大和田伸也は文句があるはずもない。

 オリジナルの日本語吹き替え版と一緒だからね。

 また、自分は子役演技が苦手なんだけれど今作の2人はとてもよかった。

 『若おかみは小学生』でも活躍した諸星星蘭も、熊谷俊輝も本当に子供らしさがありながらも決して子役演技というだけではなかった。この2人は物語の大体半分くらい出ているから、とても重要な功績を残しただろう

 

カエル「ティモン役の安生とブンバァ役の佐藤二朗は?」

主「自分はティモンといえば三ツ矢雄二と凝り固まった意見を持っているからなんだけれど、でもあれはあれでありだと思う。佐藤二朗は完璧にブンバァだったし、言うことなし。確かに顔もちらつくんだけれど、これはこれでありだなぁって印象。

 吹き替えに関してはそこまで悪い点はない……と言いたいけれど、一部キャストがなぁ

 

若おかみは小学生!

 

blog.monogatarukame.net

 

 

今作の吹き替え版で決定的となった印象の違い

 

えっと……ということは、ここでまだ名前が上がっていない人だよね?

 

というか、江口洋介だよ

 

カエル「あ、やっぱりスカーなんだ」

主「スカーが矮小化されたと感じた要因の1つは江口洋介の演技だったからというのもある。

 というのはさ、彼はやっぱり声が若々しいし、いい人だし直情的な印象を受けるわけですよ。

 これはアニメーション版の壤晴彦があまりにも素晴らしかったから、その比較だとどうしても劣っているように見えてしまうというのはあると思うよ。

 でもスカーという役を演じるには完全にミスキャスト

 これは江口洋介のせいというよりも、役者を選んだ側の問題」

 

カエル「元々心配する声もあったけれど、ここはその影響もあったのかもねぇ」

主「そして最大のミスキャストは……いや、これはミスでもないのかもしれないけれど、ハイエナ側の姉御であるシェンジに沢城みゆきを起用したことだろう

カエル「……え、沢城みゆきの演技にケチをつけるの?」

主「逆です。

 素晴らしすぎます。

 近年のディズニー作品のみならず、多くのアニメ映画や吹き替えで活躍されているだけの理由がはっきりと伝わってくる演技力は抜群。だけれど、だからこそ物語に大きな影響を与えてしまった。

 彼女はね、ハイエナの女王になってしまったんだよ

 

カエル「ハイエナの女王……」

主「原作でも確かに姉御だけれど、それはまだ小物と感じられる部分があった。だけれど……これはもしかしたら現代の”女性が活躍する時代を!”というポリコレが過剰なまでに進みすぎているディズニーが狙ったのかもしれないけれど、サラビ役の駒塚由衣と共に威厳たっぷりに演技をしていた。

 完全に”ライオンの女王VSハイエナの女王”になってしまっていたし、そちらの方が見応えがあった。門山葉子も悪くはないけれど、まあこの2人に比べればお嬢ちゃんだよね。そういう役だから合っているけれどださ。

 これに対抗するのが賀来賢人VS江口洋介だと、やっぱり弱い。

 威厳がないというか、チャラいというかさ。江口洋介と大和田伸也の声を比べてみて、この2人が真っ当に対抗できると思うかって話。

 威厳などで大和田伸也の圧勝でしょ?

 

カエル「バランスの問題だねぇ」

主「今作に対する不満の半分が声優陣のミスキャストによるバランスの悪さ、オスライオン……賀来賢人はともかくとしても特に江口洋介の声が弱すぎるのが問題なんじゃないかなぁ」

 

 

 

 

まとめ

 

では、この記事のまとめです

 

  • 超実写版というだけあって、動物たちがリアルに動く!
  • 実写にする意義が見出せない作品に……
  • 物語の変更がなかったことがいいのか悪いのか……
  • 江口洋介のスカーの魅力が感じられず……

 

悪くはいけれど、元が名作だけに文句は多くなるかなぁ

 

 

カエル「もともとそういう意見にはなりそう、と思っていたけれど案の定だね」

主「ただ実験作としては面白し、これだけの技術があるというのは素晴らしいこと。

 今後の布石として、よりいい作品を作って欲しいね

 

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