2021年の大注目作『シン・エヴァンゲリオン』のレビュー記事になります
終わらないコンテンツの終わり、か
カエルくん(以下カエル)
「この記事ではあまり極端なネタバレなどはしていませんが、情報をカットしたい方はあまり読まない方がいいかもしれません」
主
「とりあえず、簡単にまとめた速報的なレビュー記事かな。
あとは技術的な部分に注目して語っています」
カエル「それでは、記事のスタートです!」
ネタバレ考察記事はこちらです!
blog.monogatarukame.net
ネタバレ薄め!~シンエヴァ感想&技術面に着目!~カエルガタリ#3
YouTube番組やってます!
ネタバレ薄目でエヴァについて語り中!
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#シンエヴァ
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2021年3月8日
これぞエヴァ!
碇シンジの物語として、エヴァンゲリオンの物語として、庵野秀明作品として文句なしの作品に!
何回鳥肌が立ったことか…
エヴァへの思い入れや相性は間違いなくあるけれど、これ以上ない完結編であり現代アニメの最高峰の1つであるのは間違い無いでしょう pic.twitter.com/I63dguSwCL
これぞエヴァンゲリオンのラストに相応しい作品だったと思います
カエル「……やっぱりさ、語りにくいよね。
何をどう語ればいいのか、それもわからない。
あんまりネタバレしないように語ろうとしているんだけれど、やっぱりエヴァはエヴァだったというか。
堂々の完結編で、エンタメとしても面白く、でもやっぱりエヴァらしさ全開だった……そんな感想になるのかな」
主「エヴァってエンタメとしての要素と、作画などのエネルギー、そして実験的要素がたくさん入っているシリーズなんだよ。
だから、どれをとってエヴァらしいと言えるのか、なんともいえない。
もちろん、今作は作画などの映像クオリティという、その意味では超リッチな劇場クオリティの作品だ。
作画はオールスター級で見事、笑うしかない。
『また庵野はとんでもないことやっているなぁ』と鳥肌と、思わず笑いが込み上げてくるシーンがたくさんある。
それでいながらも、実験的。
おそらく、2021年のエンタメ商業アニメでも、かなり冒険と挑戦を重ねている作品であるのは間違いない。
さらにエンタメとして面白い……そんな作品だね」
音響もバリバリにこだわっていたねしね
何よりも、エヴァンゲリオンを終わらせたこと……これが1番大きなことだろう。
主「エヴァをどう見るかってとても難しいところだけれど、その1つに『庵野秀明の物語』としての側面もある。
その目線で見ても今作は完璧と言えるだろう。
つまり
- 碇シンジの物語
- エヴァンゲリオンの物語
- 庵野秀明の私小説も内包した物語
この3点で見ても、見事な完結編。だからこそ、自分はとても高く評価したいし、褒めたいし、大絶賛を送りたい。
簡単にまとめると、そんな作品かな」
欠点について
じゃあさ、あえて欠点について語ればどのような点になると思うの?
やはり、この2点は避けて通れないだろう
- 単純に長い(長さを感じる)
- 構成が歪で実験的、人を選ぶ作品に
カエル「上映時間が2時間30分を超えているもんね……結構EDクレジットロールも長くて、そこが10分くらいある印象だったけれど、本編だけでも他の多くの大作実写映画と同じくらいあるわけだし……」
主「その長さを感じない作品でしたか? と問われると、自分はそこは否定する。
ちょっとだけ、眠くなった時もあったんだよね。今回は朝早くの上映回とはいえ、しっかりと休息をとってから挑んだけれど、それでも長さばかりはどうしようもなかった。
もちろんトイレに行きたくなるとか、そういうこともあるけれど……やっぱり、そこはしっかりと減点対象になってしまうと思う。ちゃんとエンタメはしているけれどね」
カエル「それと、構成が歪で実験的で、人を選ぶという話だけれど……」
主「これも、まあ、仕方ないんだけれど……エヴァって爆発的に大ヒットしていて、歴史的なムーブメントだけれど、でも万人に受けるような作品ではない。
その意味では『鬼滅の刃』とかとは、ちょっと違うわけじゃない?
『Q』が難解と言われたけれど、あれとはちょっと違う意味で今作もシンプルだけれど難解。
矛盾しているけれど、そう言わざるを得ない。
それこそ、テレビシリーズ終盤や、旧劇エヴァの終盤が苦手な人はやっぱり苦手かもしれない。
だから、万人に受ける作品ではない。
癖はものすごくあるし、『エヴァって流行っているんだ! じゃあ見に行こうと!』と軽い気持ちで観に行く作品ではない」
それが魅力でもあるんだけれどね
自分はそういったところも大好きなんだよな
主「その意味では、本当に"エヴァ"だよ。
終わらないことに意味があるコンテンツだと思っていたけれど、そこにピリオドを打った。色々と語っていた庵野監督が、それを終わらせた。
その点においても今作はとても意義がある。
やっぱり、自分は本作がいいとか悪いとか、あるいは点数が何点とか、そういうことはちょっと言えないかな。
評価不能なんだ」
カエル「そういえば、こんなツイートもしているもんね」
エヴァって観た後「俺だけがわかる」って言いたいタイプの作品じゃない?
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2021年3月8日
すんごく語りたいけれど、同時にすごく語りたくないってタイプの作品でもあるんだ
自分だけが、この作品の理解者でありたいって気持ちが、どこかにあると作品だよ
カエル「そういえば、以前に著書とかでも、エヴァに1番ちかい作品は太宰治の『人間失格』だってことも語っていたよね。
確か、主人公や書かれていることを自分と同一視してしまいやすいことや、自分のことを赤裸々に書いている=私小説風の部分があったり……」
主「エヴァって、10代の……特に14歳くらいの時に見ると、とんでもなくハマるコンテンツだと思う。
シンジの気持ちってすごくよくわかる。
だけれど、もしかしたらシンジの気持ちが全くわからないという人もいるだろう。それはきっと、エヴァや庵野さんとは違う世界を歩いてきた人といえる。
とことん自分と主人公、あるいは作者を同一視してどっぷりと漬かる……それが最も楽しめる物語体験を与えてくれる作品だよね。
大人になると『ここの作画はスケジュールが〜』とか、あるいは『構成が〜』ってなっちゃうから、それが難しい。やっぱり、そういったことを考えずに作品に向き合う14歳くらいの頃にエヴァに触れておくのが、1番いい出会いだろう。
その点を含めても評価不能。
"みんなが理解できるエヴァ解釈”って、あんまり意味がないんじゃないかな。
それよりも”自分しか理解できないエヴァ解釈”の方が、とても面白いと思う」
カエル「まあ、それだと記事にならないので、ここからは”みんなが理解できるエヴァ解釈(と筆者が思っている部分)”について、ちょっとネタバレありで語っていきましょうか」
以下ネタバレあり
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エヴァについても中心的に語っています
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技術的な凄みについて
庵野秀明の"作家性の変化"を感じた作品に
では、ここからネタバレ込みで語っていきますが……なんか、いきなり挑戦的なタイトルだね
でもさ、こういうしかないんだよ
カエル「庵野秀明は確かにさまざまな作品を制作していますが、その多くで指摘されているのが……言葉は難しいけれど、『コピー能力の高さ』とでもいいますか。
実は庵野さん自身も『自分は空っぽだ』とかつて語っており、だからこそエヴァは私小説のような語り口を入れることで、作品を制作していると語っています。
それこそ、うちの書籍では『庵野秀明(エヴァ)は空っぽの器だ』と語っていたよね」
主「まあ、超一流の器だけれどね。
基本はかつて観てきた作品や、何らかのオマージュで成り立っているシーンが多い。例えば、よく言われるのは『エヴァ=ウルトラマン』論だけれど、今作ではまさしくそうだった。
元々エヴァってロボットアニメと語っていいのか難しい部分があるけれど、シンエヴァは特にそう。終盤の1号機VS13号機のシーンは、アニメとは思えないほど、特撮のような実験的な映像となっている」
カエル「それこそ、パンフレットで庵野監督は
『加えて、エヴァ破の頃から試みていた特撮映像の手法と感覚を取り入れたアニメ映像の面白さ。
エヴァ破の頃から願っていた実写映画の方法論と技術論を取り入れたアニメ映像の面白さ』
と語っているけれど、それが1番発揮されたシーンだったのではないでしょうか」
実写とアニメの境界線を壊す
庵野秀明の作家性というものは、このアニメと実写の境界線を簡単に超えてしまう部分にあるのかもしれない
主「それこそ『シンゴジラ』がパラパラ漫画的という批判もされたけれど、あれはアニメなんだよ。手法というか、撮り方というかさ。
アニメの手法を実写で実験した例ともいえる。
で、今作はその逆。
実写の手法をアニメで試しているわけだよね。
このあたりはパンフで前田真宏、鶴巻和哉の共同監督(庵野秀明は総監督)が語っているけれど、それを如実に感じた」
カエル「それこそ、序盤のシンジが目覚めた時の一人称視点のカットだったり、あるいはアスカがシンジと口論している時に、跨った時にカメラがめっちゃ動くんだよね。
これって、実写だったら割とわかるんだけれど……アニメであれだけ動かしたりするのって、すごく大変だと思うんだよね」
主「日常芝居の付け方とか、それからレイアウト。
そこに至るまで完璧だし、実写とアニメのいいとこ取りな印象を受けたんだ。
その意味では、今作はアニメとしても、実写を引き合いに出しても全く新しい作品として、進化している。その挑戦がすごく生きている。
観ている最中思ったのが『あ、今の実写邦画ってレイアウトとかアングルとか、つまんないんだな』ってこと。
この作品のレイアウト、カメラの置く位置、それがあまりにも面白くてさ。引き合いに思ったのが実写映画だったんだよね」
アニメではなく、実写を連想したと
それくらい実写的なんだよ
カエル「それこそ、鶴巻監督も語っていますが
TVシリーズの時からこれまでのアニメではできないことをしようと考えていたので「画として研ぎ澄ませていく」という演出の方向性を探っていました。
中略
そんな中で『シン・』では”これまでのアニメではできないこと”への挑戦がここまできたかと」と感無量です
とあります。
つまり、実写的な方法論を入れることによって、新しい方向性を模索しているということですね」
主「特にAパート、日常描写はすごいよね。
この辺りをアニメファンでないと『ふぅ〜ん……』で終わっちゃうのかもしれないけれどさ……めちゃくちゃレベルが高いんだよ。
エヴァって例えば絵コンテや台本をそのまま放送したり、”アニメの定義を疑問視する”という試みが、特に25話、26話では行われていた。
今回はアプローチこそ違うけれど、アニメとは何か、実写とは何か? ということを問いただしていた。そしてそれは旧劇版と同じだ。
そう考えると、やっていることは旧劇と本当同じなんだけれど……その手管が全く違うね」
冒頭の描写について
すでに公開されている、冒頭のパートについてはどうでしょうか?
いや〜……素晴らしいね
カエル「最初に思ったのが、意外と『これまでのエヴァンゲリオン』って、振り返りのネタでもさ、あの音楽があるとエヴァっぽくなるんだなってことで……
ただの振り返りなんだけれど、キャラクターが次々と話すことで、25話、26話の人類補完計画の心理描写がそのまま起こっているようにも感じられるのかなぁ」
主「あそこで自分なんかは一気に掴まれて、あぁ、エヴァが始まったなぁ……と思ったんだよね。
それからアクションパートで言うと、マリの戦闘シーンだよ。
両腕が壊れているから、特殊な腕を使ってサーカスのようにぴょんぴょん動き回るんだけれど、ここが横いっぱいに使うわけじゃない。
スクリーンの特性を活かしてクルクルと動き回り、基本横回転で見せることで、より迫力を感じさせる。
この辺りの見せ方とか、戦い方もすごく洗練されているように感じた」
カエル「ふむふむ……」
主「もちろん、動くシーンもまたすごいけれど、止まっているシーンも素晴らしいんだよね。1枚の絵画として、ずっと観ておきたいほど。
1枚1枚の画がすごく……なんというか、”強い”んだよ。
これは本当に素晴らしい」
カエル「それでいうと、終盤の話にはなってしまうけれど、多分庵野さんが描いたであろう衝撃的なシーンもあったよね……」
主「『王立宇宙軍 オネアミスの翼』でやったことを、またやったのかと思ったよ。
あれは狂気すら感じるレベルだったけれど、今回も全く同じ。むしろ、全部がゆっくりと動くと言う意味では、今回の方がより狂気を感じるかもしれない。
こんなの見せられたら、評価する以外のことができないんだよねぇ」
庵野秀明の作家性の変化
ここまで語っておいて、庵野秀明の作家性についてのお話に戻りましょう
……やっぱりさ、その作家性は大きく変化しているのではないだろうか
カエル「それまではコピーの天才で、コピーを重ねることでオリジナルを制作していく天才だったという評価が多いけれど……今回はそれがどのように変化したの?」
主「いい意味でエヴァっぽくないな、って思った。
なんというか……庵野秀明の話であり、私小説なんだけれど、旧劇とかに比べると、作品との距離ができている。
もちろん、シンジは庵野秀明の投影だ。それはゲンドウも、ミサトも、レイもそうといえるかもしれない。
だけれど……そこが全てではないように感じられたんだよね」
いい意味で、距離ができたとか?
気持ち悪くなくなったね
主「元々映像センスがとても高くて、それでコピーをすることで語ってきた監督だけれど、今回の実験ではそれが完全にオリジナルの位置にまでいった気がするんだよ。
もちろん、それはコピーの果てのオリジナルなのかもしれないけれど、発明をいくつもしていると言うかね。
エヴァに関しては全く適切な距離が取れてなかったし、それがQでも感じたんだけれど、今作は完全に離れている。
それが物足りなくなる気持ちもわかる。
なんなら、自分もちょっとその気持ちもある笑」
カエル「あの気持ち悪さ、一定の語り口が受けてきた要因の1つでもあるよね」
主「でも、それがなくなったからこそ、エヴァは完結することができた。
自分はエヴァは『完結しないことに意味があるコンテンツ』だと思ってきたけれど、これだけの距離が取れたからこそ、完結することができたんだろう。
庵野さん、おめでとう。
今、やっぱり自分が思うのは、こういうことかなぁ」
最後に
それでは、この記事を終わらせるけれど……
実は語りたいことの半分も語っていないんだよね
カエル「……すんごく語るのが難しい作品だよね」
主「語りたい気持ちと、『いやいや、自分以外絶対理解できてないっしょww』って言いたくなる気持ちがあるんだよ。
他者の解釈を聞いて、笑い飛ばしてしまうというか。
自分はまだ、この作品を掴みきれていない。だからこそ、もう1回近日中に見て、語ることをまとめてから、改めて語っていきたいかな」
カエル「……最近はブログも更新できていなかったしね」
主「何かを語ることって難しいよねぇ。特に最近はその意味も考えた。
シンエヴァって、ちょうどそういうことを考えるのにもいい題材かもしれない。
それこそ『エヴァを語ることは、自分を語ること』というのが持論だから……その語り口をなんとか見つけて、また1つ記事を書きたいね」
ネタバレ考察記事はこちらです!
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