物語る亀

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物語愛好者の雑文

『GTO』が捉えた2000年代前後の学校教育と学生の問題〜エヴァからGTOへ到る流れ〜

 

今回は、なぜに今更? 感もありますが『GTO 』の記事になります!

 

 

やるんだったら、せめてリメイクドラマが放送されていた数年前だよねぇ

 

 

カエルくん(以下カエル)

「……いや、歴史的な漫画だけれど、新たな展開もないのに今更語るの?」

 

「しかも、今回はそれなりに熱が入っています。

 本当にね……なんでこんなことを書いているだろう」

 

カエル「その理由も含めて本文で明かしていきますが……そもそもGTOを知らないって人も、若い人では出てくるよね」

主「流石に名前くらいは知っているだろうけれど、漫画は20年くらい前だからなぁ。当時はめっちゃ絵がうまいと思ったけれど、実際に絵がうまいけれど、実は女性キャラクターの書き分けがあんまりできてないんだ〜とか、この年になったからこそ気づくこともあったよ。

 あと、思ったよりもエロが少なかった。

 当時のマガジンは『GET BACKERS-奪還屋-』とか『SAMURAI DEEPER KYO』とかもあったけれど、むしろそっちの方がお色気度が高いというか……あの描写でドキマギしていた時代が懐かしくもある」

 

カエル「はい、そんな郷愁はどうでもいいから、さっさと記事を始めます!」

 

 

 

 

GTO(1) (週刊少年マガジンコミックス)

 

 

 

感想

 

では、まずはTwitterの短評からスタートです!

 

 

読み返すと、改めて名作だと思い知る物語だったね

 

カエル「……そもそもさ、なんでGTOを読み返していたの?」

主「いや、単純に漫画アプリで配信されていたから。

 自分は『マンガBANG!』というアプリで読んでいたんだよね」

カエル「あれ、なんかアフィリエイトができるような話?」

主「いや、まあ、そうなんだけれど……『マンガBANG』が入っているアフィリエイトサービスを探したり、登録すんのがめんどくさいんだよねぇ……ブロガーとしては大事な収入源だし、GoogleAdSense以外での稼ぎ口でもあるんだけれど、一時期はやっていたけれど如何せんめんどくさくて……」

 

カエル「その辺りが、大きな欠点だね」

主「まあ、それは今に始まった話じゃないし。

 で、そのアプリって一定時間ごとにコインがもらえて、1日8話くらい読めるわけ。あとはCMを見ればプラス5話、だから大体1日1巻ちょっとが無料で読めるのね。

 あ、これ面白いなぁ……と思って、最初に読んだのが『静かなるドン』で、その後に『バチバチ』を読んで、で、ついに『GTO』に手を出したわけです」

 

静かなるドン1

バチバチ 壱 (少年チャンピオン・コミックス)

 

……アフィリエイトも貼らないのに、詳細なシステム説明をありがとうございます

 

タダで読むってことに色々な意見はあるだろうけれど、合法だしさ、毎日楽しんでいたよ

 

カエル「話を戻して、GTO自体は初見ということじゃないんでしょ?」

主「もちろん。

 漫画版は当然全巻読んでいたし、反町ドラマ版も全話、リアルタイムで観ていた。

 なんなら映画版だってテレビ放送時に録画して、何度も観たくらいに好き。当然『poison』だって、今でも大好き。リメイク版は見ていないけれどさ。

 ちなみに、テレビアニメ版のOPは都留さんが手掛けられていて、とても映像クオリティが高いのでそちらもオススメです」

 

 

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カエル「社会現象級の作品だから、 観ている人はすごく多かったし、今でも一定以上の世代の人はかなりの割合で観ているはずだよね」

主「そういうことも色々とあって、懐かしさを覚えながら今回も鑑賞したね」

 

 

 

 

GTOが切り取った時代と教育

 

エヴァンゲリオンとGTO

 

でもさ、なんで今更記事にしようとしたの?

 

あの時代の学生感情や学校を考える上で、すんごく大事なことを描いているからだよ

 

主「ぶっちゃけて言えば、ここ最近記事を更新はできていないけれど、案はいくつもあって……それこそ『バチバチ』〜『鮫島、最後の15日』も書きたいし、あるいは『ランウェイで笑って』もアニメ版も含めて書けばよかったなぁ……と思っているし、なんなら『かぐや様は告らせたい』『はめふら』とか、アンパンマン映画の構造的に抱えるものとヒーロー論とか、色々と案はあるわけ。

 ただ、怠惰だから書いていないけれど。やっぱり『鬼滅の刃』はもっとちゃんと読んで、記事を書くべきだったなぁ……とアクセス数激減の今は特に思うよ」

カエル「……そこまでぶっちゃけるのか」

 

主「今回はぶっちゃけ記事も半分あるから。

 でもさ、真面目な話をすると、最近エヴァについて語ってきたわけだ。

 そしてGTOという作品は、実はエヴァとそう遠くない関係にあると考えている

 

GTOはエヴァフォロワーというか、影響を受けているシーンがいくつもあるという話だよね?

 

その精神的な要素もそうだし、あるいは直接的なオマージュもあるね

 

カエル「一番わかりやすいところだと、吉川のぼるが碇シンジで、上原杏子がアスカだってところとか?」

主「それもそうなんだけれど、例えば以下のシーンだよ」

 

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主「書いてあるように、これは63話の扉絵なんだけれど、ここでは鬼塚のクラスにいるIQ200の天才少女、神崎麗美の子供時代の話だ。シリアスな部分だけれど、構図や物語の内容などアスカの過去話とリンクする部分が大きい。同じように、親に見捨てられた部分を持つ孤独な天才少女という要素も似ている。

 あと、首が取れた人形もGTOではどっかに出ていたはず。

 で、ここで重要なのは”似ているから良い、悪い”ということではない。

 自分はエヴァはあの時代の若者・子供に心理を捉えた作品だと思っているけれど、そこに言及し、昇華した作品の1つがGTOである、ということだ

 

 

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時代性を反映した作品

 

この時代性の説明を改めて簡単にしていこうと思います

 

何回も語っていることではあるんだけれどね

 

カエル「1960年代・70年代は学生運動もあり、社会に対して政治的に反抗する時代でした。

 その次の80年代はヤンキーブームなどで、社会に対して倫理に対する感情的な反抗をする時代でした。

 その次の90年代は……その社会そのものがバブルが弾けた影響などもあり崩壊し、どうあれば良いのかわからない時代です

主「90年代から00年代って、学級崩壊やいじめなどの陰湿な問題が報道された時代だ。

 テレビドラマ版と比較的同時期に放送されていた『金八先生』では風間俊介が印象的な活躍を果たす第5シーズンも、ほぼGTOと同じようなことをテーマにしている。どちらも名作ではあるんだけれど、その教師像は180度違う」

 

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カエル「……社会や学校、大人があるべき形があって、横暴なところがありつつも子供たちへの対抗ができるような存在だったけれど、90年代以降は社会そのものが不安定になってくるんだよね……」

主「その中で、暴力事件などで人生を棒に振るわずに知能的に振舞う学生・児童が増えたとされている。

 また、この前後では酒鬼薔薇聖斗を始めとして、多くの少年犯罪が起こった。しかもそれは、いわゆるヤンキーとかの不良学生たちの暴力事件というよりは、一般的な、むしろ優等生とされる子供たちの起こした事件のことも、それまでとの違いとしてあったわけだ。

 よくテレビでは『今の子供はどうなっているんだ!』って話題になっていた」

 

その時、現役の児童・学生だった身としてはどうだったの?

 

なんで大人が騒いでいるのか、まるで理解できなかったなぁ

 

主「さすがに酒鬼薔薇聖斗は衝撃的すぎるけれど……でも、イジメがなぜ起きるのか、は説明されなくても自分でもよくわかった。あるいは佐世保の女児の事件とかは、『まあ、そんなこともあるよね』っていうくらいの感覚だったし、子供たちの闇って言い方は疑問符があったね。

 『そんなことは起こり得ない!』というような、コメンテーターや大人たちの方が不思議に思えたんだよ。

 いや、なんでこの人たちはわからないんだろう? 大人たちがオウムや犯人が捕まっていないけれど世田谷一家殺人事件みたいな、これほど凄惨な事件を起こしているのだから、子供だって同じことをするのかもしれないと、なぜ考えられないのか?」

カエル「青春映画なんかを観ても、学生・児童は未来への希望に溢れたキラキラした存在だと思われているからじゃない?

 それはそれで変なことではないと思うけれど……」

 

主「まあ、その気持ちは今となってはわかるけれどさ……

 2000年ごろに思春期を迎えた・あるいは迎えようとしていた人たちは、ゆとり世代・さとり世代と言われている。

 明確な定義づけは難しい概念ではあるけれど、〇〇離れなどに代表されるように、生活に安定を求めて冒険することを避ける傾向にあるとも言われている。その意味では、保守的な生き方をしているよね」

カエル「本来だったら、最も挑戦しなければいけない歳ごろなのにもかかわらず、それができないような世代・あるいは社会構造ということなのかなぁ」

主「仕方ないよ。自分だって子供の頃から”堅実が1番”って言われていたし、公務員が安定していていい職業って言われてきた。実際に社会は1度失敗するとお終いと語ってきているようだったし、不況もあって暗いことばかり言われていたしね。

 今の社会風土や経済状況もあるかもしれないけれど、この時にも学生・児童の学校に対するストレスは非常に多かった。

 エヴァもGTOも、その時代性を反映した作品でもあるわけだ」

 

 

 

 

教師らしくない教師だからこそ、破壊してくれると信じられる姿

 

そういえば、昔『GTOと金八先生、どっちが理想の教師か?』なんて話もしていたっけ……

 

うちの学校の担任は『GTOの鬼塚なんて教師のクズだ』と吐き捨てていたよ

 

カエル「……まあ、教師としてはなかなかクズな一面もあるのかな」

主「褒められた存在ではないだろう。元ヤンで、スケベで、すぐにセクハラをして、暴力上等。事件も起こしまくる。

 でも、だからこそ……あの時代の教師像、あるいは学校像を破壊してくれる物語がスカッとするものがあったし、そう思うことができる

カエル「正攻法の教師では救えないものがある、と」

 

主「……自分はGTOも”最終回が綺麗な作品”の1つだと思っている。

 字幕で『Q あなたにとって 学校ってなんですか?』

 『Q あなたにとって 教師ってなんですか?』という質問が出てくる。それに答えているヤンキーの若者たちがいるけれど『勉強は塾でやっている』『女子受け狙ってる奴がいる』とかさ、そういうのって、あるじゃん。

 自分もどちらかといえば、学校とか教師とかに反発する方だから、その気持ちはよくわかる。特に、思春期の頃なんてそうじゃない。親や大人の正論なんてものが、うざったく感じられる時期でもあって」

 

そういう色々な感情があるからこその思春期でもあるしね

 

”正しくない教師”だからこそ、届く部分がある

 

主「それこそ、アンパンマン論でもあるんだけれど……絶対的に正義の存在、善の部分を持つアンパンマンの言葉だからこそ反発してしまう。

 一方で、悪であるバイキンマンの言葉だからこそ、耳を傾けるところがある、

 そういった意味では”言動は間違っているけれど、根っこは間違えない大人”としての鬼塚はとても重要なんだよ」

 

カエル「ふむふむ……だけれど、時代はその後の『バトルロワイアル』などに代表されるように、もっと混迷を極めていくわけだ」

主「そうそう。

 なんであの時代に中学生がクラスメイト同士で傷つけ合う話があれだけ流行ったのは、必然だったと思うんだよ。そういう荒唐無稽なような、だけれど学校という対人関係などのストレスの吐口となるような、究極の手段としてのバトルロイヤル。しかも選ばしものではない、普通の学生たちってね。

 他にも『リアル鬼ごっこ』みたいなのも流行っているし……そういうものが学生・児童の中で求められている時代だった。そこをぶち壊してくれる存在としての”必要悪”としての鬼塚という存在が、響いたのだろう

 

 

 

GTOの物語論

 

ヒロインとしての神崎麗美

 

あれ、GTOのヒロインって冬月ちゃんじゃ……

 

……原作の冬月ちゃんって、そこまでヒロイン感もないしなぁ

カエル「いやいや、誰もが認める公式のヒロイン像でしょ?」

主「う〜ん……むしろ村井の母親の方が、まだヒロインやっているような。

 というかさ、久々に読み直すと、あんなにエ……いや、美しい母親だったとは。冬月ちゃんってそこまで魅力も感じなくて……やっぱり、ドラマ版の影響があまりにも強すぎるのではないかという印象も……」

カエル「とりあえず、麗美の話に行こうか」

 

主「本作の中で1番ヒロイン力を発揮しているのは、やっぱり麗美でしょう。

 IQ200という超天才児である女子という意味でも、鬼塚と何から何まで真逆の人間として設定されている。もちろん、バカをやったときに容赦無くツッコミができる存在」

カエル「今の時代ではセクハラ描写などに対する風当たりはさらに強くなる一方だけれど、”イスでぶん殴って血を吹き出す〜”なんて過激なようにもみえるツッコミ表現があると、それもまだ笑いになるというか。

 下品な下ネタは『この人サイテー』って笑えるかどうかだけれど、それが成立するのは、時代性もさることながら、麗美がいるからなのかもね

 

 

基本として、GTOって同じことを繰り返しているのね

 

主「それは雅もそうだし、麗美などほとんどの問題児がそうなんだけれど、基本は”家族・教師に裏切られた生徒が暴走する”という話だ。その問題を、鬼塚が序盤の名シーンとして名高い壁をぶち壊すシーンのように振舞うことによって、ぶち壊していくことで爽快感を得るわけだ。

 しかも、あの『父親は冷蔵庫』の設定のように、クローン技術というのは羊のドリーもあって、身近なSFでもあった。それこそ『ガンダムSEED』のナチュラルVSコーディネーターの対立にもあるようにね。

 そういった部分も反映されていたんだと思うわけですよ」

 

GTO

GTOドラマスペシャル

 

恋愛漫画としてのGTO

 

基本的にはヤンキー・教師漫画だけれど、今回読み直していて一気に評価が上がったのがこの分野です

 

恋愛描写の描き方がすごく上手いよね

 

カエル「元々、”現代における恋愛描写は難しい”ということは何度も語ってきていて……簡単にまとめると

 

  • 恋愛のタブーが少なくなって物語の障害が生まれにくい
  • タブーを描くと炎上する可能性がある(高い倫理観が求められ始めている)

 

 ある種矛盾するようだけれど……例えば、今では『ロミオとジュリエット』のような生まれなどによるものは恋愛のタブーとしては違和感があり、物語が作りづらいです。

 だけれど、じゃあタブーを物語の壁として設定しようとすると……一番わかりやすいのは”教師と生徒”だろうけれど、読者・観客どころか、全く作品を知らない人が反対運動を起こす可能性があるというね」

 

主「まあ、SNSの発達の負の側面だわ。正義面しているから、余計に厄介。

 この時代はまだ、その手のタブーを描くことに比較的寛容だったのではないだろうか。それでもPTAなどはちゃんとうるさいし、なんでもOKというわけではないけれどさ。

 で、この作品は『教師と親』『教師と生徒』といういくつもの壁を発生させているけれど、鬼塚は恋愛することができないキャラクターである」

 

……童貞を捨てたら鬼塚というキャラクター性が崩壊するもんね

 

その代わりとなったのが吉川たちだろう

 

カエル「鬼塚は朴念仁とはちょっと違うかもしれないけれど、誰の気持ちにも答えられないキャラクターとして設定されているわけじゃない?

 あの性格、乱暴者、だけれど性に関してはエロ野郎だけれどどこかピュア、だからこそ読者もついてこれるわけで、あれで本当に性欲モンスターになったら、誰もついてこれなくて……そのギリギリのバランスをついていたし」

 

主「で、その代わりとなったのが吉川であるわけだ。

 こちらも鬼塚と真逆で虐められっ子だけれど、鬼塚の1番弟子と言える存在だ。その恋愛相手となるのが、過酷に虐めていた上原杏子だったけれど……このいじめっ子と虐められっ子の恋愛劇というのは、少し賛否があるかもしれない。

 でもなぁ……やっぱり、ラスト付近の『5cmの向こう側』はバリバリの名作回ですから!

 あのラストのポエムは震えた

 

カエル「この漫画最大の恋愛ポイントだからねぇ」

主「同時に、鬼塚という存在が明らかに変えていったものでもあるわけだ。

 ネットの普及などもあって新時代が訪れた一方で、援助交際やネットいじめなども出始めた。

 だけれど、変わらない学生らしさもある。

 その両者を捉えた描写だったのではないだろうか」

 

 

 

 

天使部隊以後のGTO

 

後半は、正直失速した感もあるよね?

 

天使部隊以降、大門校長が出てきてからは……どうなんだろう、ちょっとだけ微妙になった感もあるかな

 

カエル「それでも、ここは重要なシーンでもあると」

主「……なんかさ、2005年ぐらいかなぁ、ケータイ小説がめっちゃ流行った時期があって。その中で恋愛だけでなく、レイプ、妊娠、自殺未遂、恋人の死などのショッキングがことが山のように詰め込まれていたわけだ。まあ、安易な作品だなぁ……とは思うよ。今でもそういう作品は嫌いだし。

 だけれど、最初にネット掲示板で話題になった時、それが創作かリアルな話なのかは、少なくとも議論にはなるようなものだった

 

カエル「ネットという匿名な環境だからこそ、その凄惨とも言える過酷な現状が受けれられたのかなぁ」

主「少なくとも『あり得そうなこと』という感覚はあったんだろう。

 で、常盤愛のように男たちに性的暴行を受けた人もいれば、教師に手を出される女子生徒の存在であったり、あるいは鬼畜クラブのような男たちが、名門と呼ばれる高校でもいることがあり得ると、感覚的に抱いていた。

 そう考えるとエヴァ→GTO→バトルロワイアル→恋空(ケータイ小説)という流れというのは、95年から05年くらいの、若者や学校の環境の一面をしっかりと捉えていた、というのが今回の結論となるわけだ

 

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歪んだ教育社会の被害者たちは誰だったのか?

 

天使部隊や大門校長は、決して引き延ばしのためのものではないってこと?

 

後半の物語は、明らかに前半を踏襲しているのが特徴的だ

 

カエル「雅をけつドンで落としたりするのは麗美の時と同じだし、クレスタの破壊なども何度も見てきたから、正直”またか”って意見もあるかもしれないけれど……」

主「でも、そこって鬼塚が来てからの変化を描くための部分だと思うんだよね。

 鬼塚英吉という男が出てきたことによって、教頭が自身のクレスタよりも大事なものを思い出し、それを犠牲にする決断を下した。

 正直、雅の部分はかなり作ったなぁ……感があったし、連載物の宿命とはいえ前半と整合性が取れるのか? 納得できるのか? という思いもあるけれど、ああいうまとめ方にしたのもわかる」

 

そして大門校長などの存在はどう解釈するの?

 

自分がGTOを最大限に評価するのは、単純な”大人VS子供”にしなかったことだ

 

主「例えば……時代は違うけれど『ぼくらの7日間戦争』のように、大人たちに歯向かう作品だってあるわけだ。学生運動の残りのような、さ。

 だけれど、GTOはそこ”だけ”を選ぶことはなかった。必ず親や大人が狂っていきながらも、成長や更生の余地を残していたし、実際多くの大人は更生した……はず」

カエル「全員が全員ではないにしろ、ね」

 

主「つまり、あの時代に狂っていたのは子供たちだけではなかった。

 大人たちも狂っていたし、迷っていたし、子供に向き合えていなかった。

 その社会批評性はすごく真っ当だと思うし、だからこそ大人を排除すれば全て解決というわけではない。

 そして、大人たちも一方的に子供を導く存在ではなくて、鬼塚のように欠点を抱え、ある意味では子供たちの方が大人、あるいは能力が高いながらも、でもめちゃくちゃな馬鹿なヤンキーだからこそ助けるものがある。

 その意味では、本当に多様的で真面目な漫画だなって思うよ。

 自分の感覚としては”個性の尊重教育””ゆとり教育””総合の時間”とか、今でもなんの意味があるのかわからない学校改革があった。誰もどうすればいいのか、わからないんだよ。答えなんて絶対にない問題だし。

 その学校や教育の改革を物語という面で果たそうと試み、それが社会現象を巻き起こしたのがGTOだった、という、そういう評価になる作品です

 

 

 

 

まとめ

 

では、ここでまとめです!

 

  • エヴァなどが描いた若者の感覚を捉えた傑作
  • 優等生たちが暴走する、その思いの源を描こうという意欲作
  • 学校教育の革命を物語の面から達成しようとした

 

やはり、社会現象級の話題になる作品になったのは必然だよ

 

主「実は、ここで語ったことは他の学園もの、あるいは今の教育のも繋がってくると思っている。

 逆に、今の若い子が何を考えているのかは、ちょっとわからないから……それは10年後くらいに『なぜあの作品が流行ったのか?』ということを誰かがまとめてくれることを、期待したいかな」