物語る亀

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物語愛好者の雑文

テレビアニメ『BNA』最終回(全12話)感想&評価! 世界を取りに行ったメッセージ性が前面に出すぎたか?

 

それでは、Netflixで先行公開されている『BNA』の最終話までの感想になります!

 

 

 

trigger作品ということで、注目している人も多いのかな

 

カエルくん(以下カエル)

「ちょうど『プロメア』の配信なども始まったという話だし、これを機に更に注目度を増して貰えばいいね!」

 

「間違いなく、これからの日本アニメ界の中でも存在感を発揮するスタジオだからね」

 

カエル「それでは、早速ですが感想記事のスタートです!」

 

 

 

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感想

 

それでは、Twitterの短評からスタートです!

 

 

悪くはないけれど、というところかなぁ…

 

カエル「これから色々と語る前に、とりあえず全体的には悪い作品では無いよね。triggerということもあって、一定以上に楽しめることは間違いない作品というか……」

「アニメーションとしての技術も面白いし、キャラクター性もいい。

 ある種のアイドル映画のような表現もあって、力を入れているのが伝わってくる。ただ、一方では……じゃあ過去のtrigger作品、それこそ『キルラキル』『プロメア』などの今石作品や、それこそ吉成監督の『リトルウィッチアカデミア』にも勝るほどの、なんらかの魅力や特徴があったかと言われると……自分としては首を傾げる部分もあるかな」

 

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カエル「もちろん、人によってはそれらの作品よりも上だ! という意見もあるのかもしれないけれど……」

主「ただ、残念なことに2020年春の新作アニメの中でも、じゃあ特別盛り上がってますか? と言われるとねぇ……このあたりは正確なデータがあるわけではないから、個人の実感にはなるけれどさ。

 『SSSS.GRIDMAN』などの盛り上がりに比べたら、どうしても一歩劣ると言わざるを得ない部分がある。一気に公開されたこともあるのかもしれないけれど、Netflixのランキングでも総合上位に入っているのを、自分は見たことがないんだよねぇ。

 昨年の『プロメア』の大ヒットもあって、監督が違うとは言え、スタジオや脚本を務めた中島かずきの知名度・人気は共に高い割には、いまいちハネないのは意外だったかも」

 

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何を物語の目的とするのか?

 

悪くない作品だとは思うけれど、そこまでハネなかった理由って何か思い当たるの?

 

う〜ん……みちるの目的が一定じゃなかったということに尽きるんじゃないかな

 

カエル「終盤、物語が明らかに走ってしまったのは1クールで収めるために仕方ないとしても、その目的の問題だと?」

主「元々のみちるの目的は”人間に戻って人間界に帰ること”だったわけじゃない。それが変化していくのはいいんだけれど、目的そのものが迷子になってしまった印象もある。

 みちるという主人公像は、例えばtrigger作品だと『キルラキル』などのように、明確な意思のもとになんらかの目標に向かって全力で突き進むタイプではない。

 どちらかと言えば、周囲に流されるままに目的をコロコロと変えるタイプの主人公だ。

 では、スタートと最後の成長があったのかというと……いや、あったけれど、それは状況に流されるママの行動でもあり、弱かった印象がある

 

カエル「どちらかと言えば士郎とのW主人公であり、あとはなずなとの関係も描いたバディ×2って作品なのかなぁ」

主「事件に関係する部分においては士郎が物語を推進していた。

 で、なずなと士郎が対立して、その間に入るのがみちるだった。

 だけれど、序盤は士郎との関係性が前面に出て、後半はみちるとの関係性が先に出てしまって……どちらも中途半端なバディに見えてしまった。

 その結果、みちるがいることによって、決定的に変化したシーンを見出すのが少し難しいというか……主人公としてのキャラクター性の弱さに繋がってしまった、という印象。

 もちろん、最後にはカタルシスがあるんだけれど、それ以上にガツンとくるものは見当たらなかったというのが、正直な感想かな

 

 

 

 

社会問題の取り入れ方の難しさ

 

他にも気になる部分があるとすれば、やっぱりメッセージ性が前面に出過ぎたことなのかなぁ?

 

語りたいこと・メッセージが前面に出過ぎている感がある

 

カエル「うちでは物語とは3要素があって

 

  • 世界観(設定)
  • キャラクター
  • 展開

 

 ということを語っているよね。

 世界観はそのまま……例えばBNAで言えばアニマシティ・獣人病という設定だよね。

 キャラクターは説明不要のみちるなどの存在。

 展開はそのまんま、伏線の回収・話の構成なども含めてものだよね」

 

主「で、この作品に関してはその3つのどれを語りたいのか? よりも前面に出てしまったもの……それがメッセージ性だ。

 メッセージ性が強いのは、悪いことではない。

 だけれど、それを語ることが前面に出過ぎた結果、物語そのものが弱くなってしまったようにも感じられる。

 それこそ『プロメア』とは真逆な作品と言えるのかもしれない。プロメアはもちろんメッセージ性・社会批評性もあるにはあるんだけれど、一部でその描き方が問題視されたように、後半ではほとんどほっぽり出して、ひたすら物語としての熱さを前面に出したように感じられた部分もある。

 もちろん、それは物語としては間違いではないけれどね」

 

何を重視するのか、何を伝えたいのか、という問題もあるよね……

 

だけれど、この作品のメッセージ性は前面に出る割には凡庸なようにも感じた

 

カエル「……凡庸っていう言葉は、ちょっと過激なようだけれど」

主「う〜ん……前の記事でも語ったけれど、”動物&社会(学校)”を語った作品といえば、『ズートピア』『BEASTARS』などのように、差別問題を語りきった傑作が近年でもあるわけだ。比較対象の少しハードルが高いのかもしれないけれどね。

 近年、triggerって世界を視野に入れているのは間違いない。

 『プロメア』の時に海外吹き替え版をスタジオ主導で演出したことでも、その意思は伝わってくる。

 そして世界で大きな関心のある問題でもある差別などを扱うこと、Netflixで世界にアピールしていくことが大事だということもわかる。だけれど、その描き方の答えが……最初から結論が決まりきっているものに感じられた

 

カエル「人間VS獣人という対立軸にすることで、多数派である人間が好き勝手する圧政者のような描き方などに対する違和感だね……」

主「そしてラスボスの描き方なんだよ。

 彼をラスボスとすることで、白人金髪男性が純血というある種の選民思想は悪だというメッセージを発している。しかも富裕層で……ね。

 これって、今時コテコテの悪役像なわけじゃない?

 そんな映画も山ほど出てきている。自分に言わせて貰えば、昔は悪役が黒人の悪そうな奴だったのか、今では白人の富裕層に変わっただけ、とも言える

 

うちとしては、いつもの語り口ではあるのかな……結構、そういう描き方に疑問を覚えることも多いね

 

一面的というか、それが物語としての深みにつながったのかな? という思いがある

 

主「もちろん、この描き方が良かった! という人もいるだろう。あえてミチルをタヌキのような、ちょっと肌の色を焼けた感じに彩色することで、人種の偏りの問題もどうにかしようとしている。日本人にも外国の人にも違和感のない、ベストな選択だとも言える。

 だけれど、そういう社会的なメッセージを発せば発するほど、完璧なメッセージ性にしない限り、やはりその粗というか、変なところが目についてしまう。

 自分としては最近危惧しているのが、人種や性別などの大きなくくりによる差別問題を解消しようとすることで、目に見えない差別問題を生み出している可能性だ」

 

カエル「こんなツイートもしているね」

 

 

敵対する相手が、果たして本当に弱者たり得るのだろうか?

 

主「この辺りは、自分が敵に感情移入しやすいということもあるだろうけれど……純潔主義・富裕層などを敵とすることが、果たして本当に多様な価値観にたどり着くのだろうか? という思いもある。

 その人たちを仮に排除すれば、それで平和な世界や”正しい”社会が生まれるとは、どうしても自分には思いづらい。

 その先の社会が、本当に理想郷たり得るのか? という疑問がある。

 別に、人間になりたい獣人がいてもいいし、獣人になりたい人間がいてもいい。その選択ができるのであれば、選べるのが大事だと思うというのは、作中でも語られている。

 だけれど自分にはこの作品のメッセージ性そのものが『無意識に選択の可能性を狭めている』ような気がしてしまうのかな。

 獣人であることを奪うことを目的とする敵に対して、獣人であることを奪うことで対抗するという決着のようにも見えたけれど……それって、やっていること同じなんじゃないかな?」

 

カエル「……なんか、某アメコミ超大作の時と同じ話になってきたね」

主「別に純潔だろうが、富裕層だろうがいいじゃんって。それをコテコテの悪役に設定する必要って、本当にあるのかな? それが理想とする社会への道なのかなって。

 自分はその正義には賛同できないなって、そういう話。

 ただし、ジャッキーのように『本物か偽物かは問わず、行動のみで評価する』という態度を示したこともあるし、この描き方が問題のあるものとまでは思わない。

 先ほどから語るように、社会問題を描くことに熱中してしまうあまりに、肝心の物語がおざなりになってしまったのではないか?

 これが、自分の違和感の理由という結論になるのかな」

 

 

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