今回は『ダンダダン』のTV第1期の感想記事になります!
とても面白い、いいTVアニメじゃったの
カエルくん(以下カエル)
どうせ途中で辞めるから各話解説をしなくなったけれど、それをしてもいいくらいに毎回魅力が詰まっている作品だったね!
亀爺(以下亀)
演出・作画の魅力が画面いっぱいに出ている作品であったからの
カエル「今回はスタッフを中心に語っていきますので、そちらに興味がある方はぜひ楽しんでください。
それでは、感想記事のスタートです!」
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Xの短評
#ダンダダン
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2024年12月19日
1期全話見終わりました
原作のテイストを活かしながらも山代風我監督を始めとした若き才能たちが活力を与えたような印象の強い作品で、同時にサイエンスSARUとしては”湯浅政明という才能に如何に挑むか”という課題に対して満点を叩き出した印象です… pic.twitter.com/EfeGsa3WEG
Xに投稿した感想
1期全話見終わりました
原作のテイストを活かしながらも山代風我監督を始めとした若き才能たちが活力を与えたような印象の強い作品で、同時にサイエンスSARUとしては”湯浅政明という才能に如何に挑むか”という課題に対して満点を叩き出した印象です
一部で議論となっていましたが現代としては賛否が割れやすいエロ(セクシー)表現にも果敢に挑戦しながら、際どい話を誰でも観れるように楽しく魅了することができていた作品ですね
原作通りだと思うので2期への繋ぎが若干中途半端なところで切れてしまいましたが、オカルンの成長と考えればここも納得で2期も大いに期待したい1作です
感想
それでは、感想からスタートです
この秋では特に注目の作品であったが、今作も高い評価を獲得したのではないかの
カエル「2024年の秋アニメでは……古い言い方だとどれが覇権かは人によると思いますが、今作の名前を挙げる人は結構多いのではないでしょうか。
うちも非常に楽しませていただいた1作でした!」
亀「映像クオリティも一定以上であり、漫画を活かしながらTVアニメとしても非常に見応えがある作品となっておったの。
キャラクターの魅力、声優陣の演技、音楽など総合的にみて大きな文句がない作品であったかの」
この記事では主にスタッフについて語る予定ですが、大まかにいってどんな感じになりそう?
山代風我監督を初めとして、若き才能が爆発した印象じゃ
カエル「当然正確な年齢はわからないけれど、かなり若い力が結集してできたのではないか? ということだね」
亀「その意味では、今作はアニメ界の1つの未来をみているようであったし、スタッフ陣が今後どのような物語を生み出すのか、その可能性にワクワクした部分もあった。
ベテランの円熟味のある演出もいいが、若い力の未来を感じさせる爆発力もまた魅力的じゃ。そして今作は、そのいい意味での若さが発揮されていると感じたの」
サイエンスSARUの歴史
湯浅政明への挑戦
ここからがこの記事の本題ですが、今作をなぜ評価するのか? というと、それはサイエンスSARUというスタジオの歴史と関係しています
端的に言ってしまえば、湯浅政明という才能への挑戦ということじゃな
カエル「制作スタジオのサイエンスSARUは2013年2月4日に設立した、設立10年ちょっとという、比較的若いスタジオです。2024年5月には東宝が株式を全部買収し、完全子会社となることが発表されました」
そのスタートは湯浅政明監督と、同じくクリエイターで代表取締役でもあるチェ・ウニョンなど数人で立ち上げた
カエル「それでいうと、サイエンスSARUってほぼ湯浅監督の個人スタジオみたいな存在だったんだよね。
実際、短編も含めて2020年ごろまでは湯浅政明が監督を務めた作品も多く『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』などの劇場公開作品も積極的に発表していっていました」
亀「この時代の湯浅監督の精力ぶりはまさに目を見張るものがあり、毎年何らかの新作が発表されているような状況じゃった。
さらにクオリティも高く、うちでは『夜明け告げるルーのうた』や『DEVILMAN crybaby』は年間ベスト級に素晴らしいと高評価をしておる」
ただ、スタジオとしての課題としては湯浅監督に比重が偏りすぎていたのではないか? ということですかね
1人の監督と共にスタジオを閉じるのも、それもそれで1つの選択ではあるんじゃがの
カエル「うちでは工場と工房という言い方をしますが、アニメ制作は工房に近く、その工房に属する職人の技量がダイレクトに品質に現れます。
工場は逆に『誰が作っても同じ製品』を目指しますが、工房はそうもいきません。
それでいうと、サイエンスSARUは湯浅監督の元で素晴らしい作品を生み出しましたが、同時に湯浅監督なしでは何が作れるのか? という問題も抱えていたのではないでしょうか」
亀「監督と共にスタジオを閉じるというのも1つの選択であるし、そこは経営者が判断することじゃがな。
アニメ制作は技術の継承が難しく、1人の天才が作り上げた表現を誰もが継承することができる、というようなものではない。
むしろ、その天才ともにその表現は失われていくという方が、近いかもしれんの。
それでいうと職人、およびアーティストの世界じゃ」
新たなる才能を迎え入れた2020年以降のサイエンスSARU
しかし2020年以降、サイエンスSARUは少しずつ変化していき、湯浅監督のスタジオという状況から脱していきます
山田尚子、霜山朋久、夏目真悟のような他スタジオで活躍していた個性的な監督・演出家を起用し始めたわけじゃな
カエル「実績十分であり、個性のある演出家・監督を招いて、作品制作を行いはじめました。『平家物語』『四畳半タイムマシンブルース』『ユーレイデコ』などが、それに該当します」
個性は失わず、湯浅監督からの脱却を感じさせるわけじゃな
カエル「その後、湯浅監督はX上でサイエンスSARUからの退社を発表していますので、会社としてはここで世代交代という形になったという認識です。
だけれど、個性が強いスタジオというのは変わらず、監督を務めている演出家も上記の3名は絵も描ける監督であり、それぞれの目指すルックなどが確固たる作家性を感じさせる面々となっています」
亀「湯浅監督のスタジオ→個性的な監督のスタジオ、という変化を遂げたのがこのサイエンスSARUというわけじゃな。
なので会社としては湯浅監督の影響や個性を強く感じさせながらも、それぞれの監督の個性、作家性をさらに伸ばそうとしている、尖ったスタジオという印象じゃな」
山代風我監督について
山代風我監督の登場
そしてようやく話は『ダンダダン』になりますが、今作を語る際に1番重要なのは山代風我監督の登場ということですね
今作が監督デビュー作じゃが、うちはとても面白い演出をするなぁ……と注目していた
カエル「今作で最も注目すべきは、山代風我監督が湯浅政明のテイストを保ちながら初監督をやってのけたことにあるでしょうか。
TVシリーズは絵コンテ・演出の人の手腕に大きく左右されるのですが、特に1話、2話は湯浅テイストを大きく感じる出来栄えでした」
亀「この辺りは感覚的なものになるが、例えば1話冒頭の桃が元彼と喧嘩するシーンなどは、明らかに湯浅監督の動きを連想させる出来栄えじゃった。桃の廊下をガラ悪く歩く姿など、まさに湯浅政明の動き、という形にデフォルメされておったわけじゃな」
そう考えると、今作そのものが湯浅テイストの実験場としても成り立つわけか
宇宙人やちょいエロなどの要素も含め、湯浅作品っぽさが満載なわけじゃからな
カエル「もしかしたら、本作は湯浅監督が手がける予定だったのでは? と思うほど、湯浅テイストが溢れる作品だよね。
セクシー表現もそうだし、亀田祥倫が手がけているけれど宇宙人や妖怪デザインも最近では『DEVILMAN crybaby』などのような、自由自在なデザインを連想させたり」
亀「後半も含めて徐々に湯浅テイストは少なくなっていった印象があるものの、全体を通してどのようにサイエンスSARUの強みを活かしつつ、演出するのかということを考えており、それが結果として湯浅テイストへの挑戦になった印象じゃな」
山代風我監督の成長
うちはいつから山代風我監督に注目していたんだっけ?
具体的には『平家物語』の10話じゃな
カエル「重ねて言いますが、TVアニメは監督が全体のストーリーを監督するのに対して、各話の担当は絵コンテ・演出・作画監督の力量が大きくでます。なので、優れた回の絵コンテ・演出・作画監督をチェックすると、その力量がわかりやすかったりしますね」
亀「それでいうと『平家物語』は山田尚子監督ということもあり、どのような演出を行ってくるかに注目していた。
それでいうとこの10話は、とても湯浅監督っぽいというか、サイエンスSARUの強みを活かしているように感じられて、非常に面白かったので印象に残っているわけじゃな」
それでいうと『映像研には手を出すな!』の4話も注目ということだけれど
この話は主要登場人物の3人が初めてアニメを発表する回じゃな
カエル「『映像研〜』はアニメを作る部活動を描いたアニメですが、その4話の絵コンテ、演出を山代風我が務めていました。
4話は発表会で初めて主要人物たちが作ったアニメを上映する、という内容だったよね」
亀「つまり、ここでわしが確認した限りでは初絵コンテ・演出だった山代風我が、アニメを放送することと、映像研の3人がアニメを上映することが一致しているわけじゃな。
その点を見ても、また湯浅監督の他作品の副監督を務めている点からしても、まさに湯浅テイストの継承者としてみてもおかしくないじゃろう。
その山代風我が監督としてこれだけ大輪の華をきちんと咲かせたこと、それがとても面白かったの」
その他のスタッフや印象に残った話について
7話の衝撃
その他のスタッフや印象に残った話はどこ?
やはり7話は欠かすことができんの
カエル「7話は白鳥愛羅とアクロバティックさらさらが中心となる話でしたが、映像演出、作画、音楽、演技などを多方面から称賛された、まさに作画回というのにふさわしい名シーンの多い回でした」
亀「今作の音楽を務めた牛尾憲輔の持ち味が最大限発揮された回とも言える。
そして何よりも映像面が素晴らしく、特に絵コンテ・作画監督を務めた榎本柊斗の力量を高く評価する声も大きく、演出を務めた松永浩太郎もまた、見事に映像を支えていた。
この両者の力が発揮された7話は、特に称賛するべき回となっていたの」
OP、EDの魅力
それからOPとEDも好きで、毎回飛ばさずにみていたもんね
特にOPはAbel Góngora(アベル・ゴンドラ)の演出力が冴え渡っていたの
カエル「アベル・ゴンドラは元々ヨーロッパのカートゥン・サルーンに所属していたアニメーターで、日本ではサイエンスSARUに所属後は湯浅監督と共に作品を制作し、ディズニープラスで配信されたスターウォーズの短編『T0-B1』の監督なども務めています」
亀「このOPはもちろんCreepy Nutsの楽曲もいいのじゃが、それに合わせた映像の快感がとても強い。
特に上記の動画では57秒のセルボ星人のダンスなどは癖になるし、1分07秒からの駆けるシーンなどは『ピンポン THE ANIMATION』のOPの大平晋也も連想するほどの荒々しさがいい疾走感を生んでおる。
国際色豊かなスタジオだけに、その強みがはっきりと活きたOPじゃったの」
それにEDも可愛らしくて良かったね
副監督も務めたモコちゃんのEDじゃな
亀「割と過激な描写も多い物語だけに、このようなゆるりとしたEDで締めるのは終わりとしてとても重要じゃな。
ターボばばあの招き猫姿を動かすことで日常感を作ったのは、可愛らしさと共に今作が持つコメディ要素をより際立たせる、いいEDだったのではないかの」
物語について
物語に関しては原作もあるので、そこまで大きく脚色できなかったと思うけれど、どう感じた?
中途半端なところはどうしても否めんが、ジジの家で切ったのは1つの見せ方を意識したんじゃろうな
カエル「ジジの家の話が途中ではあるから、キリが悪いといえば、まあそうなのかなぁ」
亀「ただ、オカルンの成長譚と考えれば、ここで切るのは理解できる。
最初は友達もいなかったけれど、桃と出会い、さらにジジと友人になって普通の友人関係を結ぶことができた。そこを1つの物語の帰結として1クールの締めとするのは、理解できるし、原作を大きく改変することなくできるいいオチだったのではないかの。
2期への引きができたと解釈するれば、ここで切るのもも決して悪くはないのではないかの」
最後に
というわけで、高評価の『ダダンダン』1期のレビュー記事でした!
とてもいい作品じゃったな
カエル「特に若い力が爆発! って感じがして、それが好印象って形なのかな」
亀「山代監督はまだ30代前半じゃし、その他の人も正確な年齢はわからないが30代から40代前半が中心という印象じゃ。
その若い力がこれだけのエネルギーのあるTVアニメを生み出したという事実が、とても面白かったの。
このエネルギーを武器に、また2期に挑んで欲しいの」