今回は伝説的実写邦画の『僕らの七日間戦争』のアニメ映画版のレビュー記事になります!
……今更この映画をやるの?
カエルくん(以下カエル)
「発表の時もびっくりしたよね。現代でこの映画をやるんだ〜ってことで……」
主
「それこそ『時をかける少女』みたいな作品にしたいのかな?
正直、もう時代に遅れてしまった感もあるんだけれど、それがどのようになっているのか? も含めて、楽しみかなぁ」
カエル「では、早速記事のスタートですが……今回も長いので、ご了承ください」
感想
いつものようにTwitterの短評からスタートです!
#ぼくらの7日間戦争
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年12月13日
大大大傑作!
2019年の青春映画や一部の大人に抗うアニメ作品の精神を内包し、かつての邦画作品の魂を受け継ぎつつアップデートした語るべきことの多い大傑作!
中盤から終盤は何回涙が出てきたことか…
公開初日に真っさらな状態でこの映画を観たことを嬉しく思います! pic.twitter.com/TQJhrVIb7H
2019年最も舐めていた映画かもしれない……衝撃の大きい、大傑作です!
カエル「実は、うちは公開前の段階ではそこまで重視していなくて……月一で行っている映画語りの動画配信『おれなら』内でも”そこまで期待感はない、正直はずれだと思っている”と発言していたよね」
主「いや、本当に申し訳ないことをしたと思います。
予告編では映像クオリティも特別高いとは思わず、また『僕らの7日間戦争』という作品そのものが……自分は邦画版しか見ていないけれど、現代にはそぐわない話だと思っていた。それは後述するけれどね。
でも、実際に映画を見て驚愕した。
これは”現代の僕らの7日間戦争”に仕上がっていたし、2019年の映画ランキングでも上位に位置付けする作品となっている」
大満足な1作で、何度も涙を堪えているような感じだったもんね
青春映画として、子供達と大人達を描いた作品としても2019年屈指だったと思います!
カエル「うちでは”青春映画に1番重要なのは、登場人物達の青春を詰め込むことだ”と述べているけれど、今作はアニメ映画でありながらも、その青春が感じられたの?」
主「もう、青春感が伝わりますよ!
もちろん、自分はもうすでに青春は過ぎた人間なんだけれど……それでも通じるものがあったし、なんならば2019年の傑作青春映画や一部のアニメ映画にあった思いを見事に汲み取った作品でもあった。
確かに近年話題となった有名映画の面影はたくさん感じるけれど、それを昇華してオリジナルにした力を褒め称えたい!」
カエル「予告編ではイマイチと思っていた映像クオリティはどうだったの?」
主「とても良いよ!
確かに、全編に渡り超絶作画があるとか、あるいは背景描写が綺麗とか、いちいちリアル感のある絵があるとか、バトルシーンが迫力あるとか、そういう魅力はないかもしれない。
でも作品の規模と内容に合致した中できっちりと魅せるべきところは魅せていた。そして音楽との合わせ方、物語の展開の仕方、伏線の貼り方、メッセージ性……どれも力があるし、挑戦する意思が感じられる。特に音楽の合わせ方は邦画版も見事だったけれど、今作もまた見事なんです!
だからこそ、自分は高く評価する作品であるし、評価しなければいけない作品とまで感じるね」
実写邦画の『ぼくらの7日間戦争』について
〜現代と大きく異なる時代性〜
過去の実写邦画版の『ぼくらの7日間戦争』についてはどう考えているの?
最近見たけれど、なんだか悲しくなってくる話だなぁ……と思ったかな
カエル「あれ? 物語時代は大人VS子供で、いたずらを繰り返しながらも大人達を撃退していく姿が魅力的な、楽しいジュブナイル向け映画だったんじゃないの?」
主「かつて存在していた”子供向け(ジュブナイル)実写邦画”の1つだよね。最近だと少子化の影響もあって、ほとんどなくなってしまったジャンルだけれど『学校の怪談』とか怪獣映画、それこそ山崎貴の『ジュブナイル』もそのジャンルかな?
でさ……時代が違うからだけれど、あれはものすごく悲しくなる作品だった。
あれは”全共闘の夢をもう一度”ってことだと思うわけですよ」
カエル「映画の公開年度は1988年だから、もうその全共闘時代などは過ぎているような印象もあるけれど……」
主「大人という権威に対する対立として、立てこもりイタズラで戦うことを選択する。児童向け小説では”イタズラ”というのはよく出てくるモチーフであり、対象年齢は違うだろうけれど『かいけつゾロリ』シリーズに似た楽しみ方があるとも言えるだろう。
だけれど、彼らは権威的な大人=教師や警察に対して立ち向かうけれど、結局は勝利条件はない。
ただ単に反抗したいから反抗する。
それだけといえばそれだけの話であり、絶対に負けるとわかっている戦いに熱中するけれど、最後はなぜか戦いに勝って終わる。
だけれど、じゃあ彼らの日常が何か変わったのか? というと、実は何も変わっていないのではないか?
結局学校には通うし、革命が達成できたとは思えない。
見所としては……若き日の宮沢えりが可愛いこととかじゃないかな? あのコックさんの小僧は好きだけれどね」
戦う相手がいない現代の子供達
そのまま現代に蘇らせても、多分今の子供たちには届かない作品だよね
だって、大人VS子供が成立しにくい時代だもの
カエル「過去にもこのような記事を書いていますが、1980年代と現代ではそもそも社会状況が違いすぎるからね……」
80年代はまだ対立する価値観や相手がしっかりといた時代なんだよ
主「実写版を見ると、学校のあまりの息苦しさにびっくりする。
そして”あるべき大人の姿”というものがはっきりしていて、そこに当てはまるように子供たちも教育されている。それがとても嫌になって、子供たちは反抗する。
つまり、子供たちは明確に”反抗する価値観”を持っているんだよ。
だけれど、現代は多様な価値観が進んだことによって、子供たちが反感すべき相手もいない。
政治も道徳も大人も、子供にとっては反抗する相手とは足り得なくなった」
カエル「え? じゃあ、今の子供たちは何から反抗しているの?」
主「反抗するものなんてないんだよ。
今は大人が”大人とは何か?”ということに答えられない。子供たちに何を教えれば良いのか、あるいは言葉を変えればどんな価値観や考えを押し付けるべきか? ということの答えを持っていない。
”男(女)らしく”も意味をなさない時代となった。
そんな時代で子供たちは何と戦うのか? 何から抗うのか? ってこと。
かつては不良やヤンキー作品のように世間に対して突っ張ることが青春だったとも言える。
でも今はそんな時代ではない中で、その中で彼らは何と戦うのか? ということを描いたのが、この作品なわけだ」
アニメ映画版について
スタッフ陣に対する印象
今回、監督を務めた村野佑太監督は今作が映画はデビュー作となります!
まだ30代と若い監督なんだね
カエル「今作では初めましてとなるけれど、どんな印象を抱いた?」
主「正直いうと、まだなんとも言えない部分が大きい。テレビシリーズで監督などを手掛けた作品を見ないとわからない部分もあるだろうし、また今作の場合は原作や実写邦画版の影響もあるから、どこまでが監督のオリジナリティなのかは、判断が難しい。
でもスタッフインタビューなどを拝見すると、バランス感覚が優れているように感じた。
実際に高校生にインタビューしにいったりとした結果が出たのではないだろうか?」
カエル「今作では脚本は大河内一楼となっているね。
うちとしては大傑作の『プラネテス』をはじめ『コードギアス 反逆のルルーシュ』『鋼鉄城のカバネリ』『プリンセス・プリンシバル』などの印象が強い方ですが……」
主「どうだろう、印象としては”大きいもの(権力など)からの反逆”という要素が強い人な印象がある。あと、上記の作品たちは主人公の魅力もさることながら、群像劇として様々な立場の人を描くシーンも多く、今作でもその味は発揮されたのではないだろうか?
それから……今回は監督と共同で絵コンテの他、原画で筆頭に名前が上がる亜細亜堂の看板アニメーターの一人である藤森雅也の影響もあるのではないだろうか?
『忍たま乱太郎』などの子供向けアニメ映画のノウハウがあるベテランアニメーターと若手監督のタッグにより、良い作品が生まれたという感覚があるかな」
藤森監督作品であり、評価の高い傑作!
声優陣について
今作では北村匠海、芳根京子などの芸能人声優も起用されています!
途中から違和感がなくなっていったね
カエル「序盤は『ちょっとどうかな?』と思うシーンもあったけれど、物語に引き込まれたこともあるのか、中盤以降は全く気にならなくなっていたね」
主「北村匠海は『HELLO WORLD』でも声優経験があるけれど、現代の草食系とまでは言わないまでも、ちょっと奥手な男の子を声から演じられる役者さんなのかな、という印象。
また芳根京子も『ボスベイビー』の吹き替え経験があるようだけれど、正直どんな演技だったか覚えてないかなぁ……吹き替えでみた気がするけれどさ。でも特別な印象が残るわけではなかったけれど、悪くなかったと思う」
カエル「また、今作では邦画版に出演された宮沢りえが重要な役で登場です」
主「声の演技は声優に比べると違和感があるかもしれないけれど、でもそれが却って良い味が生まれたと思っている。彼女は予告にもあるように”かつての7日間戦争を知る人”というのが重要なわけだからね。
その意味でも宮沢えりにしかできない役だったし、良い味を発揮したのではないでしょうか」
カエル「本職声優に関してはどう?」
主「文句なしです。
逆に言えば、みんなきっちりと演技をしている分突出して素晴らしい印象を残す人はいないかもしれない。でもそれはバランスが良いということだからね。
強いて言えば……小生意気で活発な子供を演じさせると上手い印象のある小市真琴と、あとは”大人の中の子供っぽいキャラクター”を演じた櫻井孝宏、関智一はそれぞれ違う大人の中の子供らしさを発揮していて印象に残ったかな。
重ねて言いますが、誰が良い、悪いではなく、みんなバランスが取れていてよかったです」
以下ネタバレあり
作品考察
〇〇っぽいが多い作品
では、ここからはネタバレありで語っていきましょう!
まずは……今作の中にある〇〇ぽいについて語っていこうかな
カエル「ちなみに、この作品を見ながら連想した別作品は、以下の通りです。
- 細田守作品(特に時をかける少女やデジモンなど)
- 新海誠作品(特に天気の子)
- 打ち上げ花火、横から見るか、下から見るか
主「他にも色々あった気もするけれど、とりあえずは以上の作品かな。
つまりは、近年公開された夏アニメ映画。というか、なんでこの映画がこの時期に公開されているのかは、ちょっとよくわからないかなぁ……やっぱり夏に公開するべき映画だよね」
カエル「色々な制作上の事情などもあったんじゃないかな?」
主「まあ、それはそれで良いんだけれどさ。
おそらく、細田作品のように見えたのはキャラクターデザインなどに貞本義行っぽく見えるからかな?
あとは夏映画のお決まりの入道雲演出などもあって、冬の時期にはそぐわないようにも見えてしまった部分はあるかな」
カエル「今年も夏は大激戦だったし、そこを避けたのかな?
それでも冬も負けじと大激戦にぶつかってしまったのは、勿体ない面もありますが……」
主「こればっかりはねぇ。
あとは今作の場合は”動かないシーン”も魅力があった。アニメって動くシーンの魅力が大きいのは確かだけれど、背景などの美意識を感じた。それと大事な舞台である工場もパンフレットで”第8の登場人物”と語るように、前作を連想させながらも様々なギミックや、廃屋ならではの美しさも兼ね備えた作品だったのではないだろうか」
背景や動かない描写もしっかりと美しい
心なしか、新海誠や細田守っぽさもある?
(C)2019 宗田理・KADOKAWA/ぼくらの7日間戦争製作委員会
大人って何?
では、物語の面について語っていきましょう
今作の大きなテーマとなるのが、ここの”大人って何?”という部分だよね
主「今作でも踏襲されているのが”大人VS子供”の視点である。そのため、今作の敵となる存在は教師ではなく、親。特に綾の親である政治家の秀雄だ。ここで地方都市の政治家というのも”この地域を牛耳る権力者の大人”という、何も持たない若者が反感を覚えるであろう存在を相手にしている。
こういう部分は大人VS子供として重要な一面であり、ドラマを作る上では絶対に必要だ」
カエル「だけれど、先にも述べたようにそのテーマだけだと現代の物語にはなり得ないって話だよね?」
主「だからこそ、本作は以下のような工夫を取られている」
- 中学生→高校生に設定の変更
- 大人の中にも子供をいれる
- 高校生たちの中に外国籍の子供をいれる
パンフレットなどでは『大人・若者・子供と3つの階層』とあるけれど、自分は4つの階層を作ったと思っているんだ
カエル「つまり
- 政治家の父親や警察官たちの大人
- 大人たちの中でも少年らしさを残した若者
- 主人公たちの高校生組
- マレット(子供)
の4つの階層だね」
主「この中で明確に大人、あるいは子供と言えるのは政治家たち大人組と、マレットだけ。それ以外は大人の部分と子供の部分が半々か、あるいは7・3くらいの割合で含まれている。でもさ、それって当たり前じゃない?
100%大人です! って人がどこにいるのよ?
成人すれば急に大人になるわけじゃないでしょ?」
カエル「『30歳ってもっと大人だと思っていた』とかは、よくある話だよね。年齢だけで分けられない部分というかさ。
考え方によってはマレットも結構大人な考え方の部分もあるのかもしれないし、逆に政治家の秀雄が1番子供のようにも見えてくるしね」
主「この作品の根幹を為す”大人って何?”というテーマに対して、真っ当に向き合っているとも言えるわけだ」
大人になる通過儀礼の1つ”家出”
今回も家出が大きな意味を持つ作品だけれど……
家出や冒険って、物語の中では子供の成長のために特に重要な意味合いを持つんだよね
カエル「それこそ往年の名作では『スタンド・バイ・ミー』もあるし、あるいは『オズと魔法使い』『千と千尋の神隠し』なんかも、家出とは違うけれど冒険のお話だよね」
2人が険しい道を行くかのように家出を志す絵だけでも素晴らしい
(C)2019 宗田理・KADOKAWA/ぼくらの7日間戦争製作委員会
主「自分の周囲にある閉じられたコミュニティからの脱出というのは、人を成長させて他の世界をじっくりと見させてもらえるものだからね。
この映画で面白いのは、多くのシーンで”密室”であることではないか? と思うわけですよ」
カエル「そう言えば守たちの教室から物語は始まるけれど、密室とは違うけれど、ある種の閉鎖的な空間から話が始まるね」
主「敵である秀雄は車の中から偉そうに口を出すけれど、それは彼が小さな閉じた世界の王様であることを示しているように思える。
当然、最後のシーンとの対比になっているけれど、綾は車の外にいることも含めても”大きな世界にいる綾VS小さな世界にいる秀雄”という対比にもなっているわけだ。
その意味ではあの工場だって、彼らを守る大きな殻のようでありながらも、実は檻の側面もあるのかもしれない」
彼の狭い世界を表しているかのような構図
典型的な親子の構図とも言えるかもしれない
(C)2019 宗田理・KADOKAWA/ぼくらの7日間戦争製作委員会
前作を踏襲しながらも安易な選択をしなかった部分
ということは、あの感動的なラスト付近の夜空の中のシーンも……
あれは実写版を踏襲しながらも、さらなる先にいったよね
主「実写版でも外を眺めるシーンがあったけれど、それを大きく超えて行った。
自分は安易な選択をしなかったと思うのは、戦車に対する扱い。
実写版では子供たちの切り札である一方で、まるでファンタジーのようにも見えるし、一線を超えてしまった感もある。その戦車が”学生運動の夢の果て”のようにも見えた部分があるのかもね。
でも、今作はその戦車に該当するものをああいう形で生み出したでしょ?
そこは映像的にも美しく、また溜めに溜めた地下道や固定された工場の中の描写が多いからこそ、そこからの開放的な面がさらに際立っていったね」
カエル「そう考えると、空間の使い方が上手い作品なんだね」
主「そうそう。
序盤だけれど”大人たちに閉じ込められる”というのは、彼らを大人の既成概念に閉じ込めることのメタファーとしても成り立つ。
そして、その手の無意識は観客の中にも山のように存在する。
あのSNSを通じての彼らに対する声というのは、この情報化社会では最大の恐怖だろう。自分は非常に恐怖を感じたし『やったことの責任をとれよ、ガキども』というのは、今のTwitterなどでは普通に飛び交いそうな発言じゃない?」
そう言えば、なんか今年はこの手の”友達の同調圧力が怖い”って青春映画があったような?
最近だと『フラグタイム』がそうだったかな
主「あの綾の思いというのも、自分は全くの予想外の方向だったんだよね。
『まじか!』と思う一方で、心であまりの衝撃にガッツポーズしていた自分がいる。その前の守の告白に関してはあの展開を心待ちにしていたけれど、その先をいってくれて……これは完全に予想外。
2019年1番衝撃を受けたシーンかもしれない。
でも、それだけ自分の中に思い込みや偏見があったということもできるわけだよね。つまり、これも1つの”閉じ込めるもの”という事になる。
それらからの開放を描いた作品として、自分は鳥肌が立つほどの衝撃を受けたからこそ、これだけ絶賛している部分があります」
カエル「あとは、実は対して告白することがなかった紗希も笑って受け入れたことも良かったよね。別に告白の内容が重要だったわけじゃなくて、心を開くこと、開放することが重要だったというのが、よく伝わってきたね」
物語の鍵を握るマレットの問題
今作で1番重要なキャラクターといえば、やっぱりマレットになるのかな?
マレットの存在がこの映画を魅力的なものにしているね
カエル「ちょっと序盤に文句が出てきそうなのもわかって、最初の方は『え? そんな初めて会った子供のためにそこまでやる?』という思いもあったけれど……
あの辺りは原作や実写版の展開をなぞる意味もあるから、仕方ないのかな?」
主「序盤に関してはどうしても走ってしまって、惜しいなと思う部分が多かったのも事実。
今作は88分で90分以内に収めなければいけなかったんだろうけれど、95分くらいあればまたしっかりした傑作になったかもね。
で、マレットの話を戻すと……彼は”異質な存在”の象徴なんだよ」
カエル「実写版で出てきたホームレスのおじさんとか、原作にいるという元軍人みたいな扱いなのかな?」
主「そうそう。流石に現代で元軍人はないし、彼らとコミュニティの違うところにいる存在となると、外国人の子供ということになるのだろう。
同時にドラマが展開しやすく、また社会性も帯びながらも、そこまで説教臭くない物語になっている。
邦画版などでは勝利条件がなかなか見出せず、結果的に脱出して終わり!? となる部分もあったけれど、今作の場合”マレットを親元に帰す”というのが勝利条件となっており、物語にカタルシスが生まれている。
この辺りも良改変ですね」
マレットに対する行為は社会問題としても意味がある?
(C)2019 宗田理・KADOKAWA/ぼくらの7日間戦争製作委員会
やっぱり、高校生たちの子供性をじっと見つめる役割があるのかな? 大人(高校生)たちを冷静に観察し、批評する役割というか
そして同時に非常に大切なのは”大人VS子供の否定”だな」
カエル「え? それがメインテーマじゃないの?」
主「メインテーマであると同時に、そこからの脱却も計画しているんだよ。
作中で『親のことが嫌いな子供はいない』みたいなセリフがあって……個人的にはそれはどうだろう? という思いもあるけれど、今作の場合はそのロジックで正解なわけ。なぜならば、高校生たちや子供たちもいつかは大人になるわけだから、その大人性を否定しつつも、そこで抗っていてもしょうがないわけ。
だから、彼らの……特に綾が抱えていた”大人に対するわだかまり”という部分を、マレットが引き受けて、それを感動的に融和を描き出したわけだ」
カエル「きちんと秀雄には罰を与えた後の、あの最後の展開だもんね」
主「もしかしたら……結局のところ、高校生組の状況そのものは何も変わっていないのかもしれない。
綾は転校して、それ以外の生徒も自分の日常に帰って行った。
でも、確かに変わったものがある。
それが自分の心であり、物事への受け止め方であるわけだ。
自分の大好きな坂口安吾の言葉を『不良少年とキリスト』から引用すると『人間は、決して、勝ちません。ただ、負けないのだ』ということです。
彼らは”勝つための戦い”ではなく”負けないための戦い”を挑み、そして通過儀礼を終えて元の生活に戻って行った。
それは青春映画において、とても重要なことだと思うよ」
カエル「……最後にどうでもいいけれど、最近太宰治に関する作品が続いたから、坂口安吾が太宰について語った『不良少年とキリスト』の言葉が頭に残っていたのかもね」
まとめ
では、この記事のまとめです!
- 2019年、最も舐めてた大傑作青春アニメ映画の登場!
- 動く絵も、動かない絵も美しく引き込まれる
- 大人VS子供にとらわれない部分も!
ぜひヒットして欲しい、オススメしたい作品です!
主「ちなみに言うと、やっぱり自分も『天気の子』を連想してさ。大きな権力とか大人として(社会人として)のあり方などに疑問を呈した作品としても、語る価値があるのではないだろうか?
その点も含めて、いろいろと満足度が高い作品でした」