今回は子供達の下ネタコメディを描いた『グッドボーイズ』の感想記事です!
今週では、注目度が高い方なのかな?
カエルくん(以下カエル)
「コロナ以降で新作公開も再開したけれど、特に洋画が一気にスタートした形だね」
主
「さっさと公開しないと海外で先行上映しているから、ソフト化や配信スケジュールの都合とかもあるのかもな。海外ではもうソフトが出ているらしいし。
もしかしたら公開より先に配信されるみたいな状況になってしまうとか」
カエル「洋画ファンは忙しい日々だろうねぇ。
うちとしては、アニメ映画が早く再開してほしいという思いが強いかなぁ」
主「映画館が平常運転になる日までは、まだまだ時間がかかりそうだな。
というわけで、感想記事を初めて行こうか」
少年たちの好奇心が止まらない!/映画『グッド・ボーイズ』予告編
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#グッドボーイズ
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2020年6月14日
…まぁ、確かに笑えるんだけど…うーん、気になる部分が多いのは自分がつまんない大人になったからなのかなぁ
特に序盤のカット割や演出、音楽の使い方が「あれ、大作邦画だっけ…?」となってしまった
話も散らかってしまっているし…わちゃわちゃしているだけな印象かなぁ pic.twitter.com/32enrWcg0F
個人的には、少し首を傾げる作品ではあったかもね……
カエル「元々、コメディは相性がどうしても出てくるよねぇ。
それこそ、お笑い芸人もそうだけれど万人が笑うネタというのは、そんなに多くないじゃない?
特に本作のように下ネタ要素が満載の作品となると、人によって相性があるから……その意味では、それこそ作品の出来がどうこうというよりも、下ネタなどの相性が悪かったということになるのかなぁ」
主「……なんかさ、ちょっと愕然としちゃったんだよ。
子供の頃は『クレヨンしんちゃんをダメだというPTAはクソだ!』と思っていたし、下ネタにも寛容でありたいと思っていたけれど、もうこういう作品にダメ出しするようになってしまったのか……と」
カエル「なんだかんだで、下ネタとグロテスクな描写に対して厳しいところがあるからね……」
主「比較的寛容な方だと思っていたんだけれど、歳かねぇ」
ただ、コメディとしての相性が悪くても評価できる部分があるんじゃないの?
う〜ん……駄作ではないけれど、傑作ともいえないよなぁ
カエル「せいぜい、凡作ってこと?
コメディ以外の部分もダメだったの?」
主「物語の組み方があんまり上手くないんだよねぇ。
またさ、演出や音楽なども使い方がいまいちで、大作邦画を見ているような気になった。
キャラクター・役者は良かったけれど、それがこの映画の評価を覆すほどだとは思わなかった。
印象としては、それこそ大作娯楽邦画に近い。
ゲラゲラ笑えて、笑いどころも教えてくれるし、派手な演出があるし、事前知識もなく役者たちのアイドル性を楽しむための映画。
文句ばかりのようだけれど、決してメッセージ性がないわけではない。
ただし、この映画の予告でも使われているように『スタンド・バイ・ミー』と比較があるけれど、正直雲泥の差すぎて、比べるのもおこがましいほどだよ」
カエル「……『スタンド・バイ・ミー』はオールタイムベスト10に入るであろうくらい、思い入れが強い作品だからこその言葉と受け止めてください」
コメディとしての下ネタ描写について
下ネタが気になったというのは、どういう部分が?
……なんかさ、この映画の下ネタって親父の匂いがすんだよ
カエル「アダルトグッズで遊んだりと、下ネタの中でもドキツイものがあるからね……」
主「まじで、おっさんの笑いだよ。
バイブを見せてゲラゲラ笑ったりさ、アナルパールで色々とやったり……これを子供にやらされるのは、本当に品がなさすぎて嫌い。これが『クレヨンしんちゃん』ならば、お尻ぶりぶりとからは子供の下ネタだからいいんだよ。
だけれど、今作はあまりにも大人の、しかもおっさんがニヤケながらやるような笑いで、今のテレビで放送ができないレベル」
カエル「……う〜ん、あえてこの言い方をいうけれど、ませたガキだからこその笑いだったとも言えるけれど」
主「あれを女性がやったら、製作陣のおっさんが若い女の子に下ネタやらせて、ニヤニヤと笑っているような光景だよ。それは現代のポリコレ的にもアウトだし、自分としてもその笑いは否定する。
大嫌いな部類なんだよ。
それと同種の気持ち悪さがある部分がある。
もちろん、一部では笑えるシーンもあるし、実際笑った。だけれど……例えば『世界の果てまでヒャッハー』などのフィリップ・ラショーは過激な下ネタも自分でやるし、そこに批評性も宿る。
でも、それを子供にやらせるってどうなのよ? ましてや、アダルトグッズまで持たせてさ……」
18歳未満の人では購入できないんじゃないかなぁ……さすがに、買うことはできるのかな?
ただし、その辺りがこの映画の肝であり、批評性が宿るのはわかる
カエル「明らかにポリコレを意識していて、それを笑ってやろうというものは感じたよね。
あえてこの言い方をするけれど”悪い笑い”を入れることで、今のお利口さんなハリウッド映画の流れを笑い飛ばそうというか……」
主「その点では、コメディとしてメッセージ・社会批評を描き出すことができているという評価もできる。また、子供の成長と大人への変化ということも描いているということもできるんだけれど……でもメッセージ性が弱い印象もあったかなぁ。
もっともっと社会を語って、笑い飛ばしてほしいという思いもある。
ただ、この作品はやり方があんまり合わないなぁ」
以下ネタバレあり
作品考察
脚本について
それでは、ちょっとだけネタバレありで脚本について語っていきましょうか
ここ最近さ、色々と思うところがあるんですよ
カエル「ちょっとだけ別作品の話になりますが……脚本の上手い下手ってなんだろうね? というのは色々な話があるでしょうし、じゃあ自分たちがそれがわかっているのか? と問われると言葉につまる部分もありますが、ちょっとそこについて語っていきます。
で……ここで参考にするのは、広瀬すずが主演を務めている2020年公開の邦画『一度死んでみた』です」
伏線の引き方、その回収というのは果たして”脚本”のうまさなのだろうか?
カエル「この作品自体はどちらかといえば褒めでありますが、グッドボーイズと本作は結構似ている部分があるという話ですね」
- どちらもコメディ調
- 伏線の引き方と回収が目立つ
- キャラクター重視の作品
主「上記のような特徴があるんだよ。
で、伏線の引き方と回収があるんだけれど……それがさ、物語に全く関係しない。
単なるネタとして伏線を引き、笑いとして回収する。メッセージや本筋に影響を与えない、単なる小ネタとして消費されている。
だけれど、近年はこういったものが”上手い脚本”と呼ばれる風潮がある。
だけれどそれはあくまでも技術の1つでしかないわけだ。
もっと上手い脚本というのは……各キャラクターの立場の変化をじっくりと描いたり、あるいは伏線を回収した瞬間に観客を刺すような表現。むしろ脚本が上手いと思われるということは、それは脚本が目立ちすぎているということで、むしろ下手なのかもしれない」
ま、まあ色々な考え方があるということで……最近、この言葉でごまかしが多い気がする
それと物語の作り方が下手なんだよなぁ
カエル「そもそもの構成の問題?」
主「すごくざっくりというと、こんな構成なわけだ」
物語のスタート・キャラクター紹介
↓
キスのやり方を知りたい
↓
父のドローンを盗み出す
↓
ドローンを盗られるので、取り返すための冒険
↓
ドラッグを手に入れる
カエル「中盤の始まりくらいはこんな感じでした。
あくまでも予告などで語られているレベルに留めておきます」
主「ここで彼らの目的は”キスのやり方を知る”だったはずだ。
それがいつの間にか”ドローンを取り戻す”に変化する。さらにそこにドラッグの問題が絡んでくる。だけれど、ドローンもドラッグも彼らの目的であるキスには一切関係ないがないんだよ」
一応、ドローンを返さないとパーティに行くことができないということが語られているけれど……
だから、その時の状況に応じて目的が変わっており、その結果物語の作り方があやふやになっている印象があった
主「それが出てしまった。
例えばドラッグ問題に関しては何1つ解決せず、結局は元の木阿弥になる。ドローン問題も結局スタートよりも悪化する。
彼らが行動したことによって、何1つ問題は解決せず、物語としてはただ振り出しに戻っただけ。
だから、この中盤って全くいらないの」
カエル「いやいや、彼らの友情を描くという点ではすごく大事で……!」
主「最初から仲良いじゃん。彼らの隠れた葛藤が描かれていたりとか、大きな問題が描かれていたりとか、そういう深堀は……0とは言わない。でも弱い。
物語は一直線に進んでいくことが理想だとすれば、この物語はグルリと一周回ってまた元の位置に、しかも何も変化なく戻ってくる。
この戻った時に成長がある、あるいは後々に重要なアイテムを手に入れるならば別にいい。だけれど、ドローンもドラッグもこの先の展開には一切関係ない。
なんも変化していないんだよ。
だったら、この物語は中盤を除いて30分で終わるんだよ。
何も残らない」
演出・音楽の使い方について
そして映像面についてですが……この大作邦画ってどういうこと?
観ている最中、福田雄一とか河合勇人作品を思い出したので
カエル「福田雄一は……まあ、うちも酷評することも多いけれど『勇者ヨシヒコ』『銀魂』などを作った、コメディ監督だよね。で河合勇人は『俺物語』『チアダン』などの漫画原作・アイドル映画を多く手掛ける監督だけれど……」
主「さすがにこの作品は福田雄一よりはレベルが高いけれど、この2人の路線の先にあるのがこの映画だろうなぁ……って。
わかりやすいキャラクターとゲスな笑い。
音楽の過剰な使い方で観客にわかりやすい笑いどころ。
こういったところが多い。その中でもメッセージ性などを宿したりするんだけれど……普通に『俺物語』は良作以上の評価を与えるし、自分は『チアダン』も好きで評価しているけれど、それでもこの演出方法は賛否があるだろうし、邦画の悪癖なんて自分は呼んでいたりする。
それが発揮されたのがこの映画で……結局下ネタ、小ネタとしての伏線と回収、わかりやすい音楽演出、派手な編集やカット割で釣るのか……という思いがあった」
カエル「洋画でも邦画の悪癖とも言える演出ってあるんだね」
主「というかさ、最近思うのは、案外邦画の悪癖って洋画もやってんだなぁ……って。
メッセージ性とか、大事なテーマを言葉で説明したりね。それが外国人がやっているのと、メッセージが社会性があるものと受け止められているだろうから、そこまで変な印象を持たれないんだろうけれど……」
誰のための物語なのか?
メッセージ性の薄かったのかぁ……子供の成長ってあんなものじゃないのかなぁ
この辺りは子供向けアニメ映画を見慣れているからこそかもね
カエル「この作品はアメリカではR指定となっており、日本でもPG12に指定されています。まあ……R15まで過激ではないけれど、子供に見せるには眉をひそめるのかなぁ」
主「結局さ、R指定ってことは子供向けではなくて、おっさん達のゲラゲラ笑いのために、子供達にアダルトグッズを持たせて、大人の悪いところを演じさせているわけだ。
それって、すごく下劣だよなぁって。
この作品を観て自分も『クレヨンしんちゃん』を連想したけれど、あれはあくまでも子供の笑いとして成立しているし、メッセージ性も高い。大人は観てないかもしれないけれど、子供向けアニメ映画がコメディを挟みながら、どれだけ心血注いでいるかって話だよ。
そんなことをアメリカ人は知りもしないのかもしれないけれどさ……こんな下劣な笑いで子供達を消費するような描き方は、自分は違和感がある」
カエル「それでも、成長はしっかりと描けているじゃない?
子供から大人に……というよりは、児童から少年になるというか……微妙な年齢だけれどさ、その切なさが」
主「その辺りを『スタンド・バイ・ミー』といっているのかもしれないけれど、もっと少年の成長って神聖なものだと思っているんだよ、自分は。
もちろん男子のみじゃなくて、女子も。
あんなヤリサーのような場面でのキスとかが、成長とは言いたくない。
いや、ヤリサーで好きな女の子とキスするのが成長というのならばそれでいいよ。でも、それを大学生くらいでやるならばともかく、小学生で描くのか? って。その意味では成長を描くと言いながら、やっぱり親父がゲラゲラと笑いながらやっている印象が強すぎるんだ。
その辺りは、自分の感覚としては相容れないものなんだよなぁ…」
カエル「案外、そこら辺はピュアピュアな人だねぇ」