さーて、今回はすっかり冬のおなじみになった『妖怪ウォッチ』シリーズの最新作のお話をしていきましょう1
………………
カエルくん(以下カエル)
「妖怪ウォッチはテレビアニメなどを見ているわけではないけれど、平成後期を代表するおもちゃ・ゲーム作品なのは間違いないし、これからの動向やどのように発展するのかも含めて楽しみだね!」
主
「…………」
カエル「えーっと……特に今回はギャグあり、アクションありとかつての妖怪ウォッチらしさを結集させたような作品にも見えるしね!
子供向けアニメ映画として、色々な気づきのある楽しめる作品になっているといいなぁ!」
主「……………」
カエル「えっとさ、何か話そうよ! ほら、明るく楽しくね!」
主「……………………記事を始めます」
カエル「あ、これ今回びっくりするほど酷評&怒り散らかす流れだ……」
感想
えー……非常に言い難いですが、今回もTwitterの短評から始めます
#妖怪学園Y
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年12月13日
毎年失望するシリーズだけど今回、序盤は期待したんよ
あれだけいくらでも広げられそうな魅力的な設定やキャラクターを使って、なんでこんなしょうもない物語になるのか…
劇場版をテレビシリーズの0話にするとしてもやりようはあるんじゃないの、日野さん? pic.twitter.com/nrH3WeV2Aa
怒りすら湧いてくる、最低の作品です!
カエル「いや、でもさ、楽しみにしているファンもいるんだし、うちらは明らかに対象年齢からも外れていて、しかもテレビシリーズもゲームも詳しくないことも評価が低い理由の1つにあるかもしれないしさ……」
主「……もう、呆れるとかそう言うレベルじゃないよ。
この映画の存在そのものがアニメ映画や妖怪ウォッチに対する冒涜じゃないの?
あまりにもお粗末な作品に対して、途中から呆れ果てて言葉が出なくなる。シリーズものだから1作2作おかしな作品が出てくるのも分かる。また、今までと違う大きな挑戦をした結果ということもあるだろう。それらは考慮する余地があると思うし、とても重要な変化だとも言える。
もちろん、おもちゃやゲームの販促用の作品だし、色々な制限も多いだろう。
でも、この作品はそんなことを語るレベルにすらないんです」
カエル「もうちょっと、ほら落ち着いて言葉を選んで、ね?」
主「この映画は300館以上で公開されるんだよ?
エンドクレジットロールで出てきたあのたくさんの人たち、そこに名前の載らない映画館スタッフなどの映画を届けようとしている人たち、そして何よりもこの映画を楽しみにしている子供たち……その人たちにどんな顔をするんですか、日野さん?
制作総指揮として、脚本・原案に、ほぼ筆頭でクレジットされている人間として、この映画に対していかに向き合っていくつもりなのか、小一時間くらい問い詰めたい。
それくらい、ダメな作品なんだよ」
日野さんの迷走ぶりが分かる作品の1つ……
何で自分たちの作品なのに、ここまで駄作にしちゃうんだろう?
ダメな作品はいいが、適当な作品はNG!
えっとさ……でも、つまらないとかは色々な事情もあるだろうから、仕方ないんじゃないの?
もちろん、そこは考慮した上で全否定します
カエル「一応さ、いつも辛辣な意見を言っているのは僕たちも重々承知だけれど、それでも評価するべきところは評価するつもりではいるじゃない。」
主「ダメな映画でもいいんですよ。
つまらない映画でもいい。
まずは何よりも発表することが大事だし、トラブルは絶対ついてまわる。
それこそイーストウッドの『インビクタス』から引用すれば『ラグビーの試合にベストの状態で挑めることはありません』『それはスポーツも人生も同じだね』という名言が出てくるけれど、そういうものですよ。
予算もある、人手の確保もある、公開時期も決まっているから制作の期限もある、場合によってはスタジオの閉鎖などもある。その中でベストを尽くすのが大事なわけだ。
だから……よく言われる実写版『デビルマン』でも、あれはあれで見るべき工夫や意図が観客である自分にもはっきりと分かるし、確かにダメな映画ではあっても愛せる映画である」
それなのに、この映画はダメなの?
……その最大限の工夫を凝らしてこれなんですか? ってこと
主「この作品も演出や作画監督が非常に多くて、おなじ日野さんが脚本などを務めた『二ノ国』に近いような、ギリギリの制作状況だったことは推測できる。
でもさ、その中でもベストを尽くしている人も多いよ。
例えば、今作のキャラクターデザイン。
妖怪らしさをミックスさせながらも、可愛らしさと萌えを感じさせるもので、自分は惹かれるものがあった。また妖怪との合体というのも自分は『シャーマンキング』を連想するけれど、流行しているヒーロー要素もあったし、カッコいいものだった。
作画なども子供向けアニメ映画として特別なものは少ないかもしれないけれど、決して悪いとは思わなかった。
もっと酷い作品も見てきたしね。
だけれど、根幹がダメ。
物語があまりにも酷すぎるし、それがここ数年ずっと続いている。日野さんが単独で脚本を務めた『シャドウサイド』以降は特に酷いけれど、今作は輪をかけて酷い。
もう、我慢の限界というレベルだよ!」
どうどうどう……
なんで自分のところの看板タイトルを殺していくんだよ!
主「最近公開したばかりだから例に挙げさせてもらうけれどさ『フラグタイム』とかは映像面ではそこまで特筆すべきこともないかもしれない。でも、きちんと物語として表現したいものが見えた。
そういう力強さがあれば、相性もあるとはいえ、評価しますよ。
また、個人制作のアニメーションでももっと物語に魅力を持っているし、下手な中に情熱が伝わってくる。
本当は自分は『妖怪ウォッチ? いやいや、平成中期のポケモンやたまごっち、デジモンの勢いに比べればまだまだだよね!』ってクソみたいな懐古をして、叩かれるちゃうくらいに妖怪ウォッチはビックで勢いのあるタイトルになるべきだったし、ならないとダメだったんだよ!
なんだよ、この体たらくは!
市場規模2000億円いったじゃん!
映画も80億弱の興行収入を挙げたじゃん!
その面影はどこにあるんだって!
いっときますが、日野さんのゲームクリエイターとして、あるいは子供向けキャラクターとしての実力は自分も認めてますし、レベルファイブのゲームも遊んで思い出深い作品もあります。
だからこそ、例え名義貸しだとしても先頭で名前が出て、しかも脚本も書いている日野さんに文句が言いたくなるんです!」
物語として成立してない映画作品
序盤に感じた可能性
……じゃあさ、どんなところが具体的にダメなの?
今回、序盤はすごく期待したんだよ
カエル「実は『これはもしかして奇跡を起こすのか!?』ってワクワクして見ていたんでけれど、結果的にはいつもの感じで……だからこそ、ここまで強い言葉を使っているとも言えるのかなぁ」
主「例えばスタートの『自分の過去の姿を誰も知らない』みたいなナレーションがあるけれど、ここで面白い批評性があるのか? と思ったよ。妖怪だからこそできるへんげなどを使い、自分のルーツを探すとかさ。
また学園=社会の構図を使ったからこそ描ける社会問題もあるでしょう。
それこそ『クレヨンしんちゃん』が顕著だけれど、ギャグやコメディだからこそ描ける社会問題の描き方もある。他にも超能力の設定もワクワクしたし”何でもたまたま上手くいく”という設定もダメなキャラクターの成長譚としても描ける可能性があった。
ヒーロー大好きって設定だからこそ描ける正義の問題とかもあるでしょ?
あとは、ここ数年続いた大作&感動路線ではなく、妖怪ウォッチの原点でもあるギャグ多めにしたのも期待値が高かった」
カエル「映像も兼ねた演出としては、ラップを取り入れたものもくどさはあったけれど、キャッチーで良かったのかな? 先にも語ったけれどキャラクターデザインもカッコいい&可愛らしくて、このキャラクターたちを見たい! と思わされたね」
主「お色気ムンムンのお姉さん先生とかさ、昭和な感はあるけれど、子供向けアニメとしては王道じゃない。バトルが始まって戦闘はカッコいいし、OPもすごく良かった。
絶対に良作にできるポテンシャルはあったし、どの切り口で、何をテーマにするのか、いくつも選べるはずだった。
これだけ色々と積み重ねているのに……何であんなことになっちゃうのか……」
ご都合主義ですらない物語
物語が始まったら、どんどん混迷を極めていくんだよね……
なーんか、ずっとバタバタしてるんだよなぁ
カエル「この辺りは絵コンテ、演出、作画監督が多いために現場の統制ができず、全体的に調整することができていないのかもしれません」
主「この作品って言うなればテレビシリーズの適当な話を4話くらいつなげただけなんだよ。
しかも神回でも何でもない、物語としてはそんなに重要性のない回ばかりをつなげるというね。
そんなもんを劇場で見せられるこちらの気持ちも考えて欲しいものですわ!
わっはっはっは〜」
カエル「ついに壊れた……」
主「作中のギャグが古くて寒いのも残念。そもそもピンクレディって、もうお父さん世代すらも超えておじいちゃん世代すらも超えているかもよ?
そのあたりの懐古趣味やオマージュもスタプリの手腕に比べると断然劣ると言わざるを得ない」
なんかご都合主義な物語も目立ったよね〜
いやいや、もうこれはご都合主義ですらないです
主「ご都合主義っていうのはさ、
銃で胸を打たれる→胸に入れていた娘から送られた鉄製のお守りに当たり命が助かる
敵に罠を仕掛ける→敵がちゃんとそちらの罠へ引っかかってくれるように行動する
などのようなものがある。作者の都合に合わせて物語が動くことだけれど、同時に何らかの伏線が引かれているものだ。その作者の意図が読めるものである。
今作はそのような伏線は一切ない。
唐突に何かが始まり、唐突に終わる。
これは”テキトー”っていうんです。
チアリーディングや応援団を出すならば、先にギャグ描写で出しておくとかさ。
変身ロボットを出すならば、校長を科学者キャラのように白衣を着せるとかさ。
そういう事前準備や仕込みが一切なく、それをギャグやコメディだからって力押し……それ、1番ギャグやコメディを馬鹿にしていますよね?」
キャラクターへの愛のなさ
あとは物語面ではキャラクターへの愛のなさが気になったかなぁ
各キャラクターの存在意義がよくわからん
カエル「この考え方にも賛否はあるだろうけれど、せめて各キャラクターに見せ場とまでは言わないまでも、何らかの役割分担はしていた欲しいよね。この短い尺でメインの子供たちでも7人くらい出てきて、戦隊モノを意識しているのは分かるけれど、ちょっと多いなぁ……って思うし……」
主「フブキとかはこの先で活躍するかもしれないけれど、ただの研究者キャラの賑やかしだったもんなぁ……
エマもただの賑やかしなんだからフブキと役割セットにしても良かったしさ、メラとカズマだっけ? あれももっと整理してよ……」
カエル「あとは主人公がジンペイなのかマタロウなのかわかりづらいのも感情移入しにくいかなぁ」
主「その辺りの交通整理もあんまりできていない。
これがテレビシリーズの続きならばともかく、物語としてはエピソード0に近いようだしさ……」
そして何よりもマタロウに対する愛のなさだよね……
あのラストは最低の中の最低でしょうね
カエル「せっかく今まで特殊な能力を持たない一般人代表だったマタロウが頑張って行動して、ああいう戦果をあげたのに……何でそれを全て台無しにしちゃうんだろう?」
主「それがギャグだと思っているんじゃない?
そこまでの描写で”妖怪に好かれる””妖怪に優しい”とかがあれば、あの展開も納得できる。でも、そういうのもないから、唐突感がある。
そしてそれも結局は偶々の偶然だったって……いやいや、その一般人の勇気やせっかくの努力を全否定ですか?
成長もなく、その片鱗すらも否定する。これを子供に見せて何をしたいの?」
カエル「子供向けアニメ映画としても、ちょっと問題を感じるかなぁ。
なんか、子供が好きそうな下ネタと勢いで乗り切ろう感が出ちゃってる気がして……一部の下ネタ表現は現代だと結構危うくて、ちょっと引いちゃったのもあるなぁ」
主「結局、悪い意味で子供向けなんです。
子供騙しにすらなってない、子供を見下している。
映画館で安くないお金を払い、ワクワクしながら大好きな妖怪ウォッチを観に親と一緒に来た子供たちの心に何も残らない、残す気もないであろう物語。
ただの金儲けだよ。
惰性で続けるんなら、せめてちゃんとした脚本家を雇えばいいじゃん。テコ入れしていろいろな可能性を試したいのも分かるけれどさ、それが迷走どころか、敗走以上……遁走(とんそう)としか言えない作品ですよ」
まとめ
では、この記事のまとめです……
- つまらない云々を超えた、最低の作品としか言いようがない
- 妖怪ウォッチブームを終わらせたいとしか思えない
- 賢明の努力を無にする物語
- 子供向けアニメ映画を何だと思っているのか、問い質したいほど
今回ほどこき下ろしたことはないかもね
カエル「……すごい記事になっちゃったね」
主「この数年の怒りが爆発しました。
最近押井守監督が記事で『日本の映画はテレビドラマ基準になった』と嘆いていたんだけれど、自分は……アニメオタクの贔屓目込みだけれど、アニメは映画基準に上がっていると思う。
京アニ、ユーフォーテーブル、WITスタジオ……その他の多くのスタジオのテレビシリーズは劇場で見てもしっかりと楽しめる。
だけれど、このシリーズのように『映画をテレビアニメクオリティにする』ような試みには、賛同しかねるね」