今回は子供たちを中心にマスコットとして人気を集めている『すみッコぐらし』の劇場版のお話です!
…すみっコって何? ぐでたまみたいなもの?
カエルくん(以下カエル)
「僕もよく知らないので、ウィキペディアで調べてみますと2012年に落書きから着想を得て誕生したキャラクターであり、2019年では年間200億円規模の売り上げを誇るコンテンツのようです」
主
「……最近、キャラクターコンテンツビジネスが多すぎてついていけないよ……
『現場ネコ』や『うさまる』とか、気がつくと大人気! って言われているような気がしてくるし……」
カエル「もうおじいちゃんだから、若い子のトレンドについていけないんだねぇ。
そんなこんなで子供にも人気を集める『すみっコぐらし』の劇場版が今作というわけです」
主「……まじで、何一つとして知らないんだけれど大丈夫かね?
子供向けアニメ映画もチェックしておきたいけれど……これはどうなんだろう?
流石に理解できないか?」
カエル「まあ、そんな人の感想も時には必要でしょうということで、記事のスタートです!」
『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』劇場予告(60秒)11月8日全国ロードショー!
感想
それでは、ツイッターの短評からスタートです!
#映画すみっコぐらし
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年11月9日
大傑作!
2019年ナーメテータ大賞決定です!
すみっこと呼ばれるミニキャラ達の日常を見せた絵本の世界に入るのだけど、可愛いの嵐に翻弄される!
イノッチの温かいナレーションとスコアが優しく染み込み、大人も子供も魅了される物語へ
思わず涙がこぼれました
サントラ欲しいな pic.twitter.com/eAqBWYEqTg
2019年”ナーメテーター映画大賞”です! びっくりするほどよかった!
カエル「……ナーメテーターは同日にターミネーターを公開しているからということで処理するとして、映画として本当に優れた傑作だったよね!
子供たちの食いつきの良くて、ちょっとお行儀は悪いかもしれないけれど『この先どうなっちゃんだろう?』って声も聞こえてきたし、男性1人で鑑賞している人もいたんだけれど、目頭を抑える仕草が印象的だったなぁ」
主「アニメ映画全体でみても2019年屈指の出来栄えだろう。
このフレーズ、下半期だけでも何回使っているんだ? って気分だけれど、ビビるほどに傑作が相次いでいるんだよねぇ。
自分もアニメ映画を中心に鑑賞しているけれど、そうじゃなければスルーしていたかもしれない……そうならなかったことに感謝したくなるくらいの作品だった。
気になっていたら絶対に観に行くべきだと思うし、それこそ老若男女問わずに愛される作品だろう」
本作の魅力① 可愛らしいキャラクターたちが動き回る!
まずは何と言ってもキャラクターたちの魅力が飛び抜けているよね!
ゆるキャラ的なデフォルメがよくて、動き回る姿を見るだけで満足度が高いね
カエル「まんきゅう監督は『伝染るんです』『殿といっしょ』などのショートアニメを多く手掛けてきた方です。うちとしては『ぷちます!』『ガンダムさん』『北斗の拳 イチゴ味』『アイドルマスター シンデレラガールズ劇場』などが思い浮かぶかなぁ」
主「その点ではこの手のショートアニメや、大きな物語を持たない作品の監督としては打ってつけの方でしょう。
監督の作品の面白いところは……もちろん原作が優れていることもあるだろうけれど、各キャラクターの味を損なわないこと。
原作の改変や解釈違いなどを起こさず、しっかりとギャグとして面白い作品を作り上げていく」
カエル「『ガンダムさん』とか『北斗の拳』なんかはチャレンジしている作品だよね。ギャグも冴え渡っていたし、毎回のように笑っていた印象があるかな」
主「今作でいうとキャラクターたちが動き回る姿を見るだけでも楽しいけれど、この辺りは動かし方がうまくて、個性が感じられることも大きいのだろう。
ちなみに、最初に各キャラクターの説明をしてくれるから初見さんにも安心設計だし、10分もしたらキャラクターたちに感情移入して愛着が湧いてきます。
ほとんど喋らないのに、動きだけで全てを伝えるんだよね……そこが素晴らしい。
自分は開始5分ですっかり心奪われちゃった」
最初のキャラ紹介で”しろくま””ねこ”は理解できるし、この手のキャラで絶対いるよなぁ……と思ったら”雑草””とんかつ””エビフライの尻尾”……いやいや、どれだけ攻めているんだよ! ってびっくりしたよね
しかもそれらのキャラクターの個性をしっかりと尊重しているように見受けられたし、物語にも伏線回収も含めて反映している
主「その手腕にも感動しちゃうね。
監督は以前にインタビューにて『かいけつゾロリのような児童書みたいな作品を作りたい』と語っていたけれど、やりたいことが詰め込まれた作品だったのではないでしょうか」
本作の魅力② 音楽やナレーションなどの音の魅力!
次は何と言ってもイノッチと本上まなみのナレーションもとてもいいんだよねぇ
この優しさが本作の魅力を一層引き立たせている
カエル「今作のすみっコ達は一切喋らず、鳴き声などもあげません。
その代わりに、劇場版では各キャラクターの行動や心情を解説するナレーションにイノッチこと井ノ原快彦が担当し、作中に登場する童話の物語を伝えるナレーションに本上まなみを起用しています」
主「この声がいいんだよねぇ……
元々お父さんタレントとしても好感度が高いけれど、声だけで様々な感情を優しく伝えてくれる。だからすみっコたちの一挙手一投足にハラハラしながらも、安心して見ていられる部分がある」
カエル「今作を盛り上げるBGMにもぜひ注目してください!」
主「決して激しく観客の感情を煽るようなことはせず、優しく包み込むような音楽が多い。今作の場合はセリフがないので、サイレント映画と同じようにキャラクターの動きと音楽が極めて重要なんだけれど、一切飽きることなく映画を支えていた。
自分は安かったこともあってサントラをiTunesですぐに買いました」
カエル「本作ではテレビドラマなどを中心に活躍される羽深由理の他に『ふらいんぐうぃっち』などのテレビアニメでも活躍する出羽良彰、そして堀口真理子を含めた3人で音楽制作を担当しています」
主「特に自分は『ふらいんぐうぃっち』以降、出羽良彰が好きなんだけれど、優しい音楽が染み入るんだよね。今作では他にもテクノ調の楽曲や、アラビア風の楽曲もあったりとバリエーションも豊富で音だけ聞いていても飽きない。
物語のメリハリをつける演出の1つにもなっており、この音楽を聞くだけでも映画の思い出が蘇ってくるほどの楽曲揃いです」
本作の魅力③ 優しい色使いと映像の力を信じた演出
そして3つ目の魅力が映像に関するものです
何と言っても優しい色使いが印象的だよね
主「近年のアニメはハイパーリアリなんて称されるほどの、写真のような背景が注目を集めているけれど、本作は絵本のようにデフォルメされた背景が多い。
だけれど、それが物語の世界観を構築している。
自分の印象では、若干だけれど……絵本の外の世界と比べると、絵本の中では背景もちょっとデフォルメされているように感じたかなぁ。元々デフォルメが強いから、勘違いかもしれないけれど」
カエル「あとは色使いだよね。色鉛筆などで描かれたような色合いで、決して淡いという訳ではないけれど、どぎつくなく優しい色に感じたかな」
主「結局、この映画を評する時は”優しい”というのが前面に出てしまうんだよなぁ……
そして何よりも驚いたのが、映像と音楽を信じた演出が施されていたこと。
ある一部のシーンではとても勇気のある演出がされている。このデフォルメされたキャラクター達で保つのかな? という思いもあったけれど、むしろ感動を呼び起こす名演出だった。
手段としては当然なのかもしれないけれど、高い表現力と意欲に感銘を受けたよ」
以下ネタバレあり
物語の魅力について
3幕構成の童話風の物語
では、ここからはネタバレありで語っていきましょう!
も物語の魅力が大きいね
カエル「すみっコについて何も知らない僕たちだけれど、勇者が魔王を倒しに行くとか、大きな目的のある物語ではないことは見ていればわかるじゃない。それこそ、日常系というかさ。
それをどのように映画にするのか? っていうのが疑問ではあったんだよね」
主「映画にする際にはある程度大きな物語が必要だと思うけれど、それをどのように設定するのか? しかもあんまり激しい……例えば血が出るようなものは避けつつ、原作の世界観を尊重しながら物語を作らなければいけない。
今作の場合は多くの子供達にも通じるように童話の世界に入るということで物語を作っている」
カエル「各お話を見つめる子供達の反応がよかったのが印象的なんだよね。
例えば赤ずきんちゃんでは”家に行ったら狼がいるから行っちゃダメ!”とかさ。そのあとの物語を知っているからこその、先読みも含めた反応があったり、あるいはそれぞれのキャラクターの個性も発揮されていたね」
主「あとは……日常→絵本の世界のゴタゴタ→クライマックスという3幕構成もそうだけれど、絵本とすることでピンチも優しいものになるんだよね。
しかも飛び出す絵本という設定によるギミックが他のページにも繋がることで、より面白いものになっている。
その点も感心したポイントだね」
本作が描き出した精神性
じゃあ、もっと核心に迫りましょう……なんでそこまで高く評価しているの?
本作が”すみっコ”たちの物語だからだ
主「登場するキャラクター達は決して全てが満たされている訳ではない。
自分に自信がなかったり、あるいは自分探しをしていたりと愛おしい欠点がちゃんと設定されている。
彼らは決して中央に行くことができない(すみっこが落ち着く)キャラクター達なわけだ。
その存在そのものが多くの寓意性や批評性を内包している一方で、存在そのものが優しく、現代人に癒しと気づきを与えてくれる」
カエル「食べ残されてしまったトンカツの端っことか、エビフライの尻尾とかっていうユニークな設定だけれど、ちょっとだけ悲壮感もあるもんね……」
主「これが子供向けアニメとして表現されることによって”ちょっと抜けている子”とかに繋がってくるわけ。
でも、そういった子供を除外しない良さがある。
実は猛毒も含まれているんだけれど、しっかりとオブラートに包み込んで優しく味付けをすることで、それを気づかせない。
そのバランスが見事。
結局、表現というのはナイフなんですよ。優しいだけでは物足りず、人の心に突き刺さるナイフが必要になる。でも、それをただ振り回すのは芸がないし危ない。それをどうナイフを意識させずに刺さるようにするのかが肝だと思う。
その点に置いて、今作は完璧に近い」
おお……そこまで評価するんだ
このすみっこ達に何を見いだすのか? という点です
カエル「本作では劇場版オリジナルキャラクターとしてひよこが出てくるよね…」
主「例えば学校であれば、いじめなどで孤立している子供と見ることもできる。そういう、ある種の恵まれない人たちにそっと寄り添ってあげる物語でもある。
だけれど、きちんと過酷な現実を描くことを忘れていない。
それが”絵本の世界”という設定によって、残酷だけれど納得のいく物語を作っている。
でもさ、それに負けるわけではないんだよ。絵本の中の世界の住人であったり、またひよこ自身も”思い出”を糧にして懸命に、前向きに生きていることを感じさせてくれる。
何も無駄なことなんてなかった」
カエル「すみっこ達の優しさが無駄じゃなかったってことだよね……」
主「そして創意工夫ですみっこ達もピンチを脱して、さらにひよこにも救いを与える。あのラストは子供向けアニメとして、完璧と言って差し支えないものだった。
基本的な物語としては……主人公達がその世界に行くのと、ゲストキャラクターがやってくるのとは違いがあるけれど『映画スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに思いをこめて』などに近いものがあるんじゃないかなぁ。
どちらも相手を思いやる気持ちが大事な作品だ。
『仲間を思いやる』
『優しく接してあげる』
『のけものを作らない』
それらの子供向けアニメ映画として最も重要なメッセージがこめられた作品だったよ」
まとめ
では、この記事のまとめです!
- 子供向けとしても大人向けとしても大傑作!
- 優しい声や音楽、ナレーションに癒される……
- すみっコたちの存在に何を見いだすかによってすでに批評性がある
- しかし過酷な現実を描くことも忘れていない
2019年を代表する作品の1つだと思います
主「よく思うんだけれど、日本のアニメの力のそこ知れなさってこういう作品が普通に出てくることだと思うんだよね。
ディズニーやピクサー、そのほかの一流スタジオや新海監督みたいな知名度の高い監督以外でも名作・傑作が出てくる。この幅広さ、表現の力が日本のアニメの真骨頂なんじゃないかなぁ」
カエル「それを実感するような作品だったね!」