今回はみんな大好き、ターミネーターの新作映画の感想です!
……今の時代でターミネーターねぇ
カエルくん(以下カエル)
「え、そこから?」
主
「いや、別にいいんですが……実際、どこまで人気かはわからんよねぇ。
結局2以降は下火になっているシリーズでもあり、劇場内はおじさんたちが多くて……今時の若い子って、この手のアクションはMCUとかにいっているから、こっちにくることはないんじゃないかなぁ」
カエル「懐かしの名シリーズの続編だし、日本では特に人気が高いから頑張ってほしいじゃない!」
主「もちろん嫌いじゃないよ?
でも今の時代にターミネーターという物語が合致するのか、その方向性を見せてくれるのか? というのが気になるなぁ。
そんな自分の思いを吹き飛ばしてくれる、快作を見せてもらうことを期待します」
カエル「では、記事のスタートです!」
作品紹介・あらすじ
日本でも特に愛されている映画シリーズの1つ『ターミネーター』の通算6作目になる作品。今作では『ターミネーター2』を手がけたジェームズ・キャメロンが制作・原案に復帰している。
監督は『デットプール』のティム・ミラーが担当している。
キャストにはサラ・コナーとして活躍したリンダ・ハミルトンが久々にサラを演じるほか、シリーズには欠かせないアーノルド・シュワルツェネッガーも登場。その他物語の鍵を握るダニー・ラモスをナタリア・レイエス、ダニーを守るグレースにマッケンジー・ディヴィスなどが役を演じる/
『審判の日』を回避した人類であったが、危機は去ったわけではなかった。メキシコシティにて平穏な生活を食っていたダニーの元へ、未来からやってきた最新型のターミネーターである『REV-9』が彼女の命を狙いにやってくる。その危機を救うためにやってきたのは、強化人間であるグレースだった。
必死に逃げ惑うが圧倒的な力により徐々に追いつめられていく中、サラ・コナーがダニーを救うために姿を見せる……
感想
では、Twitterの短評からスタートです!
#ターミネーター
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年11月9日
今の社会、興行、政治、トレンドは正解を連発しまくった挙句、作品だけでなく制作スタイルも含めてつまらなくなった映画
CGも荒く感じてしまったし、何よりもキャラクターが弱すぎる
2の正統続編?
2の完全否定続編の間違いでしょ? pic.twitter.com/t4Sz1OVpax
これは荒れるでしょうね
カエル「うちもどちらかというと酷評よりなのかな?」
主「たださ、1作の映画として『見ていれられない! これほどひどいとは思わなかった!』というほどひどい作品とは思わなかった。
これほどの大作となると、絶対に当てなければいけないというプレッシャーもあるだろうし、そのための方法……それが社会情勢、興業のトレンド、政治的な描き方、その多くが正解だと思う。
だけれど、その正解の詰め合わせが必ずしも名作・傑作になるわけではない。
結果としては……底の浅い、よくある娯楽大作アクション映画に成り下がってしまった印象だよ」
カエル「う〜ん……やっぱり酷評でしかないような……
それから、本作に関してはターミネーター2の幻影をクリアしないといけないという部分があるもんね……」
主「今作でジェームズキャメロンが帰ってきた! と言われているけれど、監督はあくまでもティム・ミラーでさ。この人『デットプール』でも思ったけれど、映画としては編集がかったるいんだよねぇ……あれもデップーの強烈なキャラクターがいないと保たない映画だった。
キャメロンは制作・原案のクレジットだから、脚本と編集くらいしか絡んでいないって話だしね……
アドバイスと名義貸しが大きい気がする。
キャメロンもお金が必要な人だし」
CG、編集、アクションの粗
えっと……どういうところに違和感があったの?
CGが荒い、編集が雑に見えた、アクションが動かないってところかな
カエル「アクション映画の肝みたいなところばっかりじゃん……」
主「映画を見ている最中、不思議だったんだけれど、決定的なシーンを画面外でやっていて、映像ではあまりちゃんと見せないんだよね。
それが”人を撃つシーン”とかのショッキングな場面ではなくて、例えば銃を渡す、あるいはヘリから降りるなどのようなシーン。
いや、わかるよ? 物語としては繋がるけれど、でもなんでそういったシーンを見せないんだろう? って気になった」
カエル「いろいろあるとは思うけれど……」
主「あとはCGが明らかにCGとわかるような、処理の粗も垣間見えたかなぁ……
それにアクションが下手なんだろうな、っていうのは見て取れた。シュワちゃんとリンダ・ハミルトンは年齢上仕方ないと思うけれど、多分グレース役のマッケンジー・ディヴィスもそんなに動ける人ではないのかなぁ、という感覚を抱いた。
だから、そんな人でも映えるようにアクションを構築しているんだろうけれど、そんなに面白いとは思わなかったなぁ」
アクションで動けない人がたくさんいたって評価なんだね……
あとは単純に映画として間延びしているし、上がらなかったし、結局さ、キャラクターに魅力がないの。
主「2とどうしても比べるけれど、こちらに伝わってこない。だから、どうしても1つ2つ落ちてしまう印象がある。
そういったことの積み重ねた結果、普通のアクション映画になってしまった印象だなぁ……」
ターミーネーターとはどういった映画だったのか?
では、ここでターミーネーターの1、そして2について考えていきましょう
あの映画も宗教映画ですから
カエル「……え、単なる娯楽映画じゃないの?」
主「いや、明確に宗教&社会派映画です。
いつも語るけれど、アメリカは”神の国”なんです。
今作の映画の中でも語られているけれど、サラ・コナーは何者か? と言うと、彼女は聖母マリアなんですよ。
なんでサラが追われるのか? って言ったら、彼女はキリストを生むから。
だったらキリストを産む前に排除しようって、そういう話」
カエル「え、そういう話って言われても……」
主「80年代っていうのはアメリカの敵の親玉であるソ連への反感が大きかった時代です。
共産主義やソ連というのは、基本的に宗教を認めません。マルクスは宗教を『民衆のアヘン』と批判しています。
一方でアメリカは神の国であり、日本で言うところの天皇と同じような位置に神様がいる。プロテスタントやユダヤ教の国だから、そ根本にある共産主義とは対立することになる」
カエル「そういえば『ロッキー4』でもソ連から来た敵は”ロボットのようだ”と言われていたよね」
なぜターミネーターというロボットが敵なのか、と言うと、彼らはソ連のメタファーだからですよ
主「1が1984年とレーガン政権時代に生まれており、2も1991年とその名残がある時代に登場している。アーノルド・シュワルツェネッガーとシルベスター・スタローンは今でも共和党支持者として有名だけれど、この時代を象徴する大スターなわけだ」
カエル「つまり、マリア(キリストの母親)が出てくると神の国アメリカが大変なことになるから、その前にソ連が潰してしまおうって、話にも解釈できるわけね?」
主「そう。
だから、サラがシングルマザーになるのは必然なわけ。
さすがに神の子ってそのまま描写するわけにはいかないこともあって、カイル・リースが父親になっているけれどさ。
ジョン・コナーというのは共産主義が跋扈する、ロボットばかりの時代で人類や神の使徒を救う、いわばキリストなんだよ。
だからジョンは男の子なわけ。
ターミネーターってのは、世界が平穏な時は誰もマリアやキリストの話を信じない。だけれど、その時になって初めて気がつくって話でもあるわけ。
『ホームアローン』の時も語ったけれど、アメリカの宗教観などを頭に入れておくと娯楽映画の見方も変わるから面白いよ」
とりあえず80年代の映画を楽しむ上で、以下の3点を意識すると見方が変わってくる
- 神の国アメリカVS神なき共産主義・ソ連の戦い
- ロボットのように個性をなくしたソ連の人たち=ターミネーター
- 核戦争や終末の時が今よりも実感を持って理解できた
カエル「80年代は大国VS大国の核戦争がまだ起こりうると意識していたのかもね……
今でもアメリカの経験なキリスト教徒の決して少ない人が終末の時が訪れるのを信じている、というけれど……」
主「そこに鬼ごっこという分かりやすい設定があって観客にも勝利条件.敗北条件が簡単に伝わってくる。
さらに2は”少年の成長と擬似的な父との交流”というテーマがある。
何よりもシュワちゃんが最高の熱演をしてくれた。あの機械のように冷酷な演技は……見た目はいいけれど演技が下手なシュワちゃんを活かすため、とも言われているけれど、それが最高に映えた。
誰もが憧れる筋肉マッチョなアメリカの男が、キリストを救うヒーローになるんだから……そりゃ人気は出るよね。
そういった複合的な要素があって、大ヒットを果たしたのがターミネーター2というわけだ」
以下ネタバレあり
作品考察
ターミネーターという物語を作る難しさ
ここからはネタバレありになっていくけれど……ターミネーター2以降は正直、駄作ばかりといわれているよね……
今作も含めて、どの作品も挑戦はしているんだけれどね
カエル「しかも『ターミネーターシリーズはパラレルワールドです』とまで言われて、本作の登場で3はもちろんのこと、それ以降も否定してしまうというね……」
主「そりゃ、全部2で完結してしまっているからねぇ……
あれ以上はどうしようもなくてさ、色々と文句を言われがちだけれど3だって自分は理解できる。ああいうラストにしないと、次につながらないだよ。
続編を作るって決まった瞬間に、2は全部否定しなければいけないわけだ。
多分、ジェームズ・キャメロンもそれがわかっていたからこそ、続編には関わらなかったんじゃないかなぁ」
カエル「あの後『タイタニック』とかで多忙だったというのも大きいだろうけれどね」
主「じゃあ、今作は? っていうと……まあ、あのスタートは思い切ったよね。
もうここは何も言わないけれど、あれはすごいことをしたなって思う。
確かにあの存在がターミネーターシリーズの足かせにもなっているし、今作でやろうとしたことを表現するならば、こうするのもウルトラCとしてあり得るだろう。
その意味では”正解”」
カエル「あれ? じゃああのスタートはありなの?」
主「いやー、なしでしょ!
あんなの最低だと思うよ。
少なくとも、ターミネーターシリーズの正統続編を名乗るならばやって欲しくなかった。そりゃ、サラも出したいのはわかるよ。初期ターミネーターってサラコナーの話だしさ。
でもさ、あのやり方は思い切りはいいし、新ターミネーターのスタートとして正解だと思うけれど悪手中の悪手。
だって2の完全否定ですから。
まぁ、これだけで大否定ですよ」
現代のハリウッドの流れに対して
物語に関してはどうなの?
今のハリウッドらしい作品になっている一方で、大否定をしたいな
カエル「え、そんなに?」
主「売れるためならば何でもやるのがハリウッドですから。
今、香港を支持して中国を敵に回すと……」
カエル「はい、その話はなし!
ちゃんとターミネーターの話をしてください!」
主「結局さ、女性・貧困・メキシコ・同性愛……これらのテーマがないと売れないと思い込んでいるのが、今のハリウッドなわけ。
それが今のトレンド。
で、ターミネーターってその真逆なわけ。
シュワちゃんだって男性性の見本みたいなものだしさ。サラは男らしいかっこいい女性像だけれど、それが現代にマッチしている。
だから、興行的な狙いとしては大正解。
自分も売ることだけを考えたら、同じ選択をするかもしれない」
でも、それが映画としては……って話なのね
だってしょうがないじゃん、キリストは男なんだから!
主「キリストもブッタもムハンマドも男なんですよ。だから救世主伝説を女性でやろうとしたら、新しいものを作るか、あるいは何か別のモチーフを探してくるしかない。
さっきも語ったように、ターミネーターって娯楽映画だけれど同時に宗教性、社会性を兼ね備えた映画なんです。
それをただ女性にしました! ってだけだと、どうしても物語が弱くなる。
これは『スターウォーズ』も抱える問題で……ミューズをいかにして生み出すのか、それを物語の深みとして出すのか、というのが問題となってくる。
さらに、これは野暮なツッコミかもしれないけれどさ、ダニーの細腕であんなでかい銃を撃てるわけ?
シュワちゃんもそうだったけれど、あのガチガチの筋肉があれば見た目として映えるし、納得感もある。でもグレースは強化人間だからいいとしても、サラもあんなでかい銃を振り回せるような体には見えないんよねぇ……」
現代でターミネーターは作るべきなのか?
おお、そもそも論に食い込んで行った……
いや、だってあれって80年代から90年代だからこその映画だと思うんだよ
カエル「今の時代には合っていないの?」
主「当時は未来の姿ってあんな印象だったかもしれない。
でも少なくとも、あんなSFのイメージを今は持てるか? というと……違うんじゃないですかね?
機械文明の危機だったり、人間の対立というのは『モダンタイムス』や『博士の異常な愛情/または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったのか』などもあるように、今に始まったものではない。
そこにソ連との冷戦構造、あるいは核戦争の脅威を交えて描くことで、ターミネータは生まれた。
でも、今はその構造そのものが古くなり始めている」
カエル「じゃあどうするの?」
主「自分だったら”テロとの戦いの時代=顔の見えない敵の恐怖”を描く。
今作のように明確な敵は描かずに、急に襲い来る恐怖。家中や町中の家電や電気製品が突発的に爆発したりして追いつめてくる姿を描く、とかね。
それこそ『メタルギア』をやるかなぁ……鬼ごっこからかくれんぼに変化させるとか」
カエル「5秒で考えた案だから、それがありかどうかは別としてね」
主「今作の場合”女性たちが協力して行動する”というのは、意義としては理解できる。それがかつてマッチョ主義の象徴のようだった、ターミネーターでやることによって、女性の社会進出やダイバーシティとして大きな意味があるのもわかる。
そこにオールドファン向けにシュワちゃんを入れるっていうね。でも、あのT800は2とは別個体だったら、別にいらないんじゃないかなぁ……逆に寂しくなるし、あのT800の姿は見たくなかった。
しかも敵も狡猾でありながらも人間的すぎる。
あれでは敵、味方の区別やキャラクターの味が出てこないし、さらに言えば弟や父親などの男の扱いも超絶雑。まるで”女さえ無事ならば、男はどうなっても構わない”っていっているのかと思った。まあ、今の流れではそうなのかもしれないけれどさ。
だから、結論を言えば……”ターミネーターを現代に蘇らせるのは難しいし、その方向性を間違えた”ということになるね。
この辺りは……自分が高く評価する『ジュラシック・ワールド』などが現代だからこそのシリーズを見せてくれているから、そちらのように工夫して欲しかったなぁ」
まとめ
では、この記事のまとめです
- 興行的な意図を考えれば正解、しかし映画としては失敗では?
- かつてのターミネーターは宗教&社会派映画の一面も
- 本作はそれをなぞっただけに見えてしまった
- 現代にターミネーターを蘇らせる上で失敗したのでは?
というわけで、酷評です
カエル「う〜ん……このあとも作られるのかなぁ?」
主「難しいかもね。
キャメロンも『アリータ』に続いて苦戦を強いられたなぁ……
まあ、悪い映画とは思わないし、ファンならば行って欲しいという思いもあるかなぁ」