物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『ホームアローン』ネタバレ感想&考察 クリスマスにぴったりの本作が描いた政治、宗教的なメッセージとは?

 

 

 

 

クリスマスといえばやっぱりこの作品だよねぇ

 

今でも人気の高い作品じゃの

 

カエルくん(以下カエル)

改めて鑑賞すると、結構エゲツない物語だよねぇ……

 あのイタズラとも言える泥棒撃退法の1つ1つが結構危ないから……なんだか途中から泥棒に感情移入してしまうというか……」

 

亀爺(以下亀)

「冷静に考えると3回くらい死んでもおかしくないイタズラばかりじゃからの」

 

カエル「よく生きていたよねぇ。骨の1つや2つどころか、動けなくなってもおかしくないような罠ばかりだったけれど……」

亀「大人になってしまった弊害かもしれんの。

 コメディなのだから、もっと気楽に見るべきかもしれんが……大人になってみるととても怖いシーンが多い。

 特に冬に氷で足を取られて転んで転倒などは、お年寄りを中心に大きな怪我や、最悪死亡につながることもあるものじゃから、大人は特に気をつけていることもあるからの」

 

カエル「昔はこれでゲラゲラ笑っていたと思うと、やっぱり映画に限らないけれど物語を最大限に楽しむ年齢って決まっているのかもねぇ。

 ということで、今回はクリスマス映画の代名詞である『ホームアローン』について考えていきましょう」

 

 

 

 

 

作品紹介

 

 クリスマス休暇を利用して親戚一同でフランス旅行へ行く予定の一家だったが、一人だけ忘れられて残ってしまった8歳の少年、ケビンが2人組の泥棒から家を守る様子を描いたコメディ作品。

 クリスマスの定番の作品でもあり、日本でも高い人気を誇っている。

 監督は『ピクセル』や『ハリポッターの賢者の石』などの監督も務めたクリス・コロンバス。ジョン・ウィリアムスの音楽はテーマ曲もクリスマスシーズンに耳にする機会も多いのでは?

 

 

 ケビンの家ではパパ、ママ、兄弟たちと一緒にフランスに招待されて準備に大忙しだった。親戚も含めて子供だけで11人と大所帯の中、出発の朝に寝坊をしてしまい慌てているうちに不慮の事態によりケビンだけ家に置き去られてしまう。

 最初は1人の生活を悠々自適に過ごしていたが、そのクリスマスシーズンの旅行に行く家を狙って2人組の泥棒がケビンの家に目をつけた。

 ケビンは家を泥棒から守るために、数々の罠を仕掛ける……

 

 

 

感想

 

今更紹介するまでもないだろうけれど、昔はケラケラと笑っていたコメディ映画だよね

 

先に書いたように、今では少し真顔になってしまうこともあるかもしれんの

 

カエル「まあ、こればっかりはねぇ。大人になるとその描写の恐ろしさを身をもって知ることにもなるからなぁ。

 でも昔から本当に好きな作品で、友達と一緒にクリスマスシーズンになるとよく見ていたね

亀「テレビなどでもよく放送されていたから、見る機会は多かったのではないかの?」

 

カエル「僕の地元では図書館にレーザーディスクがあって、それを見せてくれたんだよ。子供の頃はよくそこに通ってヘッドフォンをして映画とかを楽しんでいたんだけれど、子供だからゲラゲラ笑ってしまって怒られたりしていたかなぁ」

亀「特にわかりやすい笑いどころも多いし、伏線の引き方と回収などもうまいために、コメディのお手本のようなところもあるの。

 しかし……今、見返したみるとこれはなかなか攻めている内容でもある」

カエル「……攻めている?」

 

亀「政治的、宗教的な描写がかなり多く、もしかしたら今の時代にはそぐわない作品となるかもしれん。

 2018年に公開することは難しい作品かもしれんの。

 その理由は後々語るとするとしようか」

 

 

 

役者、声優について

 

では、今回も日本語吹き替え版で見たので、その感想も少し触れましょうか

 

子役出身の代表のようなマコーレカルキンの演技が素晴らしい作品じゃの

 

カエル「改めてみると面白いよねぇ……

 子供らしい可愛らしさと、小憎たらしさが同居している演技でさ。確かにこれは天才子役を言われてしまうのもわかるかも。

 その後を思うと色々といたたまれない気持ちにもなるけれど……」

亀「特にわしは声優陣にグッとくるところがあるかの。

 お父さん役の富山敬さんもそうじゃが、泥棒を演じた青野武さんなども亡くなっておるために少し考えてしまうところがある。

 特に青野さんの演技は、この映画では1番印象に残っておるの。かなり怖いおじさんの役所ではあるが、所々胡散臭いながらもコメディの隙のある演技をしておったの」

 

カエル「これは全くの偶然だろうけれど、青野さんが『スネーク!』というだけで笑いが取れるからね

亀「他にも折笠愛や石田彰などがデビューして間もない、キャリアが比較的浅いころの演技も堪能することができる。

 この前の記事である『グリンチ』の実写版の時もそうじゃが、子供役をしっかりとした声優が演じる方が、わしは好みかもしれん。

 なんとなく、90年代くらいの映画の良さ……特にコメディ作品は吹き替え声優の味わいも重要なモチーフだったことを、しみじみと感じるかの」

 

カエル「ジャッキーの石丸博也とかは、むしろジャッキーの声よりも吹き替えの声の方が有名なくらいだろうからねぇ。 

 それだけ目立つのがいいか悪いかは置いておくとしても、吹き替え版だからこその味というのが、コメディ作品は特に強い印象もあるかな」

 

 

作品考察

 

本作が作られた時代の家族像

 

では、ここからは作品考察になります

 

この作品はかなり政治色、宗教色の強い作品であるから、そこを考えていくかの

 

カエル「……あんまり気にならなかったんだけれど、そんなに強いの?」

亀「もしかしたら現代ではホームアローンは作ることができんかもしれんの。

 まず、作品に触れる前に本作が製作された1990年というのは、アメリカの歴史が大きく変わりつつある時代でもあった。

 冷戦が終わり、映画なども大きな変化があった時代じゃな。

 今回注目するのが1980年代にレーガン大統領が唱えた『家族の価値』(ファミリーヴァリューズ)というスローガンじゃな

 

カエル「レーガン大統領ってバリバリの保守派で、軍事力に力を入れていた人だよね。それに対抗するためにソ連も軍事力に力を入れて、結局財政危機によって冷戦が終わったというのは知っているけれど……」

亀「その政治的評価はここでは論じることはしないが、この1980年代は冷戦中ということもあり、シルベスター・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガーなどのマッチョな男性像が多くの支持を集めておる。ちなみに、この2人はバリバリの共和党支持者じゃな」

 

カエル「強いアメリカが必要とされた時代だね

亀「そして、レーガン大統領が唱えた『家族の価値』というのは、簡単に言えば保守的で伝統的な家族像を大切にしよう、というスローガンである。

 これは色々な意味があるじゃろうが、1つはアメリカの離婚率の高さ。実は1980年前後がアメリカの離婚率の高さのピークとされており、これに対して危機感を抱いた共和党寄りの人々が『家族の価値』すなわち伝統的な価値観を大切にしようという運動に賛同したとも言われておる。

 そのレーガン大統領スローガンの流れを受けておるのが本作であり、その目線で見るとかなりの政治的な意図にあふれた作品というのがわかるの

 

 

 

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作中の描写から考える

 

……政治的な意図があるの?

 

本作で重要なワードは『家』『教会』じゃな

 

カエル「そりゃ、家を守ろうとする男の子のお話だし、クリスマスだから教会やキリスト教が重要な意味を持つのはある意味では当然とも言えるだろうけれど……」

亀「現代からすると少しばかり違和感を覚えるポイントではあるが、本作は白人しか出てこない。

 まあ、これは現代のポリコレ描写がいきすぎている可能性もあるが、基本的に『家族の価値』の運動は……ゲイやレズなどの同性愛などの多様性を持った性文化に対して、厳しい視点を向けていた。

 『エイズはゲイの病気だ』とレーガン大統領自身が語っていたようじゃしの

 

カエル「今ならば大炎上間違いなしだよね……共和党らしいといえばらしいけれど……」

亀「言ってしまえば伝統的な価値観とは”異性愛者の白人家族を中心とした考え方”になるわけじゃからな。

 では、この映画に話を戻すと、まずは”少年が守るべきもの=家”という考え方に基づいておる。

 ここで対極にあると思われる、わしも大好きな名作映画をあげよう」

 

カエル「もはや説明不要、少年たちの成長物語として大名作の『スタンド・バイ・ミー』だね」

亀「わしはスタンド・バイ・ミーが大好きじゃが、その理由の1つが”少年が大人になるために冒険をする物語”だからかもしれん。

 この2作はどちらも”男の成長”を描いておるが、その過程は全くの別。

 お互いに家に不満を持つが、スタンド・バイ・ミーは家を離れ、ホームアローンは一人取り残された家を守ることを描いておるわけじゃな」

 

 

家族を取り戻すための行動

 

ホームアローンではお母さんは息子のためにお金や宝石を売ってでも帰ろうとするわけだよね

 

そしてケビンも大きな選択をすることになる

 

カエル「あの偽物のサンタさんに家族を返してもらうようにお願いするシーンだね。

『プレゼントはいらないから家族を返して』という……」

亀「つまり、本作は”宝石やお金よりも家族が大切”ということを描いておる。そのサンタさん自身は偽物であるが、ここでケビンは教会に足を踏み入れるわけじゃ」

 

カエル「その前の描写でも教会は出てきたけれど、ケビンも泥棒の2人も教会は嫌がって中には入らないわけだよね……だけれど、ここでケビンは勇気を出して教会の中に入り、今まで怖がっていたおじいさんと知り合ったわけで……」

亀「教会というのは当然のことながら”罪の告白をし、赦しを得る場所”である。

 この場で自らの罪に向かい合った2人の男だからこそ、最後には家族を得るという選択があったわけじゃな。

 ここに来るまでのケビンは正直ついていないことも多かった。買い物中に袋が破けてしまったりの。

 だけれど、ここで神への告白を行ったからこそ、神からの祝福を受けて、幸運が訪れる。

 これはキリスト教に対して保守的な、共和党の考え方を支持する人にとっては納得しやすい描写じゃろうな」

 

カエル「神様のご加護を受ける……」

亀「諸説はあるものの、クリスマスはキリストの誕生を祝う祭りとされているからの。ここで子供が自らの罪を認め、家族に対して暴言を吐いたことを告白し反省することによって、家を守り一人前の男になるわけじゃからの。

 ご飯を食べる際にアーメンとお祈りをする描写などは、神に愛され、加護を得た者であることを示すいいシーンではないかの

 

 

まとめ

 

では、この記事のまとめです!

 

  • 今でも人気の高いコメディ作品!
  • レーガン政権が掲げた『家庭の価値』に沿った、保守的な政治を語る作品
  • 教会で神様の加護を得る、クリスマスらしい作品でもある

 

クリスマスだからこその作品じゃな

 

カエル「こうしてみるとコメディでありながらも、結構メッセージ性もある作品なんだねぇ」

亀「いつも語るように『コメディ、ホラーは政治や宗教、文化に対するメッセージを以下に語るか』みたいなところもあるからの。日本ではあまり理解されづらい面ではあるが、アメリカなどはその視点で見ると映画も違った作品に見えてくるぞ」

 

カエル「ちなみに、保守的だからダメなの?」

亀「いやいや、良い悪いではない。ただそういう時代に生まれた作品、というだけじゃな。

 どちらが好みかといえばわしは革新的な家族像が好きじゃが、本作は本作で好きな作品じゃしの

カエル「……最後に余談だけれど、なんかこのホームアローンをめっちゃシリアスにすると『ドントブリーズ』になるんじゃないかな?

 ”舐めてたガキはヤバいやつだった”系でさ」

亀「元々のアイディアは似たようなものかもしれんの。

 この2つでも比べてみても面白いかもしれんの」

 

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