物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『ボクの妻と結婚してください。』感想 コメディ調の病気ものでいうほど悪くはなかったかなぁ……

カエルくん(以下カエル)

「しかし、あれだよね。主って本来こういうテレビ局主導の映画だったり、病気ものは嫌いだって言っているのに、なんで見に行くのかね?」

 

亀爺(以下亀)

「もちろん公開館数が多い=アクセス数が見込めるというのはあると思うが……実は逆なのではないかの?」

 

カエル「逆?」

亀「主は確かに障害者や病気を扱ったものは嫌いじゃが、好きな作品だって当然ある。例えば『レスラー』であったり黒澤明の『生きる』であったり、今年ならば『聲の形』は年間ベスト級に好きな作品じゃからの」

カエル「あー……なるほどね、嫌いな分野である分、ハマった時の衝撃はすごく大きいのか……

亀「こういう病気ものはやはり、ある種のテンプレートがあるからの。それに沿って作品が出来上がってしまうことも多い。

 それが目に見えて感動させるための……ある種の煽りが多いような演出になっておると、それが燗に触る結果になりかねんわけじゃが、逆にそういうテンプレートから外れた時の衝撃というのは、とても大きいということかもしれんの

 

カエル「病気ものってある程度のお約束とかあるもんね……」

亀「では本作はどうだったかというと……それはこれから語っていくことにするかの」

 

 

 


「ボクの妻と結婚してください。」予告

 

 

1 ネタバレなしの感想

 

カエル「じゃあ、早速ネタバレなしの感想記事だけど……

 最近はテレビ局主導でワイドショーを描いた作品とかもあったじゃない? 『グッドモーニングショー』のことだけどさ、あれが中々に……ツッコミどころ満載だったから、本作も怪しいかな? と思いながら鑑賞していたけれど……」

亀「意外と面白かったの。

 確かに映画史に残る名作でも、映像の最先端を行くというわけでもない。だが『時間があるし映画でも見ようかな……お、この映画が公開館数も多いし、時間がちょうどいいぞ!』となった場合に見る分には、十分面白いのではないかの?」

 

カエル「ハードルを高くして見に行かれて『つまらないじゃないか!』と言われたら困るけれどさ、テレビ局主導のこの手の病気ものということを考慮して考えると、このレベルの映画だったら合格点だよねって印象かな

亀「家族で見に行ってもよし、ある程度年配の夫婦だったら涙が流れるかもしれんな。若いカップルとかでも、分かりやすい話じゃからの、それなりに盛り上がるかもしれん。

 手軽に楽しむという意味ではオススメできる作品じゃな

 

病気ものとして

 

カエル「最近、病気もの作品がそれなりに多いじゃない? 例えば先週公開ですごく評判のいい『湯を沸かすほどの熱い愛』とか、このブログでは色々あって低評価になったけれど『世界一キライなあなたに』なんかもあったけれど、それと比べたらどうかな?」

亀「まず、先週公開した『湯を沸かすほど熱い愛』は非常に作品としての完成度を感じさせるものであったし、評価も高い。個人的に好きではない、と主は語っておったが、どちらの方がいいかというと、湯を沸かすほどの熱い愛に軍配があがるじゃろうな。

 じゃが、やりたいこともやっていることも、ましてや公開規模も全然違うからの。一概には比べられんが……いい勝負をしておると思うぞ」

 

カエル「おすすめ度としてはそこまで変わらないよね?」

亀「どちらもある種の病気もののテンプレみたいな展開じゃからな。この手の作品に違和感がない、大好きというのであれば……公開館数が多い(=交通費などの手間がかからない)この作品を鑑賞する方をおすすめするかの。

 どちらも同じ時間、同じ劇場で見られるというなら、湯を沸かすほどの熱い愛の方がいいであろうとは思うがの

 

 

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役者について

 

カエル「今回の役者についてだけど……だいたい、違和感もなくいい演技だったんじゃないかな?

亀「織田裕二、吉田羊、原田泰造ともに得意なタイプの役であろうからな。そこまで大きな違和感もないの」

カエル「織田裕二は飄々として、でも芯の強い熱い男ってうまいもんね」

 

亀「わしが思うに、織田裕二は何を演じても織田裕二になるタイプの役者じゃと思っておる。それはある種の名優の条件でもあるぞ? 名主役と呼ばれる、例えば三船敏郎などもそうじゃろ?

 それだけの存在感があるし、演技も安定しておる。役と役者が一致した、いい配役であったの」

カエル「その意味では原田泰造も同じかもね。滲み出るいい人オーラに包まれているし」

亀「もはやお笑い芸人であっても、俳優業の活躍の方が目立っておるような気もするが……こちらも安定感抜群じゃったの。独身男性側で出てきたが、あんな男がいたら争奪戦になるであろうの」

カエル「むしろ幸せな家庭をオススメする方だとも思うけれどね。その意味では……織田裕二と配役逆じゃない? って思ったシーンも幾つかあったけれど、どちらもピッタシはまっているから、違和感がないね」

 

亀「そして吉田羊であるが……いや、抜群にうまいぞ? 強い母の姿も見せて、しっかりと涙を見せて泣かせてくるし、いい役者じゃの。

 しかしのぉ……これはまったく吉田羊が悪いわけではないが、織田裕二とセットになると……あの性格であの髪型だと、やはり織田裕二の代表作を思い出してしまうの

カエル「……やっぱりあれって、イメージとしてはすみれさんだよね。髪型くらいは変えてきても良かったんじゃないかな? とは思いつつも、リアルに考えるとああいう髪型が正解なのかなぁ」

亀「ここは難しいところじゃの……

 しかし、あれじゃの。この3人が強すぎて、主に織田裕二と吉田羊とからむ子役は、少しかわいそうじゃったの。典型的な子役演技であるが、この2人がうますぎて作品から浮いておった。決して特別下手なわけでもないと思うが……」

カエル「相手役者との力量の差がはっきりとわかる形になったよね……」

 

以下ネタバレあり

 

 

2 ツッコミどころのある設定

 

カエル「やっぱりこの作品は題名やタイトルに違和感を覚える人が多いから、結構厳しいイメージを持つ人も多いみたいね

亀「もちろん、この設定自体はおかしいことじゃよ? 『僕の妻と結婚してください』なんて言葉は、あまりにもおかしいことだと思う。

 じゃが、それはこの作品中の登場人物全員がそう思っておるから、変に浮かなくなっておるの」

カエル「みんなが大真面目に『そうだ! 妻と結婚させよう!』ってなったら反感を覚えるのはわかっているからか、結局は『余命わずかな人の願いだし、テレビ局の放送作家の考えることだからなぁ』くらいの認識で話が進んでいくんだよね」

 

 亀「じゃから、おかしいのはみんなわかっておる。わかった上で話は進むから、そこまで気にはならんかの。

 あとは……出てくる登場人物がみんないい人ということかの」

カエル「途中で主人公が大失態をやらかすわけだけど、それに対してはあまり怒ってないもんね。説明では『怒られた』という台詞があったけれど、あれってタレントとしては致命的なことだと思うんだよ?

 事情が事情とはいえ、どうやってカバーしたんだろ? この試みを公表するくらいしか、ないんじゃないかな?」

亀「原田泰造が唯一怒ったが、あのレベルで済んだというのもやはりいい人じゃの。そこは末期がん患者ということを打ち明けることと、いい人オーラでカバーしたという印象かの

  

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前半について

 

カエル「前半は笑いも多くて、悪くなかったよね。何よりも『結婚はいいものだ!』力強く言い切る作品って、最近少なかったからさ。変な話だけど、斬新だなぁって思ったりもしたよ

亀「どの作品も結婚に対するリスクだったり、家族の重さを伝えるものが増えておるからの。その割に恋愛作品は相変わらず多いが……まあ、それはいいとしよう。

 この作品は病気ものであるが、予告編にあったようなコメディパートが大体開始5分ほどで消化してしまう。ではそのあとは重いのかというと、前半部分は病気ものであるということを疑ってしまうほどに、コメディで明るい話だったの

 

カエル「そこが良かったよね。病気もので多いのが最初から最後まで感動させようとして、メリハリのない作品だけど、この作品は笑いもあって、序盤は安心してみていられたよ」

亀「演出も説明を背景に文字を写したりして、あくまでもリアル一辺倒ではないということを演出しておったの。そこは良かった。

 欲をいえばその工夫を後半も欲しかったの。前半だけ別人が作ったかのようじゃ

 

 

3 後半について

 

カエル「で、後半に入ってからだけど……」

亀「う〜ん……やはりそうなってしまうのか……の連続じゃったな。

 前半部分があるからこそ後半は一気にメリハリが出来て、確かに夫婦の愛や想いに感動できるようにできておる。それはある意味では『湯を沸かすほどの熱い愛』と同じようなもので、笑いがあるからこそ、感動もするのじゃが……

カエル「ここが長い上に良くあるパターンだし、物語としての整合性というか、ご都合要素が見受けられちゃったかな?」

 

亀「決して悪いわけではないし、確かにこんな話で初めから悪い人がいないのだから、こんなカラーの作品になるのもわかるのじゃが……こればかりはなんとも言えんな。

 わしなどはこの展開に飽き飽きしておるから、どうにか工夫して欲しいと思う。思うが、しかし求められているのがこんな展開だとしたら……まあ、仕方ないかの」

カエル「前半の良さが一気になくなちゃったかな? って印象。最初から最後までこの調子だったら、さすがに酷評だったかもねぇ」

 

亀「織田裕二と吉田羊だからなんとか映画が持ったが、これがそこいらの……言い方は悪いが、10代の若手俳優だとしたら、一気に物語が陳腐になったであろうな。それすらも計算のうちかもしれんがのぉ。

 あと夫婦喧嘩のシーンや、織田裕二が倒れたシーンは息子はどうしておった? あんな大騒ぎをしていて『寝てました、気がつきませんでした』というのはないじゃろう。どこかに行っておったという描写もないし……」

カエル「あれだけで色々気がついちゃうよねぇ」

 

 

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ラスト付近について

 

亀「わしがより強く思うのが『なんでもかんでも喋りすぎること』じゃと思う。この作品も……予告段階から怪しい映画と言っておったが、それは予告で使われた『キーとなる部分』があまりにも言葉が陳腐で、説明的だからじゃ。

 実はそんなシーンは映画全体から見るとそこまで多くないのじゃが……そんなシーンがあると冷めるの」

カエル「具体的にいうとどの部分?」

亀「『あなたの命が足りないなら、私のを使ってよ』とか『一緒に生きてよ!』などかの。セリフとしてまず陳腐に感じるし、これでもかというほどピックアップされるじゃろ? それがいかんの……

 この言葉を入れること自体は悪いとは思わん。しかし、この言葉を書いて、さらに読み上げたり、大きな声で張り上げたりすると……やはり『安ぽっさ』が出てきてしまうように思うの

 

カエル「分かりやすい泣き所なんだろうけれどね」

亀「分かりやすすぎて、逆にダメじゃの。いかにも『ここで泣け!!』と言われておるようで、わしなどは反感を覚える。

 あの結婚式のシーン自体はいいと思う。しかしの……この手の映画でありがちじゃが、病人が死ぬシーン、あれは必要か?」

カエル「う〜ん……これもわかりやすい泣き所だけど……」

亀「そういうシーンを入れてしまい、さらに種明かしをすることによって安っぽくなってしまうとわしは考える。

 確かにテレビ局主導で、これだけ大きい映画じゃ。誰でもわかるような配慮というのは必要じゃろう。じゃが……やはりそれが過剰すぎるような気もするのじゃがのぉ……

 

カエル「あの結婚式で終わって、EDが流れたらまた違う余韻があっただろうけれどね」

亀「そういう場面が流されるたびに、わしは冷めてしまう。もう何十回と見慣れたパターンか、との。

 目指す映画の違いかもしれんが、説明するほどに陳腐になる。種明かしされたマジックを見るようなものじゃ。

 『風姿花伝 』にもあるじゃろう。

 

 秘すれば花なり、秘せずば花なるべからずとなり。 秘密にすることが人を魅了する花につながる。』と。

 

 説明すること、理解することが映画の目的か? 違うであろう。

 物語に魅せることが目的じゃろう? なのに『物語を理解させよう』という作品が、あまりにも多すぎるように思うの」

 

 

最後に

 

カエル「まあ、最後に色々言ったけれどさ、そこまで悪い映画ではないよね」

亀「……まあ、わしが病気ものに同じような病気ものに飽き飽きしておるというのもあるかもしれんの。このパターンが好きであれば、もっと楽しめるかもしれん。

 しかしのぉ……もっと新しい病気ものがあってもいいように思うの」

カエル「大きな企画だから安パイで行きたいのはわかるけれどね。実際、平均点はそこまで悪くならないだろうし

亀「こういう大型映画に先進的な物語を求めるのが無茶ぶり、ということかの」

カエル「こけたら痛いしねぇ……そこまで大ヒットはしないだろうけれど、大コケもしなそうだし。

 こういう作品を作れるというのも、一つの大事な才能かもね」

亀「テレビというのは大衆に伝わることを目的としてメディアじゃから、こうなるのも仕方なし、か……

 

カエル「しかし……結婚ってそこまでいいものなの? 僕はしたことないからよくわからないけれど……」

亀「……山あり谷ありじゃが、過ぎ去ってみればいいものかもしれん。学生時代の思い出と一緒じゃな。当時は苦労も多かったが、思い返すといいことしか思い出せん……ような気もするが、しかし……わしもあんな妻が欲しかったのぉ」

カエル「……隣の芝生は青いってことなんだろうね」

 

 

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